善の洞穴です2
「いやぁああああ! フレイムシャワー!」
「うぼぁぁああ」
マナが力任せに放った炎に包まれたモンスターたちが、炎に耐え切れずに崩れ落ちる。それでもお構いなしとばかりに追加される炎によって、塵も残らず燃え尽きていく様を見るとなんだか哀れに思えてくる。
「マナ、終わったから! 火を止めて!」
殲滅しきった後も、悲鳴を上げながら魔法を止めないマナにヒツギが声をかけた。その声が聞こえたのか、若干声を震わせながらも魔法を止めてヒツギを見るマナ。目の端に涙が浮かんでおり、不謹慎ながらかわいいと思ってしまった。
「ほ、ほんと? ヒツギ、もういない?」
「ほんとほんと。メイ、抱きしめてあげて」
「冗談、とは言えないな。ほーらマナ、もう大丈夫だぞ。落ち着け」
杖を必死に握って震えているマナのもとに行き、前からそっと抱きしめ、杖を握る手をほぐすようにはがしながら、空いた手で背中をポンポンと叩く。
マナがこうなってしまったのは、今いるこの22層の大広間の罠で遭遇したゾンビの群れが原因だった。
朝から『善の洞穴』に挑んでいた俺たちは、昨日決めたとおりに、かなりハイペースでダンジョンを進んでいた。極力最短ルートで進み、戦闘も魔法を主体とした速攻殲滅。売れる部分も取らずに破棄という、タイムアタックでもしてるのかというありさまだ。
そんな中で、20層の安息所で昼ご飯を食べ、少しやすんでから再開したのだが、22層で進む道の都合でどうしても避けられない罠があった。このダンジョンではありふれた罠である、大広間のモンスター召喚トラップ。別に問題ないだろうということで、それまで同様魔法主体でいこうとしたのだが、召喚されたゾンビの1体がたまたま近くに召喚されて、スケルトンと同じようにヒツギが叩き潰したところ、死体の破片、しかも目の部分がマナの頬に。それをぬぐったマナの手についた眼球と目が合って……。そこからはさっきの通りだ。マナのトラウマを呼び覚まし、錯乱状態になってしまったらしい。
30秒ほどで完全に震えも止まり、こっそりと指を絡めだしたのを感じてマナを解放する。舌打ちはスルーの方向だ。ゾンビの群れは完全に燃え尽きてしまったので回収する物もないが、先ほどの戦闘で魔力を多めに使ってしまったマナの魔力が回復するまでしばし休むことにした。
20分ほどの休憩を終えてダンジョン攻略を再開したが、休憩の間に2つのパーティが俺たちの前を通り過ぎていった。ここが22層だと考えると、やはりダンジョンが混んでいる感じがするな。
思わぬ休憩があったものの、それまでがハイペースだったおかげで、夕方には25層の転移陣を有効化できた。25層のボス戦は明日にすると決めたので、今日進んだのは10層分。以前はもっと下の階層で3、4日くらいかけて5層進んでいたことを考えると信じられないペースだ。
それだけのペースで進んでいたのだが、戦闘回数は普段の半分にも満たなかった。あのあとも、罠と遭遇戦を合わせて7回。スケルトン系のみの群れが5回、ゾンビ系のみが1回、混合が1回だった。ゾンビがいた時は、マナが速攻で魔法で燃やし尽くしていたが、スケルトン系はヒツギが無双していた。俺もハンマーと棍棒に早くなれるためにも、交互に使っていたが、それぞれ1~2回くらいしか使えなかった。
22層で俺たちを追い抜いて行った2つのパーティとはあれ以降会うことはなかったが、22層から25層までに見かけたパーティは8つ。どのパーティもそれほど疲労が見えなかったことを思うと、俺たちが通らなかったルートでも他のパーティがいて戦闘をしていないのだろう。25層のボス戦も混んでいるかもしれないな。
そう考えながら、俺たちはダンジョンの外に出た。
館に戻ると、女性陣3人は速攻で風呂に向かった。俺は別に気にならなかったが、ゾンビの匂いがうつったとでも感じていたのだろう。俺自身は生活魔法の『クリーン』をかけて、マナたちが出てくるのを待つことにした。
リビングで棍棒やハンマーの手入れをしていたところ、ユウカが戻ってきた。
「おう、お帰り。今日は早かったんだな」
「ただいまなのじゃ。昨日のように知り合いには会わんかったからの。今日は依頼を受けとったわけでもないから、ドロップ品目当てにボス戦を繰り返しとったのじゃ」
「ボス戦繰り返すとか無茶やってんな」
「25層のボスじゃからお主も余裕じゃろうて。本当はお目当ての物のためにも50層を繰り返したいのじゃがな。さすがのわしでも1人では50層のボス戦は日に1度が限界じゃ。どうじゃ? 今度の休みにでもわしとやりに行かんか?」
「あの3人を説得してくれ。というか、25層は混んでないのか? 『善の洞穴』はパーティが多すぎてほとんど戦闘がなかったんだが」
「なんじゃそんなことになっておるのか? わしは今日は『明の森』でやっとったが、普段より多少多いくらいじゃったぞ。倒したら戻ってというのを繰り返しておったし、休憩するときもボス戦の列が見える場所で休んどったから、見逃したパーティはないはずじゃ」
「ボスだけ少ないってこともあり得るのか?」
「まあ、ボスに挑むにはある程度実力がなければならんからの。それに、ボスは基本的に1度勝ったら先に進む。それまでの道中と違ってもどったり、休んで別のルートをなどということはない。そういう点で少なかった可能性は否定できんの。それに、最近になってやってきたようなパーティは全体で見て中の上がいいところじゃろう。上の方の連中でここに来るやつらはとっくの昔にギルドから話を聞いて来とるはずじゃ。そういうやつらは25層のボスで足止めを食らいやすい。25層を過ぎれば数も減るじゃろう」
「なるほど。なら明日は今日よりは戦闘回数も増えそうだな」
「あくまでわしの予想では、じゃがな。というか、戦闘回数が増えて喜ぶなどお主も酔狂なやつじゃのう」
「新しく作ってもらった武器に早くなれたいんだよ。剣はステュラがあるけど、打撃系の武器はまだどれも使いこなしているとは言い難いから」
「小槌、大槌、棍棒、ハンマーとまったく違うものを使い分けておる今のままじゃ使いこなすのは無理じゃろうて。1つの武器を極めるのにいったいどれくらいの年月がかかると思っておるのじゃ」
「極めるとまではいかなくていいって。基本的にはステュラがメインになるし、他のやつは違和感なく使えるくらいで十分だ。ステュラと違って手入れも大変だしな」
「ガンダのところで習っておるのじゃろう? ならばそれを実践しておれば間違いないのじゃ」
「ほんと助かってるよ。キャラビーもかわいがってくれてるしな」
「あの夫婦は子供ができんかったからの。実の娘を育てているような感じなのじゃろうな」
「俺に何かあった時はガンダさんに引き取ってもらうかな」
「その時はわしが引き取るから安心せい。ま、わしがその時に生きておれば、じゃがな」
「そう簡単にはくたばらないから大丈夫だって。俺はかなりしぶといから」
「そうじゃろうな。さて、わしも風呂に行ってくるとするかの。背中でも流してやろうか?」
「言ってろ」
「かっかっか。それじゃあまたあとで、じゃ」
そう言ってユウカは風呂に歩いて行った。武器の手入れに意識を戻し、俺が風呂に入るのがさらに遅くなったことに気がついたのは、マナたちが風呂から出た後だった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
かなり遅くなってすいませんでした。
300話記念の人物紹介にやたら時間がかかってしまいました…
一昨日(4月24日23時ごろ)に活動報告の方で人物紹介を載せておきました。なんと10000文字以上!約3話にも匹敵する文字数です。だから3話分遅れても問題は……ありますよね、ハイ。
人物紹介はかなりネタバレを含むもので、300話現在のものになっております。暇で、興味のある方がいましたら何となく読み流してみてください。読まなくても本編には何の問題もないです。
ではまた次回




