火の試練です1
イフリートの目がゆっくりと開かれた。
それに合わせるようにしてイフリートの全身から炎が噴き出した。その姿はなかなかに壮大で、先ほどまでのゴリラを思わせるような姿はみじんも感じられなかった。
「おい、火龍よ、この小僧を消せば本当に解放してくれるのだろうな?」
「ああ。もちろん解放しよう。そのかわり、ここでお前が死んだとしても何もしない」
「俺が負けるわけがないだろうが。上級精霊たるこのイフリート様が」
俺を無視して火龍と話すイフリートの炎が強く噴き出し、ある程度の大きさの塊が地面に落ちた。
「グガウ」
その塊が蜥蜴のような形へと変形した。蜥蜴というよりはサンショウウオに近いかな? その数はおよそ10体。1体1体が強い熱量を持っており、わずかに温度が上がった気がする。まぁイフリートが熱すぎるせいでそんなに変わらない気もするけどな。
「ガキ一人の相手なぞサラマンダーどもで十分だろう」
イフリートの言葉でサラマンダーたちが一斉に襲い掛かる。ブレスをはく者、噛みつきにくる者、ひっかきにくる者、のしかかろうとする者など様々だ。
「『全方位結界』」
俺の張った結界に妨げられ、直接攻撃をしようとしたサラマンダーは全員弾かれた。オーガたちにはあっさりと砕かれていたし、強度はそんなでもないはずなのだが、思ったよりも弱いみたいだ。
しかし、『全方位結界』は対物理結界であるので、ブレスは妨げられることなく通過してきた。
「ふん、たわいもない」
『スキル:ブレスLv5を習得しました』
瞳がサラマンダーのブレスを喰らった。『ブレス』はレベル2だったはずなんだけどな。思ったよりも強力だったみたいだ。
一切の火傷もなく、無傷で立っている俺を見て、イフリートが少し驚いたような顔をしていた。しかし、サラマンダーたちは変わらず結界を壊そうと攻撃を続けていた。中には、少し頭がキレるのか、目の前でブレスが通過したのを見てブレスをはこうとしている奴もいた。しかし、瞳が喰らったところまでは見てないのだろうか?
「火には水だよな、『マルチロックオン』『アクア』」
ダメージこそないが、それでも熱いものは熱いし、そうそう何回もくらいたいわけでもないので、サラマンダーに狙いをつけて適当に70発ほど『アクア』を放つ。『アクアボール』より魔力消費は少ないがダメージは変わらないというお得な魔法だ。
サラマンダーは10体いるので1体につき7発。逃げようとしても『マルチロックオン』で捕捉しているため逃げられず、サラマンダーたちは次々と沈んでいった。
「ほう。少しはやるではないか」
「100連『アクア』」
話を聞く気はないと言うかわりに100連で『アクア』を飛ばす。まずは様子見だよな。
「しかし、いかんせん火力が足りない。サラマンダーどもには有効でも、俺には届かない」
自慢げなイフリートだが、実際に俺の魔法は届いていなかった。あまりの熱で届く前に蒸発しているのだ。水蒸気爆発でも起こってくれれば俺も含めダメージがあるかもしれないけど、それが起こる様子もない。厄介な……。
「こっちから行くぞ」
イフリートが拳を後ろに引く。今の俺とやつの距離的に物理的には届かないはずなのだが、おそらく魔法を使うのだろう。
「ふんっ!」
イフリートの巨大な拳が迫る。まだ当たっていないにもかかわらずとにかく熱い!
俺は『スピードエンチャント』でスピードを上げて回避した。ゴウと音を立てて俺がいた場所を腕が通過していった。よく見れば腕が伸びている。後から知ったことだが、精霊は、実体がなく、魔力体であるため、ある程度の制約の中であれば自由に体を変えられるそうだ。
俺はとりあえずイフリートを『ロックオン』しながら『上級鑑定』で調べた。
『イフリート(上級精霊)
状態:強化
備考:地形による強化が発生。熱強化』
イフリートに有利な環境だったってことじゃねえか。たしかに、考えてもみれば炎の上級精霊にとって、こんな熱い場所は願ってもない環境だろう。この環境がイフリートの放つ熱によって作られた可能性も否定できないが、おそらくもともと熱い場所なのだろう。なんと言ったって火龍様の住処だし。
「まだまだいくぞ」
イフリートが拳を次々に放ってきた。俺は『空蹴り』も駆使しながらそれをかわす。多少よけきれなくても、『再生』の回復スピードの方が早いため問題はなかったが、まともに喰らったらやばそうだ。『火吸収』はまともに作用してないみたいだし。あるいは炎と火は違うってことかな?
「んー、このままよけ続けても終わらないよな……」
そんなことを考えながらも攻撃をかわし続ける。しかし、心なしかイフリートの攻撃の間隔が狭まっている気がするな。
イフリートが大きく腕を引いて放った拳をよけたところで一旦距離をとった。さて、攻めるか。
俺は『マジックエンチャント』を使って強化してから、多種多様な魔法を放つ。どれが効果的か測る目的だ。
「こざかしい!」
俺が放った魔法が全てイフリートのブレスに焼き尽くされた。俺自身も焼き尽くされてはかなわないので大きく跳んでかわす。しかし着地した地面が熱いな。
「まあごり押しが一番かな。あんまり変わらなかったし」
今のブレスを見てそうやって決めたことで、俺は周囲に闇の玉を形成した。
「どこまで耐えられるかな?」
そこから俺の攻撃が始まった。
まず手始めに『ダークボール』が50発ほど飛んでいく。それを腕を振るって消し飛ばしたイフリートの体に次々と追い打ちの『ダークアロー』の闇の矢が刺さっていく。しかし、それもすぐに焼き尽くされるが、すぐに頭上から降り注ぐ『ダークランス』が体を貫く。貫かれた部分が炎に包まれて治っていくので効いているのかわからないが、次々と貫かれてはたまらないらしく、炎を放って消そうとしている。そんな風に上にばかり目をやっているから、今度は下から上がってくる『ダークナックル』が全身を打つことになる。
イフリートもされるがままというわけではなく、魔法の多くを相殺しているが、それもごく一部だ。そこで動けないように『ダークチェーン』と『シャドウハンド』で下半身を雁字搦めにした。これにはかなり魔力を持っていかれるが、よけられる方が嫌だ。
「ぬぅう!」
まったく止まることのない攻撃にイフリートの視線が俺を射抜く。まあ止めるつもりはない。
「『ハンドレッドナイフ』『黒雷』『黒槍の雨』『ダークランス』」
あたり一面を闇が覆う。正確には、そう見えるほどの物量攻撃だ。『ハンドレッドナイフ』は1発につき100本、他は1発につき50本だ。
「ぬぅううう!」
予想外といった表情で全身から炎を放つイフリート。全方向にかなりの威力で放っているようだが、足元をがちがちに固められているため、地面の下から襲ってくる『黒雷』に対応できずにそれもまばらになってきている。自身の再生のほうに魔力を回しているのだろう。
そして、追加で10発ずつくらい放ったころ、ついに再生が止まった。それでも、すでに放った魔法を止めるつもりはなく、闇の槍が次々と襲い掛かる。
『職業:冒険者Lv98になりました。
聖???の勇者Lv13になりました。
狙撃主Lv54になりました。
獣人Lv19になりました。
狂人Lv33になりました。
魔術師Lv52になりました。
神官Lv9になりました。 』
『スキル:体術Lv4 聖なる構えLv1 獣化LvMAX 魔力操作Lv1 ヒール1Lv1 を習得しました。』
『スキル:聖なる構えLv1 ヒール1Lv1 が消失しました。 』
『スキル:魔力操作Lv1が魔力操作LvMAXに吸収されました。 』
『スキル:火吸収Lv6を習得しました。
ハンドレッドナイフLv8を習得しました。
マジックエンチャントLv3を習得しました。
スピードエンチャントLv3を習得しました。
マルチロックオン25を習得しました。 』
なんだか久しぶりにレベルが上がった気がする。やっぱり強かったしそれだけ経験値も多いんだろうな。しかし、『聖なる構え』はわかるが、なんで『ヒール1』まで消えたんだろう? 光属性とか聖属性ってことなんだろうか。
イフリートが完全に消えたのを確認して、俺は火龍様たちのもとへ戻った。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv98/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv13/??
狙撃主 Lv54/70
獣人 Lv19/20
狂人 Lv33/50
魔術師 Lv52/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv9/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
レベルの更新は久しぶりな気がします。
たぶん間違ってないはず。
ではまた次回