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王都での一幕じゃ

どうもコクトーです。

2017年もよろしくお願いします。

ユウカ視点です。


「わしも今日中に準備を済まさないといかんな」


 メイたちが配達の依頼を受けてソルミアの町に旅立ったのを見送り、わしは自分の旅の準備を始めた。王都はソルミアの町からそう離れているわけではないし、依頼でなければわしも近くまで一緒に向かおうかと考えていたのじゃが、さすがにまだパーティを組んでいるわけでもないのに依頼に介入するわけにもいかんかったから別々にいくことにした。なので、メイたちの出発から1日遅れで出発することにしたのじゃ。


 次の日の朝、ブラウニーたちとアンナにしばしの別れを告げて、わしは乗合馬車の停留所へ向かった。王都までは日に4回便が出ており、予約さえすれば、犯罪者でもない限り誰でも利用が可能じゃ。わしの分の予約は冒険者ギルドがしてくれてあるからすぐにでも出ることができる。一番混むのは昼頃にでる2回じゃと聞いておるから、朝一であればそこまで混んでおらんじゃろう。


 わしの予想は当たっており、今日の1回目の便で王都に向かうのは、馬車の護衛と御者を除けばわしを含めて4人。なんとも見覚えのある面子じゃった。


「ユウカ様もこの便だったんですね。朝早いですし私たちだけだと思ったのですが」


「わしはてっきりお主らが護衛依頼でも受けたのではないかと思っておったのじゃがな。もう王都に戻るのじゃな」


「はい。ここのダンジョンに挑むことも考えましたが、やめておきました」


「奇遇ですねー。例の会合ですかー?」


「シャーナルフィア、答えにくいことを聞くものではない。内容が内容だ。答えられるわけがないだろうが」


「広兼はマジメですねー。だから頑固おやじなんて呼ばれるんですよー」


「2人ともそれくらいにしといてください。ユウカ様、すいませんが2週間ほどお付き合いを」


「かまわんのじゃ。しかし、お主も大変じゃな。『レーザー』のリーダーとしてこいつらをまとめねばいかぬのじゃから」


「もう慣れましたよ。それに、王都に戻ったら1か月ほど休む予定ですからね。もう少しの辛抱です」


「そうか。ならもう少し頑張るのじゃな。む、そろそろ馬車が出そうじゃ。遅れぬように乗り込むとしようかの」


 わしは『レーザー』の3人と一緒に馬車に乗り込んだ。




 約2週間が経った。さすがにSランクとSランクパーティの乗った馬車を襲うような輩はおらず、わしらは何事もなく王都に到着した。入口の門で衛兵による検問を受けて、わしらは馬車の停留所まで久しぶりの王都の街中を馬車で駆け抜けた。



「わしはこのまま自分の家に向かうのじゃ。お主らはどうするかの?」


 馬車から降りたわしは、軽く背伸びをしながらラムダに尋ねた。


「私たちはギルドに寄ってから家に帰ります。王都に戻ってきたのならその連絡を入れておかないといけませんので」


「専属となると大変じゃな。それじゃあまたの」


 一礼して去って行った3人と別れて、わしは一人自分の家へと向かった。




 わしの家は、訓練所の所長をやっていたころに王から贈られたもので、所長をやめた時に返上する予定だったものの、その必要はないと言われたからありがたく頂戴したものじゃ。貴族の館と考えるとあまり豪華だとは言えないのじゃが、そもそも王都で個人宅を持っているだけでもかなりのものなので文句はない。もともとは訓練所の所長室の隣にある個室に寝泊まりしておったわけじゃなからな。それに、わざわざ宿をとらんでよいのは楽じゃ。王都は常に人がたくさんおるし、今回のようにそれなりの人数を集める何かがあれば、宿なんかはすぐにいっぱいになってしまう。しかも、今回集められておるのは皆Sランクの冒険者(バケモノ)ども。弟子を連れておる者もおれば、パーティメンバーやギルドメンバーを連れておる者もおるし、身の回りの世話をする者を連れる者もおる。わしのように1人で来るようなやつはほぼおらんじゃろう。


「お帰りなさいませ、ユウカ様」


 わしが家の前まで行くと、使用人一同がずらっと並び、執事長のシーラが代表して出迎えてくれた。ここにおる者たちは全員、わしが所長になってすぐのころからずっと仕えてくれている者たちじゃ。ある意味ではもはや家族とも呼べるような存在じゃな。シーラは……まぁおじいちゃんじゃろうな。


「うむ。出迎えご苦労じゃ。何も問題はないかの?」


「はい。お屋敷の周囲は平和そのものです。昼食はいかがなさいますか?」


「そうじゃな。久しぶりであるし、アレフのパスタが食べたいの。あやつのパスタは絶品じゃからな」


「かしこまりました。すぐに用意させます」


「そうじゃ、お主らは昼はまだかの?」


「昼過ぎに仕事がある者以外は」


「ならば大部屋で一緒に食べるのじゃ。アレフには頑張ってもらうことになるがの」


「アレフには普段から人数分の食事を作ってもらってますから大丈夫でしょう。今日はユウカ様が帰宅なされるということで張り切っていましたからなおさらです」


「そうか。それは期待ができそうじゃな。楽しみにしてると伝えといての」


「かしこまりました」


 わしは使用人たちが立ち並ぶ通路を抜けて、一旦自分の寝室に向かった。そして、寝室に旅に不要な私物をおき、物置に使わない武器や防具などをしまうと、シーラに指示してあった部屋に向かった。




 大部屋につくと、すでに仕事のない使用人たちは席につき、各々雑談をしながら料理が来るのを待っていた。わしも自分の席について料理を待つ。すると、少し経ったところでシーラがコックのアレフを従えてやってきた。


「ユウカ様、料理が出来上がりました」


「うむ。アレフ、ご苦労じゃ。久しぶりのお主の手料理じゃ。楽しみにしとるぞ」


「ありがとうございます。腕によりをかけて作りましたので、満足いただけるかと思います」


「ほう、それはますます楽しみじゃ」


「すぐに準備を」


 パンっとシーラが手を叩くと、扉の向こうからお盆に料理を乗せた使用人たちが入ってきた。皿を席に並べていくにしたがって、おいしそうなにおいが充満する。


「本日はマッスルボアのベーコンとホーレン草のパスタになります。付け合わせはユウカ様の好きなスプラッシュコーンのサラダです」


「うーむ、おいしそうなにおいじゃ。お主らも席につけ。食事の時間じゃ」


 料理を並び終えて、全員が席に着いたところでわしらは料理を食べ始めた。


「うーむ、やはりアレフの料理はおいしいのう。機会があればメイたちにも食べさせてやりたいくらいじゃ」


「ユウカ様、メイたちというのは?」


「今わしがお世話になっている館の主じゃ。宿だと鍛錬をするのに不便での。彼らの館は町の外にあるから、鍛錬するのに便利なのじゃ」


「……彼、ですか?」


「うむ。かなり強い冒険者での、近接戦闘のみで考えればわしのほうが強いが、本気の殺し合いになればわしに勝ち目はないのじゃ」


「そこまでですか?」


「いつSランクになってもおかしくないとわしは思っておる。いずれわしもメイのパーティに入らせてもらうのじゃ」


「……いつか私もそのメイという方に挨拶をしなければいけませんね。皆を代表して」


「あやつは王都には決して来ようとせんじゃろうから、挨拶をするならお主があやつのところを訪れるしかないの。そうじゃ、いつかアレフとお主をあの館に招待して料理を作ってもらうのもいいかもしれんの」


「ぜひその機会があってほしいものです」


 シーラの笑みになぜか不安を感じながら、わしは料理を楽しんだ。


 そして4日後、冒険者ギルドからの呼び出しを受け、わしは会合へと向かった。






前書から続いて2度目のどうもコクトーです。


今回はユウカ視点なので職業レベルはなしです。

あけましておめでとうございます(遅)

2017年1話目ですよ! 今年もよろしくお願いします。


ではまた次回

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