グリムの町に帰還です
久しぶりのメイ視点です。
それではどうぞ!
ミラの町を出て、馬車に揺られること9日。俺たちはグリムの町に戻ってきた。道中、地面がぬかるんで馬車の車輪がはまってしまったり、馬が進めなかったりして2日ほど余計にかかってしまったけど、マキシムさんとミレアムさんに俺が使ったことがない闇魔法について教えてもらったりしていたからなかなか有意義な時間だった。
別に、闇魔法は自分で創れないこともないのだが、消費魔力も激しくなるし、せっかく似たような魔法があるならそのほうが楽なんだよな。まぁ俺以上にマナが闇魔法のバリエーションを増やしてたけど。
「グリムの町が見えてきました。馬車の停留所が町の中にございますので、皆さまカードの準備をお願いします」
御者が馬車の御者側についている小窓を開けてこちらに話しかける。ラムダさんからできれば中に入らないようにって言われてるし、なんとか外で降ろしてもらえないかな。
「あの、俺たち館が町の外にあるので、できたら外で降りたいんですけど、ダメですかね?」
「町の外に館ですか? ……あー、もしかして森の中にあった館ですか?」
「知ってるんですか?」
「私も商業ギルドに所属してますからね。一時期話題になってたんですよ? 呪われた館が売れたって」
「解呪できる人物に伝手があったので頼んだだけですよ。おかげで相場よりは安く買えました」
「私なら解呪されたとしても住みたくないですけどね。でしたら、門のところで一時的に止まりますので、そこでどうぞ。お代は前払いでいただいてますし、トラブルで道程が長引いてしまいましたので。さすがに送るとまではいきませんが」
「ありがとうございます」
その後、俺たちは馬車から降りて、町に入って行く馬車を見送ると、壁伝いに館の方に歩きだした。
みんなでのんびりと話しながら歩いていると、館が見えてきた。俺たちが出る前と何ら変わりない様子だし、少し安心かな。
「帰る時間もわからなかったわけだし、キャラビーもユウカも出かけてるかな?」
「まあそうだろうな。ガンダさんのとこにいるんじゃないか? ユウカならともかく、キャラビーはダンジョンに潜ってるってことはないだろうし」
「そうなると帰ってくるのは夕方かな? 先にユウカが帰ってくるかもしれないけど」
「帰ってくるまでリビングでくつろいでいればいいか」
「私はお風呂入りたいな。メイも一緒に入ろ?」
「俺は後でいいよ」
「メイ、一緒?」
「私は勘弁してほしいんだけどねぇ」
「マキシムさんもミレアムさんも一緒には入らないから安心していいですよ」
「覗き、ダメ」
「覗きもしません。あんまりからかわないでくださいよ。下手なこと言うと2人が調子乗るんで」
俺のセリフにビクっと反応したのが2人ほどいるけど気にしないようにしよう。
「とりあえず俺は部屋に荷物置いてくるんで、リビングででもくつろいでいてください」
「了解」
「ありがとねー」
俺たちは館に入って行った。
「ご主人様! お帰りなさいませ!」
とりあえず案内もかねて全員でリビングに向かうと、キャラビーが飛びついてきた。
「ただいま、キャラビー、怪我とかないか?」
「はい! 問題ありません」
「そうか。ユウカは今はダンジョンか?」
「いえ、町に買い物に行っています」
ハキハキと答えるキャラビーの頭を撫でてやると、くすぐったいのか気持ちいいのか俺の体に頭を押し付けてくる。かわいいやつめ。
そんなキャラビーだったが、マナとヒツギの後ろにもう2人いることに気が付いたのか、俺から離れて若干乱れた衣服を直した。
「ご主人様、そちらの方々は?」
「ミレアム・ドリー、ミレアムでいい」
「マキシム・ドリーよ。私もマキシムでいいわ。よろしくねキャラビーちゃん」
「ミレアム様とマキシム様ですね。初めまして、ご主人様の奴隷のキャラビーと申します。よろしくお願いします」
「挨拶もすんだみたいだし、俺はちょっと自分の部屋に戻ってるよ。キャラビー、みんな疲れてるだろうから風呂の準備をしてくれるか?」
「ご主人様も一緒ですか?」
「なんでお前もその発想につながるんだよ……。俺は後から一人で入るから」
「ご一緒させていただきま」
「せん。後でご褒美はやるから常識の範囲内でなにか考えといてくれ」
キャラビーの思考がなんだか悪化している気がしなくもないが、俺はあえて無視する方向でいくことにした。
風呂の準備に向かったキャラビーを見送って、俺は自分の部屋に向かった。
自分の部屋に着いた俺は、特に何かをするわけでもなく、すぐに屋根裏部屋に向かった。ブラウニーたちの様子を見に来たのだ。
「お前ら元気にしてたかー?」
「「「うにー!」」」
俺が屋根裏部屋に入ると、わちゃわちゃしていたブラウニーたちが一斉に持っている物を掲げてこちらを向いた。相変わらず持っているものはバラバラだが、なんか見たことない模様がついたものを持っているやつが何体かいるな。包丁やナイフ、フォークとかスプーンなどの金属系の物に多いかな?
「特に問題はなかったか?」
「「「うにー?」」」
一斉に首をかしげるブラウニーたちだが、どうも問題はなさそうだ。首をかしげるのが楽しくなったのか、全員ただただ左右に揺れているだけになっている。
「ご褒美ってわけではないけど、みんな腹いっぱい食べてくれ」
俺が腕を差し出すと、みんな順次はむついてくる。しかし、思ったよりも勢いよく吸われたりはなかった。キャラビーがしっかりとご飯をあげていたらしいな。
結局、5分もかからないうちにみんなお腹いっぱいになったみたいだったので、部屋で少し休むことにした。女性陣のお風呂はたぶん長いし、一眠り位できるだろう。
「ずいぶん時間かかったね。メイが戻ってこなかったからミレアムさんもマキシムさんもラムダさんのところに向かっちゃったよ」
30分くらい眠っていたらしく、リビングに降りてくるとミレアムさんとマキシムさんの姿はなく、3人がお茶を飲みながらゆっくりしていた。
「ブラウニーたちにご飯を上げた後少し寝ちゃったんだよ。キャラビーがしっかりと上げてたみたいだったからそんなにがっつかれなかったけどな」
「ブラウニーたちへのご飯はかかさずこなしていました。おかげでスキルも習得できました」
「へえ、どんなスキルなの?」
「魔力回復速度上昇です。ユウカ様が言うには、おそらく減った魔力を、体が早く回復させようと適応したんじゃないかとのことでした」
「そっか。おめでとう」
「ありがとうございます!」
「それで、ラムダさんのところに向かったってどういうことだ?」
「キャラビーがラムダさんから伝言を預かっていてね。宿の場所を2人に伝えてくれって。それで私たちが町に入る前に連絡がほしいってさ」
おそらく天上院の件なんだろうな。門番にギルドカードを見せた時はなにもなかったし、大丈夫みたいだけど、念のためにラムダさんが直接伝えてくれるってわけかな。
「そっか。俺たちは館で待っていたほうがいいな。キャラビー、俺にも飲み物をもらえるか?」
「はい。少々お待ちください」
俺たちは、2人がラムダさんを連れて戻ってくるのをのんびりと待つことにした。
それから1時間ほどすると、ユウカがラムダさんを連れて戻ってきた。ミレアムさんとマキシムさんはどうしたのだろうか?
「皆さんお久しぶりです」
「どうも。ミレアムさんたちとは会いませんでした?」
「いえ、彼女たちには話せない内容もありますし、試験の結果を伝えに行ってもらいました。『黒き翼』のホームにも連絡しないといけないでしょうし、そこで終了と伝えておきました」
「そうですか。わかりました」
「3人とも戻ったのじゃな。元気そうで何よりじゃ」
「ユウカもな。キャラビーのこと、ありがとな。お礼はまた今度ゆっくりとするよ」
「期待しとるぞ。それで、ラムダよ、話を聞くのはこのメンバーでよいのじゃな?」
ほんわかとしていた2人だったが、急に雰囲気が真剣なものに変わった。大丈夫って割には様子が変だな……。
「ええ。皆さんはある意味関係者ですしお伝えしますが、これは他言無用でお願いします」
「ええ。何かあったんですか?」
俺たちは、姿勢を正して尋ねた。
「はい……勇者、天上院古里、そしてそのパーティメンバーが全員、行方不明になりました」
ラムダさんの口から飛び出した、想像もしていない言葉に俺たちはしばし困惑した。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
薬剤師 Lv49/60
聖???の勇者Lv15/??
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 Lv49/50
魔術師 LvMAX(60)
ローグ Lv30/70
重戦士 Lv37/70
剣闘士 Lv28/60
神官 Lv18/50
龍人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
久しぶりのメイ視点でした。
というわけで、今話より第8章に突入します。
キャラビーの物語はいかがだったでしょうか?間章はこれまで天上院の話ばっかりでしたので、新鮮な感じかな?
ではまた次回