ミラの町です3
「わがなはこうりゅう。おうたるりゅうのまつえい、こうりゅうである!」
俺の頭の上でどうだと言わんばかりに胸を張る黄龍。そういえば、初めてヒメと会ったときも頭の上に乗られていたなぁ、などと思いながら、頭の上に急に現れ、地味に重量があるために首が痛い。
「うにゃ?」
俺がそっと両脇を支えて目の前に持ってくると、顔を傾けながら猫みたいな声でないた。
姿形は人を少し弄ったような感じで、体の大きさはブラウニーくらい。それでいて重さはヒメよりも重い。金色の短髪のボサボサヘアで、頬からは3本ずつ髭のようなものが伸びている。目はくりくりだが、閉じた口からかすかにはみ出ている牙が力強さを感じさせた。背中には自身が龍であることを示すように黄色の尻尾と、申し訳程度に翼がはえている。
星獣だから特別なのかはわからないが、金色と黒色の布が左右半々で使う形で作られた袖のない服を着ており、両腕の二の腕の辺りをつなぐヒモがどういう理屈か浮いていた。
「ちちさまー、どうかしたのー?」
俺が何も言わずに観察していることに疑問を抱いたのか、首をかしげて尋ねる黄龍。うん、かわいい。じゃなくてだな。
「お前、星獣なの?」
なんで人型なのかとか、龍種じゃなくて龍王種なのかとか、手の上においていた卵から孵ったのになぜ頭の上に乗るのかとか色々と突っ込みたいところはあったが、一番気になるのはこの点だった。
「しかり! われはほこりたかきりゅうおうしゅであり、せいじゅうなのだ!」
黄龍は短い腕を組んで、胸を張る形で答えた。俺が脇を抱えているため足がぷらぷらと揺れているが、ほんとはどっしりと構えたいのだろう。
とりあえず両手で抱えていたのを左腕に抱き直し、ほっぺをつついておいた。ぷにぷにだな。
「ただの龍種ではなく龍王種の末裔とはな。驚いた」
周りの全員が俺と黄龍のやり取りにポカンとしていたが、いち早くもとに戻った水龍様から声がかかった。
「龍王種とはなんなのですか?」
「龍王種は現在はたった1体しか生き残りがいないとされる、龍のことだ。しかし、その1体も古くからどこかのダンジョンのボスをつとめているという話もある。本当にいるのかも怪しい始末だ」
朱雀、白虎と見てきたことを考えると、その龍のというのは青龍のことではないかと考えたが、口に出すのはやめておいた。存在すら怪しいとかいわれてるしな。
「しかし、黄龍とは初めて聞く名だ。同胞の龍に雷龍がいるが、その上位種であるかもしれんな」
「雷龍様自体が風龍たる私の上位にあたるお方。そのさらに上とありますと、年甲斐もなくはしゃいでしまいますな」
「しかし、そいつはどうするよ?」
火龍がポツリと呟いた。
その呟きは全員を黙らせるにはぴったりだった。
俺から言わせてもらえば、誰かに渡すつもりはない。そもそも、俺がもらった卵であるし、すでに俺の従魔になっているし、渡す理由は存在していないとも思う。
しかし、龍たちの側から見たらどうだろうか?
先ほどの話からして、今龍王種で確実に存在しているのはこの黄龍だけしかいない。もう一体は伝承レベルの存在なのだしな。そんな状態でその龍王種が目の前にいて、しかもそいつを現状従えているのがただの冒険者なのだ。力ずくで奪うという形をとりかねない。
火龍は話を続けた。
「今はお前になついているが、そいつは間違いなく龍だ。しかも龍王種ともなると、その成長は計り知れない。そうなったときに、いつお前にその爪を突き立てるかわからないぞ?」
「それで、何が言いたいんです?」
「お前はそいつを卸し切れるのかって聞きたいんだよ。そいつは龍にとっては間違いなく重要な存在だ。それが、万が一が起こってしまったときにそいつが邪龍認定されたりしたらこっちはたまらないんだよ」
火龍の言っていることはもっともだ。龍という存在の強さは目の前に4体もいるということもあり、わかっているつもりだ。しかし、無茶苦茶なことを言っていると感じる面もある。
それは、この龍たちはいったい何年かけて今の実力に至ったのだという点だ。風龍は話を聞いてる限り、相当な年月を経ているというのはわかる。それも、100年や200年ではなく、もっとだろう。
さっきの時間にラムダさんに龍について少し聞いていた。
龍というのは、モンスターには分類されない。一般的にモンスターにあたるドラゴンは龍ではなく竜だ。龍は竜と違い、知能が高く、人の言葉を操る者とされている。また、寿命も圧倒的に異なり、竜は50年も生きれば長い方であるのに対して、現在最も長寿の龍は、ベスティア獣神国の田舎で養生している862歳の龍なのだそうだ。そもそも、成龍と認められるのは100歳を超え、一定の強さのランクを超えた龍だけだ。それ以外の龍は幼龍、もしくは若龍、劣龍と呼ばれる。
このミラの町の結界を形成する4体の龍は全員成龍だ。それはつまり、最低でも100年は生きているということを意味する。つまり、今の強さに達するまでそれだけの年月がかかったということになる。
今の俺はまだ17歳だ。しかし、正直なところ、黄龍が成龍と呼ばれるまで俺は生きられないだろう。この世界の人間の寿命は、魔物のことがあったり、栄養面や衛生面などの様々な問題も相まって50歳前後。冒険者に限った話で言えば、40歳前後になるらしい。100年なんかまず生きられない。マナたちを置いて先に逝く気はさらさらないが、何があるかわからないからな。
邪龍認定は、冒険者ギルドが、人に仇なす龍としてモンスターと認めることだ。そうなってしまった龍は、その時点で誰に狙われても何も言えなくなる。いくら強いと言えども、邪龍認定された龍のもとには、場合によっては複数のSランク冒険者が向かうこともある。その時に傷を負って、治療できずに悪化して死亡してしまうこともある。
しかも、邪龍認定されてしまった龍とともにいると、その龍も邪龍として認定されてしまうこともあるので、本来仲間であるはずの龍からも距離をとられてしまう。完全に孤独になるのだ。
当然、中にはそれをものともせずに今も悠然と生きている邪龍もいる。この町からそう離れていない山中にも1体いるのだそうだ。また、そいつの庇護下に入る形で弱い邪龍が多く存在しているとも聞いた。はじめに水龍が言っていた、騒いでいる邪龍たちというのはこいつらのことだ。嫌な予感がしないわけでもないが、言葉にしてしまったらおしまいな気がする。
「俺がこいつを卸し切れるということを証明しろってことですか?」
「端的に言えばそうなるな」
「しかし、誰がやるのです? よもやこの年寄りにやらせようなどとは思ってませんな?」
「もちろん俺がやる。以前に配下がとらえたイフリートにやらせればちょうどいいだろ。成龍と認められるラインよりも少し下くらいだ」
「それは……あまりにも無謀では?」
「それができねえなら黄龍は雷龍にあずける。そいつの成長のためにもそれが一番だろ」
「火龍様、彼らは現在ランク試験中なのですが……」
「その話は聞いてる。だが、そいつらはすでに試験終了のはずだ」
「いえ、護衛依頼は合格としましたが、まだ討伐依頼が終わっていません」
「依頼こそ受けてねえが、各々ダッシュワイバーン、ワイバーン複数、アイアンゴーレムを倒してるんだろ? 試験で討伐するモンスターとかわらねえじゃねえか」
「そうですが」
「なんなら俺がギルドに話をつけに行く。将来邪龍認定される可能性があるかもしれない案件だ。多少はなんとかしてくれるだろうよ」
「……連絡を入れてみます」
ラムダさんが折れた。もう少し頑張ってほしかったな……。
「今日のところはそちらはこの館に泊まっていきなさい。ラムダもだ。まだ話を聞いていなかったからな」
「わかりました。皆さんは一旦マキシムさんたちのところに行ってもらってもいいですか? この話はあまり聞かれたくない話なので」
「わかりました」
俺たちは一度マキシムさんたちがいる宿にむかった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv94/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv51/70
獣人 Lv17/20
狂人 Lv31/50
魔術師 Lv47/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv3/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
活動報告で書きましたが、ネット小説大賞の2次選考通過しました!
めちゃくちゃうれしいです!
ゴールデンウィークは少し多めに更新…できるといいなぁ…
ではまた次回