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魔族の男です1

ラムダさん視点です。

ご注意ください。

 私は突然の衝撃が通り抜けた後、急激に速度を上げた。嫌な予感がしたのだ。

 それはある意味では当たっており、ある意味では外れていた。


 戦闘はすでに終了しており、邪龍たちの長は無事討伐されたようだった。しかし、戦っていたはずのメイさんは倒れており、そこに1歩1歩勇者である天上院さんが歩み寄っている。その手には しっかりと剣が握られており、その剣で狙っている相手が誰であるのか一目瞭然だった。

 私は、身体強化の魔法を使って一気に距離を詰めて、つき下ろされるその剣を自身の剣の腹で受け止めた。本来天上院さんが使っているような上等な聖剣と打ち合うための剣ではないし、正直あまり打ち合いたくない。本来メインで使っていた剣が壊れてしまって予備を使わざるをえない状況なのだし、予備の予備に頼らないといけないような状況に陥るのは避けたい。


 天上院さんの言葉を聞いて、私はメイさんを解析した。


『刈谷鳴(人種)

 備考:気絶

 職業:薬剤師、狂人、ローグ、重戦士、剣闘士、神官、魔人、精霊使い、舞闘家、大鬼人』


 正直しなければよかったと後悔するような情報が表示された。職業の数が異常に多かったり、バラバラ過ぎるなどの問題はあるが、何よりも問題はこの『魔人』という職業だろう。おそらく天上院さんはこれを見て魔族だと判断したに違いない。

 しかし、1つだけ気になる点がある。それは、彼が人種と表示されていることだ。これまで私は魔族に二度あったことがあるが、どちらもしっかりと魔族だと表示されていた。例の龍人(ドラゴニュート)の時もそうだった。あの時は名前も?でしか見えず、魔族であるということしか表示されなかったが、それでも、龍人とは表示されなかったのだ。


 私は頭を一度振って思考を打ち止めた。今は彼が魔族であるかどうかは関係ない。彼がこの町を救ってくれた英雄であるという点にかわりはないのだ。意識を取り戻してからゆっくりと問いただそう。私が彼を止められるかはさておき。


「彼に後で事情を聞く必要がありますね」


「後なんて言っていないで、今ここで殺しましょう」


 この男は彼が既に敵であると断定している。火龍様には申し訳ないが、名前を使わせていただこう。


「彼は火龍様が認めた冒険者です。彼を殺せば火龍様を敵に回しますよ?」


「火龍だろうと何だろうと、彼が魔族だったと知れば納得しますよ」


 火龍様を呼び捨てにできるほど上の立場ではないことに気づいていないのだろうか。いや、この男は火龍様のことをおそらく知らないのだろうな。


「なぜ、そう言い切れるのです? あなたは火龍様と会ったことすらないでしょう?」


「僕の第六感がそう言っているからです」


 おそらく無意識にしているのであろうどや顔を見せながら自信満々に話す天上院さんだが、その後ろで魔力が歪み始めた。獣人の男が姿を変えていく。解析をすると、ばっちりと魔族だと表示されていた。他の二人もそうだ。


「……だとしたら、ずいぶんあてにならない第六感ですね。キメラの魔族と言うのは、その後ろの男の様な存在を言うのですよ」


「へ?」


 本気で気づいていなかった様子の天上院さんは間抜けな声を上げてその魔族の男に殴られる。身体能力が高いため、空中で体勢を立て直して着地したようだが、危険察知能力が低くないか?


 魔族の3人組は笑いながら雑談を始めた。

 私はすぐにこの場から逃げ出す経路を考える。もしものことがあれば、最悪メイだけでも連れて帰りたいところだ。世間への影響だとかを考えたらメイではなく、勇者を逃がすべきなのだろうが、天上院さんはおそらく逃げようとしない。敵に背中を見せて逃げ出すなんてできない! とか本気で言い出しそうだし、おそらく私に逃がされるのをよしとしないだろう。それに、大声でメイが魔族であると言いだす可能性もある。勇者が魔族()であるなどと宣言してしまえば、いくら火龍様だろうとどうしようもなくなる。もしも事情を聞いて、何とか対処できるのだとすればそれにこしたことはない。わずかな希望ではあるが。


「まあいいじゃねえか。ばれちまったからには仕方ねえし、みんなやっちまおうぜ?」


 キメラの男が私と天上院さんの方を見てにやにやと笑いながら仲間2人に提案する。どうやらこちらを殺しきるだけの実力があると考えているようだ。


 キメラという種族は、その個体によって戦闘能力が大きく異なる、変わった種族でもある。取り込んだモンスターの量、種類、そして強さによって変わるのだ。

 例えば、スライムの様なモンスターを多く取り込んだキメラは体が液体状になったりするし、ゴーレムの様なモンスターを多く取り込んだキメラは体が取り込んだゴーレムに近くなる。そして、多種多様な種族を取り込んだキメラは、今目の前にいる男のように、それぞれの種族の特徴が出るようなものと、体がその力に耐えきれずに死んでしまうものがいる。つまり、多くの種族の特徴が現れているキメラは、その力に耐えきった証なのだ。それもあり、一般的に1種類のモンスターのキメラであればランクBー、2種以上であればランクBだとされている。この男もそれをしっているからこそ、自分の力に自信があるのだろう。

 男の体を見る限り、最低でも7種類のモンスターを取り込んでいるのがわかる。種類までは把握できないが、そこまで強い種であるようには思えない。メイのように実力を隠せるタイプならわからないが、おそらくこいつらは自分の力を見せびらかすタイプだ。だからこそ、隙を見せたとはいえ、あのタイミングで天上院さんを狙ったのだろう。


「僕を殺せるとでも思ったのかい? 僕は君たちのような輩にやられるほど弱くはないよ?」


「そりゃあ知ってるさ。いいよなぁ、お前たちは『召喚の儀』で呼ばれたんだろ?」


「なっ!?」


「『召喚の儀』でこの世界に召喚されたやつらは、たったそれだけで無条件に3つも『力』をもらえるんだろ? ただのチートじゃねえか。俺たちは(・ ・ ・ ・)そんなにもらってねえって言うのに」


「どういうことだ!」


「お前たちは人間サイドに呼ばれたんだろ? 俺たちはそうじゃないってだけだ」


「まさか……」


「そうさ。俺たちは魔王に『転生召喚術式』で呼ばれた異世界人(・ ・ ・ ・)だよ」


「『転生召喚術式』? そんなもの聞いたことがない!」


「そりゃそうだ。人間サイドには知られていない、今代の魔王が独自に開発した術式だからな」


 天上院さんを含めた4人で話が進んでいくが、正直私にはなんのことかまったくわからない。『召喚の儀』という単語自体は聞いことがある。異世界から特別な『力』を持った勇者を召喚するためのものだと。この天上院古里という少年もその一人で、現在行方不明になっているが、もう1人召喚された人間がいるということも噂程度には聞いている。さっき解析によってメイの名前を見たから、彼がそのもう1人なのかと考えたが、やはり噂というのは信じられないな。


「『転生召喚術式』は特殊なアイテムをいくつも捧げることで、1つだけ望んだ『力』を持った異世界人を召喚できるって術式だ。どの素材も希少すぎるから俺たち以外に召喚されたのは2人だけって話だけどな」


「おい、それくらいにしておけ。しゃべりすぎだ」


「どうせ殺すんだから問題ねえよ。勇者を殺せば間違いなく席の空いた大罪は俺たちがもらえるぜ?」


「それは適合しないと意味ねえだろ」


「強くなりゃ適合するかもしれねえだろ? こんなにおいしい獲物(経験値)もねえだろうよ」


 キメラの男が戦闘態勢になって天上院さんの方を向く。


「俺の名は田中誠也。『力』は『混合多獣魔人』。未来の魔将候補だ!」


 田中誠也と名乗った男は、地面を蹴って天上院さんに向かっていった。


どうもコクトーです


課題が終わらず、昨日は投稿できませんでした。

なんで5問に4時間もかかるのさ…


あと1~2,3話くらいメイ以外の視点の話になる予定です。

予定は未定、あくまで予定ですので。


ではまた次回

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