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Sランク会合じゃ3

ユウカ視点です。

ご注意ください。


「ではまず、リエーフ殿の言う通り、今回の会合を開いた理由を説明する」


 後ろで気絶した職員を回収する指示をだし、アハト殿の説明が始まった。


「まずは、連絡から2週間という短い期間であったが、皆よく集まてくれた。」


「そうよー。おかげでうちの転移魔法使いをみんな強制指名依頼で持っていかれて大変だったんだからね!」


「トーチ殿のギルド『魔法学園』には非常に感謝している。おかげで2週間では到底間に合わないような場所にいた方々にも集まってもらえたからな」


「ギルド経由であちこち飛び回って、魔力の回復薬の大量服用で体調崩してる子が4人もいるんだからね! おかげで今うけている依頼にも支障が出てるんだから。しょーもない理由だったらただじゃおかないからね」


「大丈夫だ。ここにいる者なら全員知っていると思うが、ここしばらく、モンスターの活動が活発化している。ダンジョンからの反乱もそうだが、それ以上の脅威として魔王の存在がここのところ大きくなってきている」


「たしかにここ最近その手の話はよく聞くな」


「この間のもたしかそうだったのよね? 邪龍王の件」


「そう聞いている。それ以外にも、冒険者ギルドで把握しているだけで魔王が関わっていると思われる襲撃が他に17件。ただ、未然に防ぐことができたりしてあまり知られていないものも多いから、本当のところどれくらいなのかは把握しきれていない」


「報告していない襲撃とかもあるだろうし、僕達自身気づかないうちに潰してることもあるかもしれないね。ほら、僕って強いし」


「ゴールド、お主はそれほど強くないじゃろうが」


「ユウカさんは冗談がうまい」


「本気じゃ。しかし、実際にそれほどの襲撃があるというのに、世間でそれほど騒がれておらんというのは問題じゃな」


「それには国の思惑が絡んでいるという点が大きいと冒険者ギルドは見ている」


「国の思惑? それは笑えない話だ。アハト、兄上たちと喧嘩(戦争)をするのであれば私はギルドを敵に回すぞ?」


「落ち着いてくれリエーフ殿。国といっても、何もベスティア獣神国をさしているわけではない。私がさしている国とは、この国、デルフィナだ。このデルフィナは、もともと勇者が作った国だということもあり、勇者という存在を神聖視している面がある」


「神聖視とは言いすぎじゃないか? たしかに勇者を崇める傾向はある。しかし、そこまでいくかね?」


「いきませんよ。この世界に神は複数存在しません。皆様も私とともにルーミア様を崇めましょう」


「アーカイブ殿、ここで布教は控えてもらおう」


「しかし、あの勇者にそこまでの力があるのかの?」


「ユウカは会ったことがあるのか?」


「うむ。以前、鍛えてくれとやってきたのじゃ。わしが教えるのにはとうてい及ばんレベルでしかなかったの。本当に勇者なのかどうかと疑うレベルじゃった」


「そうなのか。結構いろいろな噂は聞いているが、そんなにひどいものはなかった気がするんだがな」


「わしは特に噂は聞いておらんのじゃが、色々あるのかの?」


「俺が聞いている限りではひどいのはなさそうだったぞ。各地を回ってダンジョンに挑んでるみたいだし、それも攻略とまでは行ってないが、それなりに深いところまで潜ってるみたいだぜ。例えば『アントホーム』なんかだと、完全攻略した奴は別だが、そもそも15層を初めて突破した奴は勇者だって話だ。しかしユウカ、その来たのっていつぐらいだ? 召喚されたてとかか?」


「そうじゃのう……たしか2か月ほど前じゃったかな」


「ユウカ殿、ジョー殿、個人的な話は後にしてくれ。話が進まなくなる」


「すまんの」


「ともかく、勇者の話だ。現在、デルフィナの国王、エルンスド・マ・カシュマの名で公表されている話を知っているか?」


「魔王の幹部と戦って(やりあって)、一緒に召喚された娘がかばって死んだって話か? その戦闘で大けがを負った勇者本人は療養中ってやつ」


「たしか各自注意してねって話よね? うちと付き合いのある貴族から聞いた気がする」


「その話で間違いない。しかし、その話には大きな間違いがある。いや、王国にとっての真実というべきか」


「どういう意味だ?」


「現在勇者、およびそのパーティメンバーは全員(・・)行方不明になっているのだ」


「む、どういうことだ?」


「なんでも、療養中だった屋敷から唐突に姿を消したそうだ。バラーガ・グーテンが連絡用の魔道具を持っているそうだが、それもつながらないらしい。言っておくが、この話を他人に漏らすことは禁じるからな。特にカラカリ殿」


「そんなもん言われなくても言えねえだろうよ。確実にあちらこちらから目をつけられること間違いなしだぜ。いくら俺でもいたずらじゃ済まねえことくらいわかる。ロイドの坊主の背をからかうのとは違ってな」


「僕の背のことも弄んないでってば。小人族の中ではこれでも大きい方なんだから」


「そんなことはどうでもいい。行方不明という点が重要だ」


「どうでもいいことないよ!?」


「行方不明、つまり、生死すら不明ということじゃの」


「そうね。死んでいるなら死んでいるでやりようはある。しかし、生きて、どこかにいるとなると話は別だ。勇者という存在は、いるだけで周りに少なからぬ影響を与えてしまう。本人の意思に反していようがな。勇者の存在は特別だ。それにパーティメンバーも1人消えただけで大きな騒ぎになりかねない者ばかりだ」


「近衛騎士団団長とか宮廷筆頭魔導師とかな。しかし、あの騎士さんが国王を裏切るとは思えねえんだが、今も連絡が取れていないんだよな?」


「そう聞いている。冒険者ギルドの情報網をもってしても網にかからないのだから間違いないとは思う」


「あのパーティにはサラ・ファルシマーさんがいるんでしょう? 悔しいけど彼女、転移魔法に関しては『魔法学園』の誰よりも上よ。彼女の転移で移動されたんじゃあ誰も補足できないわよ」


「それはわかっている。だから、冒険者ギルドとしては、勇者はすでに死亡(・・)しているものとして動くということになった。だからこそ皆を今日ここに集めたのだ」


「……そういうことか」


「いる者をいないと言うより、いない者をいると言うほうが難しいということだな」


「そうだ。もしもこのまま二度とあらわれなかったとしても問題がないように。その方針で冒険者ギルドは動くということになった」


「僕達にもその方針で動けということかな? 国の方針と違うから庇護下から外されたりするのは困るんだけど……」


「ベスティア獣神国はそもそも勇者にはあまり期待していないみたいだから問題はないはずだ。この方針はすでに各国の支部を通じてトップに伝えてあるが、今回のことで今のところクレームはきていない。だが、もしも国から何か言われた場合、そちらを優先してかまわない」


「いいの?」


「今までに何度も聞いたことだろうが、冒険者ギルドは独立した組織だ。国にこういう方針だと報告はしたが、各国に同じような方針で動けと命じることはできないし、こちらの方針に対して向こうが強制することもできない。正直、今回のような事態であれば冒険者ギルドが仲介をしてでも各国の意思を統一すべきだとも思うが、デルフィナは勇者の行方不明を公に認めようとはしないし、ベスティア獣神国はそもそも勇者に多少の支援はするが、あまり重要視していない。ヤカリ森国も不干渉を貫いている」


「方針が違うのはデルフィナだけだということか」


「僕達のような小規模部族出身の者としては勇者というわかりやすすぎる精神的な支えを失った国民がどうなるかと考えればなんとなく認めたくない気持ちはわかるけどね。デルフィナは他の国に比べて特に魔王の活動が活発みたいだし尚更」


「さて、これを踏まえたうえで冒険者ギルドとして、皆に望むことは2つだ。1つは有事の際に先頭に立ってくれということ。そしてもう1つは極力長期間連絡が取れない状況をつくらないでほしいということだ」


「先頭に立つという点については俺は問題ないが、長期間とは具体的にどの程度のことを指すのだ? 冒険者である以上、ダンジョン攻略のために数週間連絡が取れないなどざらにあるだろう? その生きているかすらわからない勇者が魔王を討伐するまでダンジョンに潜るなということであればそれはさすがに厳しいぞ」


「そうだね。そんなことになれば貯蓄がいくらあっても足りないではないか」


「そこまで縛る気はない。そうだな……ダンジョンに潜る前にギルドに連絡を入れることだけ徹底してほしい。ダンジョンのどれくらいの階層にいるということがわかれば、カラスに無理をさせて何とかして連絡を取ることは可能だろう。しかし、どのダンジョンに挑んでいるかもわからなければさすがに厳しい」


「それくらいならいいんじゃないかしらぁ? ダンジョンに挑む時はそこにあった依頼を受けることも多いもの。その時にそれとなく伝えるだけでしょう?」


 モモが最初に賛成し、他の連中も皆承諾していった。わしはそれほど長いことダンジョンにこもるつもりはないが、まあもしもその時が来たら連絡すればよいし構わんじゃろう。


「皆ありがとう。もし何かあった時はギルド経由で連絡を入れる。できるだけ各地からすばやく移動できるように転移魔法使いを配属するように心がけるが、全てのギルドにというわけにはいかない。襲撃があった際には、なんとかその場にいる冒険者を使って構わないから応援が来るまでなんとか耐えてくれ」


「了解した」


「ふぅ。会合については以上だが、ささやかながら料理を用意させてもらった。二度とない機会だろうし、食事でもしながら情報交換にでも使ってくれ」


 アハト殿の合図で職員が入ってきて机の上に飲み物やフルーツなどを並べていく。どれもおいしそうじゃな。

 そうして、重々しい雰囲気から解放され、何事もなく話し合いは終わったのじゃ。





 しかし、このSランク会合はまだまだ終わりではなかった。











どうもコクトーです。


大分遅れて申し訳ありません。

勉強に課題にといろいろおわれております(泣)

今回の話はかなり長くなってしまいました(当社比)。おかしいな…。


何とか合間合間で執筆時間を確保して書いてます。

もう2,3話はユウカ視点が続く予定です。

予定は未定、あくまで予定です。


ではまた次回

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