ミラの町です4
後半は視点が変わります。
ご注意ください。
水の館から出た俺たちは、マキシムさんたちがとった宿に向かう……前にそこら辺にいる人に道を聞いて、ヤール商会に向かった。それというのも、町の入り口で分かれてそのまま水の館に向かったからそもそもどこにいるかわからなかったのだ。宿の手配をしてくれたのはモンガさんのはずだから、ヤール商会に行けば場所がわかるだろうという判断だ。
ちなみに、黄龍は今は俺が背負った籠の中でお昼寝中だ。水の館から出て、黄龍をどうやって運ぶか考えた結果、籠に入れて運ぶことにしたのだ。俺のそばを歩かせるというのはサイズ的になしだし、頭の上、肩の上に乗せておくというのも目立って仕方ない。その点、籠ならば蓋がついているし、内側に布が巻いてあるタイプだから外からも見えない。その布を布団にして寝たのは予想外だったけどな。
ヤール商会の建物はこの町のなかでもそれなりに大きい方で、表に荷台が数台並んでいたこともあってすぐにわかった。
「おや? メイさんではありませんか。もうお話は終わったのですかな?」
「ええ。ラムダさんはまだ用事があるそうなので先に出てきました。ところで、マキシムさんたちってどこにいるか知りませんか?」
「先に合流してって言われたんですけど、考えてみれば場所がわからなくて」
「たしかに、皆さんには伝えてませんでしたな。この建物の裏にある、『渡り鳥の止まり木』という宿がそうですぞ。たしかお二人は既に部屋で休んでいましたな」
「わかりました。行ってみます」
「私の名前か、お二人の名前を出せば案内してもらえますぞ。マナさんとヒツギさんは二人で一部屋、メイさんは一人部屋になってますので、ゆっくりと休んでいってほしいですな」
「そうさせてもらいます」
できるならば。という言葉が続くのだが黙っておこう。俺はまだ了承していないとはいえ、既にこの後イフリートと戦闘することは決まったようなものだ。
疲れたとか言って明日とかに先送りにはできるだろうが、そう何回もはできないし、狩りに行くのもできそうにない。ワイバーンを喰らったらどんなスキルが手にはいるか気になるんだが……。
「あ、そうそう、ワイバーンの素材と、アイアンゴーレムの代金はいつ受け取られますかな? 護衛依頼とは別枠になるのでギルドでは受け取れませぬが」
「一日二日で用意ってできるんですか?」
「当然ですぞ。我々ヤール商会では、いつでも換金できるように準備が整っていますからな」
「今は作業中のようですし、後で用事が済んだらよらせてもらいます」
「わかりました。今日から一月はここの支店にいるので、いつでも来てほしいのですぞ」
「お願いします」
俺たちはモンガさんに別れを告げて、宿に向かった。
『渡り鳥の止まり木』に入ると、すぐに部屋に案内されたので、場所だけ覚えて二人のもとに向かった。3階建ての建物の、3階の奥4部屋だ。分かりやすくていいな。
部屋の扉をノックすると、中から「入って」とだけ声がした。誰か確認しなくていいのか?
「失礼します」
疑問に思う俺をよそに、マナが先頭で中に入った。中は二人で休むには充分な広さがあり、二つあるベッドにそれぞれ腰かけていた。
「用事、終了?」
「水龍様とのお話は終わったかな? ラムダさんは……いないみたいだけど」
「ラムダさんは別件で残りました。少々面倒くさいことになってまして……」
「面倒事?」
「水龍様の機嫌を損ねたりでもしたかい?」
「いえ、俺が以前もらった卵がちょっと訳ありでして、火龍様に試されることになってしまいました」
俺の言葉に、一瞬だけ二人の視線が背中の籠に向いたが、すぐに視線は戻った。
「それはまた……となると、試験は一旦中断しなくちゃだめになるかな」
「延長、面倒」
「それに関してはラムダさんが戻ってこないと何とも言えませんよね」
「そうだよね。ひとまずは部屋でゆっくりするといいよ」
「そうさせてもらいますね。それでは失礼します」
俺たちは二人の部屋を出て、一旦俺の部屋に向かった。
俺の部屋は、ベッドが一つしかないため、自然と俺が椅子に腰かけることになった。マナとヒツギがそろって二人の間ポンポンと叩いているように見えるけどきっと見間違いだな。
「うにゅ」
座るにあたって邪魔になる籠を地面におろしたが、その時の揺れが影響してか、黄龍が目を覚ましてしまったようだ。小さな手で瞼をこすりながら蓋を開け、籠から顔をのぞかせていた。
「起きちゃったみたいだね」
「すまんな、もう少し寝ていてもいいぞ?」
「らいじょうぶ」
寝起きだから呂律が回っておらず、全然大丈夫そうに見えない。
「そういえば、黄龍はヒメたちみたいに俺の中に潜れるのか? ヒメたちは自由に自分で出てきたりするんだが」
「われはせいじゅうであるゆえ、そのようなことはあさめしまえなのだ!」
「そうか、ならしばらく中にいてもらえるか? 嫌なら別に出ててもいいが、外に出てると目立っちまうからな」
「籠を常に背負ってるわけにもいかないもんね」
「それは棺桶を背負ってる私への当てつけかな?」
「違うよ。ヒツギのはアイテムボックスでもあるんだし、しょうがないじゃない」
「二人とも喧嘩はなしな。黄龍、どうしたい?」
「ちちさまがそういうならなかにいる」
黄龍はそう言うと、自身の足元に魔法陣を展開し、消えた。俺の体に入ったという感覚があったし、今後は自由に出てこられるようになるだろう。ついでに言えば、ヒメたちと同じように復活もできるようになっているようだ。ヒメたちは、もともと俺が喰らったモンスターたちからヒメが作りだしたモンスターなのだし普通とは違うのは理解できるが、黄龍は星獣という特殊な種族ではあるが、普通に卵から生まれたはずなんだけどな……。
俺たちは、ラムダさんが宿にやってくるまで、ご飯を食べたりしてゆっくりと休むことにした。
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「ガッハァ!」
とある山の地下にある、巨大な洞窟の奥。そこの主である巨大な龍の首からどす黒い血が噴き出た。そのきっかけを作ったローブ姿の男は、血を浴びぬように地面を蹴り、再び龍に接近する。
「やめろぉ! それ以上やったら親父が死んじまう!」
頭から血を流し、手足を斬りつけられたせいで動けない、人化した龍の叫ぶ声が洞窟に響く。周りの同じようにぼろぼろの状態で見ているだけしかできない龍たちも、悔しそうな表情を浮かべることしかできなかった。しかし、件の人物はそんなもの関係ないと言うように一切手を止めず、振るってきた尾に刀をぶつける。圧倒的な体格差があるにもかかわらず、尾はその場で止まり、それどころか男が押し返している。
龍は大きく息を吸い、男に向けてブレスを吐き出す。男もそれを受けてはまずいと理解しており、地面を蹴って大きく距離をとる。ブレスを吐ききった龍は、そのついでとばかりに口にたまった血の塊を吐き捨てる。
「ハァ、ハァ、なぜ、貴様は生きている」
「こちらも事情というものがある。本当はこんな風にじゃなくて真っ向からお主との因縁にケリをつけようと思っていたのだがな……。すまない」
「黙れぇ! なにがすまないだ! 周りがすべてを忘れていく中、俺は、お前を殺したくて仕方なかったんだ!」
龍の憎悪と怒気の合わさった雄叫びとともに紫色の火の玉と、同じく紫色の火の槍が男に飛んでいく。対して男は無言で刀を振るいそれらを打ち消す。それでも龍は炎を放ち続けた。
「終われ」
声に応じるような形で、男の体を赤黒い炎がコーティングしていく。着ていたローブが一瞬で焼き尽くされるが、その下に着ていた和服は一切燃えていなかった。その炎はむしろ和服を守っているかのような雰囲気も感じられる。
男がこれまでと比べて一際強く地面を蹴った。男は一直線に龍の頭へ飛んでいき、すれ違いざまにその脳天に刀を突き立てた。刀は天然の鎧ともいえる、その龍の鱗や頭蓋骨をやすやすと貫き、その先端は脳にまで達していた。
龍の体から力がだんだんと抜けていく。もはや助かることはないというのは、その場にいた全員が理解できた。だからこそ、龍は死の間際に、最後の力で思い切り叫んだ。
「我が同胞どもよぉお! この怒りを、憎しみを、恨みを忘れるなぁあ……あ……ぁ……」
龍の最後の一言は悲しく洞窟内に響いた。
「おぉおぉ。これはいい邪龍の死体ね。これくらいの個体ならいいのが作れそう」
洞窟の入り口からゆっくりと歩いてきた、体の透けた女性がその龍の死体を見て声を上げる。
「……」
「あなたからしたら複雑な心境かしら? あなたの自慢の角を折った相手だものね。あれなら回収しておいて、あの子が戻ってきたら回復してもらう?」
「あれはそのままにしてくれ。私の未熟さの象徴であり、この偉大なる龍がいかに強かったかという象徴でもあるのだから。私の角を折った者は今も昔もこいつだけだ。それを抜く奴がいるとしたら、それはこれからのこいつを倒すことができた者だ」
「てめぇら、親父に何を――」
血まみれの先ほどの人化した龍が地面をはいずりながら2人に近づいていく。その目には深い憎悪が見て取れる。
「あら? 仕留めなかったのね。そのまま使う気?」
「私たちの目的はこの龍だけだ。他のは私には関係ない」
「そういうわけにもいかないのよね。魔王様の意思はそうじゃないみたいだし」
そう言う女はすっと右手を上に掲げると、その手の先から小さな黒い針が飛び出し、あたりにいる龍たちにとどめを刺していく。しかし、そんな彼女は浮かない顔をしていた。
「あなたたちよりも制約が強いから仕方ないとはいえ、申し訳ない気分ね」
「適応しなかったのだから仕方ないだろう。適応したらしたでつらいのだがな。さて、ここにいるのは全部使うことになるとして、外のはどうするのだ? さすがにこの山のを全て殺してまわるというのは時間がかかるぞ」
「その辺は大丈夫。ここら一帯のモンスターたちは全てこの龍の配下みたいだから。そのまま使えるわ」
「そうか……」
男は、目を閉じて何も言わずに洞窟から出ていった。残された女は、男の思いを感じ取ったのか、ぼそりと呟いて作業を始めた。
「自分が守った町を自分で潰すのってどういう気持ちなのかしらね……」
そしてしばらく時間が経ち、女が洞窟から出るのに合わせて、死んでいた龍たちもゆっくりと動き始めた。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv94/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv51/70
獣人 Lv17/20
狂人 Lv31/50
魔術師 Lv47/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv3/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
GWだけど結局普段とペースがかわらない…
ではまた次回




