町の様子です3
2周年記念(遅)連続投稿6日目!
マナ視点です。
私とヒツギは、風の館でメイを待っていた。
もともと、土の館のメイドさんに頼まれてくることになった風の館ではあったけど、風龍様のまさかの事態でその頼まれ事をするのが遅れてしまっていた。一時は風龍様の命がかかっていることもあり、そんな余裕がなかった。館にいる全員が慌てふためき、風龍様のことを心配するあまり仕事が手についていない状態だった。この館の実質ナンバー2とも呼べる人はその状態でもうまく回そうと必死になっていたけど。
しかし、風龍様が一命をとりとめたと知った途端、館中が歓喜に包まれ、ようやく私たちも頼みごとをできる余裕が生まれた。即座に戦力を厳選して、土の館に向かうように指示が出され、私たちの頼まれ事も一段落ついた。
風龍様の回復を待つため、しばらく客間で待っていると、慌てた様子のメイドさんが駆け込んできた。
「やりました! 火龍様方が敵の親玉を討伐したそうです! 勝利です!」
メイドさんは私たちにそれだけ伝えると、すぐに部屋を出て行ってしまった。たぶん風龍様のところかな?
「メイがやったみたいだね」
「そうだね。メイは無事なのかな? 何かトラブルに巻き込まれていなければいいけど……」
そう言いながら頭の片隅に勇者たちの姿がよぎる。理由はいくつか思い当たる節があるけれど、やたらメイのことを敵対視している様子だし、結構前になるけれど、私がメイにかけていた『能力隠蔽』が解けた感覚があった。
私が悪魔のラフォーレから聞かされていた『力』の1つである『能力隠蔽』は、私自身の成長に伴ってその効果も上がっていた。以前教えてもらった時に聞いた話だと、鑑定は防げないはずだったのに、今となってはメイのような上級鑑定でもなければわからないようにできていた。その効果を使って、常にメイの能力を隠してきたのだけれど、それがなんらかの理由で解けてしまったのだ。
メイにはいろいろと隠さないといけないことが多い。職業の数もそうだし、職業そのものもそうだ。特にまずいのが魔人。私が『能力隠蔽』をしたときには有効化されていなかったから楽だったけど、以前この『力』が解けた時のことを考えれば油断はならない。
以前にこの『力』が解かれたと時、それはあのベルゼブブと戦った後だ。メイいわく、急激なレベルアップに体がついてこれず、気絶してしまったと言っていた。その時はいくつかの職業が勝手に他の職業に切り替わっていた。今回も同じようにレベルアップが原因の気絶で解かれてしまったんだとすれば、もしかしたら魔人が有効化されている可能性もある。『能力隠蔽』は直接触れなければ発動できない。メイが戻ってきたらできるだけ早めに使わないと。
しばらく待っていると、火龍様と一緒に『白き御旗』のギルドマスターがやってきた。
「おお、マナとヒツギよ、話は聞いているぞ。風龍の件、本当に助かった」
「いえ、まだ一命をとりとめたところですから」
「いやいや、龍殺しの攻撃を受けていたと聞いた。本来ならば龍殺しの力で受けた攻撃は回復しない。それを回復するようにしてくれただけで十分すぎる」
「そうですね。命があるのであれば、私が回復してみせます。しかし、呪いがそのままであれば私がここに来る前に風龍様の命は尽きていたでしょう」
「その通りだ。しかし、よく龍殺しの力を取り除くことができたな」
「魔法でその力が付与されているだけだったので、それを取り除くようにしただけです。たまたま最近考えていた魔法で対応できたので。でも、かなりぎりぎりでした」
「私も教えていただきたいくらいです」
「機会があれば」
「あ、そういえば火龍様、メイってまだ戻ってきてませんか?」
私たちが話していると、ヒツギが火龍様に尋ねた。
「メイは邪龍の死体を回収しに行くと言って出ていったぞ。私も死体の回収を頼んだのだ。火の試練の間に持ってくる手はずになっている。火の館で待つか?」
「ん……お願いしてもいいですか?」
「うむ。風龍の様子を確認したら火の館に戻る。少し待ってくれ」
「はい」
そして私たちは火龍様が客間に戻ってくるのを待った。
20分くらいすると火龍様も客間にやってきたので、3人で火の館に向かった。風龍様が生きていて安心したのか、火龍様の顔もどこか穏やかな表情だった。
火の館につくと、そこではシンさんが待っていた。操られたドレさんが火龍様と打ち合った槍ではなく、新しい槍をしっかりとにぎり、穏やかな表情でありながらも姿勢を正して、私たちにも目礼をしてくれた。
「お帰りなさいませ、火龍様。マナさんとヒツギさんもお疲れ様でした」
「シン、すでに連絡は受けているようだな」
「はい。邪龍たちは撃退したそうで。風龍様の容態はどうでしたか?」
「今はもう安定している。アーカイブがそばについているから回復するのも時間の問題だろう。ここには敵は来なかったのか?」
「はい。ドレをおもちゃにした輩が来るかなと想像してたんですが、静かなものでした。門のほうに人が多くいましたから、そういう意味合いではうるさかったですけど」
「無事ならそれでいい。今はうちにはお前しかいないからな。お前までやられたら館の維持はだれがやるというのだ」
「そういえばしばらくは俺が一人でやらないといけないんですよね……。お願いですから追加の人員は早めにお願いします」
「わかっている。しかし今はどこも人手がほしいだろうからな。すぐにとはいかん」
「それでも募集くらいはかけておいてください。ほんとにお願いします」
シンさんの言葉からは必死さが伝わってくる。人が増えなければこれまでやってきた仕事がほぼ倍になるのだから必死にもなるよね。
「ではあたしたちは先に中にいるとしよう。お前もメイが戻ってきたら今日はもう休んでいい。明日からは忙しくなるからな」
「は!」
「じゃあ中に行こうか。悪いけど人手不足だから軽食とかはセルフで頼むよ」
「少しなら持ってるので大丈夫です」
「私も」
そう話しながら私たちは火龍様の後について、客間に移動してメイを待つことになった。
どうもコクトーです
前話のあとがきをみて天上院だと思いましたか?
マナさんですよ!
ですのでメイの職業レベルはなしです。
連続投稿は明日で終了になります。
まだ書けてないんですよねぇ…
ではまた次回