石碑の話です4
本編に戻ります。
メイ視点です。
「なんでお前がここにいるんだ。バラーガ・グーテン!」
アハトさんの叫びに答えることなく、行方不明のはずのその男はにやりと笑みを浮かべた。
「なにやら勘違いしているようだな。たしかにこの体はバラーガ・グーテンの物で間違いないが、私はお前たちの言うバラーガ・グーテンではない」
「どういう意味だ?」
「ふむ……なんといえばいいか……。私は間違いなくセン・グーテンだという自覚はあるのだが、この体は私の物ではなく、バラーガ・グーテンという男の物だとわかっている自分もいる。さて、今の私はどっちなのだろうか?」
心の底からわからないといった表情で俺たちに問いかけてくるセン・グーテン。いや、俺たちが知るかよ。
「私としてはセン・グーテンという意識がある以上、セン・グーテンだと名乗らせてもらうが、この件に関しては持ち帰って仲間と話し合うことにしよう」
「それはできない相談だな。こちらとしてはあなた? の石碑をこうもあっさりと壊されてしまっては管理をしている側として面目がたたん」
「それは悪いことをしたな。この体の持ち主の兄弟の者か?」
「今の王家の血筋だ」
「そうか。王家の血筋か……なら殺しても構わないよな」
「アハト様!」
アハトさんの言葉を聞いて、急に剣を振りかざしたセンの攻撃を、ロクがアハトさんを突き飛ばして攻撃をかわさせた。斬撃が2人の後ろの扉を切り裂き、その奥から数度石が割れるような音が響く。軽く振るった感じだったのだが、まださらに奥の方で音がかすかに聞こえてくるのを考えると最初の部屋の石碑までいったのかもしれない。
「ふむ。気持ちいい一撃だ。昔の体と遜色ない動きができる。体の相性というのはやはり大事なのだな」
「アハト様、すぐに撤退して転移を。この事態ですから、すでにサン、ヨン、ゴーが撤退の準備を整えているはずです」
「やむを得んか……。ロク、死んでも時間を稼げ」
「かしこまりました」
ロクが半身で右腕を後ろに突き出す独特な構えをとりながらセンをにらみつける。アハトさんも視線を外さないようにしながらゆっくりと後ろに下がり始めていた。
「ヒツギ、マナ、アハトさんについてくれるか?」
俺もセンから視線は外さないようにしながら小声で2人に問いかけた。2人は何も言わずに一度うなずいて警戒しながら扉に向かった。俺はキャラビーにも後ろにも後ろに下がるように告げて、その護衛としてみぃちゃんを呼びだす。
強さという意味合いではコルクやゼルセを出すべきかもしれないが、キャラビーと連携をとれるのはみぃちゃんだけだから、へたに呼び出して巻き込んでしまうのは危ないし、それで標的がキャラビーに向いたらフォローしきれない。アハトさんに意識のいっている今だからこそ守りやすいというのもあるしな。
「おいお前、アハトと呼ばれていたが、もしかしてアハト・マ・カシュマであってるか?」
「何が言いたい?」
「たしかラストが手を出すなと言っていた男がそんな名前だった気がする。あまり話を聞いていなかったから細かく覚えていないが、そんな名前だった気がする。しかし、そうなると参ったな……。ここでこの男を殺してしまうとラストから怒られてしまう。せっかくまた動けるようになったというのにまた動けなくなるのは勘弁だな」
センがわざとなのか無意識なのかかなりの大声で独り言をつぶやいているうちにキャラビーとマナたちの移動が完了した。キャラビーは壁の近くに生えている木の陰でみぃちゃんに乗って隠れ、マナたちはアハトさんとヒツギでマナを挟むように位置したようだ。
「待てよ? たしか、スロースが居場所が確定できてない地球人は2組とか言っていた気がする。1組は他国で見失ったと言っていたし、ここまで石碑を読めていることを考えるともしや……いや、ないのか? だが、その可能性は十分あるな。ここはひとつ確かめておくのが賢明ではなかろうか。よし、そうだな。おいお前! もしかして刈谷鳴という名前ではないか?」
急に俺に話の流れがやってきた。俺は、そのことに驚いて少し声が裏返りながら応える。
「何の用だ?」
「おお、あっていたか。ならばお前たちのパーティ、たしか『タツオキ』だったかな? その3人も殺すわけにはいかないな。そうなると……手を出せない者ばかりだな。石碑を壊しに来るタイミングが悪かった。しかし、あまり放置もできない案件だから仕方ないのか。現にこうして日本人が石碑を読んでいたわけだし。あの時はこんなことになるなんて思ってなかったからなー」
独り言が止まらないセンの話を鵜呑みにするわけにはいかないだろうが、一応アハトさんと俺たちは大丈夫なようだ。しかし、なんで俺たちとアハトさんなんだろう? 俺たちに手を出さないというのはおそらく憤怒が俺たちと戦ったことが理由だろう。俺の暴食が原因か、それともヒツギがいることが原因かはわからないけど。
俺たちを殺せないというのも、俺たちが何もしなかったら、の場合だろうし、今の立ち位置的になんとか捕えて情報を聞き出すというのも少し厳しい。『小規模ワープ』を使えばなんとか接近はできるだろうけど、今のままだと捕えるのではなく追い返すので精いっぱいになるはずだ。
「俺たちを殺せないというならさっさと帰ったらどうだ? お前の言う用はすでに済んでいるんだろう?」
「いや、一応石碑がちゃんと壊れたか確認しておきたいからまだ用は済んでないと言えば済んでないな。さっき殺した2人の反撃が激しかったからきちんと壊しきれていないし。それに、そこの奴隷2人に関しては何も言われていないから、きっちり殺しておくさ」
センはそう言って2度剣を振るった。
斬撃の片方が飛んでいった先のロクは反応しきれずに肩口からバッサリと切り裂かれ、もう片方が飛んでいった先であるキャラビーは、みぃちゃんのしっぽの先の毛が数本はらりと落ちるだけで済んだ。それを見たセンが追加で数度剣を振るった。俺はすぐに間に入って、飛んできた斬撃を防ぐ。さっきの攻撃に比べればかなり軽いな。
「私も事故で死んだのはどうしようもないのだぞ? だからおとなしくしてほしいのだが……」
「キャラビーは大事な仲間だから殺させはしないさ」
「なら直接狙うか」
センが地面を蹴って俺に向かって突っ込んできた。すぐに迎撃するため『ダークネスランス』を放った。まっすぐに向かってくるセンだが、槍が当たる寸前に上に跳び、そのまま俺を飛び越してキャラビーに向かって行く。
「『獣の一撃』」
「ぐふぅ」
『小規模ワープ』でセンの隣に跳び、出の早い『獣の一撃』をその脇腹に叩き込んだ。『空蹴り』で勢いをつけて吹き飛ばし、扉の向こうまで吹き飛ばした。
「俺はやつを追い返します。今のうちに逃げてください! キャラビー、お前もマナたちと行け」
「……わかりました」
キャラビーもごちゃごちゃとごねることなくみぃちゃんにしがみついて入り口の方に急いだ。少し前から少しずつ撤退を始めていたアハトさんはすでに扉のところにたどりつきそうだ。
俺は念のために『テレポート』で地点を登録して、センを殴り飛ばした扉の向こうへ急いだ。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
2話間に挟みましたが、本編に戻りました。メイ視点です。
今週来週とかなり忙しいのでいつもより遅れるかもしれません。なんとか時間を見つけて書きますが、厳しいかな…
ではまた次回