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僕は真の勇者だ!その11

今回も古里くん視点です

 3人の冒険者とともに偵察に来ていた僕は、その状況に純粋に驚いていた。

 つい先ほど、地面に伏せていないと飛ばされてしまいそうになるほどの強風が吹き抜け、それが止むのを待って慎重に進んでみれば、僕の目の前に夥しい量の邪龍の死体が現れたのだ。おそらく100や200では全然足りないと思えるほどの量だ。

 そんな状態であるにも関わらず、不自然なほどにまっすぐ、死体が存在しない道ができていた。その先には広場のような場所もあり、その奥はここからじゃ見えなかった。


「どうしますか、勇者様? 一応こいつの罠察知は反応していやせんが」


「俺は反応していないぶん余計に怪しいと感じます。こんなもの確実に作られた道です」


 彼らは、ツンツン頭の罠察知をしていた男が何も察知できていないということに逆に不安を感じているようだ。杖を抱えたローブの男も探知系の魔法を使って調べているが、何もでてこない。それこそが罠なのではないかと不安なんだろうね。

 しかし、僕はそんなことはないと思う。道はまっすぐになっているが、別に危険な感じはしない。もし罠が作ってあったとして、それはいったい誰へ向けた罠なのだろうか?

 道幅を見てみると、これは人が2人程度並んで通れる程度の道幅しかない。龍クラスのモンスターが通るには全然足りないだろう。そんな道に罠を仕掛けたとすると、それは邪龍側が仕掛けたものだろうが、僕たちは()からまっすぐここに向かってきた。つまり、これは町側にある道なのだ。邪龍たちがこれだけ倒されていて、戦闘音もしないことを考えると、刈谷鳴が逃げ出して、邪龍は既に移動した後だと思う。ここに好んで仕掛ける必要はない。

 話し合いの結果、僕を先頭にして中央の広場に向かうことになった。



「ひっ!」


「なんて大きさの骨格だよ」


「こ、これ動き出したりしないよな?」


 まず僕達の目に飛び込んできたのは、巨大な龍の骨だった。その体に肉や鱗は一切なく、半分に割れた状態で地面に横たわるその姿は、どことなく儚さを感じる。若干弱まってはいるが、いまだに雨が降り続けていることもあり、骨の表面はきれいだが、内側はそれなりに汚くなっていた。


「おい、あれ!」


 3人組の一人が骨の前に横たわる男を指さした。僕は念のために鑑定でそいつを調べた。


『刈谷鳴(人種)

 備考:気絶

 職業:薬剤師、狂人、ローグ、重戦士、剣闘士、神官、魔人、精霊使い、舞闘家、大鬼人』


「これは……」


 僕が少し前にグリムの町で鑑定した時の物とはまるで違う情報が表示された。その時は職業の欄はビギナーと冒険者と剣士だけだったはずだ。バラーガたちは解析に失敗したと言っていたし、その時は隠蔽していたものだろうということでその情報を少ししか信用していなかったが、今回のこれはおそらく刈谷鳴自身が気絶しているため隠蔽に失敗しているのだろう。


「ねえ、解析は使えるかい? 僕の鑑定の情報と照らし合わせてみたいんだけど」


「それなら俺が。『万物の理を解き明かせ』解析」


 3人組唯一の獣人の男が前に出た。いや君がやるのかよ。


「こ、これは……職業の数が10こも? いや、それより……」


「どうやら君のにも出ているみたいだね」


「え、ええ。しかし、人種と出ているんすよ? まさか偽装ですかね?」


「たぶんね。本人が気絶しているから職業の欄まで偽装が及んでいないのかもしれない。この男は、魔族(・・)だ」


 僕の言葉を聞いて3人組は無意識にごくりと口の中の唾を飲み込んでいた。もしかしたらと疑ってはいても、実際にそのとおりであると知ってどうしたらいいのかわかっていないのかもしれない。あるいは、魔族の協力者で、力を与えられていると思っていたのかもしれないな。僕自身も、悪魔に力をもらっていたと思っていたし、まさか魔族になっているだなんて思ってもいなかった。

 あえて3人には言わないが、おそらく隠蔽が働いているのは他にもあるだろう。それというのも、この大鬼人という職業はおかしい。鬼人族という種族が存在しており、一定のレベルに到達した鬼人族を大鬼人と呼ぶということも知っている。そう。大鬼人とは鬼人族特有の名称であり、職業ではないのだ。おそらく、キメラであることを隠すため、それっぽい名前としてこの職業についていると見せかけているのだろう。しかし、こいつも抜けているな。もしキメラだと隠したいのであれば、大鬼人のほかに獣人という職業についているという風にしておけばいいのに。まあ僕には通じなかったけどね。


「ゆ、勇者様、どうしましょう?」


「どうすると言われてもねぇ」


 魔族は人類の敵だ。王国でもそう教えられたし、僕自身そうやって考えている。だって魔の一族と書いて魔族だよ? どう考えても人類の敵じゃないか。


「魔族は敵だ。気絶しているなら好都合だ」


 僕は聖剣セルを抜いてこの男に突き立てる。きっちり心臓に剣の先を合わせ、確実に息の根を止めれるようにする。


「さらばだ」


 勢いをつけて突き下ろされるセルが刈谷鳴の心臓にぐっさりと突き刺さり、そこからとめどなく血があふれ……ることはなかった。


「彼に何をするのです? 天上院さん」


 僕の剣は、突如として現れた男、ラムダによって止められていた。自身の剣の腹で切っ先を受け止め、刈谷鳴を守ったのだ。


「ラムダさんこそ、何をしてるんですか?」


「見ての通り、彼をあなたから守ろうとしてるんですよ。彼はこの町の英雄です。数多の邪龍たちを屠り、しまいにはSランクが複数人いるとまで言われた邪龍の長をたった一人で討伐して町を救った英雄です」


「彼はキメラの魔族なんです。ここで始末しなければなりません」


「……ばかばかしい。彼はれっきとした人間です」


「解析してみればわかりますよ。今までは隠蔽が効いていたみたいですが、気絶している今、こいつの隠蔽は効果を発揮していない。職業の欄に魔人だとはっきり書いてあります」


 ラムダさんは疑わし気な表情を浮かべたまま無言でこいつを見つめる。そして驚いたような表情をして、首を一度横に振った。


「彼に後で事情を聞く必要がありますね」


「後なんて言っていないで、今ここで殺しましょう」


「彼は火龍様が認めた冒険者です。彼を殺せば火龍様を敵に回しますよ?」


「火龍だろうと何だろうと、彼が魔族だったと知れば納得しますよ」


「なぜ、そう言い切れるのです? あなたは火龍様と会ったことすらないでしょう?」


「僕の第六感がそう言っているからです」


「……だとしたら、ずいぶんあてにならない第六感ですね。キメラの魔族と言うのは、その後ろの男の様な存在を言うのですよ」


「へ?」


 僕はその言葉を聞いて後ろを振り返る。すると、次の瞬間全身に強い衝撃を受けて吹き飛ばされた。なんとか空中で体勢を整えて着地した。


「あーあ、仕留め損ねた」


「へたくそかお前は。なんでそこでパンチなんだよ」


「そもそも、なんで姿を現すんだ? バカなのか? バカなんだな? 受けた命令は様子の確認だっただろうが。欲をかきすぎだ」


 身長およそ2m。タイガー種とスネーク種のモンスターの2つの頭部、コング種のモンスターとクラブ種の2対の腕、リザード種の鱗、バット種の翼、それからベア種の足。

 僕の目に飛び込んできたのは、先程とはまるで別の生物のようになった獣人の男の姿だった。



どうもコクトーです


昨日は書き直ししてたらバイトの時間になってしまいまして…


ではまた次回

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