生の草原です2
次の日、朝早くに目が覚めた俺は、庭に出て軽く体を動かしていた。
ステュラではなく、適当な剣を使っての素振り。上段に構えて一気に下まで降り下ろす。『剣術』と『真剣術』のスキルの効果か、振り方が悪くて剣がぶれたり体の芯がずれたりするとすぐにわかる。一本一本ちゃんとした状態で振ることを意識してやっていると、自然と汗の量が増える。
30分ほど素振りを続けた。たまにはこういうのもいいもんだな。
お風呂にお湯を張って朝風呂を堪能し、着替えてリビングにやってくると、もうみんな起きていた。
「おはよう。朝風呂?」
「おはよう。体を動かしてたら汗をかいたからな」
「言ってくれたら一緒に入ったのにー」
ヒツギの戯言は無視して、机の上に皿を並べているキャラビーに目がいった。
「朝飯の準備か? 悪いな。手伝うよ」
「いえ、もう終わりますので、ご主人様は休んでいてください」
言われて気づいたのだが、確かに手伝うというには既に遅く、サラダ、パン、ちょっとしたおかずも揃っていて、後はもう水くらいだった。その水にしても、コップを置いて、魔力を流すと飲み水が出る魔道具が台所にあるからこれまでのように『ウォーター』を使うまでもない。ほんとにこの家凄いわ。
「準備できました!」
「ありがとう。じゃあ食べるか」
「「「「いただきます」」」」
各々好きなものに手を伸ばし始めた。
「さて、今日の予定なんだが」
朝食を終えて、皿をブラウニーたちに持っていかれて、水場できれいに洗っている様子を眺めて、洗い終わった物を受け取ってキャラビーの魔法袋にしまうと、机に戻って話をきりだした。
「今日は依頼を受けずにがんがん進もうと思う」
「具体的には?」
「もう今日で20層か25層の転移陣を使えるようにしよう」
「ねえメイ、昨日の話聞いてなかったの? 私一般的な冒険者は1日に何層も進んだりしないって言ったよね?」
「確かに言ってたな」
「なら」
「だけどさ、5層進むのに一ヶ月とかかけすぎだと思うぞ。25層の中ボス的なモンスターの場所まではモンスターの強さは強くなるし種類も増えるが、罠の種類も変わらないし、次の階層への階段の場所もわかってる。モンスターは今のところ後れを取るような奴は1体もいないし、もし危ないと感じるならそこで引き返せばいい」
「たしかにそうかもしれないけど、私は反対。行ったとしても15層まで。ただでさえ若干目をつけられているようなところがあるのに異常なペースで攻略を進めているなんて噂が立ったらどうするの? ますます目をつけられることになるのよ?」
「別に誰かに何階層まで行ったとか、どれだけの日数でどれだけ進んだとか言いふらすなんてことは誰もしないだろ? それに、目をつけられているならなおさら早く洞窟エリアで目的のモンスターを喰らってみたほうがいい」
「テレポドラゴンは『ワープ』の強化のため?」
「ああ。現状『小規模ワープ』のスキルで移動自体はできるけど、移動できるのは俺と非生物。まあ武器とかそういう類の物だけだからな。みんなで逃げられないんだよ。だから何かあった時でもすぐに全員で逃げられるような手段を早く確保したいんだが、いくら使ってもなかなかレベルが上がってくれない。かといって『ワープ』を使ってくるような敵はそうそういないと思うし、上がらなくなるまで狩り続けたいと思ってる」
「いいたいことは十分に理解できるし、逃げる手段があったほうがいいのもわかってる。でもさ、いくらなんでも1日で15層はやりすぎ」
「ならいくつならいいんだ?」
「さっきも言ったけど、今日は行っても15層で終了。それからは2,3日は依頼を受けながら1層か2層行って帰ってを繰り返して、その次の日以降に次の5層を突破って感じかな」
「それでも十分早いほうですので、マナ様の言う通りにしませんか? 正直に言いますと、あまり進みすぎると私も疲労が……」
キャラビーの言葉で俺は意見をがらりと変えた。
「そうだったのか。悪い、配慮が足らなかったな……。15層まで行って、時間があったら周囲の探索。時間によってはそのまま帰宅で、次の日は休み、それから3日間その層の周辺で依頼をこなして、それから次の転移陣まで行くかどうか決めて進むことにする」
疲労がたまっていたと気づけなかったのは俺のミスだ。俺は回復系のスキルがけっこう充実してるからマナとヒツギを見て判断していたのだが、まだまだ考えが甘かったらしい。
進む階層を減らす提案に、反論も意見もなさそうだったので俺たちはダンジョンに向かった。
「止まれ」
ダンジョンを進んでいる途中、すぐ後ろを行くキャラビーが俺の服の裾を引っ張ったので足を止めてすぐに指示を出した。
現在の俺たちの布陣は、先頭に俺が立ち、そのすぐ後ろにキャラビー、その斜め後ろにマナとヒツギが構えるといった感じになっている。基本的にキャラビーには罠の探知を頼んでおり、もし見つけた場合は俺の服の裾を引くか、どこでもいいから体をポンポンと2回たたくことで知らせてもらい、俺が全員に声で指示を出すということにしている。本来ならばキャラビーが直接罠があると伝えればいいのだが、これにはちょっとしたわけがあった。
キャラビーがダンジョン内で罠を発見した際に声が出せなかったのだ。
このことは、一昨日に4人になって初めてのダンジョンになる、この生の草原にやってきた時に気が付いた。
ダンジョンに入る直前まで「任せてください!」と意気込んでいたので、初めは布陣を俺とキャラビーが先頭で、マナが真ん中、ヒツギがその後ろという布陣で、キャラビーが罠を見つけたら指示を出すという風にしていた。しかし、いざダンジョン探索が始まると、その問題が露呈した。
どのくらいのスピードまでなら罠を見つけられるのかわからなかったこともあって、ちょくちょくキャラビーに視線を向けてながら進んでいたからこそ気が付いたのだが、何もない草むらを進んでいる時にキャラビーの口が動いているのが見えた。少し疑問に思って止まるように指示を出すと、キャラビーが何も言わずに少し前方からトラバサミの罠を回収してきた。渡してくる時の「どうぞ」という声は聞こえたので、その時は俺の聞き洩らしだと思ってスルーしたのだが、その後、2回3回と同じようなことが続き、さすがに聞き洩らしではないと判断して確認してみた。
罠を見つけたら1度俺の肩を叩き、どんな罠があるのか伝えてくれと頼んだのだ。すると、肩を叩いた後、説明が何も聞こえなかった。確かに口は動いているのだが、俺もマナもヒツギも何も聞こえていなかった。本人はその時に指摘されて初めて気が付いたようで、ものすごい動揺していた。
それから、罠を解除してもらうと声を出すことができたので、解除されていない罠が感知範囲にあると声がでなくなるのだという推測ができた。本人はまったく理由がわかっていないようだったが、なんとなく俺たちはその理由がわかった。トラウマというやつだ。
キャラビーは前のパーティにいた時、罠の発見が遅れて何度も叱責されていたようだし、本人も気が付かないうちに、罠があることを伝えるということがトラウマになっていたのかもしれない。また遅れてしまって怒られるかもしれないと心のどこかで感じているのだろう。
幸い、罠の発見や解除は問題なくできているし、声を出さなければ伝えられることもわかったので、現在の布陣になった。俺の後ろから少し顔を出して歩く形になるが、それでも罠はわかるらしく問題はなかった。でもそのうちなんとかしてあげたいな。こればかりは本人の気持ちの問題だとも思うけど。
その日は結局15層の転移陣を使えるようにしたところですでに夕方になっていたため家に帰ることにした。5層分しか進まないと決めていたからのんびり辺りを散策しながら進んでいたから想像以上に時間がかかったことになる。そのかわりになるかはわからないが、トラバサミが合計49個も回収できた。モンスターも結構狩れたのでゼルセたちにあげる肉も確保できた。ヒメ? まだ野菜生活だ。昨日の今日だからもうしばらくは続くものと思われる。
そしてその日の深夜、部屋で寝ていた俺は、勝手に出てきたヒメに顔をペシペシと叩かれて起こされるのだった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
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昨日はちょっと都合で間に合わなかったので今日投稿です。
非常にゆっくりではありますが訂正作業を進めています。以前連絡をいただいた分も終わってないほどゆっくりですが……。
その時に大きな訂正を入れる場合もございますが、その時は活動報告かあとがきでお伝えします。
ではまた次回