変貌の空です2
朱雀。その名は俺の記憶だと、ヒメ、いや、白虎と並んで四神の一柱として数えられる名前だ。
東の青龍、南の朱雀、西の白虎、北の玄武。その4体が天の四方を守っているという話だった気がする。白虎を喰らったときも『西方の神の加護』というものを得ているしな。いまだに効果はまったくわからないけど。
『まずはじめに、『生の草原』『善の洞穴』『明の森』『貴の山』。これら4つのダンジョンを攻略し、ダンジョンコアを回収したことを称えましょう』
朱雀の声が頭の中に直接響く。全員にきちんと聞こえるようにって配慮してるのか?
『これらのダンジョンは、私が守護するダンジョン、『チューチエ』へと続く、鍵となるダンジョンです』
「チューチエ!? 4大ダンジョンの1つじゃない!」
マナがその名前に反応する。朱雀の名前と4大ダンジョンの言葉からして、白虎が死ぬ間際に言っていた『残りの3つ』の1つか。
『今この時より、ダンジョンの第2段階を解放しました。それぞれのダンジョンの、ダンジョンコアがあった地点に転移陣を用意してあります。そこの転移陣を使用できるようになる条件はただ1つ。第1段階をクリアすることだけです』
朱雀は僅かに光を強めて翼を広げた。すべてを受け入れるとでも言いたげだ。
『『生の草原』の第2段階は『死の草原』。『善の洞穴』は『悪の洞穴』。『明の森』は『暗の森』。そして『貴の山』は『賤の山』。すべて20層で成り立っており、2層毎に転移陣があり、10層にはフロアボスを、20にはダンジョンコアの守護者を配置しています』
4つの炎が朱雀の周囲に飛び出て、それぞれ違う映像が流れる。
1つは荒野。草1本生えていない、数十のモンスターが住まう荒野。
1つは洞穴。完全に真っ暗で、足元すら覚束なさそうな闇の中にモンスターの瞳が怪しく光る洞穴。
1つは森。禍々しい紫の葉をつけ、ぐねぐねと歪んだ木で形成された、音一つしない静かな森。
1つは山。葉の無い枯れ木が麓から山頂に向かって生えそろい、その向こうに山をはるかに超えるナニカがそびえる山。
その映像はそれぞれ10秒も満たないくらいの時間しかなかったが、その映像は人々に恐怖と、そして歓喜を与えた。ある者はすぐ近くにさらに凶悪なモンスターの蔓延るダンジョンが増えたことによる不安を。またある者は、新しい戦いを楽しめることへの期待を。またある者はダンジョンコアを持ち帰り、栄光と賞賛を得るという野望を。そしてある者はこれから起こるであろう混乱に身を投じる覚悟を。
そんなそれぞれの思いを知ってか知らずか、朱雀は話を続けた。
『今これらのダンジョンすべてに挑める者はまだいません。多い者たちでも、最大で3つ。今からでも十分に追いつくレベルでしょう。はっきり言って、第2段階は第1段階とは難易度が変わります。第1段階を突破して調子に乗っているような輩ではクリアどころか、2層の転移陣にすらとどかないでしょう』
朱雀が挑発するかのように告げる。実際には注意しているつもりなんだろうが、残念ながら挑発にしかなっていない。
『第2段階のすべてのダンジョンを攻略したとき、私はまた姿を現しましょう。その時までさようなら』
朱雀はゆっくりと雲の中に戻っていく。それに従って渦巻いていた暗い雲は中心に吸い込まれるように消えていく。そして朱雀の光が完全に消えたころ、空ももとの色に戻った。
「……どうする?」
「どうするって、何を?」
「メイは『チューチエ』を攻略する気なの?」
「ご主人様たちはあれが何者か知ってるのですか?」
「かうかうかぁう?」
「くえ?」
今後のことをどうするか尋ねたら全員から逆に尋ねられた。ヒメはちょっと何言ってるのかわからないけど、なんとなく、『いかないの?』と聞いてる気がする。ヒメは種族的に何かひかれあうものがあるのかもしれない。そしてカルアはただ流れで首をかしげてるだけだろう。
「とりあえず家に入ろう。そこで情報の共有をしたい。俺は朱雀がいることはなんとなくわかってたけど、『チューチエ』というダンジョンのことは知らなかったし、マナがそっちを知ってたことも聞いておきたい」
「私は蚊帳の外じゃない」
「ヒツギも関係あるからな? ヒツギがいたのって『パイフー』だし」
「あーそういえばそうだったね。忘れてたよ」
「あのー、ご主人様?」
「すまんなキャラビー。ちゃんと話すからちょっと待ってな」
話についていけず、おろおろし始めたキャラビーの頭を撫でてなだめる。いろいろとキャラビーに話してはいるけど、俺がこの世界に来てからの細かいところはいくらかぼかして話しているからな。特に橋から落とされたときの状況なんかはぼかしている。あいつに落とされたと言ったらどう反応するかわからんからな。一応元仲間なんだし。案外何とも思わないかもしれないけど、別にこれはわざわざ言わないといけないというほどのことでもないだろう。というか昔のお前の仲間に殺されかけましたなんて言いたくないって。ヒツギとマナに言った時の暴走ですら怖かったんだから。
俺たちはリビングに集まって『チューチエ』について話し合いを始めた。始めたといっても、基本的にはマナが話しているのを聞いているばかりだ。
マナの話によれば、『チューチエ』の名前は、悪魔から教えられたらしい。
マナに『チューチエ』を含む4大ダンジョンの話をした悪魔の名前はラフォーレ。俺のところに来た悪魔とは違う悪魔だ。あ、そういえばあいつは俺が喰らったんだっけ。俺の瞳をとろうとして、触れた瞬間に俺の瞳に吸収されていったんだったかな? あの時はよくわからないスライムを喰らって何とか回復は始まってたけど、死にかけてたから曖昧なんだよなぁ……。
マナがそのラフォーレという悪魔に教わったのは、自身の『力』についてと、この世界のダンジョンを終わらせる鍵となる4大ダンジョンについて、それから俺が『パイフー』に向かっているということの3つ。
4大ダンジョンは、『チンロン』『チューチエ』『パイフー』『ショワンウー』の4つ。これらのダンジョンに挑んで、最奥にいるボスを倒して攻略したという前例はなし。ダンジョンが生まれた最初期からずっとあるらしいから、よっぽど誰も来ないような位置にあるのだろう。
考えてもみれば、『パイフー』はもともとは100層を超えるレベルの巨大ダンジョンで、その入り口もあのとても深い谷の底。誰も行かないわな。さらに言えば、いつからそうなったのかは知らないが、『パイフー』に入るためには、元々ゼルセのもとになったオーガキングがボスを務めていたダンジョンを攻略する必要があったはず。なんとかしてあのダンジョンにたどり着いても、オーガたちによって倒されていたのだろう。
『チューチエ』も、朱雀の説明を聞くに、『生の草原』『善の洞穴』『明の森』『貴の山』の4つのダンジョンを攻略し、『死の草原』『悪の洞穴』『暗の森』『賤の山』の4つのダンジョンを攻略して初めて『チューチエ』が現れるっぽい。他の2つも現れるために条件があるとか、場所が極端に変な場所にあるかのどちらかかもしれないな。
結局、その後の話し合いの結果、とりあえず『生の草原』を攻略して、その後で改めて話し合おうというはなしになった。そもそも挑むことができる段階にないしな。『生の草原』の後に『死の草原』に行くのか、それとも他の第1段階のダンジョンに行くのかはまたその時に先送りにすることにしよう。
そうして話し合いが終わったころ、ユウカが帰ってきた。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv90/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv25/50
魔術師 Lv40/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
前回の話の続きではなく、前々回の続きです。ご注意ください。
次回は少し遅れると思います。
なんでテストが重なってしまったんだ…
投稿の日時によっては、テストはあきらめたと思ってください。
ではまた次回