また森です
「はぁ、はぁ、はぁ……そんな、まだ追ってくるの?」
私、レイユは冒険者だ。
ランクは先日Eになったばかり。ランクEっていうのは下から3つめね。F、E-ときてEになった。順調にとんとんと上がったことで調子にのってたんだろうな。今日私はいつものパーティメンバーと離れて一人で狩りに来ていた。標的はこの辺りでよくいるリトルフォックス。ランクFでも少し鍛えればすぐに倒せるような敵だ。そんな敵に私が負けるはずはなく順調に狩りをしていた。
しかし、調子にのった私は森の奥の方まで行ってしまった。そこでもリトルフォックスやスライム種、キャタピラーなどのランクF~E-のモンスターばかりだったから安心して狩りをできた。
でもさらに進んでいった先で私は違うモンスターを見つけた。オークだ。オークはD-のモンスター。その体に似つかないスピードと、すごいパワーを持つ。でも私なら落ち着いて確実にやることをやれば対処できると思っていた。その奥に10体のオークを見るまでは。
オークたちはなにやら休憩中らしく座り込んでいてこちらには気づいていなかった。運がいいと思いながらゆっくりと後ろに下がる。あんな数のオークを相手になんか絶対できない。逃げるしかないのだ。
パキ
そこで私はどじを踏んだ。足元にあった木の枝を踏んでしまったのだ。まずいと思った時にはもう遅かった。音に気づいてオークたちが一斉にこちらを見る。私は全速力で逃げだした。なりふり構っていられない。とにかく逃げないと死ぬ。オークたちは錆びた斧や剣を手に叫び声をあげながら迫ってくる。幸いある程度距離があったので今はまだ逃げられる。でもそれもいつまでもつかわからない。オークは武器をつかったり殴ったりして木をなぎ倒して進んでくる。
あと町までどれくらいだろうか。ひたすら逃げて、町までたどり着ければオークたちはすぐに倒されるだろう。今朝ギルドに寄ったときにランクCのパーティだと言い張っていた人がいた。ランクCならオーク10体くらい簡単に倒せるだろう。私はそんな期待をしながら町へ急ぐ。
しばらく走ってようやく森の終わりが見えた。そこさえ抜けてしまえば城壁が見える。こちらから見えるということは向こうからも見えるということだ。対処してくれるかもしれない。
が、そこで気を抜いてしまった。
私はオークたちにのみ意識を集中していた。だが敵はオークだけではないのだ。私の足にキャタピラーの糸が張り付いた。視界の端にいたキャタピラーがはいた糸だ。普段ならば避けることくらい簡単だし、もしくらってしまっても落ち着いて糸を切るか、焼くかすればいい。だが私は平常心ではなかった。糸が張って転んでしまう。慌てて短剣をだして糸を切ろうとする。でも慌てているので短剣がぶれてなかなか切れない。
「お願い! 切れて、切れてよぉ! あとちょっとなのに!」
そうしているうちにようやく糸が切れた。すぐさま駆け出そうと顔をあげた。そのすぐ目の前にオークがいた。私が苦戦している間に追い付かれたのだ。腰が抜けて力が入らない。
「いや……いや……」
私は尻餅をついたまま少しずつ後ずさる。股の間からチョロチョロと温かい液体が漏れだす。そんなことも気にならないくらい私は「死」を感じていた。
(ここで私は死ぬんだ。まだやりたいことたくさんあったのに……)
オークの動きがスローモーションのように見える。一体が斧を振り上げた。私は目を閉じて衝撃を待つ。
しかし、いつまでたっても衝撃はこなかった。 恐る恐る目を開けてみるとそこには、オークを殴り付ける男の人の姿が見えた。
「また森か。今度は変な木はないっぽいな」
「ここどこだろうねー?」
俺たちは光につつまれたあと森にいた。やっぱり日差しが気持ちいい。
「とりあえず歩こう。どっかに人がいるかもしれない」
「だねー。もしかしたら街道とかに出るかもしれないしね」
人を求めて俺たちは歩き出した。
それから数分後、俺たちの目の前にはなぎ倒された木があった。
「これってモンスターの仕業か? 外のモンスターも危なっかしいなあ」
「普通はこんなことしないと思うよ。考えられるとしたら誰かが追われているか、街めがけて進軍してるかだけどこの幅から考えてだれか追われてるほうだと思うよ」
「なら急いだほうがいいかもな。なんとか助け出していろいろ聞かないといけないし」
「私がいろいろ知ってるし大丈夫じゃない? それにエルミーナ帝国にいけばいいんだし」
「念のためだよ」
俺たちは何者かが通った跡をダッシュで通っていった。
しばらく行くと遠目にモンスターが見えた。
鑑定してみたところオークらしい。それが10体。そのすぐ奥に女の人も見える。
「あの女の人追いかけてるみたいだな。ヒツギ、何体いける?」
「うーん、まだ戦いの勘戻ってないから2,3体くらいがいいな」
「了解。なら左の2体頼むわ。後は俺がやるから。先行くな」
俺は地面を強く蹴って駆け出す。女の人はなにやら横から飛んできた糸のせいでこけてしまった。本格的にまずいな。オークのうち1体が斧を振りかぶる。
俺は小規模ワープでさらに距離を縮め、射程圏内に入ったところで『不意打ち』により距離をなくす。オークたちのすぐ後ろに跳び、空中で体をひねって蹴りを放つ。左足がオークの体を捉え、ほか3体を巻き込んで吹っ飛ぶ。
「コンボ、『鬼の一撃』」
俺はスキル『コンボ』の力でスムーズに止まることなく次の攻撃に移る。蹴りによる回転の勢いはそのままに、さらに体をひねって左手で斧を振り上げていたオークの顔面を殴る。直撃したオークの顔面を陥没させながら他のオークも巻き込ませた。突然のことに怒った残る2体のオークがそれぞれ剣で攻撃してくる。
「そうはさせないよー。あなたたちは私の相手だからね」
それをヒツギの黒い棺桶が防いだ。壊れないといっていたのは本当らしく傷一つついていない。それどころか攻撃してきた剣のほうが折れた。ヒツギは器用に棺桶を操りもう片方の棺桶を振り回して側面を使ってオークを潰す。さらに二つの棺桶で鋏のようにして残ったオークをミンチにした。なかなかにえぐいな。
「大丈夫か?」
「私がやっとくからメイはオークお願い」
「あいよ。『ダークランス』」
俺と入れ替わるようにして彼女の介抱に入ったヒツギを横目に俺は起き上がったオークたちに黒の槍を放つ。放たれた槍はそのままオークたちの頭を正確に射抜いて命を奪った。
「おしまい、と。じゃあ死体始末してくるわ」
「私が倒したのは吸収させるからいいよ」
「わかった」
ヒツギの言葉通りに棺桶に光の粒となったオークが吸収されていく。ああやって成長するのか。俺もさっさと喰っちまおう。
『パラメータ:筋力上昇(小)を習得しました』
全部瞳で喰い切ったころパラメータ上昇が告げられた。スキルはなしか……。
「さて、大丈夫か? けがは?」
「あ、あの……その……」
「敵じゃないから落ち着いていいよ。少し話が聞きたいだけなの」
「た、助けてくれてありがとうございます」
「気にすんな。俺はメイ。こっちがヒツギ」
「ヒツギだよ。あなたは?」
「わ、私は冒険者のレイユです。ランクはEです」
「レイユさんね。私たちエルミーナ帝国に行きたいんだけどどのあたりかわかる?」
レイユと名乗ったその女性にさっそく道を尋ねる。
「エ、エル……ミーナ?」
「そう。このあたりじゃないのかな?」
「900年前に滅んだ国のはずですが……」
「え”?」
ヒツギが固まった。
「ご、ごめんね~よく聞こえなかったや~。もう一回言ってくれる?」
「え、エルミーナ帝国は900年前に滅んだ国のはず……です。ここはコロイドという町の近くの森です」
「ちょっと考えさせて」
ヒツギは頭を抱えてなにやらぶつぶつと言い始めた。それが30秒ほど続いた後尋ねた。
「今って何年?」
「2760年ですけど……」
「……私が帝国でいろいろやってたのがたしか1700年くらいだから……今って1000年後? 嘘、私1000年も寝てたの? じゃあ私の常識はもう通じない? 嘘よ……嘘と言ってよ……」
ヒツギが完全に壊れた。どうもヒツギは1000年前にここに呼ばれたらしい。いまいち実感わかないけどたぶん真実なのだろう。ぶつぶつと唱えるのをやめないヒツギに代わって俺が尋ねた。
「すまんな。俺たちずっと森の奥地に住んでてな。ついさっき転移魔法陣でここに飛ばされちまったばかりでなにも知らないんだよ。できれば近くの町まで案内してくれないか? あと冒険者ギルドに登録もしたい」
「は、はい。私でよければ……」
「すまないな。それと、近くに水場はないか?」
「すぐ近くにありますけど……」
「ならズボンを洗ってから街にいこう。そのままじゃいやだろ?」
俺の言葉に何のこと? といった表情を浮かべていたレイユだったが、自分のズボンを見て顔を真っ赤にして水場に走っていった。
そのあと俺は壊れたヒツギを叩いてもとにもどし、レイユが洗い終わって着替え終わるのを確認してもらってから合流した。
レイユから「このことは絶対に内緒ですからね!!」と、くぎを刺されたが別に言いふらすようなことでもないだろうに……。まあ肝に銘じておこう。
そして俺たちはコロイドの街へと向かった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『冒険者 Lv40
格闘家 Lv40
狙撃手 Lv32
盗賊 Lv30
剣士 Lv28
武闘家 Lv23
戦士 Lv23
魔法使いLv28
薬剤師 Lv30
鬼人 Lv5
????の勇者Lv7
狙撃主 Lv1
獣人 Lv1 』
章形式へと変えました。今回から第2章になります
pv30000突破!
ありがとうございます!
ではまた次回