闇の爪です
3人には寄る所があるといったが、実際にはそんな場所はなかった。
そもそも、この町に来てからほぼ同じような場所にしか行っていないのに、こんな来たこともないような裏路地に目的なんてあるはずがない。というか適当に進んでるから帰り道がわからなくなりそうだ。
5分ほど適当に進んでいくと、ちょっとした広場があった。広場というかこれは空き地かな?
「わざわざ1人になってくれるなんてな。バカで助かったぜ」
「こんな人通りのないところまで来てくれたからな。攫う手間が省けた」
「私としては残りのもいて構わなかったのだけれど? 売ればいいだけだし」
「んまー、売らないにしても楽しむことは確定だったんだ」
「ギルドでアイテムボックスの名を出したときは少し焦った。袋ならそれごとひったくってしまえば問題なかったのに……」
「いいじゃないの。それで同業者が何組かあきらめてたんだから」
「別にあきらめなくても問題なかったわよ。売る伝手があるのなんか私たち以外2組しかいなかったはずだし」
俺が空き地の奥に入っていった途端、路地から6人の男女が姿を現した。ギルドを出た時からずっとつけていた連中だ。気配を消したりしてなく、すぐに気づけるくらいだったからそんなに強くはないだろうけど。もし、気配を消さなくてもいいくらいに強い奴らならとっくに仕掛けてきているだろう。
「あー用件は金か?」
「わかってんじゃねえか。さっきの金を含めた、アイテムボックスの中身を全部寄こしな。そうすりゃ売るのは勘弁してやるよ」
「売らないときはあんた殺しちゃうじゃない」
「んまー、それを言っちゃおしまいなんだ」
「うるさいわね」
連中が何やら漫才のようなことをしている間に『上級鑑定』で装備などを見た。
男5人は全員同じような装備で、鋼の剣と鉄プレート、あとは皮のズボンとかだ。逆に、女はそれなりにいい装備を身に着けており、腰に差しているのは鋭利の短剣という鋭さの高い短剣で、背中には魔木の杖という魔法の威力を上げる杖。そして両手の指全てにはそれぞれ効果の違う指輪がついている。
そして、全員の装備に1つだけ共通している点があった。
「その模様は……『赤の団』だったか?」
『赤の団』の模様がついていたのだ。ついている物はバラバラだが、見える位置についている点は変わりない。ギルドに入っててこんなことやってていいのか?
「なんだ、知ってたの。そうよ。私たちはあの『赤の団』の団員よ」
「それを聞いておとなしく渡す気になったか?」
「いや、そんな大手ギルドって呼ばれてるとこの団員がこんなことをしているなんてなって思っただけだ」
俺の言葉を聞いて、連中は声に出して笑い始めた。
「はっはっは。なんだ、そんなことかよ」
「んまー、うちのギルドには俺たちのような奴はごろごろいるんだな」
「ギルド非公認の裏ギルド、『闇の爪』のメンバーがどこのギルドにももぐりこんでる。当然ここにもな」
「俺たち以外に2パーティ合わせて12人いる。今はこの町にも他に4人いるし、上層部にもいるからな。俺たちの行動をもみ消したりするのに一役買ってくれてるんだよ」
「それって俺に言ってもいいことなわけ?」
「これから死ぬやつに何言おうと問題ないだろ?」
「いや、殺す宣言しちゃってるじゃないの」
「んまー、それを言っちゃだめなんだ」
聞いてもいないのにペラペラしゃべるなこいつら。裏ギルドと呼ばれる存在があること。どこのギルドにもその手先が紛れ込んでいること。そして『赤の団』にはこいつら含めて3パーティ18人いるということ。少なくともこれだけわかった。もういいかな?
「そろそろ帰りたいんだが、そこどいてくれない?」
「帰すわけないだろ? どうしても帰りたいならアイテムボックスの中身と命を置いていけや!」
男たちが俺にとびかかろうとして……そこで動きが止まった。やっとか。
「このやり取りをそんな近くからずっと見ていたにしては助けるのが遅くないか? アールム」
「何を言う。わざわざこいつらの影が建物の影と重なるような場所に誘導してきたくせに」
連中の足元を見てみると、広場に差し込む光の向きの関係で、建物の影に頭の影が重なっていた。それに関してはたまたまだったのだが、あえてのっておこう。
「その方がやりやすいだろ?」
「まあな」
「てめぇ、アールム! いったい何の真似だ!」
「そうよ! あんた、同じギルドのメンバーにこんなことしてどうなるかわかってんの!?」
喚きつつも、武器を構えたままピクリとも動かない連中の体には、足先から指先にかけてらせん状に影が巻き付いている。首元までしかないから頭は動かせているが、体が動かないからどうしようもない。
「『其の影は、其の身を縛る、鎖かな』ダークチェーン」
女の首に影が伸びる。影はそのまま巻き付いていき、女の意識を奪った。
「同じギルド……? 貴様ら、本当にそう思っているのか?」
アールムの顔からだんだんと表情が消えていく。
「思ってるのかって、俺たちも『赤の団』のメンバーだろうが!」
そのセリフを聞いて、アールムは完全に無表情になった。
「『赤の団』は冒険者ギルドで1,2を争う巨大ギルドだ。その名はとても重い。私はこのギルドに属していることを誇りに思っている。だからこそ! 私は『赤の団』の名前を騙って悪事を働く輩を許せない!」
「ぐ、ぐる……じい……」
影がだんだんと拘束力を増していく。というか影が体にめりこんでないか?
「貴様らのようなギルドの闇は生かしておくつもりはない」
「おい待て」
「『赤の団』にお前らのようなのはいらない」
「待てって言ってるだろうが」
「今思えばクロウの件もなぜ私に伝わっていなかったのか……。知っていたらもっと早く処分したものを」
「いい加減にしないとぶん殴るぞ」
アールムのところに『小規模ワープ』で移動して肩を強くゆする。
「……取り乱した。失礼した」
何とか落ち着いたようだ。連中を縛っていた影も消えている。全員意識はないから逃げ出すようなことはなさそうだ。
「お前が手を下すよりもこいつらを拷問でも魔法でも何でもいいから問い詰めて残りのメンバーについて話させた方がいいだろ? こいつらはかなり口は軽い。ちょっと問い詰めればペラペラ話してくれるだろうよ」
「ああ。そうかもしれない。私自身はそういった魔法の心得はないが、うちのギルドにはそういった魔法を得意とするメンバーもいる。彼女に協力を要請しよう」
「それがいい。ただ、伝える人間は選べよ?」
「ああ。そのつもりだ」
アールムは一度深呼吸をして、俺に向かって頭を下げた。
「この度は本当にすまなかった。こいつらにはきっちりと罰を与えておく」
「俺たちに迷惑が掛からないようにしてほしいね」
「少なくともこの町の『赤の団』のメンバーには徹底しておく」
「頼むよ」
「彼らの装備は全て持っていってもいいが……」
「いや、いらん」
もらったとして、全部喰らうことになるだろうが、もし指輪なんか見られたら3人から何をされるか……。
俺はアールムに6人を押しつけて帰路についた。
ちなみに、30分くらい迷っていたのは内緒だ。
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『赤の団』グリムの町支部の応接間にて、アールムはここのトップである獣人の男と向き合っていた。
「『闇の爪』か……。1人2人はいるとは思ってたが、18人もいたとはな」
「しかもこの町に10人だろ? 特定はできたのか?」
「彼女の協力のもと割り出すのには成功しましたが、1人すでにここを発っていました。居場所は不明です。また、残る8人も特定し、すでにマスターのもとに部下を向かわせています」
「なら時間の問題だろうな。まああれらが知らないようなメンバーもいるだろうがしばらくはおとなしくなるだろう。動きがあったらすぐに俺にも知らせろ。動く」
「よろしいので?」
「……書類仕事に疲れた」
「だろうと思いました。そこで追加の書類です。報告書をまとめました」
「はぁ……。お前のまとめなら問題はないと思うが、余計な真似はしてないな?」
「はい。事実のみをまとめてあります」
「結果だけ先に聞いておく。白か? 黒か?」
「白です。ただ、もう手を出すべきではないと思います」
「それは書いてあるな?」
「はい」
「……なら詳しくはそれを見るとしよう。ご苦労だったな。引き続き、監視を頼む」
「了解です」
アールムは影に沈んだ。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv88/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv21/50
魔術師 Lv37/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
次回はたぶん報告書になります。
あくまで予定、予定は未定です。
ではまた次回




