善の洞穴です4
次の日、朝からダンジョンに来た俺たちは、早速30層に向かって出発した。これまで同様、進むのは最短ルート。先頭も極力速攻で殲滅してさっさと上に、という予定だったのだが、いざ攻略が始まると、予定外の事態が発生した。人がほとんどいないのだ。
朝から入っているダンジョンだが、もうすでに昼過ぎになっていた。
これまでのペースを考えれば、すでに階層は3~4つは進んでおり、安息所で休憩をしているという頃合いだった。しかし、現在いるのは27層。これまでの戦闘回数はとっくに10を超えており、安息所まではまだまだ距離があった。広間にはモンスターがあふれ、通路にも上位スケルトンが徘徊する様子は、これまでの戦闘がなさ過ぎたダンジョンとはまるで別のダンジョンであるかのような感じだ。
「これは一回引き返したほうがいいかもしれないね」
この広間の最後の1体のスケルトンエイプを叩き潰したヒツギがそう言った。
「そうだな。さすがに今日中には30層までは行けそうにないし」
「最短ルートでは進んでるんだけどね。25層までも本来ならこんなにモンスター多かったのかな?」
「かもしれないな。まあ朱雀が現れる前ならだろうけど」
「でも、26層からこんなに増えるなら、ダンジョン内で1泊とかも考えないとね。これまではそんなこともなくスムーズに行けたけど、どちらかと言えばそれが奇跡みたいなものだったんだよね」
「そうだと思います。ご主人様は常識とは別の次元にいらっしゃいます」
「そこまで言い切るか?」
「ご主人様なので」
「泣くぞ?」
「私の胸を貸そうか?」
「いらんよ。マナの胸はひんそ」
「メイ?」
「ごめんなさい」
「二人ともここ一応ダンジョンの中って忘れてない? メイを問い詰めるのは後にして」
「ごめんねヒツギ。後でお風呂の中でゆっくり問い詰めよっか」
「一緒には入らないからな」
「貧相じゃないとわからせてあげる」
「結構です。スケルトンエイプの骨って売れるんだっけ?」
「金額は種類にもよりますが、スケルトン系の骨は全てギルドで買い取ってくれるはずです。錬金術の材料になるとかで」
「錬金術?」
「はい。骨を細かく砕いて、特殊な方法で加工すると聞いています」
「へぇ。錬金術師なんていたんだな」
「私がまだ1人で旅してたころに、商業ギルドがみんな抱え込んでるって聞いたことあるよ」
「だから聞いたことなかったのか」
「たぶんね。まあ私も噂で聞いただけなんだけど」
「ふーん。じゃあ帰りに倒した分は回収していくか。この広間のはたしか……12体か」
「腕の骨でいいんだよね?」
「はい。正確には左腕の骨です。右腕は使えないそうです」
「了解。となると……あー、最後に倒したのはだめだね。左は完全に折れちゃってる」
「回収できるやつだけだな」
そうして、折れていないスケルトンエイプの左腕の骨合計4本を回収して、俺たちは25層の転移陣に向かって、来た道を戻ることになった。
帰り道にも当然のようにモンスターが現れたが、売れる部分に気を使いながら倒して帰ったこともあり、ダンジョンの外に出てみると、すでに陽は完全に沈んでいた。
時間も時間だったので、町には入らず、そのまま屋敷に直行した。
「今日は遅かったのじゃな。晩御飯の準備は済ましてあるのじゃが、風呂が先かのう」
「ちょっと予想外の事態になってな。撤退してきた」
「なんと! お主らが今挑んでおるのは『善の洞穴』じゃよな? 何が起こったのじゃ?」
「別にモンスターが手ごわいとかじゃあないんだ。25層から30層もこれまでよりはまし程度に混んでるって想定してたら、まさかの全然人がいなくてな。思うように進めなくて引き返してきただけだよ」
「なんじゃ、そんなことか。それはおそらく人が『生の草原』に流れたからじゃろうな」
「人が流れた?」
「そういえばお主らは冒険者ギルドには顔を出しておらんのじゃったな。今朝一番で発表された情報じゃぞ」
「今日はダンジョンからでたらもう暗くなってたからね。いろいろ売るために回収はしてきたんだけど」
「そうか。今からでも行ってくるかの? わしは興味がなかったからあまり詳しく聞いとらんのじゃ。大雑把にしか伝えられん」
「いや、晩御飯の準備をしてくれたんだろ? なら食べながら聞かせてくれよ」
「本当はお風呂に入りたいけど、お腹もすいてるしね。ちょっとくすぐったいかもしれないけど我慢してね。クリーン」
マナがクリーンで俺たちの汚れや臭いを落とす。応急処置的な感じだけどな。
「そういうことなら晩御飯じゃな。腕によりをかけて作ったからの。たんと召し上がれ」
「「「いただきます」」」
それから、みんなでユウカの作ったご飯を頂いきながら、ユウカの話を聞いた。
その内容は、簡単に言うと、これまで出てこなかった新種のモンスターが現れたとのことだった。12層から24層と、比較的浅めの階層で目撃されたモンスターだが、これまでは出てこなかったモンスターとのことでそいつの素材がかなり高額で買い取ったらしい。
ギルドとしても、調べるには数があったほうがいいということで、そのモンスターの素材は若干色を付けた金額で買い取ると発表したことで、金を稼ぐためにかなりの人数が『生の草原』に流れたそうだ。ユウカもどんなモンスターかは聞いていないそうだが、強さ的にはDランクくらいのモンスターで、ウルフ系の変異種ではないかと言われているとのこと。
変異種ということで少しだけ興味がわいたが、その話の通りだとすると、今頃『生の草原』は人であふれかえっているだろう。『善の洞穴』と違って見晴らしもいいし、余計に人が多く感じそうだ。
明日は必要なものの買い出しをして、明後日から攻略するまで泊まり込みでダンジョンに挑むとユウカに伝えて、女性陣は風呂に行った。
次の日、みんなで朝ご飯を食べた後、ダンジョンに向かったユウカを見送って、俺たちは町に向かった。
門のところでは、混んではいたものの、この間の様なトラブルはなく、スムーズに中に入ることができた。それでも、町の中は混んでいることに変わりなく、目の前の馬車も事故を恐れてゆっくりと進んでいた。
よく周囲の声を聞いていると、その中にスリにあった男の怒号が混じっていたり、肩がぶつかったぶつかってないという喧嘩が聞こえてきたりと若干危ない感じもするが、それもすぐに喧騒に消えていってしまった。そうそう何かあるとも思えないが、一応スリ対策としてキャラビーから魔法袋を預かってアイテムボックスにしまっておいた。
俺たちは、まず最初に露店を見て回ることにした。先日、町で昼ご飯を食べた時に見て回った露店の中の1つにお目当てのものがあったのだ。
ダンジョン内で数日過ごす予定となると必要なものもかなり増える。しかし、俺たちにはハウステントもあるし、食料は俺のアイテムボックスに大量にあり、包帯や薬なんかも、必要最低限はマナが持ってるし、回復魔法を使えば問題ない。そういう事情から、今必要なのは食器だった。その場で洗えばそれほど必要ないかとも思ったが、よく考えてみれば、持っていたものはすべて屋敷で使っているし、これを機に買っておこうというわけだ。どうせ、第2段階のダンジョンに挑むことになったらダンジョン内で何泊もすることになるだろうしちょうどよかったのかもしれないな。
目的の露店はすぐに見つかり、店主がやたらと壺を勧めてきたが、皿と箸とコップだけを買って他の露店に向かった。金額が1つにつき銅貨10枚という金額に比べて結構よさそうな品だったから売れてしまったのか、この間よりも残っている数が少なく、店主と交渉して、今ある分は全部買ったものの、予定していた数を買えなかったのだ。
結局、一通り露店を見て回ったが、あまりいいとは言えないようなものしかなかったので、多少予定よりも高くつくが、常設の店で買うことになった。品揃えはよかったから気にいったものを選べてマナたちも満足そうだったしいいかな。
その後、多少の食料などを買い足し、館に戻った。
そして次の日、俺たちは『善の洞穴』に向かった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
遅くなってすいません。
以前感想で錬金術云々書いたのですが、錬金術について本編で触れてませんでしたね。
予定ではもっと前、具体的にはグリムの町に来てすぐに触れているはずでした。すいませんでした。
ではまた次回




