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内容報告

今回は第三者視点です。

次回からメイ視点に戻ります。


「……と、いうことで、無事? 冒険者たちもキメラも全滅しました」


 壁際に並ぶ松明だけしか光源のない暗い城の玉座の間で、男が魔王とその隣に佇む色欲(ラスト)に、自らの目で見た一部始終を語り終えた。


「報告ありがと。予想通り全滅かー。それも全員無傷だったんだって?」


「はい。しかし、よかったのですか? あんなに大勢こんなことに使ってしまって。90人ってかなりの数ですよ? 向こうでやってることに影響が出るんじゃないですか?」


「そうだねー。いくら弱いのばかりだといっても結構な人数だからね。影響はないとは言えないかな」


「……大丈夫なんですか?」


「まあ今回の目的自体は達成できたからね」


「キメラの性能チェックですか?」


「それもあるけど、一番はSランクっていうのがどれくらいの強さなのかの確認だよ」


「全滅しても確認取れてるんですか?」


「きっちりと君が戻ってきてるじゃないか。全滅ではないよ」


「俺戦えないですよ?」


「わかってるって。戦力という点では数えてないから大丈夫。君のいい点はその潜入能力なんだから。普通に普通で普通の人間。だからこそ、普通にそこにいても何も思われない。職員としてギルドに入り込んでもらったおかげでこうして情報を得られるんだから」


「お褒めにいただき光栄です?」


「ははは。以前、偶然ではあったけどラースがS-ランクの冒険者の実力を測ることができたから、あの集団の中に2人ほどそこそこやれるやつを送り込んでたんだよね。さすがに幹部連中と比べたらかなり劣る程度の実力だけど、そこらの冒険者よりは強かったはず。それでもSランクは全員無傷なんだよね?」


「どの冒険者がそうだったのかはわかりませんが、冒険者相手に苦戦してた様子はありませんでしたね。キメラも、各々で効果がありそうなのとなさそうなのがいましたし、苦戦してたのは一部でしたね」


「具体的には?」


「リエーフ様用のメタルスライムゴーレム型は無残の一言でしたね。本来なら物理も魔法もかなり軽減するはずだったんでしょうが、一撃で潰されてました。あとは剣聖様用のスーパースライム型も一瞬でバラバラに切られてました」


「スーパースライムは本来斬れないはずなんだけどね」


「ですが、魔法使い4人用の各種属性のマジックタートル型はそこそこ有効そうでしたね。と言ってもそんなにもちませんでしたが」


「壁役にして進軍の時間稼ぎするのがいいかな。でもマジックタートルって『タートリア』のレアモンスターだからそんなに数をそろえられないんだよね……。属性もランダムだし」


「そもそも、進軍してくる魔物相手に1属性の魔法しか使われないのはありえないですよ。ピンポイントで有利な属性を割り当てられればいいと思いますが、ギルドならすぐに気づきます」


「そっか。他のキメラはどうだった?」


「カラカリ様用のドール型は幻覚自体は無効化できていたみたいですが、そもそものスペックで負けてました。ロイド様用のデスナイト型、モモ様用のメタルゴーレム型、ジョー様用のシザースパイダー型は一応戦えてはいるかな? って具合で、残りのゴールド様用のシルバーナイト型とユウカ様用のオークスライム型は有効そうでした」


「そうなの? オークスライム型は不安定だからうまくいかないと思ってたんだけど」


「完全に相性の問題だと思います。ゴールド様は純粋に実力が拮抗してましたけど」


「シルバーナイト型はそれほど強くないんだけどな。そうなると、まずは『金の軍団』から崩していくのが得策かな。『金の軍団』の情報を調べてもらえる?」


「あー、そのことなんですが、しばらくギルドにはいけそうにないです」


「どういうこと?」


「ギルド側が、職員の中に今回の会合を魔王様に伝えた内通者がいるんじゃないかって疑ってるんです。今Sランクの情報を調べるのはまずいです」


「疑ってくださいって言ってるようなものだもんね」


「はい。今回のことで、参加してた職員は半分が休暇願をだしてます。俺もあまりの恐怖による心労ってことで休みをもらって、ここに呼んでもらいましたが、帰った時に部屋に誰かが入った跡がありまして。隠蔽してあったんですけど、扉に挟んでた紙片がなくなってたんで間違いないと思います」


「ばれてるってこと?」


「ばれるような物は残してないはずですので大丈夫だとは思いますが、しばらくはおとなしくしてたいです」


「そっか。じゃあまた別の方法を考えないとね。どこかあてはある?」


「一応、こじんまりとはしてますが、田舎に家を持ってるので、そこで療養するという名目でしばらく様子を見ます。連絡も取らないほうがいいと思いますが、何かあれば」


「じゃあこれ持っていきなよ。使い捨てだけど、連絡がとれるから」


「ありがとうございます」


 そうして、男は色欲(ラスト)が男の隣に出現させた渦に入り、帰って行った。


「やっぱ今のギルドマスターはなかなか考えてるみたいだよね。話を聞いてる限りだと、どうも今回の襲撃を読んでたみたいだし」


「そうですか? そのような印象は受けませんでしたが……」


「彼は王都のギルドにすでに4年くらいいるはずだよね?」


「はい。送り込んだのはたしかそれくらいだったかと」


「それなのに、会合が行われた部屋の仕組みを知らなかったみたいなんだよね。直接顔に出したりはしてなかったけど。4年もいて建物の内部を熟知してないなんてあると思う? 昔見たことがあるけど、この城の方がよっぽど複雑で大きいのに」


「つまり、今回の襲撃のために用意したものだと?」


「そういうこと。それに、手際がよすぎるんだよ。襲撃はただの食事会に入ってからだろう? それに、何かあったと連絡が来たわけでも、物音がしたわけでもなく、冒険者の勘ってやつだけですぐに職員を1か所に固め、内から裏切りがあった場合に備えて結界で囲んでもらってる。もしも外からの襲撃じゃなくて内からのものだったらキメラを呼ぶ前に鎮圧されて、目的は果たせなかったと思う」


「そこまでですか。アハト・マ・カシュマ、危険な存在というわけですね」


「かといって今手を打ってもSランクが集まってるわけだし、愚策だよね。これで常に周りに護衛を置かれるような状態になったら余計にやりにくくなる」


「そうですね。念のため王都周辺にいる者に連絡を入れておきます」


「あれ? 今回でこちらにつながるのは全員だしちゃったと思ったけど、誰かいたっけ?」


「私的な用事ででかけると言って出て行った者が1人。しかし、あれはいったい何なんですか?」


「ずっと前にカルロスが魂だけ確保してたんだけど、なかなか適応する肉体がなくてね。実力は確かだし、こちらの敵になりえない人だよ。性格は……まあ我慢してね」


「……わかりました」


 色欲(ラスト)は一礼して玉座の間をあとにした。





「え? 『俺を止められるのは俺だけだ』ですって? ちょっと、待ちなさい! 聞いてます!?」


 その後、そんな声が城に響き渡ったとか……。



どうもコクトーです。


前書でも書きましたが、次回からメイ視点に戻ります。


ではまた次回

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