Sランク会合じゃ4
ユウカ視点です。
あと、若干グロい描写がございます。
ご注意ください。
「あのおじさまが腕によりをかけた料理だなんてうらやましいわぁ。私もユウカのお屋敷にお世話になろうかしら?」
「それはやめてほしいの。さすがのわしもお主を雇うのはちょっとのう」
「男連中が全員使い物にならなくなりそうだしな。モモの魅了を耐えられる使用人とかいるならうちに冒険者としてほしいぜ」
「シーラもアレフもわしにとってなくてはならん存在じゃからな。お主らにはやらんよ」
「あらぁ、残念。……あら?」
その異変は、話し合いが終わり、わしらが何気なく話しているときに唐突に起こったのじゃ。明確に何と言うわけではないが、確かに感じた若干の違和感。他の者も同じように感じておるらしく、皆おしゃべりが止まっておった。
わしはアイテムボックスから妖刀業堕を取り出す。各々が武器、防具を身につけて臨戦態勢に移るなか、いきなりの展開についてこれておらん職員たちがおろおろとしておる。
「職員は全員壁際に寄っておけ。扉からは離れろ。何かおかしい」
アハト殿の言葉で恐る恐る一ヶ所に集まる職員たち。その職員たちを守るようにアハト殿、トーチ、ゴールド、アーカイブが構えた。
「守りは任せて出るか?」
「いや、突出するのは危険だ」
「死の香りが漂ってくるわ。近いわよ」
ドレアムがそう言ったあとすぐ、正面の扉がドンドンと叩かれる音が響いた。こんな会議を行う部屋じゃから、ただの扉だとは思わんが、だんだんと音が大きくなり、その度にヒッと職員連中から悲鳴が上がる。そしてそれが5度目にもなると、扉にひびが入り始めた。そして、それから3度目の衝撃で扉が崩れた。
「ビンゴ! おいこっちだこっち! もってこい!」
「1か所だけやたら強力な結界が張ってある部屋があったから、もしやと思ったが正解だったな。ターゲットが集まってやがる」
「先走るなよー。今こないだ拾ったやつを持ってきてるんだから」
壊された扉の向こうから、武器を構えた連中が入ってくる。わしはあまり見覚えがない奴らじゃが、すぐ近くにおるジョーの驚く様を見る限り少なくとも『ガルチア』のメンバーもおるのじゃろう。
「お待たせ。ほれ、転移させや」
遅れてやってきた男が、肩に担いできた一抱えもある大きな袋の中身を床に放り出した。
「ぁーぅーあー」
それを見てまた職員たちから悲鳴が上がる。それは、職員と比べて、モンスターと戦う上でまだ見慣れておるわしらとしても嫌悪感を覚える光景じゃった。
「ミーナちゃん!」
「へー、これミーナって名前なのか。さんざん抵抗すっからおとなしくなってもらったんだよ」
トーチの声に男がケラケラ笑ってポンポンと彼女の頭を叩く。両手足のないミーナは焦点の合わない目で声が漏れるだけじゃ。
「全然言うこときかねえし、あんま時間もかけられなかったから若干野蛮な手を使ったんだよ。先端からちょっとずつ斧で切り落として、協力してくれるようにお願いしてたんだけどな。これぜんっぜん協力しようとしなくて。根元までいっちまったから死なないように傷口を焼いて塞いで、もう1本って繰り返してたらなくなっちまって。そこまでしても反抗的だったから結局薬でやろうとして、調合ミスりやがったせいで廃人になっちまった」
あきれるように語る男じゃが、口の端があがっておる。トーチの杖を握る手に力が入り、パチパチとトーチの周囲を電気が走る。
「そのおかげで暴走させても問題なくなったんだけどな。おかげで本来のこれならできなかった集団遠距離転移だってこんな風に」
「イィィエェァアアアア!!」
男が元ミーナに何かの薬を飲ます。すると、体の表面に青筋が浮き上がり、雄叫びのような悲鳴をあげた。目や耳、鼻から血がドボドボとこぼれ、その背後に大きな魔方陣が現れ、そこから完全武装の男女が続々と出てくる。
「総勢82人の大規模転移があっさりだ。まあ壊れちまったみたいだけど……いるか?」
「……アハト殿、生存者はいるか? ちらほらとAランクの者も見える。うちのも混ざっているようだし、恥を広げないためにも消してしまいたいんだが」
「いらん。ドレアム殿、尋問は頼めるか?」
「依頼、ということでいいのならやりますけど、魔力の回復薬と必要な媒体は用意してもらえますわよね? 結構値が張るものが多いのだけれど」
「ああ。指名依頼ということで処理しておこう。報酬は死礼樹の枝でよいか?」
「依頼成立ね」
「そういうことならこの僕に護衛は任せてもらおうか。僕のこの黄金の盾があればこの程度の人数を守るなんて造作もない。トーチさん、あなたも前に出て構わないよ」
「ありがとうございます。アーカイブさん、負担を増やしてしまいすいません」
「構いませんよ。彼らは皆愛すべき神の子です。私が守らないでどうしますか」
「何をごちゃごちゃ言ってやがる! こっちは90人、それに魔王様からいただいた対あんたら用のキメラが12体いるんだ。おとなしく殺されやがれ」
「ここでも魔王か。ずいぶんタイムリーな話だ」
「普段はそれぞれお供をたくさん引き連れてて手を出しにくいあんたらが、こんな場所に集まってるんだ。さすがのあんたらでもこれだけの数を相手に足手まといを抱えながらだと苦しいはずだ。間違いなく人類の中で最も脅威になるのはあんたらだろ? ならお前らを殺してしまえば魔王様に対抗できるものはいない」
「それに1人でも殺した奴は魔王軍の幹部になれるって約束してんだ。つまりここで12人の幹部が生まれるってわけだ」
「ずいぶん浅はかな考えじゃのう」
「だな。しかし、俺の勘も衰えたもんだな。ジェイ、ウーラ、トビー、最近加入したなかなか見込みのあるやつらだと思ったけど、とんだ爆弾だったぜ」
「そう悲観するなジョーよ。うちも『青き空』も『白き御旗』も『黒き翼』もそれなりの数がまぎれている。うちの鼠は狩りつくしたと思ったんだが、どこからでも湧いてくる」
「ネズミは隠れるのがうまいからの」
「召喚完了だ! お前ら、もう待つ必要ねえぞ」
後方で控えていた男の前に12体のキメラが現れる。タートル系の甲羅を持つ個体や翼を持つ個体、やたら細い個体もおれば、やたら太い個体までおる。召喚されたキメラが人をかき分けてのそっと前に出てきて、うち1体がわしに殺意を向けてくる。周りの連中の様な弱々しい殺意ではなく、強い殺意じゃ。見た目的にはオーク系がメインのキメラのようじゃが、わし用に用意されたキメラじゃ。ただのオークというわけではないじゃろうが、いったいどんなキメラじゃろうか?
「へっへっへ、次期Sランクとも呼ばれた俺の魔法で一網打尽にしてやるぜ。『俺のために燃え尽きろ。超高温の炎』ブルーフレア!」
自称次期Sランクの男が魔法を放ち、戦闘が始まった。
どうもコクトーです。
グロい描写で気分を悪くした方がいらしたらすいません。
ではまた次回




