鍛錬中の訪問者です3
館に戻ると、玄関のところでフル装備で今にも走り出しそうな感じのマナとヒツギが待っていた。
「二人ともこんな朝からダンジョンに向かうのか? 今日は休みだってのに」
「「メイ……」」
二人の表情が驚きから怒りへと変わっていく。あ、これ言葉の選択をミスったな絶対。
「二人とも、メイを怒るのはやめておくのじゃ。ちょっとした事情というものがあっての。朝食の後にメイに説明させるのじゃ」
「……ほんとに?」
「ああ。しっかりと説明するよ。約束だ」
「わかった。じゃあ着替えてくるから少し待ってて」
ユウカの言葉で二人は落ち着きを取り戻してくれた。しかし、どこから説明しようか……。
朝食を食べ終わり、俺とユウカでお互いの話を補いながら先ほどの出来事を話した。
天上院たち勇者パーティがこの館に向かってきていたこと。その目的はユウカに鍛錬をつけてもらうことだったということ。その時に俺と天上院が戦って、普通に倒せたこと。俺とキャラビーがいることがあいつらに伝わってしまった今、目的がキャラビーを奪いに来る、あるいは俺を殺すことに変わったかもしれないこと。
ユウカも俺の意図を察してくれたのか、俺があえて伏せたことは言わずに、伏せたままにしてくれた。
アバウトな説明ではあったが、なんとか納得してくれたらしく、俺への怒りも収まった。どうやら、普段と比べてあまりに遅かったので一人で、またはユウカと二人でダンジョンに向かったと思われていたらしい。さすがにそんなことはしないと反論しようかとも思ったが、洞窟エリアに挑んでいた時に前科があるからなにも言わなかった。
そして、話が終わって少し経ち、ユウカはダンジョンへ向かい、俺たちは万が一を考えて、出かけたとしても館の周辺までということにして休むことにした。
その日の夜、俺は部屋にやってきたユウカと一緒に、バアルコングに変わったコルクを初めて呼んだ場所にやってきた。ここならば見晴らしもいいし、マナたちもやってこないだろう。
「それで、どうしたんだ? こんなところに連れ出してさ」
「わかっておるじゃろう? 今朝のことじゃ」
「天上院との関係か? それについては俺に言えることはほとんどないぞ。俺はここに来てすぐに王都から離れたし」
「違うのじゃ。なぜ、バラーガが切りかかってきたことを告げなかったのじゃ?」
「……別にその程度のこと伝える必要はないだろ?」
「その程度じゃと? お主は自分をどう考えておるのじゃ?」
「自分のこと? どういう意味だ?」
「どういうもこういうもない。お主は自分のことをどう考えておるのじゃ?」
「どうって……俺は俺ってことでいいのか?」
「違う。お主は、自分のことを他人事のように軽く見ておるのではないか?」
「……」
「バラーガが切りかかってきたとき、お主は反撃すらせんかった。普通は反撃をするじゃろう?」
「そうか? 別に反撃しないこともあると思うが」
「少なくともわしは知らんがの。お主、以前にもバラーガには殺されかけたのじゃろ?」
「ああ。話を聞いていたらわかるだろ?」
「ならなおさらじゃ。なぜ2度も殺されかけた相手を許す?」
「許した気はないんだが……」
別に俺はバラーガを許した気はまったくない。何かあればぶん殴りたいしな。
「なんでその話を今したんだ? というか、こんなことを聞くためにここに連れ出したんじゃないだろ?」
「うむ。わしが連れだした理由は主に2つじゃ。1つは、お主自身のこと」
「俺のこと?」
「お主、わしが『見透かす瞳』を持っていることを知っておるよな?」
「ああ。寿静っていうユウカの祖母が持っていたっていう『力』のことだろ?」
「その通りじゃ。この『瞳』は様々なことを見ることができる。お主の本名を見たのもその1つじゃが、それ以外にも、わしはその人の状態を見ることができる」
「状態って、病気とか怪我とか呪いとかそういったことだよな?」
『鑑定』や『上級鑑定』でも状態は表示されるし、別に特に気になることではない。こっそりと自分を『上級鑑定』で調べてみても、状態の欄には正常と表示されている。
「俺の状態がどうかしてるってことか?」
「お主の状態は至って正常じゃ」
「じゃあどうした?」
「正常というのが問題なんじゃ。お主は今命を狙われている立場じゃ。死んだと思われていたが、それが生きていたというのが知られたんじゃからなおさら危ない。ならなぜその状態でいられるのじゃ?」
「それは……」
俺は答えられなかった。
「答えられんか。ではこう言い換えようかの。お主が狙われるということは、その周りにいるマナ、ヒツギ、キャラビーの3人が危うくなる。まあ当然じゃな。今朝お主はその力を見せつけておるし、人質をとろうとしてくるのは自然な流れじゃ」
「そうはさせねえよ。すでに従魔たちをそれぞれにつかせている。何かあればすぐにわかるさ」
実際に召喚した状態で警護させているわけではなく、影を通じて従魔たちを護衛につかせた。マナにはゼルセを、ヒツギにはコルクを、キャラビーにはみぃちゃんをそれぞれ割り振った。他にも、館の警備にカルアとアンナを常時召喚している。あまり人目につかないように隠れさせてはいるが、何かあればすぐにでも動けるはずだ。
「そうか。今のではっきりしたの」
「何がだ?」
「お主は自分に向けられる負の感情に反応できなくなっておる」
「……は?」
「正確に言えば、お主に危害が及ぶことに関して感情の起伏がなくなっておる、といったところかの」
「何を言ってるんだ?」
「あの3人の名前を出したとたん、状態が変わったのじゃ。正常から怒りへとの。お主自身、ほんとは気づいているのではないかの? 今朝の戦いのときとかに」
「……」
「沈黙は肯定と受け取らせてもらおうかの。今朝天上院古里と戦った時に感じていたはずじゃ。『どの感情もこみあげてこない』との」
ユウカに言われた言葉は事実だった。正確に言えば、どの感情も、というわけではなく、『怒り』という感情だけが浮かんでこなかったのだ。
以前、武闘大会で天上院と戦った時は、『俺は死ぬか生きるかぎりぎりのところで生きていたのにこいつはぬるま湯につかっていたんだろうな』とか、『わけのわからないことを一方的にいろいろ言われて腹が立つ』とかいろいろと感じていた。しかし、今回感じていたことは何もない。しいて言えば、それに対する疑問くらいだ。
「言っておくが、わしはそのことでお主を責めるために言ったわけではないからの。あくまでも、お主が感じていることを他人の言葉で改めて聞かせたかっただけじゃ。わしにできることがあれば相談に乗るくらいはするぞという感じじゃ」
「……そん時はよろしく頼むよ。で、2つ目はなんなんだ?」
「唐突に次に移ろうとするでないわ。2つ目はバラーガのことじゃ」
無理矢理話を終わらせて次に移ったが、次の話は俺には理解できそうにないことだった。
「あいつのことなんか俺は知らないんだが」
「わしの記憶違いであればいいんじゃが、王都で騎士団長をしておった頃のあやつはもっとこう……冷静な判断のできる奴じゃった。いきなり他人に切りかかるなんてことはもってのほかじゃ」
「別人にでもなったって言いたいのか?」
「いや、あやつは間違いなくバラーガ・グーテン本人じゃ。それは間違いない。しかし、どうもしっくりこん。なんというか……誰かに操られておるような感じがするのじゃ」
「ふーん」
「むむむ……この話はやっぱりなしじゃ! もう帰るかの」
「……ああ。そうだな。お迎えも来てるみたいだし」
館のほうに意識を向けると、『気配察知(人)』に反応があった。これ以上誰かに聞かれずに話をするのは難しいだろう。
「またいずれ続きを話そうかの」
「俺はあいつの話なんか興味ないんだけど」
俺たちは、『ただただ星を見て雑談をしていました』みたいな雰囲気をさせながら館のほうに戻っていった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv94/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv51/70
獣人 Lv17/20
狂人 Lv31/50
魔術師 Lv47/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv3/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
少し間に合いませんでした…
今回は会話ばかりでしたね
次回は少し時間が跳びます
ではまた次回