グリムの町へ帰還です
昨日サンに聞いていた通り、10時の馬車には空きがあるらしく、アハトさんがあらかじめ連絡を入れておいてくれたからいきなりでも問題なく席を確保できた。王都発、ソルミア、グリム経由のキーン行きの馬車で、王都で女性が1人乗っているそうだが、貴族ではなく冒険者の方とのことで、トラブルも起こらないだろう。男嫌いで俺は無理とかだったらなんとか走って『テレポート』で戻れる距離まで走るかな。ここからだとさすがに距離がありすぎて魔力がたりないだろうし。
乗り合い馬車の値段は、グリムの町まで四人分で銀貨8枚。冒険者ギルドが払ってくれたそうだ。ただし、相場よりは半額程度まで安くなっているそうで、その代わり道中の襲撃への対処を頼まれることになった。
俺たちに護衛を頼む一方で、御者も元冒険者で、全盛期はB-ランクの魔物を狩ったほどらしい。今はその時ほどの動きはできないが、王都とキーンの合間に出てくるモンスターなら問題ないそうだ。数が多かったり、盗賊がいたときに俺たちに頼むだろうと言われた。
そのまま停車場で待っていると、俺たちが乗る馬車が停車場にやってきた。そして、中から女性が降りてきた。
「なんじゃ、お主らもちょうど帰る所なんじゃな。一緒に帰るとわかっておればシーラとアレフを連れてきたのじゃがのう」
「なんでユウカがここに? 用事はもうとっくに終わってると思ってたんだが」
馬車から降りてきた女性はユウカだった。どんな偶然だよ。
「わしはモモと久しぶりの王都を満喫しておったからの。あやつはいろんな店を知っておるのじゃ。充実しておったよ。アレフの料理様々じゃ」
「それはよかったな。こっちもなんとかって感じだよ」
「そうかそうか。まぁつもる話は馬車の中でもできる。早く乗り込まんと遅れてしまうのじゃ」
そう言ったユウカの視線の先には、無言の笑みを浮かべたままこちらを見続ける停車場の係員と、馬車の中からこちらを眺めるマナたちの姿だった。
俺とユウカも係員に一言謝って馬車に乗り込んだ。
「メイ、お話もいいけど、周りはよく確認してよね」
「何も言い返せねえな。今度から気を付けるよ」
「よく言えました。じゃあご褒美に私たちとの眠れない夜を」
「いりません」
「裸のお付き合い」
「しません」
「ご主人様に踏んで」
「あげません」
「かっかっか」
「ユウカも同罪だろうが」
「それでは出発します。道中揺れますのでお気をつけください。近頃、馬車が襲われることが増えているそうで、常に気を張り続けろとは言いませんが、念のため用意だけはお忘れなくお願いします」
御者が小窓を開いてそう言ったあと、馬車はゆっくりと走り始めた。
「そういえば、戻ったらお主らはどうするつもりなのじゃ?」
馬車が町から出て数分がたち、のんびりとしていた俺たちにユウカが不意に尋ねた。
「『貴の山』の攻略も終わった今、次はいよいよ第二段階かの?」
「ああダンジョンか。んー、とりあえずは帰ってまた会議だよな。第1段階をしっかりと攻略しきってから次に行くのか、それとも第2段階に挑むのか」
「どちらにせよ情報を集めないといけないしね。第1段階のダンジョンだけならこれまでにある程度集めているけど、『善の洞穴』も『明の森』も攻略しても何も出ないしね。『死の草原』と『賤の山』の情報を集めて、そこから考えるつもり」
「いずれは全部攻略したいけどね。私としては一番活躍できそうな『善の洞穴』に行きたいけど、アンデッドが多いって聞いてるし、その対策を考えるとちょっと足が引けるよね」
「いい訓練にはなりそうだけどな。俺も新しい武器にもっと慣れたいし」
「そうなのじゃな。そのー、第2段階に挑むとなったら、わしからお主らにお願いがあるのじゃ」
「お願い? できる範囲ならいいけど……」
「メイ、今なんでもって」
「言ってねえ」
「残念」
「マナは積極的じゃな。今は頭の片隅に置いておくだけで構わん。後々話し合って決めてほしいのじゃが、わしをお主らのパーティに入れてほしいのじゃ」
「『マツノキ』に? なんでまた?」
「わしは今までずっと冒険者として1人で活動しておったのじゃ。時折臨時パーティを組むことくらいはあったが、第2段階のダンジョンは、いくらSランクと言えども、おそらく1人じゃと限界が来てしまうと思うのじゃ。わしもまだ第2段階には行っておらんし、ギルドからは何も公表されておらんが、腕に覚えのある連中が何人も大怪我をしておる。お主らは知らんと思うが、『怒涛のティラノス』も『賤の山』で負けて帰ってきておるそうじゃ」
「『怒涛のティラノス』というと、たしか『貴の山』を最初に攻略したパーティだよな?」
たしかアハトさんの話にも出ていたパーティだったはずだ。7層か8層くらいでドン・グロウモンキーの番と遭遇して敗走したとか言ってたっけ。実際、ボスモンスターが複数出てきたらかなり厳しいわな。
「そうじゃ。そのパーティですら壊滅するほどの難易度をほこるダンジョン。挑まねばよいのじゃろうが、あの朱雀と名乗っておったモンスター。あのモンスターに会えば、何かがわかる気がするのじゃ。あまりに漠然としておって、その何かというのがいったいどんなものなのかはわからんのじゃがな」
「それで、いずれは全て攻略するつもりの俺たちのパーティに入りたいってことか」
「それもあるのじゃが、それがすべてというわけではない。本当のところはただ怖いだけじゃな」
「怖い?」
「今でもある程度のモンスター相手ならば負けない自信はある。しかし、それもちょっとそれを超えてしまったらそこまでじゃ。その時、誰にも知られず、一人で朽ちてしまうのがわしは怖くて仕方がない」
「ユウカ……」
「メイには話したことがあるのじゃが、わしの祖母はすでに亡くなっておっての。祖母はある日気が付いたら亡くなっておったのじゃ」
「気が付いたらってどういうこと?」
「わからん。それこそ、死神に魂を抜かれたのではないかと思うくらいじゃ。いつものように散歩に出かけたら、そのまま帰ってこなかった。その数日後に森で死んでいる姿が発見されたのじゃ。何かと争った形跡も、負傷した様子もない。一見すると木陰で休んでおる様にも見えたほどでの」
「病気とかはなかったの?」
「祖母とはいってもそこまで歳はいっておらんし、病気はありえんの。それに、祖母は自分のことならなんでもお見通しだったから、祖母に限ってそれはないのじゃ」
「だったら毒かな? 遅効性の毒で効果が出るまでに時間がかかったとか」
「毒もないのう。祖母はマッドスコーピオンの毒すら無効化するレベルの毒耐性持ちじゃ。それに、祖母が亡くなった時に死因はあらかた考えつくした。呪い、魔法、毒、今更新しい要因が見つかるなど思っておらんよ。わしが怖いと感じたのは死を誰にも気づかれなかったところじゃ。あのまま放置されておったらいずれモンスターに喰われて誰ともわからなくなっておったじゃろう」
多い少ないはあるとしても、この世界の森でモンスターの出ない森というのは基本的に存在しない。館の周辺の森みたいなきちんとした町の近くにもモンスターはいるくらいだからな。
「わしは、自分がそうなってしまったことを考えた時、しばらく動けんかった。わしの場合はダンジョンじゃから、なおさら気づいてもらえん。死んだときはダンジョンの餌となるだけじゃ」
「死体はダンジョンが吸収してしまいますからね。私も昔仲間が死んだっていうパーティを見たよ」
「そうか。わしも何度も見てきた。回数を重ねるほど、それが自分とは無関係なことではないということを思い知らされる。脅すつもりではないが、お主たちも同じじゃぞ?」
「わかってるよ。死にかけたことなら何度もあるしな」
「それは、大変じゃったじゃろう。まぁ、パーティの件についてはまた第2段階に挑む時でよいから、考えておいてほしいのじゃ」
「わかったよ。考えておく」
「よい返事を期待するのじゃ」
そうして、若干悪い空気のまま、馬車は襲撃などもなく、グリムの町に向かって走っていた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
遅くなってすいません。
思っていたよりもサラダバーへの反応が多くてなんかうれしい(笑)
ではまた次回