鍛練中の訪問者です2
ユウカとメイが勇者パーティと会っていたころ、館ではマナたちが朝食の準備を終えてリビングでメイたちを待っていた。
「準備終わっちゃったね」
「今日はいつにもまして遅いね。今日は休みだから長めにやってるのかな?」
「でも、休みの日って言っても私たちだけで、今日はユウカはダンジョンに行くって言ってたはずだよ?」
「ユウカ様もダンジョンに行く日にこれほど長くはやらないと思うのですが」
「案外二人でダンジョンに向かってたりして」
「あはは。それはないでしょ。朝食もまだだし」
「ですが、ご主人様のアイテムボックスには大量の食材も料理も入っていますよね?」
「「……」」
キャラビーの指摘を聞いて、二人の表情が固まった。
「私今すぐダンジョンに行く準備してくる」
「私は森の方を見てくる」
「では私は町に続く道の方を。もしかしたらまだ向かっている最中かもしれないですし」
「お願い」
3人はそれぞれ動き出した。
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「それじゃあ……始めよ!」
ユウカの合図で俺は天上院に向かって駆け出した。
天上院は俺を迎え撃つつもりなのか、剣を構えてこちらをじっと見ている。後ろががら空きだな。
相手の剣の間合いの少し外くらいまで近づいた時、『小規模ワープ』で後ろに跳び、棍棒で殴りつけた。無防備な背中にクリーンヒットした結果、天上院の体勢が大きく崩れた。相手が体勢を立て直すのを待ってやる理由はないので、『空蹴り』で一気に近づき、剣で聖剣を握る右手を狙う。
無理矢理体をひねって回避しようとする天上院だが、大きく体勢が崩れているときにそんなことをしてもうまくいくはずもなく、俺の剣はそのまま二の腕を切り裂いた。
「ぐああ!」
痛みに声を上げる天上院を蹴り飛ばし、もう一度武器を構えなおした。
天上院は前回りの形で勢いを殺し、反転してこちらに向き合う。左手で切られた部分を押さえながらこちらを見ている天上院の顔は、痛みに歪むというよりは、何が起こったんだという驚愕を表していた。
「『慈愛の光が』」
天上院が魔法の詠唱を始めた。前にも同じようなことがあったな。あの時も足を止めた状態で回復魔法を使いだして、罠かもしれないと思って魔法を連射したんだったかな?
「『剣閃』」
足を止めている天上院に『剣閃』で衝撃波を放つ。案の定、詠唱を止めて横っ飛びでかわした。こいつあの時から成長してないのか? 天上院は、かわした後も再び同じ魔法の詠唱を始めた。もし俺がユウカとの鍛錬で同じことをしていたら、今頃腕の1,2本は切り落とされているだろう。
俺は地面を強く蹴って急接近する。俺が近づくころには詠唱が完了し、ヒール3が発動する。前はヒール2だったし少しは成長していたようだ。しかし、その効果でしっかりと回復する前に俺の棍棒が振り下ろされた。
バックステップでかわされたことで、棍棒は地面にへこみを作るだけに終わるが、勢いを殺さずに回転しながら追撃した。剣と棍棒の攻撃をバックステップでかわし続ける天上院に対し、同じような動作で攻撃を続ける。
そして、地面のへこみが10を超えたあたりで天上院が反撃してきた。魔法ではなく、自己回復系のスキルの効果である程度傷がふさがったようで、少しずつ攻撃を剣で受けようとし始めたのだ。まあ何度も同じ動きをわざと見せているのだからそう来てくれなくては困るのだが、天上院はその思惑通りに剣と棍棒の攻撃の間を狙って地面を蹴って懐に入り込んだ。
「もらった!」
自分が勝った気でいるのか、そんなことを言いながら剣をふるおうとする天上院だが、その動きは俺の予定通りだ。
『空蹴り』で体を浮かしてそれを難なくかわし、振り切ったことで伸びている腕を棍棒でへし折った。ひじが曲がっちゃいけない方向に曲がり、再び悲鳴を上げる天上院だが、俺は攻撃の手を止めずに『小規模ワープ』と『空蹴り』で頭上をとって踵落としを叩き込んだ。強く地面に顔面を打ち付け、天上院は動かなくなった。
足をどかして天上院から離れようとすると、『気配察知(人)』に斜め後ろから切りかかってくる人影が反応したので剣を背中側に回してそれを受けた。
「今なら殺せると思ったか?」
「ちっ!」
「古里様!」
首だけを切りかかってきたバラーガに向けると、バラーガは舌打ちをして距離をとる。それに行き違いになるような形でヴァルミネ・カクもこちらに走ってくるが、攻撃はせずに天上院の介抱を始めた。顔面を打ち付けたが、鼻の骨もおれておらず、歯も大丈夫そうだ。念のためにということでヴァルミネがヒール2を使い、折れた腕も、後から早歩きでこちらに来た神官の女性が治した。
「メイの勝ちじゃな。バラーガ、きちんと連れて帰って、もう来ることの無いようにしておくのじゃぞ」
「ユウカ殿……」
「そいつが言い出したことじゃからな。それを反故にするなんてことはなしじゃぞ」
「どうしてもだめでしょうか?」
「何度も同じことを言わせるでない。ちと甘やかしすぎではないかの?」
「そういうわけでは……」
「ではさっきの戦い方は何じゃ? 転移魔法の使い手がいるにもかかわらずメイの転移攻撃に対応できない。攻撃を受けて足を止める。そのうえで動きを止めたまま回復魔法を使い、攻撃を受けて詠唱を途切れさせる。『常に優位な状態で戦ってきました』と言っているようなものではないか。たしかに、力という面で見れば十分にあるのじゃろうが、実力という面で見れば全然弱い。今わしの鍛錬をやったら……死ぬぞ?」
ユウカの言葉の重みが違うな。今のは完全に本気だった。実際、俺も鍛錬中に何度も腕を切り落とされたり、足を切り落とされたりしている。『再生』が強すぎるからすぐに回復できたりするが、普通ならヒール3以上の回復魔法が必要になるだろう。マナならヒール2で回復できるかもしれないが。
「……今日のところはこの辺で失礼します。この件はまた後日」
「メイとまともにやり合えない限りは鍛えるつもりはないからの。特に今もまだ気絶しておるそいつはの」
バラーガが天上院を肩に乗せ、その場から去ろうとしたとき、館に続く道の方から人影が現れた。
「ご主人様?」
「キャラビー!? なんでここに」
やってきた人影はキャラビーだった。館で待ってるはずなのにどうしてここに。
「キャラビー……」
「ば、バラーガ……様……」
「刈谷鳴……なぜお前のもとにそれがある?」
「キャラビーが俺のもとにいちゃ悪いか?」
「それはお前には必要のない物だ」
「キャラビーは役に立つぜ? オークションで大金を払っただけの価値は十二分にある」
「そうか、あの時落札したシャドウという冒険者はお前だったということか……。それを返せ」
「返すも何も、キャラビーは俺のだが?」
「ファントムの血はそこらの一般人が持っていていい物ではない。国が管理すべき物だ」
「キャラビーは物じゃねぇよ。それともあの町でやったみたいに力ずくで奪う気か?」
「なんじゃ、以前にも訳ありかの?」
「……帰るぞ」
ユウカからの心証を気にしてか、バラーガと、あとヴァルミネが俺に怒りの視線を向けてきたが、特になにも言うことなく、他の連中と一緒に町に戻っていった。こりゃ館の警備はしっかりしといた方がよさそうだな。あの二人関係の刺客以外に、キャラビーがいると知った天上院が取り返しにやってきかねないし。
「あの、私」
「キャラビーは悪くねぇよ。それより、飯のために呼びに来てくれたんだろ? 帰るぞ」
突然のことだったこともあり、狼狽するキャラビーの頭を少し強めにがしがしと撫でながら言って、俺たちは館に戻った。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv94/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv51/70
獣人 Lv17/20
狂人 Lv31/50
魔術師 Lv47/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv3/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
また遅れてしまって申し訳ないです…
ではまた次回