出発当日です
冒険者ギルドでの話を聞き終えた俺たちは、さっそくソルミアの町に向かうために使う馬車を受け取りに来ていた。あの後、会合の詳しい内容を話し始めようとしたアハトさんをソディアさんがギリギリで止めて、その間にカラスさんから依頼の概要が伝えられた。まあ一番高いラムダさんでもS-ランクだし、あの場にその会合の参加者がいない以上、止めるのも無理はないだろう。なんであの人が冒険者ギルドのトップなんだろうな……。
「すいません、冒険者ギルドから話が来てると思うのですが、馬車を受け取りに来た『マツノキ』です」
「お待ちしておりました。ギルドより連絡はいただいております。馬車1台と、馬が2頭ですね」
馬車を用意してくれているのは冒険者ギルド御用達の店で、依頼に際して馬車と馬の貸し出しが主な仕事なんだとか。貴族や高ランクの冒険者とかならともかく、一般の人は利用することはできないらしい。もちろん、ご用達なだけあって品質は保証されているし、馬の練度も高い。ホース系のモンスターと比べても遜色ない度胸をもっていた、多少の戦闘音で驚いて暴れたりしたことは過去にあんまりないとのこと。
「失礼ですが、御者はすでにいらっしゃいますでしょうか? できるだけおとなしい性格で足の速い馬を選別させていただきましたが、心得もなく乱雑に扱いますと無用の怪我につながる虞もあります」
向こうとしても、素人が変に手を出して馬を怪我させられたり、馬車を壊されたり、怪我をしたとクレームをつけられるのはごめんなのだろう。俺たちは完全に贈与だからまだしも、本来はレンタルが中心らしいし、いちゃもんをつけられる可能性をあらかじめ潰しておくのだ。
「どうしようか? 俺は御者の経験なんかないぞ」
「私もやったことないかな。昔はいつも歩いての移動だったし」
「私は一度だけ怪我をした御者に変わって、やってみたことはあるけど、それも1時間くらいだし、ベテランの冒険者の人に手伝ってもらってたからできるとは言えないかな」
「ご主人様、私に任せてください。以前役に立つからと教え込まれました」
「ほんとか?」
「はい。ですので、御者を新しく雇う必要はないかと」
「そっか。そう言うことみたいなんで、御者は大丈夫です」
「かしこまりました。出過ぎた真似を失礼しました」
「いえ、言われるまで俺たちも忘れていたので助かりました」
実際、言われるまで御者のことなんかすっかり忘れていた。キャラビーができるらしいから助かったものの、できなかったらいざ出発という段階までおそらく気づいてなかっただろうし、そこから慌てて御者を用意できるはずもないから、記憶を頼りになんとかして誰かが御者をやるか、それかせっかく馬と馬車をもらったのに歩いていくことになる所だった。
俺たちは、アイテムボックスに馬車を入れ、馬をキャラビーが引きながら館に戻った。
次の日、昨日と同じくらいの時間にギルドにやってきた俺は、昨日と同じように奥の部屋に通されていた。
「では、この箱の中の物をソルミアの町まで頼むぞ。道中気をつけてくれ」
「はい」
アハトさんから直接ダンジョンコアの入った箱を受け取って、すぐにアイテムボックスにしまいこむ。この部屋は完全防音で、その上サイレンスの魔法をかける魔道具を使っているとはいえ、何があるかわからないから念のために他の人たちに渡している空の箱と同じ箱を用意したようだ。アイテムボックスの中にあるのだから変わらない気もするが、念には念を入れてということだろう。まあこっそりと『鑑定』してみたら中身が表示されていたから、ほんとにただの箱なんだろうな、これ。
「失礼します」
手短に話を切り上げ、俺たちは館で準備をしているはずの3人のところに急いだ。
館に戻ると、すでに準備は終わっているらしく、玄関のところに全員揃っていた。
「おかえりメイ。アハトさんからちゃんと受け取れた?」
「ただいま。子供じゃないんだから、大丈夫だって。アイテムボックスにしっかりとしまっておいたから」
「それなら大丈夫だね」
「そっちこそどうなんだ? 見た感じ準備は終わってそうだけど……」
「バッチリ! あとはメイが帰ってくるのを待つだけって状態だったよ」
俺に向けてサムズアップするマナにこっちもサムズアップで答えた。これ必要あったかな?
「それにしてもキャラビーはほんとに器用なんじゃな。まさか馬車の運転までできるとは思わんかったのじゃ」
「昔旅に必要になるだろう知識はあらかた叩き込まれましたので」
「大変だったのじゃな」
しみじみと語りかけながら頭を撫でるユウカを見ているとなんだか孫とおばあちゃ
「あ”?」
「ごめんなさい」
「何やってるの?」
「いや、謝らないといけない気分に……」
「それで、もう出発するのじゃな。襲撃犯はかなりの凄腕だそうじゃな。ほんとはわしもついていければよいのじゃが……」
「それには及ばないって。さすがにカルアとヒメの索敵をかいくぐれることはないだろうし、魔法さえ封じられなければ何かあっても最悪『テレポート』で逃げられる。ユウカはユウカで用事があるんだろ?」
「うむ。詳しい内容は言えんが、王都までいかねばならなくなったのじゃ。お主らはソルミアの町についてもしばらく帰れないのじゃろ? ならおそらくわしのほうが先にここに戻ると思うの」
そう、ユウカの用事というのはアハトさんが言っていた会合のことだ。俺たちがアハトさんから会合のことを聞いたその日、ユウカも同じく冒険者ギルドで会合の話を聞いていたらしい。ユウカはラムダさんの1つ上のランクS。当然その会合にも招待されていた。しかし、俺たちが知っているとは知らないユウカは会合のことは話さず、ただ用事だと言っている。まぁ知っていても話したらアウトだろうけどな。
「久しぶりの王都じゃから少しあいさつ回りなんかで長引くかもしれんが、ちゃんとわしはここに戻ってくるのじゃ」
「ちゃんとって言われてもそもそもただの居候だって忘れてないか?」
「それは言わないお約束じゃ。それに、わしではお主らの仲間にはなれんかの?」
「そんなことは……ないけど」
「初めて会った頃のユウカは私たちに協力してくれるって言ってたのにね」
「協力はしておるじゃろ? 立場が観客から出演者へと変わっただけじゃ」
「そのせいで俺の苦労はうなぎのぼりだけどな」
「女が強い男を求めるのはいつの世も変わらん。毎日のように訓練で叩かれて、最近は少し気持ちよくなってきたのじゃぞ? 責任をとるべきじゃと思うのじゃが、そこのところはどう思うのじゃ?」
「あーあー、きーこーえーなーいー」
「子供みたいなことしてないで、早く出発しよ。じゃあアンナ、館のことはお願いね」
『かしこまりました。この命に代えても館に危害は加えさせません』
ヒツギの言う通り、今回は、というか今回もアンナは館に残していくことにした。申し訳ないが、おそらく今後もアンナは館に残しておくことになると思う。
アンセスタークイーンアントは、直接戦闘をするというよりは、本来拠点防衛に特化した種族だ。自身は眷属を生むことに徹して、彼らを使って拠点を守る。気づいていないと思っているのかはわからないが、アンナが館周辺の森に大量の蟻を放っているのを俺は知っていた。さすがアンナというべきか、その統率は完璧で、俺の視界に蟻たちが入ったことは一度もない。しかし、視界に入っていないからと言って『気配察知(魔物)』に引っ掛からないわけではなく、魔力が似ていることと、アンナが女王だと考えれば簡単に想像はついた。今のところこれといって問題も起きていないし、アンナの負担軽減にもなっているだろうから何も言っていない。正直、アンナに頼んでいる仕事は1体じゃとてもじゃないけど無理だからな。
「そんなに重くとらえなくてもいいのに」
『そうはいきません。主様の留守を守れないようではいけないので』
そう言いながらちらっとキャラビーを見たアンナ。頼むから仲良くしてくれよ?
「それじゃあ出発するか!」
俺たちは馬車に乗り込み、ソルミアの町に向かって移動を開始した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
またも1日遅れてすいません。
最近まともに3日で上げれていない気が…
今年は後何話書けるかな?
ではまた次回