石碑の話です6
最初の部屋に戻る途中で見かけた3人分の遺体を、アイテムボックスから取り出した大きめの布で包んでアイテムボックスにしまった。壁が壊されてしまった以上、周囲の森にいるであろうモンスターたちは自由にここに入ってこれるようになってしまった。先ほどのキメラを倒した時の騒音で呼び寄せてしまった可能性があるし、ここに置いておいたままでは、遠くないうちにモンスターの餌になってしまうだろう。
もしかしたら、その前に他の職員が回収しに来るかもしれないが、今はアハトさんを逃がすのに精一杯で手を割けないだろうから、言い方はあれだが、暇な俺が回収できればそれがいいだろう。死体はあまり見たいものではないが、我慢だ。
石碑を壊したセンの斬撃の跡をたどって、まっすぐに最初の部屋に戻る途中、3番目の部屋に入った途端、右側から剣が突き出された。
センもスロースも帰ったから完全に油断していたが、ユウカの攻撃に慣れていたためになんとか剣の腹を殴りつけて、相手の腹に回し蹴りを叩き込めた。相手の勢いがよかったこともあり、かかとが相手の腹にめり込む感覚がして、吹き飛んでいく。
「『安らかなる大地の精霊よ、彼の者の動きを封じ給え』ウッドルート」
「『炎がその身を焼き尽くさん』フレア」
その男が吹き飛んでいくのに合わせるように、地面から伸びてきた枝が、蹴りを入れたのとは反対の足を縛り付け、火の玉が飛んでくる。すぐに『アクア』で火の玉を打ち消しつつ、つま先から『ニードル』を撃って、足を縛っている枝を切る。『ニードル』はそのままフレアを撃ってきた男たちに向かって飛んでいくが、左右に分かれてかわされてしまった。
「ここから先には行かせないぞ! 『荒れ狂う風の精霊よ、彼の者に暴風の裁きを与え給え』ブリーズカッター」
先ほどウッドルートを使った男が今度は風の精霊魔法を使ってきた。今度は足も止められていないから軽々かわした。しかし、言葉から考えると、もしかしなくてもセンの仲間じゃなくて、この建物の管理をしていた奴隷だよな。
「ちょっと待て、俺は敵じゃない。アハトさんと一緒に石碑を見に来た冒険者だ」
「信じられるか! 王族には指一本触れさせない!」
最初に蹴り飛ばした男が起き上がってきて切りかかってくる。俺は『ダークソード』で剣を生み出して受け止めて、反対の手でその手をつかんで他の2人に向けて投げつける。ちらっと見えた男の目は軽く血走っていたし、周りが見えていないかもしれない。わずかながら狂気すら感じるくらいだからな。しかし、俺を知っているロクはすでに亡くなっているし、信じられなくても仕方ないのかもしれない。
「待てって! アハトさんと一緒に俺の仲間が3人来てるはずだ。確認してくれないか? 魔族に殺された3人の遺体も回収してきた。だから一回落ち着いてくれ」
「その言葉を信じろというのか?」
「俺を知ってるのはアハトさんとロクだけだからお前らは信じられないかもしれないが、信じてほしい」
俺はじっと相手を見つめながらアイテムボックスから3人の遺体を取り出して床にそっと置いた。俺が近くにいては確認しづらいだろうし、視線は今も警戒心を解かない3人から外さないようにしながら遺体から距離をとる。
5mも離れると、剣を持った男がじりじりとすり足で遺体の元までやってきて、一番左の遺体の布を外した。
「イチ兄……」
男の落胆した声が漏れるのと同時に、男の目から狂気が消える。続いて他の2人の遺体にまかれた布も外すと、残りの2人を呼んで3人を確認させた。遺体を見た全員の気分が落ち込むのがわかる。
最初に確認した男が剣を落ち込む男たちの1人に渡してこちらにやってくる。
「イチ兄たちの遺体の回収感謝します。間違いなくイチ兄とツーとロクです。あなたのお名前を聞いてもよろしいですか?」
「『マツノキ』のメイです。他の3人は今アハトさんと一緒にいるはずです」
「『マツノキ』のリーダーの方でしたか。失礼しました。私はここの管理を任された者の1人で、ヨンでございます。あちらの2人はサンとゴー。アハト様から『マツノキ』の話は聞いております。すでにアハト様はどこかへ転移で戻っております。その関係でナナとハチが魔方陣を破棄する術式の準備を進めておりますのでお急ぎください。サン、お前が一緒に行け」
「わかりました。メイ様、エンチャントをかけさせていただきます。『穏やかなる風の精霊よ、彼の者の動きをささえ、風の力を与え給え』ウィンドエンチャント」
『スキル:精霊魔法風属性Lv4を習得しました』
サンの魔法が発動し、以前マナにエンチャントをかけてもらった時と同じように、効果を保ったままスキルを習得した。ウィンドエンチャントというスキルではなかったみたいだが、これはどうも精霊魔法という魔法の特殊性が影響しているというのがなんとなく感じ取れた。
精霊魔法は、個人のその属性への親和性にもよるが、同じ属性の精霊魔法を使うほど、あるいは、1つの魔法に対して多くの魔力を注ぐほど、精霊が力を貸してくれるという仕組みらしい。先ほどのブリーズカッター程度ならば、すぐにでも発動できるが、ウィンドエンチャントとなると、風属性の精霊魔法をレベル4相当まで使うことで発動可能なようだ。
ウィンドエンチャントという名前はあくまでもサンがつけた名前で、実際にはこの魔法に名前はない。風属性の精霊が対象の動きをサポートしているだけなのだ。呪いを喰らったことで闇属性の精霊との親和性が最大になったことと、レベルこそ4と低いが、精霊使いという職業があるからこそこういった事情が理解できているが、何も前知識がない状態なら疑問が顔に出てたかもしれないな。
「それではこちらになります。……お達者で」
2人の横を通り過ぎる時にサンが一声かけたのを聞かなかったことにして、俺たちは最初の部屋に急いだ。
「サン先輩! 無事だったんですか!?」
「サンさん! すでに魔力はこめてあります。急いで!」
最初の部屋に来ると、最初に来た時には気が付かなかった、扉に刻まれた魔方陣に魔力を注ぎ込むナナとハチが、滝のような汗を流しながら俺とサンをせかした。
「メイ様、飛びますのでご用意を!」
「頼んだ」
サンが、魔力を注ぎ込んで力の抜けた2人の手をつかんで扉にとび込んだ。俺もそれに続いて扉に飛び込む。その勢いのまま現れたのは、来た時に下ってきた長い階段だった。背後にあった扉が閉まるのと同時にその扉がばらばらに砕け、ただの行き止まりに変わってしまった。
「はぁ……はぁ……サン先輩、無事ですか?」
「ええ。無事転移も封じることができました。後のことはヨンとゴーに任せましょう。私たちはアハト様に報告と今後どうするか指示を受けに行きましょう」
「イチ兄様たちは後から来るのですか?」
「いえ。イチ兄、ツー、ロク、ヨン、ゴーは己の使命を果たしました。私たちは彼らのおかげでここにいるのです」
「そう……ですか……」
「そんな……」
ナナとハチが言葉を失う。もちろんサンも悲しいだろうが、2人の前でそういう感情を出さないように必死になっているだけだろう。
「メイ様、先に二人を上に連れてまいります。案内をできないのが心苦しくありますが、上でお待ちしております」
サンが俺に礼をして、ナナとハチの背中を押しながら長い階段を上がっていく。
俺は3人の足音が聞こえなくなるまで待って、点々と血の跡が続いていくその階段を、ゆっくりと上がって行った。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
遅れてすいません。まだまだ忙しい日々が続いております。
ですので、この変則的なペースは続くものと思われます。
30分くらいなら昨日と言い張っていいよね?
ではまた次回