アハト・マ・カシュマとの話です1
「私の名はアハト・マ・カシュマ。冒険者ギルド総本部でギルドマスターをしている」
その名を聞いた瞬間、俺たちの間に異様な緊張感が生まれた。
俺はすぐにでも動けるように腰を少し浮かす。マナとヒツギも同様だ。キャラビーは後ろに立っているからすぐに動けるだろうけど、俺たちが考えていることはおそらく伝わっていないだろう。天上院が使えたとかいうテレパシーが使えるようになりたい……。
「初めに言っておこう。私は、あの日、あの場所に、王族としてではなく冒険者ギルド側の責任者の1人として立ち会っていた」
「マナ結界! 全員手を!」
「この部屋では魔法は使えないようになっている。もちろん私たちもだ」
「ちっ、『獣化』」
俺も『小規模ワープ』でキャラビーの方に跳ぼうとしたけどできなかった。『テレポート』もおそらく機能しないだろう。俺は、少しでも速く、3人を連れてこの場を離脱できるように、スピード重視で『獣化』を使う。
「落ち着いてください、メイさん。アハト様もあまり刺激しないでください」
「何を言う。こういうものは無駄に隠し事をするから余計に疑われるのだ」
「あなたの発言のせいですでにこれ以上ないくらい疑われてますよ!」
「何を言う! 貴様こそあの場にいたことをこの者たちに伝えたか? 伝えておらぬだろうが!」
なんだか向こうは向こうで口論を始めてしまった。ソディアさんも王国側の人間だと考えていいだろうな。なんとか逃げるにしても、この状況は俺たちからしたらチャンスだよな。
「マナ、ヒツギ、後ろの壁ぶち抜けるか? 扉はカラスさんに押さえられてるから転移ができる場所まで俺が運ぶ」
「私は魔法を封じられてるから無理」
「わざわざ魔法を封じる結界を使っているくらいだから、ただの木でできているってわけでもないだろうし、ただぶつけるだけだと厳しいかも。回して勢いをつけた状態なら1発で壊せると思うけど……」
「お三方、考えている通り、安くない素材でできてるから壊すのはやめてね。お願いだから」
口論を続ける2人には聞こえないようにこそこそと話していたら、一番遠いはずのカラスさんから声がかかった。まさか聞こえていたのか?
「2人ともいい加減にしてくださいよ。彼らがいかにここから逃げるかを話してますよ? だいたい、あなたたちが話をしたいからとこの場に連れてきたのです。口論を見せて、壁を壊されるためじゃないんですよ?」
「む、しかしだな、この男が隠し事をやめないからだな」
「しかしもおかしもないです。真実を話すにしても、しかるべきタイミングと話の流れがあります。あきらかに今じゃなかったでしょうが。マスターもこの方の性格ぐらい知っているでしょう? もう少し考えて発言してください」
「むぅ……」
「うぅ……」
「まずは話を聞いてもらえる状態に持っていくのが最優先です。メイさんにマナさん、君たちのことはすでにアハト様から聞かされているけど、冒険者ギルドとして君たちを捕えようだとか、君たちを脅そうだとかは一切ない。これだけは信じてほしい。まずは話を聞いてもらえないかな?」
「……何が目的だ?」
話を聞く気にはなったが、念のために『獣化』は解かず、2人もすぐに動けるように構えたままだ。
「ふぅ、ようやく聞いてもらえますか。ほらマスター、アハト様、話の続きを」
「う、うむ。先ほども言ったが、私はあの場に居合わせていた。もちろん君たちのこと、そして勇者のことも聞いている。刈谷鳴君と高坂真那さん」
アハト・マ・カシュマがどんと机に両手をついた。そして
「本当に申し訳ありませんでした!!」
机が割れんばかりの勢いで頭を下げた。
「……なんのつもりですか?」
「いくら謝ったところで許してもらえるとは思っていない。しかし、これだけは伝えておきたかったのだ。冒険者ギルドは君たちに対してこの件でなんらかのアクションを起こすことはない。もちろん公表するつもりもない」
「どういう風の吹きまわしですか?」
俺の質問に、それまで頭を下げたままだったアハトが顔を上げた。
「君たちのことはただの一冒険者として扱うということだ。おそらく商業ギルドでも同じような考えだと思う」
「そういうことじゃない。何をいいたいんだ?」
「……つい先日だ、兄、エルンスド・マ・カシュマの名で、『召喚の儀』の場にいた者全員にある通達がなされた。その内容は、『勇者、天上院古里が魔王の手の者と交戦し、勝利したものの重傷を負ってしまったため現在療養中である。また、同時に召喚されていた高坂真那も同戦闘にて勇者をかばい死亡。各所にて魔王の動きが活発になっていることが確認されている。しかし、勇者は今動かすことはできない。各自十分に注意されたし』」
「私、生きてるんだけど……」
「信じているのは王とその周りの小物だけだろう。少なくとも冒険者ギルド側の参加者は全員信じていない」
「それはそれで困る」
「困ると言われてもこちらも困るのだが……しかし、国は君たちが死んだことになっていたほうが都合がいいとの判断したということをわかってくれ」
「それはわかる。それで、俺たちをどうするつもりだ? さっきの謝罪が心からの謝罪だというのは感じた。しかし、カシュマと名乗っている以上、あんたは王国側の人間のはずだ。ここで俺たちを殺そうというなら、俺はここをぶっ壊してでもみんなを逃がすぞ」
『獣化』ができているからには、『強鬼化』や『竜化』も問題なくできるだろうし、こっそりと足に『鬼の一撃・付与』をしてみたけど、それも普通にできた。これらは魔法ではないし、防げないみたいだな。まだ『竜化』は使ったことはないが、調べた限りではスキルレベルに応じて大きさの変わる竜に変化するとあった。レベル1がどの程度かはわからないが、今の俺より小さくなるなんてことはないはずだ。170cmの竜とか聞いたことも……あ、黄龍は50cmくらいだっけ。
「お願いだから壊さないで! あと、足元にぴぃちゃんがいるからあんまり力を入れるのもやめてもらえないかな?」
若干涙目のカラスさんから悲痛な声が漏れる。『鬼の一撃・付与』が気づかれた?
「ぴぃちゃんって?」
「ぴよ!」
俺の問いに答えるように、ソファの下からからねんどろいどくらいの黒いひよこが出てきた。一瞬カラスの雛かとも思ったが、間違いなくひよこだ。ひよこは、スタタターっとカラスさんのところまで走って行き、カラスさんはそのひよこの首根っこをひょいと持ち上げた。
「ぴぃちゃん、ギルド内でかくれんぼはダメだって言ってあったよね?」
「ぴぃぴぃ!」
「たしかに彼らの会話を聞けたのはぴぃちゃんがかくれんぼをしていたからだけど、それはそれ。しばらく寝てなさい」
こちらからはじゃれているようにしか見えないが、ひよこの抵抗むなしく、カラスさんはひよこを自分の胸にあてた。すると、ひよこは光となってカラスさんに吸収されてしまった。
「カラス、後で始末書を出せ。君たちは冒険者ギルドの理念を聞いたことはないか?」
「理念?」
「掟と言い換えてもいいが、『ギルドは独立組織である。ありとあらゆる権力はギルドに、また、ギルドはありとあらゆる権力に介入してはならない』というものだ。それは当然私にも適用される」
「だから信じろと?」
「ああ。私は冒険者ギルドの本部のギルドマスターになった時、王位継承権を破棄する宣言を出した。『デルフィナ』の貴族ではあるが、所属は冒険者ギルドなのだ。誓ってギルドは国からの指示で君たちに何かをすることはない」
アハト・マ・カシュマの顔をじっと睨む。その表情からは嘘を言っているようには感じられない。
「なんならここで契約魔法による契約としてもかまわない。それを君が望むのなら」
「……この場は信じる。でも、何かあった場合は俺は周りの被害なんかよりも3人を優先させてもらう」
「それで構わない。さて、謝罪もできたし、冒険者ギルドとしての意見も伝えられた。話は以上だ……と言いたいところだが」
「まだダンジョン攻略の確認が済んでいませんのでもう少しお付き合いください」
「そしてもう1つ。君たちにある依頼を出したい」
パンと手を叩いたアハトさんはにっこりと笑ってそう言った。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
遅れてすいません。
やっぱ話だけって書くの難しい…。
ではまた次回