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キャラビーの物語です2

キャラビー視点です


 それから20分後、用意を終えてリビングに戻ってくると、ユウカ様はすでに用意を終えていたらしく、ソファに座って水を飲んでいました。


「すいません、遅くなりました」


「構わんのじゃ。そう急ぐわけでもないしの。準備が出来たのなら向かうのじゃ」


「はい。お願いします」


 私たちは揃って玄関から出て、グリムの町に向かいました。後ろでみぃちゃんとアンナが礼をして見送ってくれていました。しかし、その奥に小さいアントたちが見えるのは気のせいでしょうか?




「これはこれはユウカ様。おはようございます」


「うむ、おはよう」


「失礼ですが、身分証の提示をお願いします。ユウカ様と言えど、規則ですので申し訳ありません」


「いや、構わんのじゃ。むしろここで提示を求められん方が問題じゃろうて」


 門のところにくると、門番さんがユウカ様に挨拶をしてきました。一門番さんにまで知られているユウカ様はすごいですね。


「ほれ、ギルドカードじゃ。この子は奴隷なのじゃ。訳あって主に変わってわしが預かっておる」


「一昨日に担当していたやつから聞いています。ランク昇格試験で一時的にユウカ様が預かっているとか」


「そうなのじゃ。同じ説明をせんでいいのは楽じゃな。キャラビー、挨拶じゃ」


「おはようございます」


 ユウカ様に促されて挨拶をする。こうしてユウカ様のいうことを聞くという証明をすることで、ユウカ様が主から預かったということを裏付ける意味合いもあるそうです。


「はい、おはよう。首輪もしっかりとついているし、大丈夫ですね。では中にどうぞ」


 門番さんは私の首輪を確認して中に入れてくれました。


「それじゃあギルドに向かうとするかの。キャラビー、はぐれないように手をつないでおくのじゃ」


「は、はい。お願いします」


 私たちは手をつないで冒険者ギルドに向かって歩き出しました。




 冒険者ギルドに着くと、朝だということもあり、依頼を見に来た人たちであふれかえっていました。


「かっかっか、やはり込み合っておるの。依頼板が人で見えんではないか」


 壁にもたれながらユウカ様は笑っていますが、ここから見える冒険者の多くの顔は真剣そのもので、中には目が血走っている人までいます。少しでもいいものをとろうと必死そのものですね。こうした方々は低ランクの方とか、借金を抱えている人など、とにかくお金が必要な方が多いらしく周りで見ているユウカ様と同じような人は自分の過去に照らし合わせているのでしょうか? 私は生まれた時からずっと奴隷だったのでわかりませんが、若く、ランクがFやEなどの低いランクの時はなかなかお金がたまらず、毎日のように依頼をこなさなければならないのだそうです。しかし、簡単な依頼は依頼料が安く、高額な依頼は難しいため達成できないどころか、怪我をしてさらにお金がかかったりするそうです。これはマナ様が他の冒険者から聞いた話ですが。

 ご主人様とユウカ様は、こうした時期がなかったと聞いています。ユウカ様は、冒険者になってすぐに頭角を現し、近場にあったダンジョンで深くまで潜ってお金を稼ぎ、そのままSランクにまで上り詰めて、騎士団訓練所の所長にとスカウトされたそうですし、ご主人様は冒険者になってすぐにマナ様と合流したそうですし、お金にはあまり困ったことがないそうです。あれ? それってマナ様のお金だったんじゃ……考えないようにします。合流してからはたくさん稼いでいるようですし。武闘大会で優勝もしていますし。





「そろそろじゃな」


 人が少しずつ減り始めて、壁際にいた人もちらほらと依頼を取りに行き始めた中、ユウカ様も依頼を見に行くのか、私の方を向きました。


「そろそろ頃合いじゃ。キャラビーも依頼を見に行くかの?」


「邪魔になりませんか?」


「大丈夫じゃろ。キャラビーも今日は休みとはいえ、明日以降はまた依頼を受けに来るのじゃろう? なら今のうちにあたりをつけておく方がいいじゃろ」


「そうですね……。お供します」


 ユウカ様に連れられて依頼板のほうに向かう私の前に横からすっと大きな影が通りました。


「ん、女とガキか? お前ら親御さんはどうした?」


「わしらは冒険者じゃ。依頼を見に来ただけのな」


「そうか、それは悪かったな。俺はサブラタだ。子供は無理するんじゃねえぞ」


 はっはっはと笑ってユウカ様の頭をポンポンとするサブラタさんですが、私は無言でユウカ様の方を見ます。ユウカ様は笑顔を浮かべるだけでサブラタさんを見ていますが、あの笑顔はいたずらを考えている笑顔ですね。しかし、サブラタさんはそれに気づかず続けます。


「俺にもお前らくらいの子供がいてな。まだまだひよっこだからつい心配になってしまってな」


 私とユウカ様では10以上歳は離れているのですが、それには気づいていないのでしょうか? サブラタさんは身長が3m近くある、筋骨隆々な方なので、周りの方と比べても背が低い私たちは子供の様に見えているのでしょう。しかし、ユウカ様は見た目としては10代後半から20代前半くらいの見た目ですが、実際の年齢はもう数年で3


「キャラビー?」


「すいません」


 口には出していないはずなのですが、ユウカ様に気づかれました。これ以上は考えてはいけません。


「あの、サブラタさん」


 そうしている横で、冒険者の1人がサブラタさんに声をかけました。その手には依頼板の依頼書を持っているので、目的の依頼を見つけてこちらに来たといった感じでしょうか。


「おう、ゴローじゃねえか。怪我はもういいのか?」


「おかげさまで。じゃなくて、そのー、サブラタさんの右手の下の方なんですが……」


「この嬢ちゃんか? こんなちんまいのに冒険者らしいぞ。お前も困ってたら力になってやれよ」


「非常に言いにくいんですが……その人、Sランクです」


 ゴローさんの言葉でサブラタさんの手が止まりました。ユウカ様の笑顔がいたずらが成功したときの笑顔に変わりました。おそらくあのゴローさんという方を先に見つけていたのでしょう。それで誰かが自分のことを話すだろうと踏んでいたのでしょうか? もし誰もサブラタさんに話さなければきっとそのまま言わずに終わらせていたに違いありません。


 止まっていたサブラタさんは、一言「マジ?」と確認し、それにゴローさんがうなずくのを見ると、そっと手をユウカ様の頭から離し、おそるおそるといった様子でユウカ様に尋ねました。


「あ、あの、あなた様は……」


「わしはユウカ・コトブキという。ちんまい女の子じゃがSランクをさせてもらっておる」


「し、失礼しましたー!!」


 サブラタさんが盛大に土下座しました。3mの巨体が勢いよく頭を下げた勢いで少しよろけてしまいましたがユウカ様が手を握っておいてくれたおかげでこけることはありませんでした。


「構わんよ。頭を上げるのじゃ。お主も善意で声をかけてくれたのじゃろう? 女性や子供の冒険者が被害を受けるのはよくあることじゃからな」


「は、はあ」


「若い冒険者の世話をやくのはむしろこれからも続けてくれればよい。むしろ続けてやってほしいのじゃ。しかし、これからは相手をよく見てから話しかけるといい」


「は、はい!」


 ユウカ様はいつものように笑いながら、私の手を引いて、依頼掲示板からすっと1枚の依頼をはがしとり、受付に歩いていきました。結局私は依頼掲示板は見ることができませんでした。明日は少し早く出て依頼を見ることにしましょう。


 受付で依頼を受け終わったユウカ様と私は、冒険者ギルドをあとにして、ガンダさんの店に向かいました。ご主人様がこられない間も休むつもりはありません。休まずにしっかりと技術を学んで、ご主人様に「偉いね」と頭を撫でてもらうのです。


「ガンダさん、今日もよろしくお願いします」


「よく来たな。今日もビシバシいくからな」


「ガンダよ、頼んだのじゃ。わしはちょっとダンジョンに行ってくる。夕方には戻るから、それまではキャラビーをここに置いておいてほしいのじゃ。一人で帰らすには今はちと危ないからの」


「わかってますよ。最近はあからさまに今まで見なかった輩が増えましたからね。うちにも時折面倒な客が来るようになりましたよ」


「これは用心棒がいるかのう。次からはみぃちゃんを連れてくるとしようかの」


「わしが何とかできればいいんですけどねぇ。これでも腕には自信があるんで」


「何かあれば頼んだのじゃ。できれば一人にしないようにしてくれれば幸いじゃな」


「それは大丈夫です。わしの嫁もキャラビーはお気に入りですから」


 ガンダさんの奥さんには非常にお世話になっています。休憩の間に軽食や飲み物をくださるのは非常にありがたいのですが、そのたびに頭を撫でてくるのは少し困ります。ご主人様も笑ってないで一緒に撫でればいえ、止めてくださればいいのに……。


 その後、少し話をしてユウカ様はダンジョンに向かいました。

 私は、今日もガンダさんに技術を学ぶべく、勉強会が始まりました。





どうもコクトーです。

今回もキャラビー視点なのでメイのレベルはなしです。


また遅れてすいません。最近3日で投稿できてない…ネタが…ネタが足りない…


アントホームです4~6で階層の移動がおかしいという指摘を受けましたが、訂正しましたので繋がりはおかしくなってない…はずです。


ではまた次回

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