火の館の仕事です1
晩御飯を食べ終えた俺たちは、明日からの仕事に備えてあてがわれた部屋で休むことにした。火龍様の悪ふざけのせいで部屋の割り当てで多少もめたが、なんとか1人部屋を勝ち取ることができた。ちなみに、火龍様は自室で1人、女性陣は2人ずつ2部屋に分かれることになった。火龍様も1人部屋があるならはじめから言ってほしかった。そうすれば俺は苦労しなくて済んだのに……。
次の日からさっそく仕事の手伝いが始まった。
俺が頼まれたのはシンさんの手伝い。火の館周辺の見回りや、地下室前の扉の見張り、あるいは火の館に届けられた苦情への対応などなど、どちらかといえば力仕事や体力がいる仕事が中心だった。そのかわり、書類整理や館の清掃などの家事全般は女性陣に任せていたし、適材適所ってやつだ。
2日目になり、例の4人の尋問に参加した。思いっきり部外者である俺が参加してもいいのかな、とか思ったけれど、火龍様が大丈夫だと言っているし、大丈夫だということにしよう。
俺と火龍様は尋問が行われる土の館に向かった。
土の館の地下は、天井から垂れる岩の棘の中でも、いくつかの棘の先についている魔道具のおかげで視界はしっかりと確保できているが、決して明るいとは言えない状態だった。さすがに足元が見えないほどではないが、入り口からでは奥の壁は闇の中だ。
風龍様も土龍様も水龍様もすでに全員集まっており、それぞれが1人ずつ連れてきており、風龍様はその同行人に肩を借りていた。また、例の4人組は、全員を連れてきているらしく、かなり離れた位置に4本の柱が生えていた。その柱には、猿轡をかまされた顔が生えていた。
「火龍も来たみたいだし始めよう。土龍、1人中央へ」
水龍様の言葉を受けて土龍様が柱を移動させてくる。土魔法で移動させているのだろうけど、顔のついた土の柱が迫ってくるのはなんだか怖い。土の柱を解除して、首から上だけが出るように変えていたが、気絶しているようで一切反応はなかった。解除していた数秒で見えた服装からしてどこかの館で働いていた執事だろうか?
準備が終わったらしく、土龍様が水龍様の方を見てうなずくと、水龍様が、作りだした水球を顔面にぶつけて無理矢理目を覚まさせた。
「これからお前にいくつか質問をしていく。嘘をつくことは許さん」
「むーむーむー!」
「そう喚くな。今猿轡を外す」
「尋問程度で私たちが何か話すと思ったか!」
「いつまでもつか見ものだな。まず、お前は風の館で働いていた執事だな?」
水龍様の質問に、風龍様の顔がかすかに歪む。まあ自分のとこで働いていた人物が裏切っていたというのはつらいだろうな。
「風龍に聞けばわかるだろう? 実にやりやすかったぜ」
「水龍、確かにその男はうちで働いていた執事ですな。見抜けなかった自分が恥ずかしい」
「それは言うな。それを言うなら冒険者の中に内通者がいたことを気づけなかったのは我ら全員の落ち度だ」
「ざまあねえな」
「お前は黙っていろ。次の質問だ。なぜ風龍の娘を狙った?」
「知らねえよ」
「嘘はつくなと言ったはずだ。別にお前が何も言わなくてもまだ3人いるのだぞ?」
「まだ3人? はっ、偉大なる魔王様の使徒たる俺たちが話すはずがないだろ?」
「ほう、お前たちは魔王からの命令で風龍の娘を狙ったのだな。口が軽い男だ」
水龍様が煽るように男に言った。男は顔を真っ赤にして水龍様をにらみつける。しかし、水龍様はそれをスルーするように続けた。
「次の質問だ。お前たちは邪龍たちの襲来についてどこまで知っている? 町を襲った邪龍どもは囮だったとでも言うのか?」
「……」
「おい、さっきまでの勢いはどうした? 口を滑らせるのが怖くなったか?」
男はただひたすら水龍様をにらむだけだ。しかし、それだけで何も言う気配がない。
20秒ほど待ったものの、男が何も言わないと判断すると、水龍様は後ろに下がって土龍様が前に出た。
「お前の番は終わり」
「……」
土龍様が部下に命じて猿轡を噛ませようとしたその時、男が急に目と口を見開いた。
「魔王様バンザイ!」
そう叫んだ男の口から突然昆虫の足のようなものが飛び出してきた。全員が一斉に男から距離をとったが、柱にくくられている他の3人からも同じような足が出ていた。俺もアイテムボックスからステュラを取り出して構えた。
「何が起こっている!」
「あの足は……寄生蝗のか?」
「土龍、こいつら全員何ともないのではなかったのか!?」
「水龍様、間違いなく今朝の時点で彼らに異常は見られませんでした。火龍様からのお話を聞いて、スキル持ちの私に加えて、魔道具を使用しての確認もしましたので間違いはありません」
「しかし、現にこうしてモンスターが寄生しているではないか!」
「私にも何が何だか」
「水龍、落ち着きなさいな。今はこれらを片付けるのを優先すべきではないのか?」
風龍様が水龍様をなだめながら、風の刃を飛ばした。それらは口から頭を出し始めていたモンスターたちを真っ二つに切り裂いた。それによって寄生蝗は暴れることなく死んでいったが、寄生蝗の宿主にされた4人も、体の内部がずたずたになって死んでしまった。
「くそ、結局聞けたのは魔王が裏にいることだけか……」
「それはすでに火龍が魔族から聞いていたことですし、結局収穫は0ですか」
風龍様の言葉に落胆を隠せない俺たち。そんな中、土龍様が怒気を孕んだ声を上げた。
「見つけた。……下!」
土龍様が何かを見つけたらしく、地面に手をついた。そして数秒も経たないうちに地面が揺れ始め、入り口近くの地面が少し盛り上がったかと思うと、土の中から真っ黒なローブを羽織った男が飛び出してきた。
「捕まえて!」
「メイ」
「はい、火龍様。『ダークチェーン』5連」
俺は火龍様が何を言いたいのか理解し、男を空中で『ダークチェーン』の鎖で縛りつけた。土中に潜ってたことを考えると地面や天井につけるのはまずそうだし、1本を天井の魔道具の1つに括り付けて、残りを両手両足に1本ずつ放ち、宙に吊るすことにしたのだ。
「『食い千切れ』斬切ス!」
男はそう声を上げると、口を顎が外れるほどに大きくあけた。すると、そこからバスケットボールほどのキリギリスの様な虫が出てきた。しかし、その体は灰色で、口元は真っ赤に染まり、ただのキリギリスではないというのは理解できた。
斬切スは、俺の『ダークチェーン』の上に乗ると、その真っ赤な口でその鎖を噛み千切った。
「まじか。『ニードル』『アイスロック』」
千切られた鎖が消える前に、何とか斬切スを男から引き離し、『ニードル』で斬切スを撃ち落とす。
そして男を固めた。
しかし、固まる寸前、男が口を大きく開いていた。それで嫌な予感はしていたが、案の定口からまた別の虫が出てきて、氷が砕かれた。見た感じ今度はカブトムシのようだ。
「『風牢』」
今度は風龍様が男を捕えた。風の檻が男を空中に固定する。
「こいつは使いたくなかったんだけど『吹き飛ばせ』転送飛蝗」
今度は男の口から、体に比べて足が異常に大きなバッタが出てきた。バッタは、風にあおられながらも、男を蹴り飛ばした。バッタ本体は自分の足から来る反動に耐えられなかったのか、消し飛んでいた。飛ばされた男は、風龍様の風牢から抜け、壁に激突するかと思われたが、空中でいきなり姿を消した。
「ぐはぁ!」
しかし、消えたかと思った次の瞬間、天井の棘の1つに突き刺さっていた。なんで?
「う、嘘だろ? ランダムとはいえ、こんなと、ころ、に」
どうも先ほどのバッタはランダムな位置に転移させるモンスターだったようだ。そして、そのランダムな位置がたまたま天上の棘だったと。腹ならまだましだったのかもしれないが、完全に胸に穴が開いてしまっている。即死だろうな。
「なんだったのだ、あの男は」
「モンスターを寄生させた本人だったのだろう。見たことのない虫を召喚していたし、いくら土中とはいえ我らが存在を気づけなかったのも気になる」
「死んでしまいましたけどね。土龍、よく気づきましたね」
「警戒してた」
「なるほどな。助かったぞ土龍よ。生きて捕えられなかったことは残念だが、あのような能力を持つものがそうそういるとは思わん。おそらく魔族だろうな」
龍たちの会話に耳を傾けながら、死んだ男を『上級鑑定』した。
『虫狩翼(魔族)
備考:転生召喚者、死亡 』
思いっきり魔族って表示されてる。というか虫狩って、虫を生み出してたよな?
「魔族の研究に使えるかもしれんな。死体は腐らないようにして王都の研究所に送ることにする。セバス」
「そのように準備いたします」
水龍様が男の死体を凍らせ、セバスさんに指示を出した。すぐにセバスさんも地下から出ていった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
薬剤師 Lv49/60
聖???の勇者Lv15/??
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 Lv49/50
魔術師 LvMAX(60)
ローグ Lv30/70
重戦士 Lv37/70
剣闘士 Lv28/60
神官 Lv18/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40
死龍人 Lv1/20
龍人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
また遅れました……
書いてみたらあまりに長くて2話に分けようとしたら間違ってデータが消えたりとかいろいろありましたがなんとか、ね。
結局今話では終わらせられなかったので7章は次で終わりかな? たぶん。
ではまた次回