火の館の仕事です2
セバスさんが出ていった後、他の人たちも順次地下から出ていった。一応『鑑定』した結果を伝えておいたけれど、すでに他の人たちも解析していたみたいで、特に驚かれたりはしなかった。俺と火龍様も風龍様が出た後で出ていったのだが、土の館から火の館に戻る途中でセバスさんが人を連れて土の館に向かっているのが見えた。ほんとセバスさんは仕事が速いな。
火の館に戻ってからは昨日と同じような仕事になった。もともと尋問に半日以上、へたしたら丸1日かかる予定だったから、シンさんに仕事を頼んで、俺と火龍様の今日の仕事はほとんどなかったそうな。俺が見ていた間はまだきついやり方はしていなかったけど、ある程度えぐい方法も用意してあったらしい。どんな方法かは教えてもらえなかったが、3回まで失敗して大丈夫だと言っていたし結構えぐいのだろう。
そういった事情もあり、俺はシンさんと一緒に邪龍たちの解体作業に入っていた。と言っても、俺がやっているのはシンさんが解体した邪龍の素材を1個1個慎重にメモしながら、用意された魔法袋に素材ごとに分けながらしまっているだけだ。
持ってきた邪龍は鎧龍と牙龍の2体だ。鎧龍の方は防御に優れ、牙龍の方は攻撃力に秀でた龍だ。そのため、それぞれ武器、防具にするのに最適なため、それなりに高く売れるそうだ。このことは火の館の地下を『テレポート』のポイントに指定するときに教えてもらった。戦ってる最中には見かけなかったそうだけど、もしあればそれがいいと言っていたので探してみたら、下の方に埋まっていたのを見つけて持ってきたのだ。
ワイバーンの時もそうだったように、龍系のモンスターも売れない部分は1つもない。そのため、素材ごとに分けるため用意してある魔法袋もそれなりの数になっていた。しかし、すべての魔法袋が俺たちのアイテムボックスのように時間が止まるわけではなく、中に入れてあっても劣化が進むものもあるため、それには牙や爪、鱗、骨などを入れていくのだが、袋がいっぱいになるたびに俺のアイテムボックスの異常性がよくわかってしまい頭が痛くなる。まあだからと言って使わないわけではないけどな。
解体作業が始まって6時間が経った。集中力を持続させる意味合いもあり、定期的に休憩を取りながらの作業ではあったが、それもようやくあと少しというところまで来た。俺も手伝えればよかったのだが、いかんせん、俺は龍の解体の仕方なんてわからないし、それに使われる特別な魔道具の使い方なんてもっとわからない。ワイバーンの解体の時とはまた違うものばかりだし、その数も圧倒的に今回のほうが上だ。シンさんは全て使い方をしっかりと理解しているから手際よく進めていたが、俺がやろうと思うと説明してもらう必要がある。もしいちいち説明してもらっていたら今以上に時間がかかっていただろう。
そして30分後、ようやく骨の最後の1本を魔法袋にしまい終えた。シンさんは疲れはててその場に大の字になって寝てしまった。普段であればドレさんと二人でやる解体作業を1人でやり切ったのだから倒れるのも無理はない。
俺は魔法袋をまとめて金庫に入れて、それを背負いながらシンさんを起こさないように部屋に運び、火龍様のところに向かった。
シンさんを運び終えて、火龍様の私室に行くと、火龍様は何かを書いているようで机に向かっていた。
「む、メイか。解体は終わったのか?」
「はい。この金庫の中に全部入ってます」
火龍様は、俺から金庫を受け取ると、机のすぐそばにおいて、俺の方に体を向けた。
「ご苦労。しかし、メイが来たということはシンはもう休んでいるようだな」
「はい。相当疲れた様子でした」
「早く次の者を見つけてやらんとな……。どうだ? ここで働く気はないか?」
「そう言われても、俺たちは明後日にはグリムの町に戻りますので」
「まあ軽い冗談だ。しかし、本当に雇いたくなるくらい仕事ができているからな。これを見てみろ」
火龍様はそう言いながら机の上の書類を俺に渡した。
「これは?」
「今日終わった書類の一部だ。例年ならば来週くらいまで手を付けないような書類なのだがな」
「それが今日終わったと?」
「ああ。人数の関係もあるかもしれんが、今の状態を考えれば非常にありがたい。あたしもシンも書類整理だけが仕事じゃないからな」
「そうですね。俺も一部の仕事をしましたけど、館の外に出てする仕事も多いみたいですし」
「お前たちに言ってない仕事も山ほどある。まああたしじゃないとできない仕事だから仕方ないがな」
「頑張ってください」
「うむ。今日はもう休んでいていいぞ。明日はシンとあたしは朝からギルドに行くから、館のことは頼んだぞ」
「わかりました。では失礼します」
俺は火龍様に背を向けて扉から出ようとした。
「ちょっと待て」
しかし、扉に手をかけた瞬間、火龍様に止められた。振り向いて見た火龍様の顔はにやにやと笑っていた。
「なんですか?」
「お前は彼女らのことをどう思っているのだ?」
「好きですよ。でも、俺は――――」
俺は笑って火龍様の質問に答え、部屋を出た。
部屋を出る瞬間の火龍様の顔は、すでに笑っていなかった。
3日間の火の館での仕事を終え、俺たちは手配してあったグリムの町に向かう馬車の前で出発の時を待っていた。
その場には火龍様とシンさん、それからセバスさんが見送りに来てくれていた。
「『マツノキ』の皆様、ミレアム様、マキシム様、此度は誠にありがとうございました。町の者に代わりましてお礼申し上げます」
セバスさんはどちらかと言えば水龍様の言葉を伝えに来たという感じだった。一人一人に町を守ってくれてありがとうと礼を述べ、俺には黄龍のことで何かあれば相談に乗るとも言ってくれた。火龍様も同じようなことを言ってくれたし、何かあれば頼るとだけ伝えてもらうように言っておいた。
みんなで話すこと10分。馬車の準備が整ったと御者がやってきたので、俺たちも馬車に乗り込むことにした。
「また今度、時間がある時にでも来るといい。その時は歓迎する」
「機会があればお願いしますね。3日間お世話になりました」
「……メイ」
最後にお礼を言って馬車に乗り込もうとしたとき、俺は火龍様にぐいっと抱き寄せられた。
「「なっ!」」
顔が火龍様の豊満な胸元に埋まり、慌てて離れようとする俺の頭を押さえつけて、火龍様は周りに聞こえないようにささやいた。
「お前はもっと2人を信じてやれ。じゃないと、2人に愛想を尽かされるぞ」
火龍様はそれだけ言うと、手を外してくるりと俺を回し、とんと背中を押した。
「御忠告どうも」
俺もそれだけ言って馬車に乗り込んだ。さて……2人をどうなだめるかなぁ……。
俺たちを乗せた馬車は、ミラの町を離れ、一路グリムの町へ向かった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
薬剤師 Lv49/60
聖???の勇者Lv15/??
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 Lv49/50
魔術師 LvMAX(60)
ローグ Lv30/70
重戦士 Lv37/70
剣闘士 Lv28/60
神官 Lv18/50
龍人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
これにて第7章終了になります!
前話で終わる予定だったんじゃなかった? とか聞いちゃだめですよ!
次回からは間章であるキャラクターの話が入ります。何話くらいになるかはまだ未定ですが、メイたちは出てきません。そして少し時間がさかのぼります。
重要なことなので言っておきますが、天上院君ではありません。
ではまた次回