騒ぎのあとです
次の日の朝、ユウカはまだ帰ってきていなかった。俺はこれ幸いにとみんなに昨夜の夢の話を伝えた。半信半疑といった表情だが、なんとか信じてくれたようだ。
「で、要するに、朱雀が帰る方法を知っているみたいだからもう一度会う必要があるってわけだよね?」
「ああ。実際、夢の話だし信じられないかもしれないけど俺は可能性があるなら信じてみたい」
「でも、朱雀に会うって言ってもどうするわけ? 第2段階のダンジョンをすべて攻略するには時間がかかるよ」
「そこなんだよな……。まあ今日はとりあえず45層まで行くか」
「ちょっと待って。今日は40層までのはずじゃなかった? なんで一気に10層分にかわったの?」
「もちろん早く攻略したいということもあるけど、これまで5層分だけでもそんなに問題なかったし、朝から入って昼頃には終わってたろ? それならもう5層分くらいいけると思うけどな」
「時間的にはいけそうだけど、疲労を考えて5層ってことになったはずでしょ? たしかに帰る方法は気になるけど、そこまで急がなくていいんじゃないの?」
「あのさ、メイ」
「どうしたヒツギ?」
「メイは、メイは向こうに帰りたいの?」
「え?」
「メイが慌てているのは向こうに帰りたいからじゃないの?」
「いや、帰れても帰らないと思うぞ」
「そうなの?」
「帰れるってことと帰ることは違うぞ? キャラビーを向こうに連れていけるかもわからないし、連れていけなかったときに一人でこっちに残すってのも違う気もするし。ヒメたちは俺の魔力の中にいるから、たぶん向こうに戻ってもそのままになると思う。そうなると、向こうでは召喚できないからな。ずっと放置状態になるとゼルセとか暴れだすかもしれないし戻れないんだよ」
「でも、いつかは戻る気なんでしょ?」
「……」
マナの言葉に返事をすることはできなかった。たしかに、いずれは向こうに一度戻らないといけないと感じている。もちろん、両親と話をしたいというのもあるけど、その……言葉にはしないが、真那の両親とも話さないといけないしな、うん。
その後、話し合いを重ねた結果、今回に限り10層分、つまり45層まで行くことに決まった。次回からは状態を見てまた決めるということだ。
と言っても、次回は50層で終わりだし、その後は違うダンジョンの1層から行くか、あるいは第2段階のダンジョンに挑むか、『生の草原』でもう少し鍛えるかの3択だ。
違うダンジョンに行くなら、1層からということもあり疲労は比較的少なくて済むはず。それならまた10層分進むこともあり得るだろう。
第2段階のダンジョンに挑むなら、しばらくは探索をしてからになる。いくら2層毎に転移陣があると聞いていても、初見のダンジョンだ。同じ初見でも、『アントホーム』とは状況が違う。念入りに行こう。
どちらを選ぶにしても、現段階で決めることはできないんだよな。俺としては第2段階に挑みたいが、先に第1段階をクリアしてからって気持ちもある。悩ましい……。
朝食を食べ終えて、用意をしたらすぐに『生の草原』に向かった。途中でユウカとすれ違ったが、なにやら考え事をしている様子だった。俺らを見かけるまでいつになく真剣な顔をしてたからな。会議で何かあったのだろう。関係ないといいな。
ダンジョン内は、意外なほどあっさりと進むことができた。途中で遭遇したモンスターも、3、4匹の小さな群れだけだったし、普段なら出てきてもおかしくない上位種のモンスターたちはあまり出なかった。まあ種類だけは豊富だったので従魔たちの食糧の在庫は潤ったけど。
45層の転移陣で外に出てくると、時刻は既に18時くらいで、俺とキャラビーで冒険者ギルドに今日の探索で得た素材の中の売れるものを売りに行き、マナとヒツギは夕飯の準備のために家に戻ることになった。
既に買ってあるもので晩飯は作ると言ってたのでお使いは無しだ。でもちょっとした買い食いくらいならいいよね? キャラビーも今日は疲れただろうし。
道中で串肉を1本ずつ買って食べてから、冒険者ギルドに向かうと、いつもよりも人の数が多いように感じられた。新しくこの町に来た連中ではなく、これまでに何度も見てきた連中だが、多くは受付で何かを聞こうとしている。まぁ昨日の件についてだろうな。
受付に比べてすいていた買取カウンターの列に並び、5分もしないうちに順番が来た。並んでいる間はキャラビーの頭を撫でたりしていたから退屈しなかった。尻尾が揺れるのが面白くてつい撫でてたけどあとで謝っておこう。
「いらっしゃいませ。こちらは買取カウンターですが間違いありませんか?」
職員の男性が笑顔で対応する。いつもご苦労様です。
「ええ。キャラビー、出して」
「はい」
キャラビーが魔法袋から今日の戦果を取り出していく。いつもの量と比べたら、10層分にしては少なめだな。
「いろんな種類がありますね……。あ、こちらのツインホーンウルフの角なんですが、ここのところにひびが入ってますね」
男性職員の言うとおり、角の根本のところにひびが入っていた。この感じだと魔法というよりは物理的に入った傷みたいだし原因はヒツギの棺桶だな。ガンダさんのところで色々と習っているからこういったこともわかるようになってきた。まぁ「だから何?」とか言われたらなにも言えないけど。
「多少買取金額が下がってしまいますのでご了承ください」
「はい。俺たちのミスですからね」
「助かります。こちら、全部合わせて銀貨12枚と銅貨40枚ですね。確認をお願いします」
銀貨と銅貨が10枚ずつに重ねられて差し出される。枚数も数え間違いはない。俺は袋に入れるふりをしながらアイテムボックスにしまった。
「問題なかったです。そういえば、今日は人がいつもより多いですけど、やはり昨日の件ですか?」
帰り際にさりげなく尋ねておいた。関係ないとは思うけど、もし関係あったら俺も受付で聞かなきゃいけないし。
「そうですね。昨日の件について聞きに来る人もいれば、今朝ギルドで発表された件について確認に来る人もいますよ。私のところに来る人もいて大変ですよ」
「今朝発表されたこととは?」
「今日は依頼を見ていないのですね。依頼掲示板のところに通達として書いてありますよ」
「ありがとうございます。帰りに確認しておきます」
「それがよろしいかと」
「では、失礼します」
俺はキャラビーとはぐれないように手を繋いで依頼掲示板のところに来た。
「……」
そこに書かれている内容は、朱雀に早く確認したいと考えている俺からしたら全くもって迷惑な話だった。
『通達
昨日、新たに誕生した第2段階と呼ばれる4つのダンジョン『死の草原』『悪の洞穴』『暗の森』『賤の山』に関して、パーティランクB以上の制限をかけることとする』
ダンジョンには、無駄死にを減らすために、ランク制限がその難易度に応じてつけられることがあるということはキャラビーから聞いている。これまではそんなダンジョンに行ったことがなかったから気にしなくていいと思っていたが、これはきつい。
俺たちは全員がランクC+。パーティランクも当然C+だ。依頼なんかここ最近になってようやくやりはじめたのだから、ガラハムさんが上げてくれてから上がっていないのも当然だ。
これまで、ランクなんか関係ないと思っていたし、それに、わざとランクを上げていなかったというのもある。
ランクB-とランクC+の間では、大きな違いがある。
まず、ランクB-になると、指名依頼というものが可能になる。普通はもっと上のランクになって有名になってからやってくるそうだが、それが可能であるだけで嫌な予感しかしない。貴族の指名依頼とかだと断れない場合もあるらしいし。
その指名依頼で最もよくあるのが、護衛依頼なのだそうだ。いざそのときになって『できません』ではすまされないので、ランクB-になるためには、戦闘試験の他に、試験官を連れて護衛依頼をするという試験があるそうだ。しかも、場合によっては一緒に試験を受けたパーティと合同で。正直、俺もマナもヒツギも護衛依頼は好きではない。というか、できればやりたくない。どうしようか……。
「キャラビー、帰ったらみんなと相談するぞ」
「はい。ご主人様のランクが上がることはいいことだと思います!」
キラキラした目で言うキャラビーの頭を、何とも言えない表情を隠しながらそっと撫でて、俺たちは冒険者ギルドをあとにした。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv90/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv25/50
魔術師 Lv40/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
冒険者ギルドでの一幕でした
次も3日後かな?
ではまた次回