絡まれました
その後、門のところでの確認は驚くほどあっさり終わった。さっきの衛兵に見せるとすぐにOKと返事をもらえ、その場で解放された。もう少し何かあると思ったんだけどな……。
門での用事を済ました俺たちは、レイユをとりあえず『ミサの宿屋』に送った後、冒険者ギルドに戻ってきた。また後でと言われたけど俺らがあそこの宿に泊まるといった覚えはないんだが……。
再び戻るとそこには先ほどまでとは違った騒がしさがあった。その中心は3人の男たち。たぶんパーティなのだろうか、全員同じ模様が鎧に入っている。そういや防具揃えないといかんな。いらないと思うけど念のために。
「あんなごみども俺たちにかかれば瞬殺だったぜ!」
「そうそう。ちょっと切ってやったらあっさりと死にやがった」
「げははは。そりゃパーティランクCの俺たちにかかればランクD-のオークの1体なんかそこらにいるスライムと変わりねえよ」
なんか騒いでると思ったらオークを1体倒してきたらしい。パーティランクCってことはそれなりにできるやつらなんだろう。
騒いでるそいつらは無視して俺たちはさっきの受付のところに行った。依頼の受け方聞くの忘れてたからな。
「なあ、依頼って受けるときどうすればいいんだ? さっき聞き忘れてな」
「メイ様ですね。依頼を受ける際には、あちらに見える掲示板より依頼書をもってきてください。こちらの受付で依頼の受注ができます」
「はいよ。じゃあ見に行ってく――」
「おいおい! お前みたいなガキが冒険者か? 悪いことは言わねえからやめときな! 冒険者ってのは俺たちみたいな強者がやるもんなんだよ!」
なんかからまれた。面倒だな……。
「はぁ。なんか用か? 俺たち依頼見に行きたいんだが」
「お前みたいな雑魚が冒険者なんかやるんじゃねえよ。お前らみたいなやつらが依頼失敗するせいで俺たちみたいな強者の評判まで悪くなっちまうんだよ」
「そうそう。お前らは帰ってママのミルクでも吸ってな」
「げははは。よくみりゃきれぇな姉ちゃん連れてんじゃねえか。おいそこの、俺たちがかわいがってやるよ。ついでにそこの珍しい魔物ももらってやるよ」
「ありがたく思えよ!」
「「がはははは」」
評判ってこういうバカなやつらのせいで下がってるんだろ?
「ねえメイ、こんなのどうでもいいからさっさと依頼見にいこ。いいやつはとられちゃうかもしれないし」
ヒツギが完全に無視して俺に話しかける。やっぱ無視が一番かな……。
「だな。討伐ならすぐ終わるだろうしさっさとやって飯だ」
「おい! 無視してんじゃねえよ!」
俺たちの前に立ちはだかるバカ3人。周りの人はわたわたしてる。「謝ったほうがいいって」とか言ってくる人もいるが謝る理由もなんもないしな。
「俺たちをギルド『赤の団』所属、パーティランクCの『クロウ』と知ってのことか!? あぁあ!?」
「いや知らねえよ。赤の団だかクロウだか苦労だか知らんがそこ邪魔。どいてくんない?」
「お前、完全にケンカ売ってんだろ?」
「表へ出な!」
「なんでそんな面倒なことしないといけないんだよ。さっさと依頼やって飯食ってヒメをモフモフしたいんだよこっちは」
「いいから黙って俺たちの言うことに従えばいいんだよ!」
そういって俺を殴りつけた真ん中の男。名前知らんなそういや。
全然痛くなかったが空気を読んで後ろに飛んでおく。そこらから悲鳴が上がる。別に痛くないのに……。つか弱いな。
「ふん、俺たちにたてつくからこうなるんだよ」
得意げに言う真ん中。まあこれで
「正当防衛は成立っと。いいよ。外に出ろ。3人まとめて相手してやるよ。その代り俺が勝ったらお前らの有り金全部おいていけよ。お前らが勝ったらなんでも言うこと聞いてやっから」
「このガキぃなめてんのか?」
「まあまあ。いいじゃねえか。こんな冒険者になったばかりのガキに勝つだけできれいな姉ちゃんも珍しい魔物も手に入るし雑用まで手に入るんだぜ?」
「そうだって。こういうのにはお仕置きしてやればいいんだよ」
「それもそうだな。いいぜ、外に出な」
バカばっかりでラッキーだ。これで当分の宿代が手に入りそうだ。
そんなことを思いながら外に出る。あっヒメはヒツギに預けといたよもちろん。
中にいたやつらの何人かと外にいた通行人たちは見世物とばかりに俺たちの周りを遠巻きに囲いだした。自然とリングができる。受付の人とか一部の冒険者は「衛兵に連絡を」とか言ってる。まあいらんだろ。
「俺様はクロウのリーダーランクCのガル様だ」
「俺はランクCーのギル」
「ランクD+グル」
「俺はメイだ。冒険者にはさっきなったとこだからランクFだな」
「勝負のルールは簡単。降参するか気絶したら負け。ま、降参を受け入れるかはわからんがな」
「それで俺が勝ったらお前らの有り金全部俺のもの。お前らが勝ったらヒツギとヒメと俺はお前らの言いなりになる。それでいいか?」
「俺たちが負けることなんかあり得ないがな!」
「おい周りのお前らも聞いたよな!?」
ガルいや、ギルだっけな? が声を上げるとそこらから「聞いたぞー」とか「やっちまえー」とか「手加減してやれよー」とか聞こえてくる。手加減なんかするに決まってるだろ。しなかったらさっきのオークより無残なことになっちまう。こんなとこで人殺しなんかごめんだ。
「へ、覚悟はいいかガキ」
「ま、いまさら謝ってももう遅いけどな」
「武器はつかわないでおいてやるよ」
「あー使っていいよ。魔法も別にいいし。それより負けた時の言い訳にでもされたらいやだし」
「っ!! てめぇ後悔すんなよ! ギル、グル、やるぞ!」
「俺もちとお仕置きがいると思ってたところだ」
「『炎がその身を焼き付くさん』」
グルがフレアの呪文を唱え始めたところでバトルが始まった。
ガルが両手剣を構え向かってくる。ギルは短剣を手にして回り込もうとしてる。別にわざとくらってやってもいいけど……。
「こんな人がいる中で他人巻き込むような魔法使うなよ」
グルの下まで『不意打ち』で移動して軽く殴る。スキルもなにも使ってない普通の一撃だ。
「ぐふぅ」
なのにグルは白目をむいて気絶してしまった。あれ? 想像以上に弱い。
「「グル!」」
「てめぇよくもグルを! 『水平切り』!」
ガルが大剣を横に構えて切りかかってきた。でも……遅いな。
剣を殴ってへし折り、右足をけって骨を折る。あと一人。
俺はギルのほうをにらむ。
「ひぃ」と怯え始めたのでダッシュで距離を詰め、頭をつかんで地面に叩きつける。おしまいかな。
俺は足の痛みにのたうち回っているガルに近づく。
「俺の勝ちだな。降参するか?」
「こ、こんなのいかさまだ! こんなことがあっていいはずないんだ!」
「認めろよ。さ、金全部出せって。もう片方も折られたいならいいけど」
まだ折れてない左足を見ると「ひぃ」と怯えだした。ギルそっくりだな。
「おい! 何をやっている!」
衛兵が来たらしく周りにいた人が道を開ける。何人かはちらほらと逃げていく。
衛兵は俺と倒れている3人を見て唖然としていた。
「た、助けてくれ! いきなりこいつが絡んできて、俺たちは悪くねえ!」
ガルが衛兵にすがりつく。嘘ついてんじゃねえよ。
「おい、どういうことだ?」
衛兵はガルでも俺でもなく、周りにいた見物人に声をかける。まあ当事者よりは信頼できるか。
「が、ガルの旦那の言う通りだ! そいつがいきなりクロウの3人に襲い掛かって」
「嘘ついてんじゃねえよ。どう見ても絡んでたのあの3人だっただろうが」
「3対1で決闘し始めたからな」
「しかも片方は武器あり魔法ありだろ? それでも勝っちまったけど」
「ああ。たしかにガルが叫んでたもんな。いい迷惑だ」
周りの人たちの声にガルの顔が青ざめていく。そしてガルの言う通りだと声を上げたやつもだ。
「と、言ってるが?」
「で、でたらめだ! そうだ、こいつが、こいつが俺たちをはめるために」
「俺は今日ここに来たばかりで登録もさっきしたばっかだよ。門のところの衛兵に確認してもらってもいい。それに俺が勝てばそいつらの有り金全部俺のもの。そいつらが勝てば俺と仲間がそいつらのものになるって条件でバトルになったんだ。一番最初に殴ってきたのもそいつだしな」
「そうか……とりあえずこいつらの身柄は我々があずかる。金は……」
衛兵は気絶しているギルとグルの腰についた袋をとる。そして中身を確かめると俺に投げてよこした。
「それでしまいだ。こいつがもってるのはこいつらの治療費として騎士団が回収させてもらう」
「まあいいや。あんまり俺たちに被害が来ないようにしてくれるとありがたい」
「それは状況次第だな。では解散!」
衛兵のその言葉で見物人はばらばらと散っていく。
俺は3人をつれていく衛兵を見送りながらヒメとヒツギのところへと歩いていった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『冒険者 Lv40
格闘家 Lv40
狙撃手 Lv32
盗賊 Lv30
剣士 Lv28
武闘家 Lv23
戦士 Lv23
魔法使いLv28
薬剤師 Lv30
鬼人 Lv5
????の勇者Lv7
狙撃主 Lv1
獣人 Lv1 』
かませパーティ初登場♪
感想まってます
ではまた次回