邪龍襲来です8
増えたダムドレアスを見て、しばらくぽかんとしていた俺だったが、すぐに気を取り直してステュラを取りだした。
ダムドレアスコンビは、1体が右目に角の刺さった、先ほどまでと同じような個体。もう1体は角が刺さっておらず、右目も普通に無傷の個体だ。『上級鑑定』で調べてみると、角ありは『死龍王ゾンビ・ダムドレアス』と表示され、角なしは『死龍王ゾンビ・ダムドレアスコピー』となっていた。角ないのにコピーなのか。
ダムドレアスコンビは、先ほどまでと同じように紫炎槍と紫炎球を撃ってきた。その数は、2体になったこともありかなり増えてはいるが、しっかりと倍というわけではない。ダムドレアスよりコピーの方が数発少なく、飛んでくる魔法自体も3分の2くらいの大きさしかない。劣化コピーなのだろう。
魔法をよく見てみると、先ほどまでと同じように、俺のところにしっかりと向かってくるのは半分以下で、残りは外れて地面をえぐっていた。また新しい体を慣らしているのだろうか?
「だったら慣れる前に終わらせないとな」
俺は先ほどの点から『テレポート』の指定ポイントを移し、ステュラを握りしめてダムドレアスに向けて走りだした。
さっきまでとは違い、もう『暴食の王』は使えない。ただでさえダムドレアスが2体いるという不利な状態なのだが、それが追い打ちをかけている。しかし、『暴食の王』を考慮に入れないというのは不利な点ばかりではない。さきほどまでは使えなかった多種多様なスキルが自由に使えるようになったのだ。
それを再現するかのように、俺は降り注ぐ紫炎槍と紫炎球の間を『小規模ワープ』で一気に抜けていく。とりあえずの狙いは角なしのコピーの方だ。さっきは『暴食の王』の反則的な力でねじ伏せたから、どんな攻撃手段があるのかわからないのだ。一応、2種の魔法、龍殺しのブレス、翼を使った羽ばたき、そして噛みつきは見たが、爪による攻撃や太い尾を使った攻撃はまだ見ていない。龍相手に近接戦闘を挑んだことはないし、そもそもこんなサイズ差のある相手に近接戦闘を挑むこと自体が間違っている気もするが、弱体化している状態のコピー相手にいろいろ試してみよう。
動き出してから30秒も経たないうちにコピーの射程に入った。ダムドレアスの方の射程からは外れるように右に回りながら移動してきたこともあり、ダムドレアスが攻撃するには間にいるコピーが邪魔になる。コピーに集中するためには仕方のないことだ。
コピーはさっそく左腕で薙ぎ払うような攻撃を仕掛けてきた。俺はそれを『小規模ワープ』で上に飛んでかわす。真下を腕が通過していくが、その風圧だけで体勢を崩される。
『空蹴り』でなんとか体勢を整え、『魔宝刀』で強化したステュラで下を通過したばかりの腕に『剣閃』を放つ。しかし、その一撃は表面を軽く切る程度にしかならなかった。竜なら軽く切り裂けるくらいの威力はあるはずなんだけどな。
息つく暇もなく、右腕の振り下ろしが来る。まともにくらうわけにもいかないので『小規模ワープ』でかわすが、そこに正確に紫炎球が飛んできた。もう体に慣れたのか。右腕を突き出して紫炎球を喰らったが、特に何も上がらなかった。まあ『紫炎球』はすでにレベルMAXだし問題はないかな。
紫炎球が消え、すぐにコピーがブレスの動作に入っているのが見えた。
「『鬼の一撃・付与』『一刀両断』」
コピーの足元に転移し、どっしりとした構えから左足を『一刀両断』で切り裂く。近かったこともあり、コピーの青紫色の血を軽く浴びてしまったし、切断とまでは行かなかったが、半ばほどまで切り裂いている。骨は完全に断てているから、骨まで断って、その先の筋肉に止められた形か。
「うぉお!?」
根元が半ばから切れたせいで力の抜けたコピーはぐらりと体が傾いていく。ゾンビというだけあって痛みはなさそうだが、それでも体が急に傾くのはあまり経験のないことだろう。
「っ!」
突如として血を浴びてしまった左腕を激痛が襲った。焼けるような痛みだ。慌てて『アクア』の水球を浮かべてそこに腕を突っ込む。水に血が滲み出て痛みが和らぐ。生活魔法の『クリーン』を使っても完全に洗い落とすことは無理だが、『再生』も重なって痛みが引く程度まではいける。
「「じっとしている暇はないぞ?」」
上と左から同時に声がかかり、視界を覆い尽くすほどのブレスが降ってくる。『テレポート』で指定しておいた、場所に転移してかわした。つか普通にコピーを巻き込んだな。
「む、かわされたか」
「ピョンピョンと飛び回ってなかなかとらえにくいな。しかし、体が軽い」
「下半身がなくなっておるからな。死体ならそこら中に転がっておる。有限ではあるが、しばらく回復に専念しておくがよい」
「そうだな。しかし、血の対応はなかなかよかったな」
「多少のダメージはあるが水球を使って血を洗うとは、咄嗟には判断できんぞ。殺すのが惜しくなるな」
「捕らえて魔王様の配下に加えてもらうか」
「なに、死んでも死霊術師様がいる。我等を創った彼女なら容易いだろう」
「そうだな。任務を果たすのが優先か」
なんかもう勝ったというか、俺を殺した気でいるみたいだけど、殺されるのは勘弁だな。
しかし、今の攻防ではっきりしたのは3つ。
1つは決して血を浴びてはいけないということだ。龍殺しというものを甘く見ていたわけではない。しかし、ダムドレアスが現れる前の迎撃戦で、龍という存在を軽く見てしまっていたのは事実だった。『ダークランス』では無理でも、『ダークネスランス』などの暗黒魔法を思いきり使えば普通に勝てるだろうと。
しかし、龍というのは数多のモンスターの中でもトップクラスの存在だ。龍種のなかで一番弱いとされる小龍ですらランクA-。『生の草原』のボスと同じランクだ。そんな存在を問答無用で殺す龍殺しの血が人に対して毒にならないわけがない。俺は無理に『小規模ワープ』や『テレポート』を使ってでもかわすべきだったのだ。こんなことでは先が思いやられるな……。
2つ目にわかったことは、邪龍たちの死体がある限りダムドレアスはいくらでも復活するということだ。今ダムドレアスコンビの周りに邪龍の死体はない。最初は単にブレスで消し飛んだものとばかり考えていたが、死体をもとに復活しているのなら納得がいく。ただ、問題はどうやって死体を体に変更しているかだ。角ありの方は、俺が『暴食の王』によって完全に吸収しつくした状態から復活してきた。そういえば角も吸収したはずじゃなかったっけ? もし角も復活しているのだとしたら、コピーの方に角が刺さっていない理由がわからない。いや、でも両目が見える方がいいんじゃないか? でも劣化コピーみたいだし……。ちょっと角を狙って攻撃してみるか。
角のことはおいておくとして、3つ目はこいつらの黒幕が魔王の配下の死霊術師で、ゆっくりとダムドレアスたちを洗脳しているということだ。ダムドレアスのセリフから魔王が背景にいるということはわかっていたし、ゾンビであることから死霊術師がいることもわかっていた。以前会った彼女のことが頭をよぎったがまさか、な。
そして、洗脳に関してはコンビの話を聞いていればわかる。もともとダムドレアスは邪龍たちの死体を見て同胞だと言っていた。しかし、今はただの素材扱い。しかも魔王様とか言ってるし。
「まずは疑問を解決しないとな。『スピードエンチャント』『獣化』」
俺は気合を入れなおして、再びダムドレアスに向かって駆け出した。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv98/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv13/??
狙撃主 Lv54/70
獣人 Lv19/20
狂人 Lv33/50
魔術師 Lv52/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv9/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40
死龍人 Lv1/Lv20
龍人 Lv1/Lv20 』
一日遅れて申し訳ないです。
結構ギリギリになりましたが、体調は戻りましたよー。
ではまた次回