鍛錬中の訪問者です1
『生の草原』の攻略を終えた次の日の朝、俺とユウカはいつものように鍛錬前の準備運動をしながら今日の予定について話し合っていた。
「お主らは今日は完全に休みということでよいのじゃな?」
「ああ。さすがにダンジョン攻略した次の日にいきなり他のダンジョンに挑んだりはしないさ」
「お主でもそんな風に感じるのじゃな」
「どういうことだよおい」
「冗談じゃ。それで、今日はいつも通りの鍛練で構わんのかの? それともきつめにするかの?」
「きつめでやって、ユウカは今日の予定に影響はでないのか?」
「ダンジョンに行くのが少し遅れる程度じゃから問題はない。今日は様子見程度にすます気じゃからな。お主らがランク試験を受けるまでにもう1か所攻略できればいい方って感じなのじゃ」
「そっか。まあ無理して怪我したりはするなよな」
「それは当然じゃ。怪我をして動けなくなったときに襲われたりしてはたまらんからの」
「ユウカならそれでも返り討ちにしそうだよな」
「それはわからん。まあやられる気はないがの。そろそろ準備はよいか?」
「ああ。頼むよ」
俺たちは朝の鍛錬を始めた。
「待つのじゃ」
しばらく鍛錬を続けていると、ユウカが急に構えを解いた。
周りは俺の使った魔法のせいで穴があいていたり、木が折れていて、ユウカは全身のあちこちに傷がついているが、俺自身は今も『再生』と『自動回復』のおかげで回復し続けており、ついさっきかわしそこねた際についた傷が残っているくらいだ。戦っている最中に受けた傷は俺の方が多いんだが、今だけ見れば俺が優勢に見えるから不思議だ。まあユウカの傷も5分もしないうちに治ってしまうだろうが。
「どうした? 疲れたとかではないだろ?」
「お客のようじゃ。少し離れておるがな」
ユウカの言葉を聞いて、『気配察知(人)』で気配を探ってみると、少し離れたところからこちらに向かってくる気配がした。
ユウカは俺と戦いながらでも気づけたんだよな……。これと『気配察知(魔物)』はこれからずっと使っておこうかな。
「どうする? 館に向かっておるようじゃ。おそらくキャラビーは起きておるとは思うが、わしらも館に戻るかの? 今ならわしらの方が先につくはずじゃが」
「そうだな。館に向かうんじゃなくて直接そっちに向かおう。何があるかわからないし」
「わかったのじゃ」
俺たちはこちらに向かってくる集団のところに向かった。
遠目にその集団が見える程度の位置にまで来た。まあ見えると言っても顔はわからないし、どんな格好の連中かかろうじてわかる程度だが。
まだ顔がわからない距離だが、向こうもこちらに気づいたらしく、先頭を進んでいた軽鎧の男が手を振りだした。なんかどこかで見た気がする……。
「おーい! そこの人、ちょっといいかな?」
「っ!」
大きな声でこちらに呼びかける声を聴いて、その集団が何者かが理解できた。聞き覚えのある声だったのだ。
慌ててどうしようか思考をめぐらすも、それは間に合わず、お互いの顔がはっきりとわかる距離にまで近づいてしまった。
「初めまして、僕の名前は天上院古里。今日はすぐそこの館に住んでいるうユウカ・コトブキという人を探して……あれ?」
「お前は……」
俺と面識のあった二人が気が付いたようだ。どうやって切り抜けようか……。
「刈谷……鳴か? なぜお前がここにいる? お前はあの時谷底に落ちて間違いなく死んだはずだ」
「刈谷鳴というと、王が言っていた3人目ですか? たしか死んだと聞いていましたが」
「生きてたら都合が悪いか、騎士団長さん?」
俺は威圧してくるバラーガに対して不機嫌ですという雰囲気を一切隠しもせず答えた。
「まあまあ、二人とも喧嘩はよくないよ。生きていてよかったよ鳴。それにしても、君は生きていたのにどうして王都に戻らなかったんだい? 騎士団のところに行くなりなんなりして、知らせることはできたはずだろう」
「別にそんなことする必要はないだろ? 殺されかけたとこに戻るなんて俺はごめんだ」
「そんなこと言って、怖かったんじゃないのかい? 君には僕のように『力』がなかったって聞いている。バラーガほどの騎士が一緒にいても谷底に落ちるほどのろまなんだから」
「なんて思われようがどうでもいいが、何の用だ? 鍛錬の邪魔だからさっさと帰ってくれ」
「そうだ、ユウカ・コトブキさんを知らないか? 僕たちは彼女に鍛えてもらうためにここに来たんだ」
「わしにか? なんでまた急に」
「え? あなたがユウカ・コトブキさんなのかい?」
「うむ。そうじゃが、なぜわしに鍛えてもらおうと思ったのじゃ?」
「僕は勇者としてこの世界に召喚されました。僕は強くならなきゃいけないんです!」
「……」
熱く語りだした天上院の様子をユウカは無言で眺める。『見透かす瞳』で見ているのだろう。
「よろしくお願いします」
「断るのじゃ。お主らを鍛える気にはなれん」
「なっ! なんでですか!?」
「ユウカ殿、理由を聞かせてくれませんか?」
「お主らを鍛える気になれないと言ったじゃろう? バラーガよ、むしろ逆にわしがお主らを鍛えねばならぬ理由を聞きたいところじゃ。だいたい、わしは今このメイとの鍛錬で精いっぱいじゃ。他の奴らを鍛えている暇などない」
「じゃあ、僕が彼を倒せたらいいんですね?」
天上院がいきなりアイテムボックスから剣を取り出す。なんでそうなるんだろうか。というか、こいつは何かあったらすぐ剣を抜くな。武闘大会の時もクラインさんの家でいきなり切りかかってきたし。そういえば以前に折った聖剣ハルとはまた別の聖剣みたいだな。
聖剣セル、自身の能力を少し上げる効果のある聖剣だと『鑑定』で表示された。そこまでいいものではなさそうだが、聖剣というだけで今の俺には脅威となってしまう。警戒しておかないと。
「お主がメイに勝てるとは到底思えないのじゃが」
「なんだって? 僕はこれでもAランクの冒険者なんですよ?」
「そんなもの関係ないじゃろうに。メイ、倒してしまえ」
その後、2人の掛け合いの中でユウカが乗り気になってしまい、俺と天上院が戦うことが決まってしまった。さっさと帰って二度と来ないでくれないかな……。
「お主はわしに鍛えてもらうために来たと言っておったんじゃ。この戦いもわしが普段メイとやっている鍛錬の方式とするがよいかの?」
「ええ。すぐにあなたの方から鍛えさせてくれと言わせてみせますよ」
「では説明するぞ。武器、魔法、スキルすべて自由。本気で相手を倒す気でやるのじゃ。しかし、相手を殺すのはなしじゃ。気絶するか、参ったと言えば負け。何か質問は?」
「鍛錬……でしたよね?」
「そうじゃが?」
「それなのにそんな本気でやるんですか?」
「鍛錬で本気を出せんで実戦で全力を尽くせると思っておるのか? そう考えておるならその考えを改めるべきじゃな。まあ、こう言うと、たいていのものは『実際にモンスターと戦うときになれば本気で戦える』と言うのじゃが、そう言うやつに限って人型のモンスターと戦わせると動きが鈍る者が多い。体が自然と鍛錬と同じだと判断してしまうのじゃ。全力でない鍛錬を何度も行っているやつなんか特に顕著じゃ。頭では全力で攻撃しているつもりでも、体は全力では動いてくれない。それを避けるための鍛錬でもあるのじゃ」
「なるほど……」
「そろそろ始めないか? 俺の準備は終わった。お前が負けたら二度と俺たちの前に現れるなよ」
ユウカのこの話は以前に一度聞いたことがあったし、さっさと終わらせて帰ってほしいし、下手に長引かせてマナたちに会わせたくないしと、いろいろな思いが重なりつい催促してしまった。
俺の武器は鋼の棍棒と鋼の剣だ。ステュラを使おうかとも考えたが、「今のは武器の力だからなしだ」とか、「君がその気なら僕も本来の武器を使うからもう1回!」とか難癖つけられたらたまらないしな。
ユウカが今回決めたルールだが、実のところ俺とユウカはこのルールで鍛錬をしたことがない。もしこのルールでやるとしたら、自分の鍛錬になってしまい、俺の鍛錬にならないとのことだ。
たしかに魔法もスキルも制限なしだと、『小規模ワープ』で転移しながら魔法を撃ち続けるだけになりかねない。そのため、俺の場合は魔法なしでやっている。
ここ最近は、以前ベルセルが言っていた『スキルを技術に昇華させる』という言葉を重要視していることもあり、『真剣術』とかそういった類の技術を鍛えるのにちょうどいいしな。
「ずいぶん自信満々だね。僕の強さを見せてあげるよ」
「それじゃあ……始めよ!」
ユウカの合図で俺は天上院に向かって駆け出した。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv94/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv51/70
獣人 Lv17/20
狂人 Lv31/50
魔術師 Lv47/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv3/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
書き直ししてたら遅くなりました。
書いた分を読み直したらさすがにないなってなったので…
次は遅れないようガンバリマス。
ではまた次回