ランク試験です8
モンガさんたちのところに戻ると、そこではヒツギが2mを超えたくらいの大きさのゴーレムを文字通り棺桶でボコボコにしていた。
『鑑定』してみると、ただのゴーレムではなく、アイアンゴーレムと表示されたが、ヒツギは関係ないと言うように棺桶を叩きつけていた。1発叩き込むごとにゴーンと耳が痛くなるような音が鳴るが、気にしていないようだ。
「とどめ!」
ヒツギの元気な声とともに放たれた棺桶が、えぐられてむき出しになっていたゴーレムの核を砕いた。
核を失ったアイアンゴーレムがその場で倒れこむ。馬車の影から見守っていた商人たちから大きな歓声が上がる。位置的に後方になる俺たちには気づいていないようだ。
そして、興奮が冷め止まぬうちにやってきた俺たちに気が付いた商人の1人が、モンガさんに声をかけてこちらに気づかせた。
「モンガさん、ワイバーンは無事討伐されました。今は2人が残っています。数が数ですので全て持っていくのは難しいかもしれませんが、死体の状態は非常にいいです。彼ら次第ですが、何体かだけでも買い取ってもいいかもしれません」
「一度見てみないとわかりませぬな。ヒツギさんが倒したアイアンゴーレムの処理もあるのですぞ。このあたりではなかなか出現しないモンスターですし、かなり高額で買い取る所存ですぞ」
「メイ、売っちゃう? アイアンゴーレムはストーンゴーレムと違って鍛冶に使えるから、それなりの値段で買い取ってもらえると思うけど」
「持ってても意味ないしな。でも、ここで買い取ってもらって、運ぶことってできるんですか?」
「大丈夫ですぞ! 移動中に急遽買い取りがあった時用に常に魔法の袋のストックを用意してあるのですぞ。ワイバーンの素材も、状態を見てからになりますが、できれば買い取らせてもらいたいですな」
「申し訳ないですけど、ワイバーンの素材は個人的に使いたいんであんまり売れないです。血とか骨ならいいんですけど」
「それは残念ですな……。ですが無理強いはしませんぞ。その気になったらいつでも歓迎ですぞ」
「機会があればということで」
「お話はそれくらいにして、アイアンゴーレムの素材を回収したらすぐにいきましょう。いつまでも2人に見てもらっているわけにはいきませんから」
「わかりましたぞ。メイさん、ヒツギさん、一旦こちらで回収してもよろしいですかな?」
「大丈夫です」
「ではそのように指示を出しますぞ。回収はすぐに終わりますから、馬車で待っていてほしいのですぞ」
モンガさんはそう言ってすぐに指示を出して自身も回収に向かった。
それから5分もしないうちに全素材の回収が終わり、俺たちは馬車に乗ってマナたちのところに戻った。
ワイバーンが大量に山になっている様子を見て、商人たちが軽く悲鳴を上げたり、馬が怯えてしまい、足を止めたりと若干手間取りはしたが、マナたちのところに戻ってこられた。
すでに氷槍の雨で凍り付いた部分はとけているみたいだが、改めて全身を凍らせて、ミレアムさんに教わりながら1体ずつ解体しているようだ。血は一旦大きめの桶に入れて、ある程度たまったら凍らせているようで、マナのそばに塊になっていくつか転がっている。
「あ、戻ってきたね。メイも解体手伝って」
「おお……これは見事に大量ですな。凍らせてあるので判断はつきにくいですが、すでに解体の終わっている2体分を見ますと、相当良い状態であると感じますな。仕留めた時についたと思われる傷しかなく、凍らせているため肉の保存状態もよし。実にすばらしいですぞ!」
「1体解体するのにも時間かかるから急いで。私は氷の調整に神経使ってるから周囲の警戒はお願いね、メイ」
「わかった。で、ワイバーンの解体ってどうやるんだ?」
「私が教えますよ」
「あまり長居できるわけでもありませぬし、私の部下も参加させてよろしいですかな?」
「早く済むなら私としてもありがたいからお願いします」
「わかったのですぞ。すぐに血を入れる瓶と解体用の道具を持ってくるのですぞ! 1秒でも早く終わらせてしまうのですぞ!」
モンガさんの指示で商人たちが動く。ヒツギとマキシムさんには周囲の警戒をしてもらうことにして、俺はラムダさんに教わりながら解体をすることにした。
それから、15分ほどかけてすべてのワイバーンを解体し終えた。モンガさんたちが使っていた道具があったおかげでだいぶ楽だった。血を抜いたりする間、ワイバーンをずっとつるしておくための道具だったり、牙をいっぺんに複数本抜くための道具だったりとワイバーン専用とも言える道具が続々と出てきたのだ。もしワイバーンがきたら素材を少しも逃さないぞという気迫がすごいな……。
ワイバーンの素材は、モンガさんに売る骨と血と皮の一部をモンガさんが、残りの肉と皮を俺たちの魔法袋とアイテムボックスにわけてしまった。魔法袋に入るだけ入れて、残りを俺がアイテムボックスにしまったのだが、アイテムボックスに対して何も反応がなく、むしろ、これまで使わなかったのがなんだかバカらしくなった。
それからは特に襲われることもなく、ミラの町が目視できる距離にまできた。
ミラの町は薄い球状の結界に覆われており、地面に草が繁っていることから、どこから町が始まるのか一目でわかる。荒野の真ん中にあるとは思えない景色だ。
そのとき、町の方からかなりのスピードでこちらに向かってくるモンスターが『気配察知(魔物)』に引っ掛かった。伝えてからでは間に合わないため、一言「モンスターがくる」とだけ告げて馬車から飛び出した。まだかすかにしか見えないが、このスピードならあと5秒ほどで接敵する。
「『ダークランス』8連」
魔物がくる方角へ400本の『ダークランス』を放つ。なるべくスピードを一定にし、広範囲に壁になるような形だ。万が一に抜けられたときに備えて、俺の足場を『クエイク』で上げ、2枚目の壁を用意した。
「『スピードエンチャント』『ガードエンチャント』」
2つのエンチャントで底上げし、魔物を目で捉える。
魔物は『ダークランス』に真っ向から突っ込んできて、体が傷ついているが、軌道を急に変え、俺に向かってくる。狙いは初めから俺なのか。
「『ダークナックル・纏』」
真っ向から迎え撃つべく、拳に『ダークナックル』を纏わせる。魔力の出力を上げすぎて手にダメージがきているが『再生』に任せてしまおう。今はこいつだ。
拳とそいつの牙がぶつかった。勢いがある分押されるが、それさえなければそれほどでもなかった。
「おらぁ!」
俺の拳が打ち勝った。そいつの頭を『クエイク』で上がっていた地面の角に叩きつける。
『クエイク』で土壁を創り出す際、込める魔力の量などで土壁の強度は変わるのだが、その材質は触れている地面であることに変わりはない。ここの地面は土というよりは岩に近く、その角であれば結構痛いのだ。
「グギャア!」
頭が軽く潰れ、悲鳴を上げる。一旦離れようとしているのか翼を開こうとしているが、逃がす理由はないし『アイスロック』でその翼を固めて左手のステュラで首を切り裂いた。抵抗があるかと思っていたが、意外とあっさり切り裂くことができ、力なく地面に倒れ伏した。
「大丈夫ですか!」
土壁のせいで様子が確認できないらしく、馬車の方から声がかかる。そりゃいきなり飛び出して土壁作ったりしたらびっくりするよな。
「大丈夫です。スピードの速いモンスターだったので伝えてからでは間に合わないと判断しました」
そう言いながら俺は死体となってしまったモンスターを『鑑定』する。見た目的にはノノさんのソニックワイバーンのようだが、どうも様子が違うのだ。なんというか、ソニックワイバーンはよりスピードに特化させるためのフォルムをしていたが、こいつはそんな様子ではない。たしかにスピードに秀でてはいるが、それ以外も中途半端に残っている感じかな?
『ダッシュワイバーン(飛竜種)
状態:死体』
名前的にソニックワイバーンの下位種かな。走ると音速じゃあ勝負にもならないし。それを考えるとノノさんのワイバーンは一気にソニックワイバーンにまで進化したし、ラッキーだったのかな。
御者をしていた男性とラムダさんは、土壁が消えてダッシュワイバーンの死体がいきなり現れたため驚いていたが、すぐに馬車の中のモンガさんに安全だと伝えた。すると、馬車からモンガさんが降りてきた。
「大丈夫ですかな、メイさん」
「ええ。すいませんろくに伝えずに飛び出して」
「いえいえ。その死体を見れば仕方のなかったことだとわかりますぞ。先ほどのワイバーンの群れと言い、そのダッシュワイバーンと言い、運がないですな」
「そうですね。こんなに襲われるものなんですかね?」
なんとなく何者かの意思を感じないわけではないけど、黙っておこう。狙いはたぶん商隊というわけではなく俺たちだろう。しかし、誰が、何のために、このタイミングで襲わせているのかはまるでわからない。
もしバラーガたちだとするなら、今ここには高ランクの冒険者がいることもわかってるはずだし、ワイバーン程度に襲わせる意味はない。キャラビーを捕まえたいなら館に向かっているはずだが、今のところアンナからその連絡はない。一度盗賊を壊滅させたという連絡はあったが、ありもしないお宝狙いだったそうだしな。
「これだけ襲われるのはよほど運がないのでしょうな。子竜が生まれたとか、何らかの要因があってワイバーンたちが殺気立っている可能性も考えられますが、私にはわかりませぬな」
「まあ町は目の前ですし、また襲われる前に町に入っちゃいましょうよ」
「解体はよろしいのですかな?」
「命には代えられませんよ。解体ナイフで解体しちゃいます」
「それは残念ですが、仕方がありませんな」
解体ナイフを突き刺すと、ダッシュワイバーンの肉が残った。みぃちゃんにあげたらスピード上がったりしないかな?
馬車に乗り込み、町に向かった。すでに入り口が見えており、『気配察知(魔物)』にも何の反応もないし、もう戦闘はないだろう。
そして、入り口で全員分の身分照会も終わり、ようやく町に入れるという段階になった時、俺たちの頭上を巨大な影が通り過ぎた。
「龍の気がする。詳しく聞こうか」
俺たちがやってきた南口に館を構える龍、水龍が俺たちの前に姿を現した。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv94/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv51/70
獣人 Lv17/20
狂人 Lv31/50
魔術師 Lv47/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv3/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
今日も更新です。
明日はどうなるかわかんないです。
やっぱり書き溜めとか向いてないですね。つい書き直したくなっちゃう…
ではまた次回