生の草原です4
「『マジックソード・アクア』!」
ヒツギが鎖で体勢を崩したレッドベアの眉間にマナの魔法が突き刺さった。これで残りは9体だ。
レッドベアの群れは少し行くとすぐに見つけることができたが、奇襲する前に向こうにも気づかれたため、迎え撃つ形で戦闘が始まった。
いざ戦闘が始まると、あっさりと3体が沈んだ。俺のステュラで首を切られたやつと、ヒツギの鎖で首を折られたやつと、マナの『マジックハンマー・アクア』で頭を潰されたやつだ。そして、4体目もすでに袈裟懸けに斬りつけてかなり出血しているから時間の問題だと思っていた。
その時、レッドベアが雄叫びをあげた。ギルドの資料にも載っていた、仲間を呼ぶ雄叫びだ。
通常、レッドベアのこの雄叫びで来るのは2~3体程度。そのため、周囲の警戒を強化しつつレッドベアを攻撃していた。しかし、予定外のことが起きた。残りの5体のレッドベアが同時に雄叫びをあげ始め、その結果、追加で13体ものレッドベアと1体のホーンウルフが来ることになったのだ。
ヒツギの棺桶がマナのほうに向かおうとしていたレッドベアの首をへし折った。レッドベアたちも、攻撃を受けられたり、かわされたりしてなかなか倒せない俺たち3人よりも、動かずに後ろから攻撃をしているマナを先に倒そうと、何とかして俺たちのところを抜けようとしていたが、そんなことをさせるはずもなく次々と仕留めていった。その中でキャラビーも俺の後ろから短剣で少しずつダメージを与えていき、1体をしとめていた。すぐに次が来たから、のどに突き刺さった短剣はそのままになっているが予備も渡してあったし大丈夫なようだ。
「一気に行くよ! 離れて!」
マナの声に反応して全員が一斉に後ろに下がる。これでマナの射線が空いた。
「『現れよ、地獄の炎』ヘルフレイム!」
マナの放った獄炎魔法の赤黒い炎がレッドベアたちを焼き上げる。周りの木にも少し燃え移っているが、こっそりと『アクア』で消しておく。火事なんて嫌だからな。
熱さと痛みから周りに当たり散らすレッドベアだが、一向に火が消える気配がない。燃え尽きるころには肉はもうだめになっているだろうな。多めに狩った分は喰った時に得られる能力次第でヒメたちの飯にする予定だったんだが……。
結局残ったレッドベアは全部焼け死んだ。途中で全身に淡い炎をまとってヘルフレイムに対抗しようとしていたやつもいたが、意味なく沈んでいった。そして肉も食べられる部分はなさそうだ。ついでに素材も取れそうにない。レッドベアの加工で最も重要な体毛が全てないんだもの。
「マナ、やりすぎじゃない?」
「私もそう思う。獄炎魔法ってかなり難しいね。メイが暗黒魔法を扱いきれてないって言ったのがわかった気がする」
どうやらマナも制御しきれていないらしい。まあ俺が火消しに回らないといけなかった時点でわかりきってたけどね。
「それより、回収できるやつはさっさと素材をとっちゃおう。数は自動でカウントしてくれるが素材は自動では回収してくれないからな」
「解体ナイフならある意味自動みたいなものだけどね。それだと私も棺桶で吸収できないしメイも喰らえないからしないけど」
「そうだな。あ、キャラビー、けがはないか?」
「はい。私は後ろから攻撃するだけだったので」
「それでも結構狙われることがあっただろ? 後ろから襲ってきたやつも何体かいたし」
「大丈夫です。魔法も使ってきませんでしたし」
キャラビーの言ったとおり、今のレッドベアの群れに魔法を使ってきたやつはいなかった。ヘルフレイムを防ごうとしてたやつ? あれはノーカンだ。攻撃に使ってきたわけじゃないし。
「次に見つけたら1体にして魔法を使ってくるまで待って、それから倒すようにしてみよう。本来レッドベアに苦戦する原因は魔法なんだし、それを使ってこなかったやつらは倒せても不安は残るだろ?」
「それはいいけど、喰らうなら早くやった方がいいかも。いつ誰が来るかわからないし」
「そうだな。とりあえず先にあの焼けた奴を喰らうよ」
俺は若干熱を帯びているそいつを喰らった。
『スキル:熱毛Lv1を習得しました』
「なんかよくわからないスキルが手に入った」
「どんなスキル? レッドベアだから火魔法系統のスキルじゃないの?」
俺は『熱毛』の効果を鑑定して調べてみる。
『熱毛:体毛がやんわりと熱を帯びる』
「やんわりってなんなんだよ!?」
つい声に出して突っ込んでしまった。いきなりの大声に3人ともびっくりしている。いかん。
「悪い。スキルの効果が、体毛がやんわりと熱を帯びるって効果だったんだ。意味が分からなさ過ぎてつい声が」
「あー、メイはあんまり毛深いほうじゃないからね。そもそも熱を帯びる部分がないんだね」
「なんでマナが俺の体毛事情を知っているのかはこの際気にしないが、まあそういうことだ。成長させても意味がなさそうだし、ヒツギ吸収させていいよ」
「え、でも、『獣化』を使えばかなり効果があるんじゃない?」
「……言われてみれば、たしかに効果あるかも……。『鬼化』は鬼になるスキルだから影響ないだろうけど、『獣化』は獣のような感じになるスキルだからな。毛も生えるし、接近戦メインになるからいいかもしれないな」
「試してみたら?」
「ああ。『獣化』」
俺は『獣化』を使って体を獣のそれへと変化させていく。骨格とかは変わらないが、感覚が鋭くなり、全身から毛が生えてくる感覚がある。俺の『獣化』のベースは虎獣人だ。おそらく獣人の職業になったときに白虎を喰らっていたことが原因だと思う。毛の色も白いし。
「自分じゃいまいちわからないんだが、熱を帯びてる感じあるか?」
「うーん、ほんとにやんわりって感じだね。かろうじて熱を感じるくらい」
マナが俺の腕のあたりをさすりながら答えた。なんかくすぐったい。
「やっぱ使えそうにないか……。武器を使わないような敵だと相性いいと思ったんだけどな」
「残りも喰らって強化してみたら? 私はいいから」
「いいのか?」
「その代わり、こっちのホーンウルフはもらうからね」
ヒツギはレッドベアと戦ってる最中に一緒にやってきたからついでに倒しておいたホーンウルフを棺桶に吸収させた。
「ほんとにいいのか?」
「私はいいよ。それに、依頼の分はしっかりと確保してあるし」
「私も大丈夫です。ご主人様がさらに強くなる方がいいです!」
「強くなれるかはわからないけどな。じゃあもらうぞ」
俺は残りのレッドベアも喰らっていった。全部で21体分。どうなるか……。
「意味が分からん……」
「あははははは!」
結論から言って、スキルは確かに上位のスキルになった。5体目を喰らった時点で『熱毛』がレベルMAXになり、6体目で『滑らかな熱毛』を習得し、10体目でこれもレベルMAXになり、結局21体を喰らった時点でスキルは『やわらか熱毛LvMAX』という、名前だけでは劣化なのか進化なのかわからないスキルになった。いや、一応進化ではある。熱の温度は上がり、多少熱いくらいにはなったし、俺の全身の毛はヒメのようにモフっとした感じになった。一方で体毛によるダメージ減少は大幅に上がった。名前と見た目のせいで台無しな感じはあるけど。
俺は確認が終わるとすぐに『獣化』を解除して、先に進むことにした。レッドベアよ。次にあったら悪いが八つ当たりさせてもらうからな。
俺たちは再び森の探索に戻った。
しかし、俺たちはこれがある者に見られていたと気づくことができなかった……。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv88/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv21/50
魔術師 Lv37/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
微妙に間に合いませんでした。
誤字脱字を直していたら日付が……。
次回は少し飛ぶかも。
ではまた次回