白虎戦です2
赤い瞳が俺を見ていた。
「反応なしか? さっきまであんなにしゃべってたのによ」
そういっても反応はない。そうこうしてるうちに完全とはいかないが回復する。
ちらっと落ちている剣に視線をやる。見たところひびとかは入っていない。だがあれを取りに行くには白虎の横を抜けなくてはいけないため使うのをあきらめる。
白虎の様子を見るもどこか様子がおかしかった。瞳の色が変わってから俺のことを見る感じが変わったのだ。これまでは俺のことを敵として見ていた。それは間違いなかった。だが、今の白虎の目は俺を敵だとみていなかった。
「グ……グワゼ……ロ……」
今の白虎にとって俺はただの『餌』だった。俺はそれに心から腹が立った。
「さっきまでさんざん楽しませろとか言ってたくせに結局餌かよ。なんなんだよまったく……。俺はさ、谷に落とされて初めてまともに話せるやつにあったって嬉しかったんだぞ?」
この時すでにあの悪魔のことはほぼ頭から消えていたのは俺のせいじゃないと信じたい。
「たとえ戦闘狂だとしてもまだ話せるからさ。なんとかして叩きのめして話し相手になってもらおうと頑張ってたのに……。お前、瞳の色が変わったと思ったら急に餌扱いだろ? お前が俺を食らう気ならさ……」
瞳が赤色に怪しく光る。
「お前が食らう前に俺が喰らってやるよ!!」
俺の叫びと白虎が動くのは同時だった。
白虎が俺を食うべく大きな口を開いて俺を噛みつこうとする。
が、それは俺の腕1本に軽々と止められた。
「スキル『不動明王』」
俺は白虎の牙を右手でつかみ、その動きを封じていた。
スキル『不動明王』。動くことを完全に封じる代わりに圧倒的な防御力を得るスキルだ。その場に足止めされるだけなので手は動かせるが足はピクリとも動かない。これはもともとオーガキングの座っていた玉座に備わっていたスキルだった。座った者の足を玉座に固定するかわりに圧倒的な防御力を与えるというスキルだ。
「はぁはぁ、これかなり体力使うんだな……。だいぶ減ってる今じゃ結構きつい。でも、頼むからこれで終わってくれよ」
俺は腕を振り上げる。そして小指から順に指を曲げていく。その間も白虎は俺を食らおうと力をかけてくる。それでも俺の強化されまくった筋力とスキル不動明王による強化でピクリとも動かない。俺は牙をつかむ手に力を入れる。
「楽になれ。『鬼の一撃』」
そして右腕が白虎の顔に突き刺さる。
つかんでいた牙は折れ体が飛んでいく。殴られたところからは血が出ておりそれが虹のようにアーチを描く。
飛ばされて1度は倒れた白虎だったが、ふらつきながらもすぐに起き上がる。しかしその瞳の色は元の色に戻っていた。
「…………こんなにも早くあの状態から戻されるとは」
「俺を食おうとするからだ。もう終わりでいいのか? ならさっさと俺に喰われてくれよ」
「そうはいかん。まだ我はやられていないからな!」
すぐ目の前に白虎の爪が来ていた。あれ、これまでと速さが違――
「あぶな!」
とっさに横に飛んでかわすも前髪が数本宙を舞った。
白虎はすぐさまこちらに攻撃を仕掛ける。不動明王を使って回復しきれていなかった俺はひたすらかわすのに徹した。しかし速さが格段に上がった白虎の前に反撃の隙も見つけられずにただされるがままだった。
それがしばらく続いて俺の体のあちこちに傷ができては治ってを繰り返しているうちに白虎の動きが急に止まった。おそらくさっきの『鬼の一撃』の影響だろう。それをチャンスと見て一気に距離をとろうと後ろに下がった。が、足元にあったなにかにつまずいてこけてしまった。急なことで対処できずにしりもちをついてしまい、何に引っ掛かったのか理解し、座ったままそれをつかんで白虎のほうを見るとすでに攻撃開始寸前だった。
噛みつきと両前足による攻撃が同時に来る。白虎の顔は自分の勝利を確信していた。
そして血が舞った。
白虎の目から。
「ぐぁぁぁああああああああああ!!!」
前足で目を押さえながら少しずつ後退していく白虎。俺はそれを見て言った。
「運が良かった」
俺は手に持つ剣が折れるのを確認してアイテムボックスに入れる。あのとき俺がつまずいたのは少し前におとした剣だった。それを拾ってとっさに目を狙って『一閃』を使ったのだ。攻撃による勢いがあったのと前足を両方攻撃にまわしていたのもあって剣はばっちり白虎の目を捉えた。そして今の状態になったのだ。
「お前も結構限界だろ? 俺もそろそろ決めないときついんだ。だからさ」
俺の体中に血管が浮き上がり、体の色が赤く変わっていく。心なし顔も怖くなった気がするがたぶん気のせいだろう。俺には見えないから判断のしようもない。
スキル『怒り』防御と引き換えに攻撃を高めるスキル。『攻撃は最大の防御!』とか『攻めて攻めて攻めまくれ!』とか『俺の辞書に守りなんて文字はねぇぇええ!!』とかを地でいくようなスキルだ。白虎ほどの力があれば再生する間もなく死ぬ可能性が高くなるような一種の賭けだ。攻撃を食らわずに攻撃を当てられるか、食らって死ぬか。かなり分の悪い賭けだが今はそんなこと気にしてる場合ではないと判断した。今はとにかく攻撃の威力。そしてそれを実行するにはもってこいのスキルだ。
俺は白虎を睨む。白虎は低く唸ると雄叫びをあげた。『威嚇』だった。たぶん動きを止めて確実に仕留めるつもりだったのだろう。だがここで白虎にとって予想外の事態が起こった。威嚇で動きが止まったと思い攻撃を仕掛けたのだがそれはあっさりとかわされた。白虎はこれまで自分の威嚇を完璧にかわす相手に出会ったことがなかった。そのことが大きな隙をつくってしまった。
「悪いな。上で麻痺の耐性はつけてきたんだ。動きにくいが動けないわけじゃない」
今でも威嚇を麻痺耐性で防げる理由がわからないけどこっちのプラスになるんだから気にしない。
俺は白虎に殴りかかった。『鬼の一撃』が白虎の顎をうつ。白虎は宙を舞った。放物線を描き壁に激突して、重力にしたがって地面に落ちる。今度こそ勝ったと笑みを浮かべる。正直体力があんまり残っていない。『怒り』は常時体力と魔力の両方を消費していく。そこにスキルをあわせると消費量は激しすぎるのだ。
そんなとき、白虎が急に立ち上がった。
「まだだぁ!! まだ我は負けておらん! ふはははは、こんなに楽しいのはいつ以来だろうか!」
「まだたつのかよ……」
白虎は身体中から血が出ており、パッと見ただけでも骨があちこち折れているのがわかる。それでも立ち上がって向かってこようとする白虎に俺は恐怖した。だがこのまま黙っているというわけにはいかなかった。
「今からやるのが今の俺の全力だ。お前も今のお前の全力でかかってこいよ。力比べといこうぜ」
俺は『怒り』を維持したまま力を込める。
スキル『ためる』。攻撃の前に力を込める時間をとることで攻撃力を高めるスキルだ。攻撃までの時間も増えるし隙も大きいから普通の戦闘では結界で防御してから使おうと思っていたが案外使わなくてもいけたからいままで使ってこなかった。ただ今求めているのはあいつを確実に倒すための攻撃力。鬼の一撃と怒りの合わせ技でもだめだったのだからさらにスキルを合わせるしかない。
「これで準備完了……と。さてやろ……お前どうなってんの?」
俺のむけた視線の先――――そこにはどす黒いオーラみたいな何かをまとった白虎がいた。
「ふは、ふははははは! すごい、これはすごい! これほどの力がまだ我の中に残っていたなんて。瀕死に陥ることで初めて顕現する力か。リスクは大きいが、おもしろい。おい、礼を言っておこう。お前は我の予想をはるかに超えてくれた。だから、この一撃で決めてやろう!」
黒いオーラは白虎の体を覆いつくし、体が一回り大きくなった。俺の腕にも力がたまりきる。
「逆に終わらしてやるよ」
「かかってこい!」
両者がお互いに向かって駆け出す。
「鬼の一撃!」
「黒衝拳!」
俺らの攻撃が激突し、その衝撃で舞い上がった土ぼこりがあたりを飲み込んだ。
土煙が収まったとき、俺は…………
地面に倒れていた。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX
冒険者 Lv20
格闘家 Lv31
狙撃手 Lv25
盗賊 Lv20
薬剤師 v20
剣士 Lv15
武闘家 Lv10
戦士 Lv10
魔法使いLv15
????の勇者Lv5
鬼人 Lv3 』
白虎戦も次回で終わる…予定です
pvだけが順調に伸びていきます
それ以外ものんびりしております
ではまた次回




