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町の様子です1

前回の話から時間が少しさかのぼります。

そしてマナ視点です。

ご注意ください

 私、マナは火龍様の背中から降りた後、セバスさんの指示でミレアムさんを土の館へと運んでいた。なぜ一番近い火の館ではなく、土の館なのかというと、純粋に火の館では怪我人を看病できるような人手がいないからだ。そもそも火の館にいたのは火龍様とシンさん、そして亡くなったドレさんだけなのだそうだ。


 火龍様が飛び出していった後、町は混乱に陥っていた。それまで、拠点防衛というか、相手を迎え撃つための準備をしていたのに、突然前言を撤回して、町を捨てるという指示が出されたのだから当然といえば当然なのかもしれないが、それは邪龍王ゾンビ・ダムドレアスどころか、私たちがなんとか殲滅した結果、1体も町に向かっているはずの邪龍を目撃していないことも影響しているのだろう。

 ここにいる冒険者たちは普段からこの町の周辺で狩りをして生活をしているような連中だ。そんな連中がこれだけ集まっているのだから少しくらい強いドラゴンが来ても勝てると踏んでいるんだと思う。



 門のところに大半の冒険者が集まっているため、道はあまり混んでおらず、土の館にはスムーズにたどり着いた。

 土の館にたどり着いた私たちの目に最初に飛び込んできたのは、庭にあった3体の腐った龍の死体だった。雨のおかげで匂いがさほど拡散されていないためそれほど気にならないが、もしこれが晴れた日などであればひどいことになっていただろう。


 土の館には、火の館と違い、警備のための人員のほかにメイドや執事が20人以上仕えているらしく、この非常事態で半数以上が町を駆け回っている状態でも、それなりの人員がいた。人数が減ったことで、残った人は残った人で忙しそうにしていたけど。私たちは猫獣人のメイドさんに案内されて客間に通された。マキシムさんもまた別のメイドさんが看護室に運び、そこで意識の回復を待つことになった。

 本音を言えば、すぐにでもメイのところに取って返したいのだけれど、それはできそうになかった。

 私たちを降ろして、そう経たないうちに火龍様が飛んでいったのが気になって聞いてみると、この町の情報を聞いて、やってきたらしい、天上院古里がメイのもとに向かってしまったからだそうだ。あの火龍様の様子だと、それがなくても飛んでいきそうな雰囲気はあったけど。


「あの」


「なんでしょうか?」


「私たちにも何か手伝えることはないですか? 火龍様の背中で十分に休ませてもらいましたし、ただこうしてじっとしているだけというのはどうにも落ち着かなくて……」


 客間に通されたはいいものの、正直することがなくて困っているのだ。普段の落ち着いた状態であれば、本を読んだり、武器の手入れをしたりして過ごすのもいいのだけど、今は非常時だし、今もメイが足止めと称してダムドレアスと戦っていると考えると落ち着けないのだ。ゼルセやヒメ、アンナたちはまるで疲れていないはずだし、総動員すれば負けるとは思わないけど、火龍様が出発前に言っていたセリフが頭から離れないのだ。これならばまだ何か他の仕事をして気を紛らわしておいたほうがいい。


「……本当はお客様にお願いしていいことではないのですが……」


 メイドさんはそう前置きをしてから話し始めた。


「実は、風龍様に連絡を取っていただきたいのです」


「どういうことですか?」


「各館には、連絡を取るための魔道具があるのですが、館の主の許可がなければ使用できないように制限が設けられているのです。土龍様は現在地下に潜って結界に魔力を注いでらっしゃるのですが、地下は基本出入り禁止のため、こちらから連絡することができないのです」


「この非常時でも入れないんですか?」


「この非常時だからこそです。地下には結界を維持するための魔道具が置かれています。それに万が一のことがあれば、たとえ今回の襲撃を耐えきっても、あるいはこの町から離れることになっても、我々は結界を失うことになってしまいます。それを防ぐためにも、地下の制限は平時以上に厳しくしており、執事長のみが出入りを許可されているのですが、その執事長は火の館の魔道具の警備に行ってしまったのです。残った人員で十分に戦える者が執事長しかいなかったというのが原因なのですが……」


「呼び戻したりはできないんですか?」


「代わりとなる人員がいないのです。この館の庭にあった死体はご覧になりましたか?」


「はい。あれだけ派手なら嫌でも目にとまりますよ」


「あれは全て土龍様が仕留めたものですが、あれが1体だったとしても、今この館に残っているものでは歯が立ちません。軽く全滅します。執事長に戻っていただくためにも、戦闘のできる者を呼びに行かせていますが、執事長ほど戦える方はいませんので、執事長が持ち場を離れるかは不明です。数ヵ月ぶりに土龍様直々に命令していらしたので」


 それを聞く限り土龍様は元々地下から出る気が無いかのように感じた。唯一自分に連絡が取れる人物を、自らの命令で他の館の警護にいかせて、まるで、わざと(・・・)連絡を遅らせているかのように。


「わかりました。それで、私たちは風の館に向かえばいいですか?」


「はい。風龍様に現状をお伝えして、指示を仰いでください。あと、できることなら火の館に戦闘員を1人まわしていただくようにお願いしてもらえますか? 執事長に土龍様と連絡を取っていただく間だけでも構いませんので」


「わかりました。じゃあさっそく行ってきます」


「本来ならばこのための人員も私たちで何とかしなければいけないのですが……どうかよろしくお願いします」


 私たちは、ダッシュで仕事に戻るメイドさんを見ながら土の館を出た。私たちつきになっていたから他の仕事ができなかったんだろうな。

 私たちは風の館に向かって走り出した。風の館は土の館から見ると、町のちょうど反対側になる。スピードエンチャントで強化するにしても、けっこう距離があるし急がないといけないね。




 風の館についたのは、それから15分くらい経ってからだった。町の端から端までを15分で移動したと考えるとどれだけ急いだかがわかるだろう。


「ねえマナ、これって……」


「うん。静かすぎるよね?」


 今はまだ門の前に立っただけだけど、その異様さははっきりと伝わってくる。

 まず最初に気になったのは庭の惨状。土の館のように、死体のある周囲だけが荒れているなんて状態ではなく、全体的に、もう目も当てられないくらいぼろぼろなのだ。数あるオブジェに無事なものは1つもなく、地面もボコボコで、激しい戦いがあったことを示していた。


 そして次に気になるのは、死体の多さ(・・)だ。見渡す限りでも30~40くらいはあるんじゃないかな。この世界に来る前だったら、確実にその場でリバースしていただろう状態だ。多くのモンスターを倒してきた経験のおかげだね。女の子として()の死体に慣れているというのはどうなのかわからないけど。

 気になることの3つ目は、そのことだ。ここは風の館だし、攻めてきているのは邪龍の軍勢であるし、龍などの死体があるというのはわかる。しかし、ここには龍の死体は1つしかなく、それ以外はすべて人の死体だ。どれも腕や足が細切れになっていたり、頭が真っ二つになっていたりするから、おそらくこれをやったのは風龍様。しかし、なんで人が風の館を襲うのだろう? この館があるから結界を張っていられるし、そのおかげで普段安心して生活できているのに……。


「っ! マナ、あれ!」


「風龍様!?」


 考え事をしすぎて遅れていた私に、先行していたヒツギから声がかかる。その向けた指の先を見ると、そこには、ぼろぼろの状態で風龍様が倒れていた。





どうもコクトーです


火龍様登場から少しさかのぼって町の様子です。

どこかで入れる予定だったのですが、区切る所がいまいちなかったんですよ…

次回も町の様子をやって、戦闘に戻る予定です

視点が行ったり来たりしてわかりにくくてすいません。


ではまた次回


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