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Sランク会合じゃ2

今話もユウカ視点です



 わしが来たのはどうやらかなり遅かったらしく、すでに大半の者が会合の場に集まっておった。


 現在、引退や国に引き抜かれたなど、冒険者をやめてしまった者を除けば、Sランク冒険者は全部で12人。すでにわしら3人を除いた9人のうち8人がこの場におった。


「ジョー殿、モモ殿、ユウカ・コトブキ殿ようこそいらっしゃいました。お三方を合わせましてもまだ全員は揃っておりませんのでしばしお待ち下さい」


 職員の言葉を聞くに、全員が揃うまでは自由時間ということじゃろう。今もよく見るとトーチとアーカイブがゴールドの口説き文句を鬱陶しそうに聞き流しておるし、別の場所ではスカイとセンガ殿が無言で席についておる。そんな中、リエーフとドレアムがこちらに歩いてきた。


「久しいな。ユウカはグリムで会って以来か?」


「3人とも久しぶりね。相変わらずいい死の香りがするわ」


「久しぶりじゃ」


「リエーフ様、お久しぶりですわぁ。もぅドレアムちゃんってば、それ私に言ってるのかしらぁ? 乙女のフローラルな香りにそんなこと言うなんてだめよぉ」


「モモのことじゃないわ。あなたはまた別。ユウカのことよ」


「わしもかよわい乙女なんじゃがのう」


「お前がかよわい乙女ならとっくに世界は終わってるって」


「ジョーもそんなひどいこと言うもんじゃない。ユウカなりの冗談のつもりなのだろうよ」


「リエーフよ、お主が何気に一番ひどいからの?」


「そういえばユウカ、弟子をとったらしいな。グリムでティグレから聞いてかなり驚いたぞ」


「ユウカちゃんってばそれ本当? 近衛騎士団の訓練所の所長を引き受けたと聞いた時も驚いたけど、今回はそれ以上よぉ?」


「別に弟子というわけではないのじゃがな」


「隠さなくてもいい。うちのアールムがそいつに世話になったそうでな。たしか『マツノキ』だったか。そいつのおかげで鼠を何匹か駆除できた」


「その名前はどっかで聞いた気がする。でもどこだったかな……」


「私は覚えてるわぁ。たしかミラの町の騒動を鎮めたパーティの一つよね?」


「その通りよ。うちの妹たちが助けてもらったそうね。私の方から礼を言いたいのだけど、ユウカ、どこかで招待してもらえない? あの子たちもまた会いたいと言っているし、いい闇の香りがするそうだし」


「しばらくは無理そうじゃが、どこかで時間をとるのはできると思う。あやつらは定期的に休みをとっておるから、そこで予定が合えばといった感じじゃ」


「最近の若いのはバカみてえに休みなく働かねえと生きていけねえとか言ってやがるが、そいつらは結構余裕があるんだな」


「そうじゃのう。わしが出会ったのも彼らが町の外に館を購入しておったからじゃからな」


「グリムの町の外の館というとあの呪われ屋敷のことか!? あそこに住んでるやつらとか、まともなやつじゃねえだろ」


「呪いはすでに解けておるよ。周りの森にモンスターは住んでおるが、従魔が優秀での。しばらく住んでおるが襲われたことはないの」


「たしかそいつの従魔はホワイトタイガーの幼体だよな? アライエの大会で優勝してたろ?」


「なんじゃリエーフ、ヒメのことも知っておったのか?」


「うちのから聞いてるって言ったはずだが?」


「あーユウカの弟子ってあいつのことか。俺のとこのメンバーもすげえのがいるって話をしてたっけ。ベルセルを下して、両部門で優勝した新人」


「そんな子がいるのねぇ。味見しちゃおうかしら」


「モモ、やめておけ。あやつにはもう4人予約があるからの」


「お、まさかユウカに春が来たのか?」


「わしとしてはそのつもりなんじゃがの。すべてはあやつ次第じゃな」


「まぁ! あのユウカちゃんに彼氏だなんて! お祝いしないといけないわぁ!」


「何人もの騎士候補に言い寄られたのにも関わらず誰ともくっつかなかったユウカがなー」


「あの騎士連中なんぞモモの合格基準を満たしている者もおらんよ」


「そうなのぉ? 残念」


 わしらがこうして話しておると、入り口の扉が開かれた。


「皆さま、ロイド・マクレディオ殿が参られました。各々、指定された座席へとお座りください」


 入ってきた職員が頭を下げながらそう告げる。その後ろからロイドがその小さな体を精一杯に大きく見せようとしながらやってくるが、相変わらず小さいの。

 ロイドは小人族と呼ばれる小規模部族の戦士じゃ。小規模とつく通り、小人族自体はすでに3つほどの集落しか残っておらん。その理由はいろいろと言われておるが、一番は外部とのつながりをもとうとしなかったことじゃろう。

 そもそも、小人族は成人でも身長が1mくらいしかない。力もそれ相応にしかなく、魔力が多かったり、手先が器用だったり、特殊な能力があったりするわけでもない、ただただ背が低いだけの種族が単独で生き残れるわけがない。そんな種族の中で、異常とも思える魔力を持っておったロイドが族長を務めるマクレディオ族と、マクレディオ族と交流のあった2つの部族だけがそれまでの外部と関係を持たないという慣習を無視し、ベスティア獣神国に庇護を求めて生き残ったのじゃ。なぜもっと早くその判断ができなかったのじゃろうか。その判断ができておればもっと多くの小人族が生き残っておったじゃろうに……。


 それぞれ割り当てられた席についていくと、自然と一番奥にある一席が空席になった。円卓を囲むように椅子が並べられており、わしはそこから左回りに3つ目。リエーフ、アーカイブ、わし、ジョーの順じゃ。そこからロイド、トーチ、ゴールド、カラカリ、モモ、スカイ、ドレアム、センガ殿の順にちょうど1周。並び順に意図があるのかどうかはわからんが、モモとゴールドに挟まれたカラカリが嫌そうに顔を歪めておるのを見れて少し満足じゃ。


 それから1分もすると、再び扉が開いた。


「いや、お待たせしてすまない。今日はよく集まってくれた」


 扉から入ってきたのはアハト・マ・カシュマ様。冒険者ギルド本部のギルドマスターにして今回の会合を企画した人物じゃ。

 アハト様は後ろ手で扉を閉め、わしらの後ろを通って部屋の奥に行き、空いていた席に着いた。そしてわしらを見渡し、手を組んでひじを机に乗せて話をきりだした。


「それじゃあSランク会合を始めようか」


 そういった瞬間、場の空気が一瞬にして凍った。さきほどまでのほんわかとした空気は全て消え失せ、全員からまるで殺気の様な気配が立ち込める。職員の中にはすでにその圧に耐え切れずに気絶してしまっている者もおる。むしろ、無事に立っておるのはかなり離れていた2,3人じゃな。アハト様も何もないように取り繕っておるが、額に汗が浮かんでおるな。


「まずはなぜこのタイミングで我々に召集をかけたのか説明してもらおう」


「そうだな。まずは、そこから始めようか」


 こうして史上初の試みである、Sランク会合が始まったのじゃ。



どうもコクトーです。


今回も職業レベルはなしです。


遅れて申し訳ありません。電車とかの移動時間とかで書いてるとやっぱり進みませんね…。

今回でSランクは全員の名前が出てきました。本文の席順に、

リエーフ・ベスティア・レルド、ルーミ・アーカイブ、ユウカ・コトブキ、ジョー、

ロイド・マクレディオ、トーチ・マツアキ、セント・ゴールド、カラカリ、モモ、

スカイ・レインウォーカー、ドレアム・デス・ドリー、センガ・カミイズミ

です。今後このフルネームが出てくるかどうかは未定ですが念のために。かつての近衛騎士団長のように名前が複数ある事態に陥るとやばいので…


ではまた次回

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