洞窟エリアです2
3人と分かれて迷宮に潜り始めてから1時間が経った。
ダンジョンの壁に沿ってずっと進んでいた結果、テレポドラゴンと2回、フライガエルとは4回遭遇した。しかし、討伐数は0だった。
『空蹴り』のスキル自体は、ずっと使い続けていたこともあり、この1時間でレベルが2になっている。普通に使っていてレベルが上がったのは久しぶりだな。
テレポドラゴンは、見かけた2回とも、他の冒険者がすぐ近くに居り、彼らが近づこうとして逃げられていた。こっちには気づいていなかったと思われる分残念だ。フライガエルは、全部普通に気づかれた。最初のはラッキーだったのか……。
そして、またしても目の前でフライガエルが跳び去っていくのを見て、次の獲物を探し始めた。
それから15分もすると、曲がり角の先に次のテレポドラゴンを見つけた。距離としてはおよそ50mくらい。しかし、何やら様子がおかしかった。
「……」
テレポドラゴンは東洋の龍というよりは、西洋の竜に近い。どっしりとした体つきをしており、その表面は大きな鱗でびっしりとおおわれている。そしてその胴からすらりと伸びた首の先に、大きく鋭い歯を持つ厳つい顔がついている。4足で、腕はないが、その足は非常にがっしりとしており、足先についている爪はいかにも硬そうだ。洞窟に住んでいるからか、背中の翼はそれほど大きくなく、今見つけた個体はこれまでの物と比べて一回り大きいこともあり、洞窟の4分の1を占めるその体に翼がまったく合っていない。
そのテレポドラゴンが、翼を折りたたみ、地面に這いつくばって何かを食っていた。
近くに落ちているものを見れば、それは何なのかは明らかだった。その周囲を赤く塗りつぶす血と、その赤の中、ひときわ目立つ白い骨と、その先にわずかに残った指、そして食いちぎられた鉄鎧と折れた長剣。飲み込むために一旦顔を上げた時に見えたそれは人だった。間違いなく冒険者で、こいつに挑んで返り討ちになったのだろう。
テレポドラゴンをじっと見てみると、体中に傷が目立ち、尻尾の太さなど、他の個体と違う点も見て取れた。
『真テレポデスドラゴン(ドラゴン種)』
『鑑定』してみると、予想通り上位個体だった。
うかつに動いて気づかれたら逃げられてしまうと思い、とりあえずエンチャント系魔法と、強化系のスキルを使って、ばれないように自身を強化しながら、どうしようかと悩んでいたが、再び飲み込むために顔を上げたテレポドラゴンの向こうに見えた、まだ食われていない人影が、かすかに動くのを見て、俺は飛び出した。
すでに強化は終わっていたこともあり、全速力で宙を蹴って接近した。使ったのはパワー重視の『鬼化』ではなく、スピード重視の『獣化』。それに、すでにステュラは構えてあり、肉薄したら即座に振りきる準備はできていた。
そして『空蹴り』の効果が切れる、2回目の宙を蹴った後、連続ワープに切り替えて前に突き進む。
(『一閃』!)
剣のスキルの中で現在最速の攻撃であるその一撃は、空を斬った。
「ガァアア!」
「っ!」
何とか地面についた足先で三度跳んだ。背面跳びのような形になった俺のすぐ下を真テレポデスドラゴンの顔が通り過ぎる。その際、やつと目が合った。それはかつて見たことがある目だった。
真下に向けて『ダークアロー』を撃ちこむも、それより先にやつはテレポートで離れていた。しかし、逃げる様子はない。
「はぁ……。その目を見るのは2回目だ。その、俺を餌としか思ってない目はな」
「グゥウウル」
「ほんとはもっとちゃんと戦っておくべきなんだろうが、今は少し時間がないんだ」
俺はそう言いながら『獣化』を解く。そして『狂化』を発動する。
「俺は餌じゃねえんだ。……その目をやめろ!」
次の瞬間、目の前にテレポートして噛みつこうとしてくるやつののどにステュラを突き立てた。鱗のない喉はあっさりと貫け、血が噴き出る。
「ギャオォオオ!」
やつは叫び声にも似た悲鳴を上げて後方にテレポートで飛ぶ。
「逃げてんじゃねぇよ!」
血走った瞳でそれを追う。予想通りだっての。
俺がやつに指を向けた瞬間、奴の体を『黒槍の雨』と『黒雷』が貫く。硬いはずの鱗を砕き、次々と穴をあけていく。
『狂化』というスキルは、何度『鑑定』しても
『狂化:狂う』
としか表示されない。そのため、ずっと使ってこなかった。しかし、こないだ改めて覚えているスキルを確認しながら使っていた時、何となく使ってみた。全部のスキルを試していたのにこれだけ使わないのはなんか違う気がしたからな。その結果判明した効果があった。
これを使うとまず性格が変になる。変になると言うとなにかおかしい気がするが、考え方が変わってくる。怒りやすくなるのだ。頭は冷静でいられても、ちょっとしたことでもすぐイライラしてくる。そして何より攻撃的になる。今みたいな場面だとこの方がいいと感じているけどな。
もちろん、これだけではない。対象の位置、状態が正確に把握できるようになるし、何よりもこの状態で使うスキルの大半が強化されるのだ。自身を強化するタイプのスキルは変わらないが、魔法系統は威力、精度ともに強化される。今の『黒槍の雨』と『黒雷』も強化前の状態であんなに完全に貫くことができたかどうか聞かれると微妙としか言いようがない。
『自身を狂化し、対象と共化し、スキルを強化する』
それがこのスキルの隠し効果ともいえる効果だ。
「ガ……ァ」
「はっ! 餌だと思ってた相手に逆に喰われる気分はどうだよ!」
苦しそうに顔が歪むやつに近づいてとどめを刺して笑う。あー、効果が切れるまで10秒くらいあるかな。
完全に動かなくなったやつの頭をつかみ、瞳で喰らう。
『職業:冒険者Lv90になりました。
狂人Lv25になりました。
魔術師Lv40になりました。』
『スキル:回復速度上昇(強)を習得しました。
魔力上昇Lv1を習得しました』
『スキル:テレポートLv8を習得しました』
レベルが上がっただけでなく、お目当てのスキルも手に入れられたみたいだ。上位種だったからかレベルも高い。この感じだとこいつが使ってたのはテレポートの上位スキルだったのかな。
『狂化』の効果は『鬼化』や『獣化』のように任意で消したりできるわけではない。30秒間しっかりと効果がある。というか、これは副作用のほうが時間が長い。
30分間スキルが全て封印されるのだ。もちろん、『再生』も発動しないし、回復系のスキルも一切効果がない。新しく覚えた『テレポート』にも効果は及ぶようで、試せないし、移動もだいぶ遅くなるな。というかすごい疲れる……。
『狂化』が解けると、すぐに俺は壁際でかすかに息のあった男のもとへ向かった。
「大丈夫か? ……って大丈夫ではないよな」
「……う……あ……」
「しゃべるのもやっぱ無理か」
それだけ確認すると、地図を確認しながら男を背負い、転移陣までを最短ルートで走り始めた。
ほんとならみぃちゃんあたりを呼んで運んでもらいたいのだが、スキル封印は『眷属召喚』にも及ぶため、家にすでに召喚してあるやつら以外は出てこれない。わかってはいたがやはりリスクが半端ないな。
転移陣に到着し、外に出てすぐ近くにいたパーティに回復を頼むと、若干嫌そうな顔をしたが、俺が背負ってる人を見て、すぐにやってくれた。
聞くところによると、この男の人は、新人とか若者とか低ランクの人を、善意、でギルドの訓練所で鍛えてくれる人らしい。戦闘のこともそうだし、夜営の仕方、武器の手入れの仕方など、教えることは様々らしいが、全部役に立つことだ。
俺が頼んだパーティにもFランクの時に世話になったという人がいて、そいつからすごい感謝された。
ひとまず大丈夫な程度には回復してくれて、あとは目を覚ますのを待つだけになった。奥さんがこの町にいるらしいからそこに連れていこう。
俺は、お礼を言って男を背負い直して、町に向かった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv90/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv25/50
魔術師 Lv40/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
久しぶりにいくつかレベルが更新されました
冒険者、狂人、魔術師の3つです
年内はあと1話か2話で終わると思います。
ではまた次回