夢の中です
「……ろ。目を開けろ、刈谷鳴」
「なんだ?」
ハウステントの部屋のベッドにヒメとカルアと一緒に横になったはずだったのだが、気がつけば、辺りにはなにもない草原にたっていた。
「やっと気がついたか。なかなか目を開けなかったものだから、失敗したかと思ったわ」
「俺らにはどうしようもなかろうて。朱雀のように力の一部というわけでもない。我らはただの絞りカスに過ぎんのだから」
「ははは。力を失っても、あなた方は元気のようですね」
草原にて俺の周りにいる存在に目を疑った。
かつて俺が喰らって、今はヒメとして生きているはずの白虎。
かつて悪意を持った人間につかまって、死んでからかなりの時間が経ったが、俺が喰らったはずのドン・ガルーダ。
そして最後の1体は今日の昼間に見た朱雀。
「……寝るか」
この光景はきっと夢だな。なんかの話で夢の中で眠れば夢から覚めるって見た気がする。たぶん横になれば大丈夫だろ。幸いここは草原でかすかに吹いている風と日差しが気持ちいいしすぐに寝られるだろう。
「待て、横になって眠ろうとするんじゃない。まだ話は終わっていないどころか始まっていないぞ」
「そうですよ。そんなに時間はいただきませんので。少し古い友と話したかったのですよ。そもそも若干無理矢理あなたに介入させてもらったので、あまり持ちませんし。あなたの意識が途切れると彼女が起きてしまうみたいですしね。目的が果たせなくなりますのでそれは嫌なのですよ」
若干朱雀が気になることを言っているが何のことか話す気はなさそうだ。
「しかし、昼間に見た時とはサイズも威圧も全然違くないか?」
「それは当然ですよ。私の本体は今も『チューチエ』で眠りについてるのですから。あの時の私は力の一部を具現化していただけです。そして、その中のさらに一部を使って介入しているのですから」
つまり本体は昼間に見た時よりも圧倒的に上だということか。まあ当然と言えば当然だろうな。こいつは4大ダンジョンのボスの1体。眠っているという表現や、8つのダンジョンを攻略しないといけない点を考えれば力は別に衰えたりはしていないだろう。白虎のように空腹状態でだいぶ弱っていたというのは期待できない。
「俺に関係のないところでやってほしかったな……」
「まぁまぁ、そんなこと言うなよ。お前にとってもいい情報もあるかもしれないんだから」
「向こうに帰る方法でも知ってるとでも言う気か? それとも、ダンジョンの攻略法でも教えてくれるのか?」
「ダンジョンの攻略法と言われても、そんなものはありませんよ。前者はともかくとして、攻略法なんか知りません」
「自分のダンジョンでもか?」
「自分のダンジョンだからこそですよ。自分のところまでやってこられたくないのにその攻略法を用意するようなバカはいませんよ」
やっぱりそうだよな。壁に右手をついて迷路攻略とか俺が作る側なら絶対させないもの。
「それにしても、まさかあなたが堕ちるとは思いませんでした。顕現してすぐにあなた方の力が固まっているのを見つけたときは驚愕しましたよ」
「俺としてはこいつの死に様には大いに賛成だけどな。俺自身、あの女に義理を通していた結果だからな。あの女が生きている限りは俺は暴れるつもりもなかった。俺が先にくたばったのは予想外だったけどな。少なくとももう2000年くらいは生きる気だったからな。次の長は指名してあったが、俺の死体がメイに喰われるまでそのまま館にあったことを考えるとどうにもな……」
「私は眠っていたので何とも言えませんが、白虎は何か知らないのですか?」
「ああ。我もガルーダ族の話は聞かなかったな。『パイフー』に来ていたのはお前だけであった。少なくともお前が現れなくなってからは上のオーガたちもみなかったと言っておった」
「そうか……。まあ今となっては俺も動けないどころか、完全に力を失ってるからな。何もできないか」
「そういえばお前らヒメとカルアとはまた別な存在なんだよな? つかなんでお前ら生きているわけ?」
「言ったではないか。今の我らはただの搾りカスだと。我らはそなたに喰われた時点ですべての力が消えておる。今こうしておるのは彼女がかすかに残した力の絞りカスを朱雀の力を借りて形にしているだけだ。潜在能力を含めたすべての我の力はヒメとして生まれ変わっておる。もちろんカルアもな」
「さっきから出ている彼女とは誰なんだ? マナのことか?」
「我からは何とも言えんな。いずれわかるであろう。その時まで待つことだ」
「下手なことを言えば危ないからな。どうなるかわからねえ」
白虎もドン・ガルーダも真剣な表情になって告げた。いずれわかるってことを聞けただけでもよしとしたほうがいいのかな?
「私にはいまいちわかりませんが、大変なようですね」
「お前もこいつに喰われればわかるぞ。喰われてみるか?」
「ご冗談を。私が死ぬことは『チューチエ』が終わることと同義なのですよ? 簡単にはやられませんよ」
鋭い目つきで睨むように告げる朱雀。この状態でも、今の白虎とドン・ガルーダが束になっても敵いそうにない。ヒメとカルアならどうだろう? ……条件次第だろうなぁ……。
「そう睨むな。我とて本気で言っているわけではない。こいつは強いからな。万が一のことを考えておけということだ」
「そもそも第1段階すら攻略できてないけどな」
「それは皆と歩幅を合わせておるからであろう? お主一人で、罠をすべて無視して進めば1日で30層くらいはいける」
「無茶言うんじゃねぇよ。罠を無視って要するにすべての罠をくらって進めってことだろ? 痛いじゃん」
「カルアを出しとけば風のカーテンの魔法で全部弾いてやれるぞ?」
「カルアに頼むなら全部撃ち落として進むさ。遊びだと思って周りに迷惑をかけそうだ」
「……否定できねぇ」
「メイはカルアのことをそんな風に感じていたのだな」
「勝手に出てくるし、なにより自由に動きすぎ。ボス戦に勝手に出てきてゼルセの獲物をつまみ食いしたりもしてたしな」
「あいつそんなことを……」
ドン・ガルーダが地面に頭をめり込ませそうな勢いで落ち込んでしまった。自分の力の一部だったものが子供みたいに、というか子供になってショックだったのかな? あるいは、その行動を改めて俺から指摘されてはずかしくなったのかもしれないな。
「朱雀よ、そろそろ限界だ。お前が一番無理をしているからな。先に帰った方がよいぞ」
「そうさせてもらいます。久しぶりにあなた方と話せて楽しかったですよ」
「我もだ。二度目があるかどうかはわからんがな」
朱雀の体が少しずつ薄れていく。そういえばないと思って、さらっと流したせいで聞き忘れてたことがあったな。ダメもとで改めて聞いてみるか。
「なぁ朱雀、さっき聞き逃したけど、お前って向こうに戻る方法を知ってるわけ?」
朱雀の体は今にも消えそうになっている。まあさすがに知らないよな。
「知っていますよ」
「そっか、知らな……は?」
「では」
「ちょっと待て! お前今知ってるって」
俺の言葉は届かずに朱雀の体は完全にきえてしまった。重要なところをまだ聞けてないのに!
……これで朱雀に会わなきゃならない理由ができたな。どうやって説得しようか……。その後、気が付いた時には白虎もドン・ガルーダもいなくなっており、俺の意識はなくなっていった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv90/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv25/50
魔術師 Lv40/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
今回は懐かしのあいつの登場でした。
ではまた次回