ランク試験です4
「まずは勝ち抜けおめでとうと言わせてもらいますよ」
俺たちのところに、ラムダさんとミレアムさん、マキシムさんのさっきまでの組の仕切り役の3人がやってきた。
「さっそくですが、明日から始める試験の内容の説明に移らせてもらいます」
「あれ? 明日なんですか?」
「そうですね。今回の試験は、ランクC+とB-の合同試験ですので、ここから2段階に分けて試験を実施します。ですので、一晩という短い時間ではありますが、準備の時間を与えることになりました。とはいっても、たいていの人は準備を終えてここに来ていると思いますけどね」
「今日やると思ってて準備終わっていなかったら笑いものよね」
「マキシム」
「ごめんね姉さん」
「話を進めますよ。明日からやってもらうのは護衛依頼となります。内容は、ここからおよそ1週間ほどの場所にあるミラの町まで商人の護衛をすることです。今回は移動のための馬車と、道中の食料は向こうが用意してくれます。あまり量があるというわけではないので、必要であれば食料を別で持っていくことを勧めます。また、依頼によっては各自で用意というところもありますので、依頼内容はよく確認してから受けてくださいね」
「もちろんです」
言葉にはしないが、その後に続く言葉は『護衛依頼を受けるつもりはありません』だ。たぶんヒツギとマナも同意見だな。
「今回の依頼に関して、従魔の使用は禁止です。そこは十分に注意してください。できることならどこかに預けてきてください。最低でも往復2週間、護衛依頼の後の討伐依頼のことも考えると、3,4週間はかかるものと思われます。宿屋などですと、もしも長引いてしまった際に従魔を勝手に売り払ってしまうようなところもございます。この町にある宿屋でそういったことをしでかすところはないとは思いますが、もし心配であれば冒険者ギルドにお預けください」
「移動に従魔を使うとかでもダメなんですか? ホース系のモンスターとか」
俺の従魔にはいないが、従魔としてホース系のモンスターを使役しようとする者はたくさんいるらしい。
ホース系のモンスターは、普通の馬と比べて力も強いし、足も速い。ある程度までならモンスターに襲われても逃げ出したり暴れたりせず、場合によってはそのモンスターを蹴り殺すこともある。
商人や貴族でも扱う者が多く、ローホースやミドルホースなどの比較的使役しやすいホース系のモンスターを捉えることを専門とした冒険者もいると聞く。
「今回はダメですね。これに関しては依頼を出した商人の問題なのですが、依頼を出す際に、従魔を使わないことということを条件としているのです。これは他の試験受験者のところも同様です。あえてそうした依頼を選んでいるという意味合いもありますが、商人は過去にモンスターに襲われた経験がある者が多く、従魔と言えど信用ならないという者もたくさんいます。何度も町と町を行き来するので必然的に襲われる数が増えるんですね」
トラウマなんだろうな。キャラビーがダンジョン内で罠があっても声が出せないように、力を持たない人にとってモンスターは恐怖の対象でしかないのだろう。俺も最初に戦ったオーガは怖かったなぁ……。
「それで、従魔を預けておけるあてはありますか?」
「ええ。館に残ってるやつらに任せておくつもりです」
とは言ったものの、ヒメとコルクを置いていくつもりはない。俺の魔力の中にいるし、召喚しようとしなければばれることはないだろう。万が一のときは遠距離から召喚できる転移魔法ということにしてしまおう。
「あてがあるのであれば結構です。説明は以上になりますが、質問はありますか?」
「向こうに行くまでが依頼ってことでいいんですか?」
「そうです。向こうの町の冒険者ギルドで護衛依頼の内容をもとに討伐依頼の試験を受けられるかどうか判断します」
「依頼の成功条件はどうなってますか?」
「商人が無事に町に着くことは当たり前として、商品を運ぶ馬車3台すべてを無事に届けることです。馬車自体には多少の傷がついても大丈夫ですが、商品が入っている箱が壊れて中の商品がでてしまったり、紛失があったりした場合は、たとえ到着していても失敗です」
「箱の個数などは予め決められてるんですよね? あと、馬車の揺れで傷がついた場合はどうなりますか?」
「個数などは出発前に確認するはずです。心配されているのは、いちゃもんをつけられて、弁償を求められたりしないかということですよね。その点は心配ありません。そんなことをしたら冒険者ギルドを敵にまわしかねませんし、商人にとって信用はとても重要なものです。その信用を損ねるような真似をすれば商人としては生きていけませんよ」
ラムダさん曰く、過去に実際に心配していたとおりのことが起こったことがあるそうだ。
当時、国内外において、かなりの規模をほこった商会の商人が、商会の力を過信し、少しでも自分の取り分を増やそうと、護衛依頼の支払いを渋ったことがあった。箱の数をごまかして依頼失敗と言い張ったり、わざと傷をつけて弁償を求めたりと、商会という力を背景にやりたい放題だった。
そんなことが続き、冒険者ギルドは苦渋の策として護衛依頼の受注拒否という手に出た。初めはその商会のものだけを断っていたそうだが、個人的に依頼という形をとり、商会は関係ないと言って依頼が出ていたり、他の商人の名を借りて依頼したりと効果は薄く、結局護衛依頼を全て断ることにしたそうだ。
それを受けて、その商会に所属していない多くの商人や、護衛依頼という収入源を失った多くの冒険者が行動を起こした。
商会の商品は買わず、他の商人のもとで購入したり、商会に対して商品を卸すのをやめたり、直接冒険者と交渉をして護衛依頼を頼んだりしはじめたのだ。
そんなことが数年間にわたり行われ、物が入ってこず、仕入れても売れず、冒険者の護衛がつかないと知った山賊や盗賊たちに徹底的に狙われ、やがて商会は内部分裂という形でつぶれてしまったそうだ。
この話は、商業ギルドに登録する際の規約に書いてあるほど、商人たちの間では有名な話だそうで、護衛依頼に関しては、商人たちはちゃんとした対応をすることが当然といったような慣習があるらしい。
「それでは、明日の朝8時の鐘がなるまでに、準備を終えて南門の前に来てください。そこから護衛依頼をスタートさせます」
「遅刻、厳禁。即、減点」
「減点と言うか、遅れたらその時点で試験を受ける意志がないと判断するから遅れないように来てね。その辺はシビアにいくよ」
「わかりました。では失礼します」
最後に忠告を受けて、俺たちは冒険者ギルドをあとにした。
館に戻ると、キャラビーもユウカも、もしかして試験を受けられなかったのかとすごい心配してきた。本来は今日からもう試験に行くはずだったんだから仕方ないか。
その日の夜、明日に備えてマナとヒツギが早めに部屋に戻った後、俺とキャラビーはブラウニーたちのところを訪れていた。
ブラウニーたちには昼間のうちに、この時間帯に一番奥の部屋に集まってもらうようにお願いしておいた。部屋に入ってきた俺たちに気がつくまでみんなでわちゃわちゃ遊んでいたのがこの上なくかわいいな。
一体が俺たちに気づき、次第に全体が静かになっていった。
「明日からしばらく館を留守にするから、協力しながらカルアたち居残り組の世話と館を頼むな」
「はい、ご主人様と会えないのは寂しいですが、一生懸命がんばります!」
「「「「うにー!!」」」」
「魔法の袋に2ヶ月分くらいの食糧は入れてあるけど、無理にそこにあるものから使わなくてもいいからな。ユウカに頼んで買ってきてもらうか、一緒に買いに行って好きに喰ってくれ」
「2ヶ月分もあれば充分に色々作れると思うのですが……」
「気にすんな。それで、ブラウニーたちには魔力なんだけど……」
「「「うにー?」」」
一斉に体ごと頭を傾けるブラウニーたち。うん、かわいい。じゃなくて、魔力の問題だ。
「キャラビーも何度かあげたことがあると思うけど、俺たちがいない間、ブラウニーたちに魔力をあげてほしい。これだけの数にあげるのは精神的にも疲れるだろうけど、従魔たちを手伝わせてもいいから、全員に頼むな」
「「「うにうにうー」」」
俺の言葉に合わせるようにブラウニーたちも一斉に頭を下げる。ご飯がかかってるし、ブラウニーたちも真剣モードだ。
一通りお願いし終わったところで、俺たちも寝るために部屋に戻った。もちろん別々の部屋だぞ?
そして次の日、ランク試験の本番が始まった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv94/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv51/70
獣人 Lv17/20
狂人 Lv31/50
魔術師 Lv47/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv3/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
章を少しいじりました。
「鍛練中の訪問者です1」から第7章とさせていただきます。
なぜ、このタイミングなのかというと、純粋に忘れていたからです。他に理由はないです…
ほんとなんでやらなかったんだか…
ではまた次回