転生者との戦いです2
ローブは笑みを浮かべながら言った。しかし、『カースボール』って闇魔法じゃないのか。カースって呪いのことだし、どう考えても闇属性っぽいんだが。
「……む、効きが悪いのか。モンスター相手なら一発で効いてくれるんだが」
どうやら、思った効果が発揮されないのが気にくわないのか、訝しげな表情を浮かべている。
足の止まったローブに対して、その頭上から火龍様が炎弾を放つ。まるで隕石みたいな攻撃だ。しかし、それもローブの光魔法に喰われてしまい、ダメージを与えるには至らなかった。ラムダさんはと言えば、それに巻き込まれないように離れながらツンツン頭を俺たちから引き離すように移動した。こっちに集中できるしありがたいな。
俺は周囲に『ダークランス』を10ほど展開して一斉に放った。
「数が多いな『ひまほう』」
ローブは地面に右手をついて火の壁を作りだす。その壁に突っ込んだ黒い槍は次々と消えてしまう。1本くらい貫けないかなーとか期待していたが、全て消えていく。しかし、見てる限り燃えて消えているわけではなさそうなんだよな。どちらかと言えば触れた瞬間に消えているようだ。
俺は『小規模ワープ』で火の壁の上に跳ぶ。そして『ロックオン』でローブに狙いを定めて『サンダーブレス』を一点に集中させて放つ。しかし、当たるかと思った瞬間、ギリギリで放たれた風魔法に阻まれてしまった。少し遅かったか。
風魔法が放たれたとともに火の壁が消えたため、『空蹴り』で体勢を立て直しながら着地する。さすがに近いし、ステュラを構えて警戒しながらゆっくりと降りるが、予想通り着地の瞬間に闇魔法を放ってきた。
俺はステュラでそれを切り裂き、真っ二つになった内の1つを手で払うふりをして喰らった。
『スキル:病耐性Lv1を習得しました』
あれ? 『カースボール』じゃなくて耐性になってる。それにしても『病耐性』か。『呪い耐性』とも『毒耐性』とも違うんだな。まだこの世界に来てから風邪を引いたことはないし、俺の周りでも風邪でダウンした人はいないから考えてなかったけど、いざ風邪ひいた時もなんか回復魔法でなんとかなりそうな感じがする……。
しかし、闇魔法でも暗黒魔法でもなく、やみまほうか。もしかしてこれって『病み魔法』とかだったりするのだろうか? それなら『病耐性』にも納得がいく。おそらく魔法名を言っていないのではなく、魔法名のみを言っていたのだな。もしかして、これって他の魔法も一緒か?
「火龍だけだったらやりやすいんだがな。先にお前を倒しておきたいな『みずまほう』」
ローブの姿が頭から順に消えていく。『みずまほう』だし、『病み魔法』と同じだと考えれば『見ず魔法』ってところだろうか。とりあえず『ロックオン』で位置を追えるようにしよう。
「なっ! 消えた!?」
わざと大きな声を出して驚いたように見せる。『ロックオン』は残念ながら見えなくなった時点で途切れてしまったようだが、最悪全方位に魔法を大量に放てばどこかで当たるだろう。
「ふっふっふ。見えない敵に恐怖するがいい! 『かぜまほうプラスやみまほう』」
いや、声に出しちゃダメだろ。それに、魔法自体はまるで隠れていないし、『黒槍の雨』みたいに発射地点と自分の位置が違うなんてこともなさそうだから簡単に場所を割り出せた。
「そこだな。『バーストショット』」
魔法の飛んできた方向に『バーストショット』を放つ。それは飛んできていた魔法を飲み込み、姿の見えないローブにむかって飛んでいく。
「『ひかりまほう』」
ローブは『バーストショット』を見てすぐに黒い球体を放つ。そして、『バーストショット』にそれが食らいつこうとした瞬間、下から急浮上した『エアロ』がそれにぶつかった。すると、それは先ほどまで火龍様の魔法を防いでいた魔法と同じ魔法とは思えないくらいあっさりと相殺できた。『ひかりまほう』は『火狩魔法』ってところかな。
「な!?」
『エアロ』が急に飛び出てきたことに驚いている様子のローブに『バーストショット』が直撃し、姿が現れるのと同時にその爆発によって吹き飛んだ。地面をごろごろと転がったローブは、すぐに立ち上がったが、それなりにダメージはあるみたいだ。
「やっぱ『ひかりまほう』は火にしか効果ないんだな」
「どうしてそのことを!」
「なんでだろうな? 言うつもりはないよ。でも……そんな無防備でいいのか?」
俺の方に意識を向けすぎていたのか、火龍様が完全にフリーになっていた。
ローブに上から爪が振り下ろされる。
「『ひかりまほう』!」
振り下ろされる爪に向かって『火狩魔法』が放たれる。しかし、それは火龍様にあたる前に上から放たれた黒い槍にかき消された。
「く、くそが」
それがローブの最後の言葉だった。ゆっくりと持ち上がる火龍様の爪には真っ赤な血がしたたり落ちている。ローブの死体は完全につぶれており、あまり見たいものではないな。
潰されたローブから目を離し、いまだにツンツン頭と戦うラムダさんの方に意識を向けた。
ラムダさんとツンツン頭の戦いはおそらく終盤なのだろうが、いまいち判断しづらかった。
それと言うのも、ラムダさんが一方的に押しているだけだ。そして今も1回ツンツン頭を切り殺した。しかし、その死体が消えたかと思えば、少し離れた位置に無傷の状態で現れたのだ。今が何回目なのかはわからないが、少なくとも俺が見ている限り2回死んでいるのかな? もしかしたらこっちの戦いの間にも何回か死んでるかもしれないな。
「ラムダ、こっちは仕留めた。そいつは捕えられそうか?」
「げ、リオもやられてるのかよ! やばいやばいやばい!」
ラムダさんが答える前にツンツン頭が反応した。その顔は真っ青で、周りを警戒しながら若干腰が引けている。あれ、まさか逃げる気か?
「厳しいかもしれませんね。私では彼の幻覚を見破れそうにないです。たとえ生きたままとらえても、幻覚に騙されて逃げられてしまうでしょうし」
「そうか……。今回の件でいろいろと聞きたいことがあったのだがな……」
ラムダさんと火龍様が話し始めたのをチャンスとでも思ったのか、ツンツン頭は後方にジャンプして、体の向きを変えて逃げ出し始めた。
しかし、別に意識を完全に外したとかそういうわけでもないため、すぐにラムダさんが追撃し、その両ひざから下が切り落とされて地面を転がることになった。しかも、その際に勢いがついていたせいで岩に激突し、頭からどくどくと血を流し、また離れた位置に現れた。
俺は『小規模ワープ』を連続で使ってツンツン頭の上に出ると、『ダークチェーン』でその体を拘束した。今度も勢いはついていたが、岩などに頭をぶつけることもなく、地面に倒れこむだけで済んだようだ。ツンツン頭は、暴れて抜け出そうとしたが、抜けられないと悟ったらしく、俺に向かって話し始めた。
「お、お前、日本人だろ? ここは逃がしてくれよ。同じ日本人のよしみで、な? お、俺の能力は『七転び八起き』。一日に7回まで死ねるって『力』なんだ。でも、さっきのでもう7回目になっちまったんだ。次は復活できねぇ。お、俺は未だ死にたくないんだよ!」
いきなり聞いてもいないことをぺらぺらと話し出したツンツン頭だが、生憎生かすか殺すかを決めるのは俺じゃないんだよな。
さっき気づいたことだが、俺はこの世界に来てから人の死というのを間近で見るのはさっきのが初めてだ。これまで、数々のモンスターは殺してきたが、よく考えてみれば人が死ぬのはみたことがなかった。武闘大会では相手を殺しても生き返るというのがわかりきっていたしな。おそらく、地球にいた時の俺を考えれば、そんなことが目の前で起これば吐いてしまっていただろう。少なくとも今のように冷静でいられる自身はない。実際、今何も感じていないというのが不思議で仕方ないんだよな。
そんなことを考えながら、俺はできるだけこいつの言葉を聞き流しながら、火龍様が降りてくるのを待った。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
薬剤師 Lv49/60
聖???の勇者Lv15/??
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 Lv49/50
魔術師 LvMAX(60)
ローグ Lv30/70
重戦士 Lv37/70
剣闘士 Lv28/60
神官 Lv18/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40
死龍人 Lv1/20
龍人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
なぜ俺はちゃんと予約投稿したと思っていたのか…
というわけで、この小説も連載開始から2年………と1日です。
ここまで来れたのも皆さまの応援あってこそです。本当にありがとうございます!!
でも、240話まできて物語内の時間が1年も経っていないことは内緒だぞ!
8月4日の活動報告でも書きましたが、ここからしばらく更新はお休みとなります。
次の更新は8月下旬 or 9月の頭で、2周年記念の連続投稿です。
ほんとは忙しい間にもなんとか書ければいいんですけどね…。まじで無理そうなので…
しばらく空きますが、その間も感想返しや誤字脱字訂正はやっていく予定です。
ではまた次回