アハト・マ・カシュマとの話です2
「君たちにある依頼を出したい」
パンと手を叩いたアハトさんはにっこりと笑ってそう言った。
「お断りします」
「え?」
「指名依頼とか絶対に嫌です」
「ちょっと、メイ」
「この状況で頼まれる依頼なんか絶対に何かやばいものだろう? そうでなくても、あの場に居合わせた貴族が関わるような依頼の可能性が高いとみた」
「あの場にいた貴族は関係ない。冒険者ギルドからの指名依頼でな。もともと頼む予定だった冒険者たちに頼めない状況になってしまったからやむを得ず、現時点で『貴の山』を攻略できる実力者のパーティに頼むということになったのだ。ある程度評判などは調べたうえでだがな」
「あくまでも依頼ならば断ることもできるはずだが?」
「できれば断らないでほしい。ことを荒げるつもりはないが、今回の件は君たちも関係がないわけではないのだぞ?」
「どういうことですか?」
「君たちは以前『アントホーム』を攻略しているよね?」
マナの質問にソディアさんが答えた。確かに、俺たちは『アントホーム』を攻略した。今思えばあそこから従魔がやたら増えたんだよな。もともとはヒメだけだったのに……。『アントホーム』のボスだったアンナが、元々白虎の配下のモンスターだった関係でヒメがダンジョンそのものに干渉してえらい目にあった。
「ああ。それがどうした?」
「それで今日、『貴の山』も攻略してきたんだよね?」
「そうだ。早いとこ確認してもらえないか? このままじゃいつまでたっても帰れない」
「マスター、アハト様、私も同感です。私も自分の仕事がありますし、先に確認だけ済ましませんか?」
「ふむ……まあよい。お前はまだ帰れないがな」
「アハト様!? 私は依頼は関係ないですよね!?」
「ここまで聞いておいて帰るなどとは言わせんぞ。お前も道連れだ」
「子供ですかあなたは! さっきまでちょっと格好いいかもとか思っていたのに台無しですよ!」
「そんなことを言われても俺は知らん。さあ、確認を頼む」
「……ではお三方、こちらにギルドカードの提示をお願い。説明はしなくてもわかるよね?」
「ええ」
俺たちはギルドカードをカラスさんに渡して魔道具にかざした。『生の草原』の攻略報告に来た時と同じように、『貴の山』と表示され、俺たちが攻略したという証明がなされた。
「おめでとう。これで君たちは『貴の山』の正式な攻略者だと認められることになった。残念ながら攻略者に送られる商品は18人に渡しているから君たちの3人の中から2人しか受け取れない。誰かあきらめてもらうことになる」
「なら俺はなしでいいです。攻略したときの宝箱の中をもらいましたし」
「ほう、いったい中身は何だったのだ? ダンジョンの宝箱の中身はピンからキリまでだが、良い時は未知の魔道具だったりもするからな」
「残念ながらはずれだった。まずい肉で誰も食べないからその場で処分したよ」
「なぜ君はカラスには敬語で私には敬語を使わないのか……。まあ私がそれだけフレンドリーだと考えるとしよう。しかし、これまで報告に来た者は全員あたりを引いているようだったが、初めてのはずれだな」
「そうですね。『怒涛のティラノス』も、『レインダーク』も『キャラバン』もユウカ殿も全員何らかの装備か魔道具が当たったようでした」
ユウカが攻略していたというのは館で聞いていたが、そういえば宝箱の中身が何だったのかは聞いてなかったな。聞く必要もないような気もしてたし、純粋にマナー違反ってのもあって聞いてなかったけど。
「マナさん、ヒツギさん、これが攻略の賞品だよ。これまでの人たちが選んでいった都合で二人とも同じ物しかないけど、我慢してね」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。えっと、これって何ですか?」
2人が渡されたのはビー玉ほどの大きさの水晶球だった。色はともに淡い紫。光の当て方によってはピンクに見えなくもないかな。
「それは魔込めの水晶と呼ばれる魔道具だよ。魔力を込められて、それを噛み砕くことで込めた魔力を自身に取り込むことができる。そのサイズのものだとそれほど多くはないけれど、魔力が切れた時にないよりはあったほうがましって感じかな。ただ、使い捨てなのが欠点なんだよね」
「これ私には使い道ないかもね。ほとんど魔法使わないから魔力が切れることなんてめったにないし」
「私は魔法メインだから使い道はある……のかな?」
マナの言葉が疑問符になるのもわからなくはない。俺の『再生』などのスキルによる回復と比べるのはあれだが、マナも魔力の回復はかなり早い。それ以前に、俺以上に魔力の多いマナが魔力を使い切る場面を想像したくないな。
「それでは依頼の話に戻るぞ。私からの依頼は単純だ。これをソルミアの町にある研究所まで持っていってほしい」
アハトさんが自身のアイテムボックスから、見覚えのある2個の水晶球を取り出した。
「これは……」
「片方は君たちにも見覚えがあるだろう? これらは『アントホーム』と『貴の山』のダンジョンコアだ。もちろん封印してあるから何かが起こるというわけではない」
「それがなぜここに?」
「『貴の山』の方は言わずもがな。『アントホーム』の方は君たちがオークション会場で見つけてくれたからだな。これは我々冒険者ギルドの失態でもあるからあまり言いたくはないのだが、この『アントホーム』のダンジョンコアは、イリアスの町のギルドが襲撃されて盗まれてしまったものだ。その時にイリアスの町のギルドマスターであるガラハム・ジェイクと依頼を受けていた『レーザー』の3人は重傷を負った」
「ラムダさんたちが? って、ガラハムさんは無事なんですか?」
「ああ。命に別状はなかったみたいだよ。今はもう復帰している」
「よかった」
「話を戻すが、本来はこれは『レーザー』に頼んでいた依頼だったのだが、その時に武器を壊されたことで、現在『レーザー』は戦力的にも大きく下がっているからと依頼を中断することになってしまったのだ。さすがにこちらも文句は言えなかった」
「ですので、次は『怒涛のティラノス』に頼むつもりでした」
「でしたってことは依頼はしなかったんですか?」
「彼らは先日『賤の山』に挑んで命からがら戻ってきたところなんだ。とてもじゃないがこんな依頼はできない」
「『賤の山』で何があったんですか?」
「7層でドン・グロウモンキーの番に襲われたそうだ。ボス部屋というわけでもなく、ただの道中で」
「Aランクにもなるモンスターが2体となるとさすがに厳しかったようだ。『貴の山』を攻略したときもかなり怪我を負っていたようだからな。全員が生きて帰れただけでも運がよかったな」
「そんな言い方は……」
「いや、間違っていないよ。自分よりも格上のモンスターに襲われて全員生きて帰ってるんだからそれは運がいい以外の何物でもない」
ヒツギの言葉にはどこか重みを感じた。おそらく過去に自分も経験したことがあるのだろうな。圧倒的に強い相手から逃げる。言葉にするのは簡単でも、実際にやるとなると運の要素がかなり絡んでくることだ。俺はなんだかんだと最終的に倒して乗り越えてきたから何ともいえないけど。
「『レインダーク』や『キャラバン』も同様だ。しかし、君たちは違う。『貴の山』を全員無傷で攻略してきた。この依頼を受ける実力は間違いなくあるだろう」
「実力があるのと受けるかどうかはまた別の話だ」
「そこで報酬の相談だ。君たちは別にお金に困ったりはしていない。そうだろう?」
「まあな」
「そこで私が提供できる報酬はとある石碑の閲覧の権利だ」
「とある石碑?」
「ソルミアの町にある、王族と、王族の案内がなければ見ることができない、およそ900年前にこの世界を訪れた異世界人と行動を共にした1人の騎士の残した石碑だ」
がたっ。
ヒツギがそれを聞いて勢いよく立ち上がった。その様子にアハトさんたちも驚いている。
「……それを見る時に、他の人の立ち入りを禁止して、俺たちだけで見るってことはできるか?」
「もちろんだ。王位継承権は放棄したが、王族としての権限は残っている。それくらいなら造作もない」
「ならそれを条件にその依頼受けます。馬車は用意してもらえますか?」
「ああ。ギルドから君たちに贈ろう。依頼の報酬ということにしておくよ」
こうして、俺たちの次の予定が決まった。詳しい話は明日またギルドに聞きに来ることになり、俺たちは館に戻った。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
少し間に合いませんでした。
いつもより長めになったからかな(当人比)
ではまた次回