ミラの町です6
俺たちがついた頃、既にモンガさんたちは荷物を処理し終えていて、表には荷台はなかった。ちらほらと客が入っているのが見える、立派な店舗だ。
用事を済ませるのにも、まずはモンガさんに会わなければ始まらないこともあり、中にいた店員に尋ねてみると、すぐにモンガさんがやってきた。素材とか売却金などもすでに用意してあり、あとは移し変えるだけだったので10分くらいで終わった。さすがの手際のよさだ。
アイアンゴーレムと、ワイバーンの素材の一部の売却金の合計は、なんと金貨1枚と銀貨15枚にもなった。
その中から、銀貨25枚分で食糧やリュウマンジュウ、ロープ、薬草、それから日用品などを購入した。これで一人につきちょうど銀貨30枚だ。
そんなことを考えていたが、モンガさんに内訳を聞いた結果、俺が10枚、マナが30枚、ヒツギが50枚となった。どうもアイアンゴーレムの素材が結構高く買い取られていたらしい。それならヒツギの分を増やすのは当然だろう。
宿に戻り、さっそくリュウマンジュウを食べてみることにした。
リュウマンジュウは、モンガさんが言っていた通り、龍の形をした饅頭だ。さすがに鱗の一枚一枚を正確に再現とかはしていないため、ある程度デフォルメされている龍ではあるが、それぞれの龍がどんな姿であるかわかる形だ。俺は水龍しか見ていないから判断はつけにくいが、それでも水龍だけで見たら本物にかなり近い。
ドリュウ、カリュウ、フウリュウ、スイリュウの順に食べてみた。あんこの入ったドリュウマンジュウが最もスタンダードな饅頭で、他のものはあんこの代わりにそれぞれの味のクリームが入っていた。スイリュウマンジュウはそのまま水飴が入っていたけど。
どれも美味しかったわけだが、個人的にはフウリュウマンジュウが一番好みだったな。わずかにわずかな酸味が心地よかった。マナとヒツギはカリュウマンジュウの方を気に入ったらしい。明日もいくつか買っておこう。
そして、明日の朝7時半に一階の食堂に集合ということにして、それぞれの部屋に戻っていった。
次の日、普段より早い6時頃に目を覚ますと、外ではシトシトと雨が降っていた。しかも、雲の色からするとまだまだ強くなるだろう。
その後、着替えだったり武器の確認だったりをして7時過ぎになり、一足早く食堂に向かった。
「おはようございます。今日の気分はいかがですか?」
食堂につくと、そこではすでにラムダさんたちが朝食を食べていた。
「おはようございます。特に問題はありませんね。例の試練にも普通に挑めそうです」
「それはよかった。昨日のうちに準備を終わらせたそうなので、朝食を食べて少ししたら向かいましょうか」
「ええ。さっさと終わらせるに越したことはありませんからね」
「そう簡単にいけばいいですけどね」
そんな風に話していると、マナとヒツギも食堂にやってきた。
それからゆっくりと朝食を食べ、午前9時ごろ、俺たちは火の館に向かった。
火の館は、水の館とは違い、火があちこちに使われていた。噴水の代わりに篝火があり、水路の代わりに両端に火が点った通路など、とにかく暑かった。もしかしたらラムダさんが汗をかいていたのはこれが理由かもしれないな。
俺が熱気に嫌そうな顔をしていると、マナが生活魔法のアイスを利用してある程度ではあるが弱めてくれた。ラムダさんたちが先を行っている中、わざわざ止まれないので、マナの方を向いて口パクでありがとうと伝えておいた。
「よく来たな。火の館へようこそ」
館の入り口から、昨日会った火龍様本人が現れた。水の館では執事のセバスさんだったのにこっちは本人なのか。
「今日はよろしくお願いします」
「なに、そんなに緊張する必要はない。ただイフリートと殺しあってもらうだけだ。勝てばそれでいいし、負ければ火の試練失敗だ」
「失敗しないよう努めます」
「それじゃあさっそく中に入るぞ。魔剣も中に用意させてある」
俺たちは、火龍様に続いて館の中に入っていった。
館の中はきちんと温度管理がしてあり、熱気もなければ暑さも特に感じなかった。
館の中をどんどん進んでいき、俺たちは鋼鉄でできた大きな扉の前にきた。その前には、門番の二人の竜人が立っていた。
「おう。ご苦労さん。中の様子はどうだ?」
「はっ! 変わらず、異常ありません! イフリートも特殊な鎖で繋がれているとはいえ、おとなしいものです」
「そうか。結界はきちんと機能しているな?」
「もちろんです。我らのブレスなんぞでは少しの熱ですら通すことは叶いませんでした」
「お前らのブレスで通してたらイフリートの炎なんか無理に決まってるだろうが。まぁいい。魔剣を持ってこい」
「はっ! ただいま」
竜人の一人が俺たちとすれ違いに通路をかけていく。身のこなしを見る限り、龍人ではなく竜人であるが、それでもそこらの奴よりは絶対強いな。
それから二分ほどで戻ってきた竜人の脇には、重そうな鉄でできた箱が抱えられていた。
「こちらが、魔剣炎顎にございます。お納めください」
箱が開かれ、中身が俺に差し出される。短剣で、弱冠刀身が長めになっているが、握る部分に牙の形をした装飾がついており、固定はしやすそうだ。
『魔剣炎顎:魔力を込めることで牙に炎が灯り、刀身の温度を上昇させることができる。使用者も熱を感じるため使用には注意が必要』
思いっきり訳あり品じゃねぇか。牙の部分に炎が灯る時点でめちゃくちゃ熱そうだし、それを我慢しても刀身が熱を帯びるから結局熱い。下手すれば手を大火傷するかもしれない。いや、もしかして炎が実は熱くない炎かもしれない。見せかけだけってやつだ。
「あの……これは」
「魔剣炎顎だ。短剣の魔剣の中でも一際火力に自信がある一品だ」
火力に自信があるのかぁ……。願いは叶わなかったようだ。
「火の試練に持ち込んでも構わないが、イフリートは炎の精霊だ。とらえてあるやつはモンスターに分類されるタイプの精霊だがな。しかし、その性質は変わらないから火や炎は一切効果がない。だから使っても意味がないぞ」
「そうですか」
いっそ思いきり投げつけたら燃やし尽くしてくれないかな? いや、喰らえばもしかしたら火の耐性とかが上がるかもしれないな。後日ワイバーンを倒して一緒に喰らっておこう。
「それでは火の試練を始めようか。中に入るのは私とメイ、そしてラムダだけとする」
「私たちはだめなんですか?」
「お前たちには別室で待っていてもらうことになる」
「中に入るのはダメなんですか?」
「これから戦わせようとしているのに言うのも何だが、イフリートはランクA+だ。それがもしも暴走したときに押さえられるものでなければ中には入れさせん」
「私、ダメ?」
「『黒き翼』のミレアム・ドリーか。いくら実力だけならSランクと言われているお前でもだめだ。何かあった時に私と相性が悪すぎる」
「残念」
「まぁさっさと倒して帰ってきますよ。自信はあるから」
俺は心配そうに見つめるマナとヒツギを両腕で抱き、背中をポンポンと叩く。別にランクA+なんか普段からコルクたちの相手をしてるんだから問題ないって。
「それじゃあ行きましょう」
俺たちは扉を開けて中に入っていった。
扉の向こうは、壁際に松明がゴウゴウと燃えている一本道だった。ゆるやかなスロープで下に向かっている。
そして5分ほど進むと、大きな空間に出た。奥の方ではイフリートが両腕両脚を無数の鎖で縛られながら座禅を組んでいた。なんで座禅?
鎖に縛られているためか、一切炎は見られず、見た目的には5mくらいあるゴリラかなにかに見えなくもない。
「あれがイフリートだ。臆したか?」
「まさか。そんなわけないじゃないですか」
火龍様とラムダさんは通路の入り口からは出ず、俺だけが中に入っていく。どうも結界が張られているのが通路の入り口のところまでなのだそうだ。
「それでは火の試練を始める。これから鎖をすべて外すが、まだ開始ではない。私が開始の合図をするから、そこで戦いを始めろ」
「クリア条件はどうなってますか?」
「やるかやられるか。それだけだ」
わかりやすいなと思いながらも、死ぬか殺すかまでやらせるというのにそれはいかがなものかとも思う。
そして火龍様が呪文を唱えると1本1本鎖が外れていく。そして最後の1本が外れた。
「準備はいいか? それでは、はじめ!」
俺がステュラを構える一方で、イフリートの目がゆっくりと開かれた。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv94/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv51/70
獣人 Lv17/20
狂人 Lv31/50
魔術師 Lv47/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv3/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
昨日は忙しすぎて書けませんでした。
すいません。
次回、戦闘開始!
ではまた次回




