火の試練です2
戻ってきた俺に、二人(?)はポカンとした表情を浮かべていた。まぁ勝つとしても薄氷の勝利。基本的には敗北すると思ってただろうけど、過程がどうであれ、結果的には無傷の勝利となっているのだから無理もないかな。
今回の戦闘を見ていたのがこの二人だけとは思わないが、他の龍たちも認めてくれるかな?
「倒してきました」
「お、おう。よくぞ倒した。火の試練、合格を認めよう」
「ありがとうございます。なら早いところマナたちのところに戻りませんか? まだ体温が高いままなので少し涼しいところに行きたくて……」
「そうか。では戻るとしよう。ラムダ、お前は冷やすことはできんか?」
「多少でよろしければ。アイス」
ラムダさんが生活魔法のアイスを使ってくれた。俺の周囲が心なしか涼しくなったように感じる。
「ありがとうございます。多少ましになりました」
「それはよかったです」
ラムダさんは微笑みながら答えてくれた。
そして、俺たちは火龍様のあとについてマナたちの待つ別室に向かった。
「「メイ!」」
別室についたとたんに二人が飛びかかってきた。今後ろに押されるとラムダさんも巻き込みかねないのでなんとかその場で踏ん張った。しかしマナ、嬉しいんだけど鳩尾に直撃してるぞ。
「怪我はない? 一応ヒール使っとく?」
「いや、大丈夫だ。結構強かったけどなんとかなったよ」
「心配してたんだからね。ほんとによかった」
「火の試練は合格だ。私から黄龍に関してもはやなにかをするということはない。充分に成龍へと至ったとしても押さえきれる実力がある」
「それはよかったです」
火龍様は『私』としか言ってないし、この後他の龍たちが何かしても自分は関係ないというスタンスなのだろうな。つか、今後風の試練、水の試練、土の試練とかあったとしたらすごい面倒だな……。
「シン、ドレはどうした?」
火龍様が、部屋にいるメンバーを見渡して、門番さんが1人いないことに気がついた。もう1人のシンさんはお茶だしなどをしていたみたいなのに、どうしたんだろうか?
「火龍様が火の試練に向かってすぐに来客がありまして、慌てている様子でしたので一旦ドレが対応しています」
「どこの部屋だ?」
「一階の、入ってすぐのところの客室で」
「火龍様、大変です!」
シンさんが話している最中に突如として扉が開かれ、ドレさんが駆け込んできた。その顔色は蒼白で、一大事だということが一目でわかった。
「どうした?」
「山より邪龍の大軍勢がやって参りました。総攻撃としか思えないほどの軍勢のようです。すぐに迎撃準備を!」
「待て、それを伝えに来た者はどうした? そやつの方が詳しい話を知っておろう。疲れているところ悪いが、それが本当であるならば見逃せん。すぐにその者を呼んできてくれ」
「その者にはギルドへ報告に行ってもらいました。彼の仲間が他の龍のもとへと向かっているそうです」
「そうか……で、それはなんの冗談だ?」
「火龍様?」
つい先程まで火龍様がいた場所をハルバードが通りすぎた。その一撃を放った本人、ドレさんはポカンとした表情のままだ。その一撃はとても鋭く、比較対象が変かもしれないが、先程まで戦っていたイフリートなんかよりよっぽど速い。しかし、とてもではないがドレさんはそんな風に動けるとは思えなかった。あれは体がもつのか?
「火龍様、大変です!」
ハルバードと火龍様が抜いた剣がぶつかり、ハルバードの刃が少し欠ける。
「山より邪龍の大軍勢がやって参りました」
火龍様の振るった剣がハルバードをやすやすと破壊した。しかし、ドレさんは近くで呆然としていたシンさんの槍を奪って火龍様に振るう。
「総攻撃としか思えないほどの軍勢のようです」
その槍すらもあっさりと破壊したが、その際に火龍様の剣がわずかではあるが欠けた。
「すぐに迎撃準備を!」
同じ言葉を繰り返しながら爪を火龍様めがけて降り下ろす。火龍様がそんなことをさせるはずもなく、ドレさんの両腕を切り飛ばした。夥しい量の血が吹き出るが、ドレさんの表情は変わらず、火龍様を殺そうと襲いかかる。
「その者にはギルドへ報告にニニニニニニニ」
火龍様が止まらないドレさんの首をへし折り、足と尻尾を切り裂く。力なくだらんと倒れるドレさんは、それでもなお言葉を繰り返し続けていた。
「火龍様、お怪我は!?」
「私は大丈夫だ。しかし……」
火龍様の見つめる先には表情をまったく変えず、壊れたミュージックプレイヤーのように同じ言葉を繰り返すだけのドレさんの姿があった。もはや言葉として成立すらしておらず、なんと言っているのかも曖昧だ。
「……シン、ここに来た冒険者を探し出せ。俺が直々に殺してやる」
「火龍様お待ちください。今はそれよりも邪龍の軍勢の話です。とてもガセであるとは思えません」
「私の腹心を使い捨ての駒にされて黙ってみていろと?」
「そうではありません。このオトシマエは必ずやつけさせます。しかし、それは今ではありません。すべてを終わらせて、そのあとです」
シンさんは口調自体は極めて冷静だ。しかし、その手は強く握りすぎて血がこぼれ、口許からはわずかにブレスが漏れている。
「……ラムダ、今すぐギルドに行き、緊急事態宣言をだせ。私は他の龍たちと連絡をとる。少なくとも、山の邪龍どもを束ね、それを利用しているやつらがいる。生半可な実力の者はいるだけ邪魔だ。お前がピックアップした者だけで構わんから迎撃に出ろ。残りはすべて町の入り口で待機だ」
「ここのギルドに今どんな連中がいるか把握するまで少し時間がほしいのですがよろしいですか?」
「ここにいるやつらはだいたいが単体戦に特化したやつらだ。最悪ここにいる6人でいい」
「わかりました」
「邪龍どもが陽動である可能性もある。今町にA-の者が3人来ているはずだ。そいつらには各門の警備をさせろ。どうせやつらは混線では役に立たん。それと、シン、住民には中央に集まるように指示をだせ。場合によっては各館は戦場になる。避難場所には使うな」
「はっ!」
ラムダさんとシンさんが一足早く部屋をでた。残された俺たちも準備をしなければいけないな。
「ドリー姉妹よ、長女には連絡できんか? あいつならば対多数であればかなり戦力になる」
「姉様、今、一人」
「グリムの町には残ってると思いますが、連絡をとる手段がありません」
「冒険者ギルドの通信連絡用魔道具を借りても無理か?」
「はい。姉様は魔道具を使えないので……」
「姉様、ポンコツ」
「姉さん、間違ってないけど今言うことじゃあ……」
ミレアムさんが酷いことを言ったのに対してフォローしていると思いきや、マキシムさんも酷いことを言っていた。むしろもっと酷い気がする。
「わかった。増援は諦めるとしよう。二人はギルドに周辺の町、村へ連絡を入れるよう伝えてくれ。ここで食い止められなければ滅ぶことになるのだ。防備を固めさせるんだ」
「「了解」」
マキシムさんとミレアムさんも部屋を出ていく。これで部屋に残されたのは俺たちと火龍様だけだ。
「メイよ、お前の規格外さは先程見させてもらった。無詠唱で同時に数十、数百の魔法を操り、火、水、風、土、闇、氷の6属性を使う。それでいて息1つ切らすこともない」
「そんな大袈裟ですよ」
マナならそれに加えて獄炎魔法や回復魔法、光魔法も使えるしな。
「これは私の勘ではあるが……此度の戦い、お前には何か決定的な事件が待っている」
「事件……ですか?」
「ああ。いい意味であることを祈るが、万が一悪い意味だった場合、私たち龍を頼れ。少なくとも、私はお前を認めている。龍の課す試練をクリアしたというのはそれだけで大きな意味を持つ。今回でなくとも、いつか役に立つだろう」
そう言って火龍様は俺の頭に手をのせた。
『加護:守護火龍の加護』
『スキル:火炎壁Lv1を習得しました。 』
「火龍様?」
「これは餞別だ。この町は私たち龍が人間と共に生きる象徴とも言える場所。『万龍狩りの龍人』のようになれとは言わん。しかし、どうかこの町を守ってほしい。よろしく頼むぞ」
それから30分後、降りしきる雨の中、俺たちとラムダさん、マキシムさん、ミレアムさんの6人は邪龍の進軍を止めるため、山の方へと向かって走り出した。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv98/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv13/??
狙撃主 Lv54/70
獣人 Lv19/20
狂人 Lv33/50
魔術師 Lv52/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv9/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』