邪龍襲来です7
後半視点が変わります。
「死なぬ死なぬ死なぬ! あの男を殺すまで俺は、俺の怒りは決して死なぬ!」
「いや、すでにゾンビじゃねえか。いい加減倒れろよな……『ベルゼブブ』」
ダムドレアスが『暴食の王』の力に抗うこと早5分。2度目の『ベルゼブブ』を使ってため込んでいたものを俺の力へと変換するが、『紫炎槍』と、新たに手に入ったスキルの『紫炎球』のスキルがMAXになっただけだった。
1度目の時はパラメータの表示が追い付かないほどに能力を得られていたのにもかかわらず、2度目になってほとんど能力を得られなかったのには、2つの理由があった。
1つは1度目の発動ですでにほとんどの邪龍たちの死体を喰らってしまっていたことだ。
今、俺の周囲はきれいに円状に死体がなくなっている。まるでミステリーサークルみたいだな。しかし、あくまでもそれは俺の周囲のものだけであり、それより外にいる邪龍たちは未だにその死んだ身体を雨に濡らしたままだ。できることなら移動しながら吸収してまわりたいのだが、その場にじっとしながらの制御でさえままならないのにそんなことできるはずもない。ただ、割とマジでそろそろ限界……。
そして、もう1つの理由はこの延々と降り続けている雨だ。
1度目の『ベルゼブブ』の発動で大幅に上昇した魔力のおかげでキャパはいくらか上昇した。というか、魔力基準だったんだな。
まぁそれはいいとしても、キャパが増えたことで、吸収できる量は増えてはいる。しかし、2度目の『ベルゼブブ』ではそのキャパの大半は雨水、つまるところ、ただの水で埋め尽くされていた。面積10000㎡の円に五分間降り続けた雨の量がそのまま吸収されたと考えれば当然かなという気もしなくもないが、雨水を喰らったところで何も得られないし、ただの無駄なんだよな。
「くそぉおお! こうなったら!」
ダムドレアスの物理的な攻撃が届く範囲まできた。ここまできたらダムドレアスも半ば自棄になっているのか、『暴食の王』の球体、もしくは俺を喰らおうと突っ込んできた。
「悪いな。それ、無駄なんだ」
範囲内に入った部分からどんどん消えていき、結局ダムドレアスは『暴食の王』に吸収された。それはもう非常に呆気ない最期だった。
「こんな最期は不本意かもしれんが俺だって死にたくないんだ。悪く思わないでくれよ」
聞こえていないだろうけど、俺はダムドレアスに語りかけた。それと同時に『暴食の王』の球体も消える。限界だったみたいだな。
『職業:死龍人になりました。
龍人になりました。 』
『スキル:不死殺しLv3を習得しました。
対不死威力上昇LvMAXを習得しました。
対龍威力上昇Lv7を習得しました。 』
『暴食の王』が消えたことで色々なスキルが手に入った。『不死殺し』は『対不死威力上昇』の上位スキルのようだ。対獣、対龍にも同じようなものがあるのだろう。獣人や龍人のレベルが上がればゲットできるのかな?
職業に関しても龍人はわかる。これまでも、真オーガキングを喰らって鬼人、白虎を喰らって獣人、悪魔であるベルゼブブを喰らって魔人の職業を得ているし、龍王を喰らって龍人になったのだろう。しかし、死龍人ってなんだ?
「主よ、身体は大丈夫か?」
「問題ねぇよ。1回目だけちょっと焦ったけど、2回目はほとんどが雨で喰らった量も少なかったしな」
「そうか……俺は少し休ませてもらう。しばらくは暴食の力は使わない方がいいだろう」
「わかってるって。お前の制御なしに使おうとは思わないし、そもそも使える状況がほとんどない」
今回は残ってダムドレアスの足止めをするというもっともらしい言い分があり、尚且つ周りに敵しかいなかったからこれだけ派手に使うことができたが、普通使えるような状態はほとんどない。まず半径100m以内に人がいない状態じゃないといけないし、開けたところじゃないと使いにくい。そもそも使うのにリスクがあるのにそんなに使いたくはないんだよな。
コルクが戻るのを確認して、改めて俺は周りを見渡した。
『暴食の王』が吸収しつくした結果、この周囲だけは何もない荒野になっているが、その周りにはしっかりと邪龍たちの死体が残っている。相変わらず雨は激しく振り続けているが、今は恵みの雨とでも言うべきかな?
「とりあえず、もう何体か邪龍を回収して町に戻」
何気なく後ろを振り返った瞬間、俺はその光景に絶句した。
「何が起こってんだ? たった今倒したとこだろうが!」
「「偉大なる魔王様のクソ野郎のため、全部ぶっ壊してやらぁああ! 待ってやがれクソ龍人ォオオオ! 全員ぶっ殺す。てめえだけは俺が殺してやる!」」
その目に入ってきたのは、『暴食の王』によって死体を吸収した範囲の外にいる、2体のダムドレアスの姿だった。
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なんだかすごい光景ね。
私は今、自分がきっかけでこれから起こるはずだった悲劇をその目に焼き付けるため、はるか上空でその光景を眺めていた。
私がもともと死龍王ダムドレアスに施した術式は2つ。
1つは対象のゾンビ化。これは私が最も得意としていた死霊術の中の1種だ。
死霊術は、その名の通り死霊を操る術、霊を物に降ろしてそれを操る降霊術、そして条件はかなり厳しいものの、対象をゾンビ化する術の3種類がある。ゾンビ化の魔法はそれほど得意ではなのだが、魔王様からの命令である以上、彼を守るためにも私はやるしかないのだ。
そして、憤怒の彼には内緒にしてあるが、降霊術の応用で、私が独自に開発した術式を施した。
ゾンビ化よりも条件が圧倒的に厳しく、今回のように、ゾンビ化するための素体が強大な力を持ち、少なくとも数千体の同種の新鮮な死体があり、そしてその魔力をおしこめておけるだけの依代になる物がある場合にしか効果を発揮しない。それこそが憤怒に内緒にしていた理由。
憤怒はやたら死龍王ダムドレアスの右目に刺さっている自身が過去にダムドレアスに折られた角を気にしている。私がダムドレアスをゾンビ化するときにも抜くことは許さなかったし、それを治療できるだけの人材がいるにも関わらず治療しようともしなかった。並々ならぬ思いがあるみたいだけど、龍人の角は一度折れてしまえば、もはやそれはただの物に過ぎない。正直なところ、私は物なんかにそこまでいれこむ理由がわからないけどね。
今回、その角を依代として利用したけれど、それにも相当苦労した。憤怒の彼の思いと、死龍王ダムドレアスの彼に対する恨みと怒り、そして渇望ともいえる感情が溶け込んだせいで呪物ともよべる存在になっていた。そのせいで術式を刻み込むのにも一瞬たりとも気を抜けなかった。夜更かしは肌に良くないのに……。あ、私霊だったわ。
本当は、彼が取り出したダムドレアスの心臓の代わりに埋め込んでいた核を依代にしようかとも考えていたけれど、今思えばやめて正解だったわね。あっさりとあの暴食の力に飲み込まれてしまったし。使い手の方は気づいてないみたいだけど。角は何とか回収が間に合ったってだけなんだけどね。
今地上には、依代に刻んだ術式が起動して、ゾンビ化したダムドレアスが復活したけれど、ダムドレアスはその術式を利用したようね。さすがは死龍王といったところかしら?
私が作った術式は新鮮な死体をダムドレアスの体の素材として利用しているものだけど、ダムドレアスはそれを改造して、能力の劣る自分の分身を作ったみたい。でも、それをするたびに自分が復活するための素材がなくなっているのだけど、私知らないわよ?
ダムドレアスコンビが動き出した。
暴食の新たな使い手を意図せず見つけてしまったせいで報告に行かないといけなくなった私は、最後まで見たかったのを我慢して一旦魔王のもとに戻った。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv98/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv13/??
狙撃主 Lv54/70
獣人 Lv19/20
狂人 Lv33/50
魔術師 Lv52/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv9/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40
死龍人 Lv1/Lv20
龍人 Lv1/Lv20 』
後半視点が変わりました。
誰かはわかると思います。
ではまた次回