依頼の報告です
第2層、第3層と順調に進んでいき、俺たちは5時間かけて10層までやってきた。
次の階層に行くための階段の場所はわかっているので比較的楽にこれたのだ。依頼の品もしっかりと集めきっているのでいつ帰っても問題はないが、俺たちの本来の目的は依頼ではないのだ。
そもそも、なぜ家から比較的近い南のダンジョンでなく、東のダンジョンを選んだのかというと、ちょっと気になるモンスターがここのダンジョンの洞窟エリアにごく稀に現れるらしいのだ。
その名もフライガエルとテレポドラゴンの2体だ。2体とも強力なモンスターなのだが、基本的にすぐ逃げる。フライガエルは空を飛んでぐんぐんスピードを増しながら逃げ、テレポドラゴンはテレポートを使って同じ階層内のどこかに逃げる。ギルドで見た情報なので実際に見たわけではないのだが、戦うとなると気づかれないように奇襲を仕掛けるのが前提となるそうだ。遠距離から狙撃するかな。本当に稀にしか現れないらしいが、俺には小規模ワープがあるからなんとか逃げられる前に仕留められる……と思う。
俺たちは、一旦5層ごとに設置されている転移陣で1層まで戻ることにした。ダンジョンに入ってからすでに8時間くらい経っているし、休憩をとりながら進んでいるとはいえさすがにそろそろ戻ろうという話になったのだ。別にどこかで野営してもいいのだが、ゼルセも残しているし、次からはここからこれるしちょうどいいからな。
転移陣は扉のすぐそばにあり、それなりに人はいたがすぐに戻ることができた。依頼の品を提出しに行くのは明日にして今日は家に帰るとしよう。
次の日の朝、早めに起きてヒメたちにご飯としてハニーベアの肉をあげようとしたとき、俺はあることに気が付いた。
「コルクが召喚できない……」
召喚しようとしてもコルクだけ反応がまったくないのだ。先に召喚したゼルセとアンナとみぃちゃん、それから、みぃちゃんを召喚したら背中にしがみついて一緒に出てきたガルーダロードたちは首をかしげている。なるほどな……。
「ヒメ」
「かう!」
ヒメを召喚した。それを確認すると、アイテムボックスからハニーベアの肉をそれぞれに渡していく。体の大きさの都合でガルーダロードのものとゼルセのものは10倍くらいの大きさの差があるがガルーダロードは気にしてないようだ。必死に噛みついてちぎろうとしているができていない。がんばれ。
「最後はヒメな」
「かーう!」
ヒメの分も他のみんなと同じように取り出した。その手に向かって、わーいと言うようにとびかかってくる。はっはっは、かわいいやつめ。
「まだだけどな」
「かう!?」
とびかかってきたヒメの頭をがしっとつかみ、反対の腕でしっかりと固定した。これで逃げられないな。
「ヒメ、お前、コルクはどうした?」
「かうー……」
ヒメがすごい勢いで視線をそらした。もう確定だな。
「……お肉抜きな」
「かぁう!?」
「コルクの無事がわかるまでお肉抜きだ。せめてなにかやる時は俺に言ってからにしなさい」
「かぁう、かうかあう!」
ヒメに渡すはずだった肉をしまって代わりに野菜とカピチュを置く。かわいそうな気もしなくもないがここは厳しくいこう。それにしてもヒメが肉以外を食べても平気でよかった。
「あれ、メイ早いね。おはよう」
みんなが食べてる様子をソファで眺めていると、2階からヒツギが降りてきた。
「おはよう。先にゼルセたちの飯を用意してたんだ」
「そうなんだ。あそこで突っ伏しながらカピチュを食べてるヒメちゃんはどうかしたの?」
「どうもまた知らせずにコルクを使ってたらしくてな。召喚できなくなってたからコルクの無事が確認できるまでお肉抜きにした」
「ヒメちゃんには致命的だね。そろそろマナを起こしてきた方がいいかな?」
「別に遅くても構わないぞ? 依頼の期限はまだ先だし、今日は1層か2層分くらい進んで帰ってきて終わりにするだろうしな」
「あれ、一気に20層の転移陣まで行くと思ってたんだけど」
「そんなにハイペースで行く必要もないしな。3日くらいはのんびりと行って帰ってを繰り返しながら行こうぜ」
「十分にハイペースな気がするのですが……」
俺たちの会話をどこからか聞いていたのか、キャラビーが階段のそばであきれたような声を出していた。
「一般的な冒険者であれば1日に複数層進むだけでもかなり早いペースですよ。何度も行っている場所であればいいかもしれませんが、情報はあらかじめ調べていても、初めて来たダンジョンで1日に何層も進みませんよ。情報はあっても実際に戦闘を行うと疲労もたまりますし。昨日は何も言えませんでしたが、普通は5層の転移陣を使えるようにするのもかなり時間をかけてダンジョンのモンスターに慣れたりしながら、野営を繰り返して数日がかりですることですから」
「別に1日で進めるんだし行けばよくないか?」
「アントホームの時もそうだったしね」
「5層の転移陣を使わずに10層の転移陣を使うなんてもってのほかです!」
「だっていちいち帰るのとか面倒じゃん?」
「物資の補給とかも必要なかったしね。昔は1日でダンジョン2、30層くらい進む人もいたよ?」
「昔と今は違うんです!」
「みんな朝からなにやってるの?」
「あ、マナ、起こしたか?」
「いや、朝だしいいけど……何を言い争ってるの?」
「ご主人様の非常識さに呆れていました」
「キャラビーが進むペースがおかしいと言ってきてな。マナは別に平気だったろ?」
「あぁ……、それはキャラビーが正しいね。平気ではあったけど私もおかしいとは思ってたから」
「そうか……じゃあ15層に進むのは5日後にするか」
「十分に早いです!」
そんなやり取りをした後、俺たちは朝飯を食べてギルドに向かった。
ギルドは少し遅れた時間だったこともあって比較的すいていた。まあすいていたと言っても4,5組の列はできていたが。
列の後ろに並び、順番を待った。今の時間帯は依頼の達成報告よりも依頼を受ける人のほうが多いようで順調に列は進んでいく。受付の数が多いのも要因の1つだろう。
「次の方どうぞー」
「もう来たか。すいません、依頼の達成の報告に来たんですが」
「依頼受託ではなく、依頼達成ですか?」
「ええ。昨日来られなかったので」
「そういうことでしたか。すいません、この時間帯は依頼受託の方のほうが多いもので」
「いえ、大丈夫です」
「それでは依頼の内容を確認しますのでギルドカードを出してください」
それぞれが腰に下げておいた袋からカードを出した。キャラビー以外全員がアイテムボックス持ちとか知られたくないし。
「では、確認してきますので少々お待ちください」
受付の人はカードを少し後ろに置いてあった魔道具にかざす。前もこうやっていたかな? 覚えてないや。
「確認完了しました。収集依頼が3つで、『薬草の収集20本』『ホーンウルフの角10本』『ベアツールの掌5つ』ですね。依頼の品を出していただけますか?」
「キャラビー、頼むわ」
「はい」
キャラビーが渡してあった魔法の袋から1つずつ取り出していく。受付さんが1つ1つ間違いないか『解析』で確認していく。間違ったものを持ってきてたりしたら大変だからな。
「はい、すべて確認できました。依頼は全て達成です。今報酬を持ってきますのでお待ちください」
受付さんは依頼の品をトレイに乗せて奥に下がっていった。
「おいおい、こんな朝から依頼達成報告なんかしてんじゃねえよ。俺たちの順番が遅くなるだろうが」
受付さんが奥に消えた途端、後ろのほうからそんな声が聞こえてきた。振り向いてみると、なんかいかにもな格好の冒険者が数人で俺たちをにらんでいた。
「同じ物を必要とする依頼も多いし早くいかねえと他の奴らに取られちまうってのに。お前らのせいで依頼達成できなかったらどうしてくれんだ?」
「言いがかりはやめてくれよ。俺たちが達成報告してるのとあんたらが依頼を失敗するのには何の因果関係もないんだから」
「あぁ? お前何なの? 喧嘩売ってんの?」
「別に喧嘩なんか売ってないよ。というかもう面倒事はいいって……」
「俺たちが『赤の団』のメンバーと知ってもそんな口が利けるのか?」
『赤の団』ってなんかどこかで聞いた気がするな。どこだっけ? まあ忘れるってことはそんな大したことじゃないだろうし大丈夫だろう。
「なあ、1つ聞いてもいいか?」
「あ?」
「『赤の団』ってな」
「メイ、受付の人戻ってきたよ。さっさとすましちゃお」
俺が彼らに尋ねきる前にマナに口をふさがれた。まあ後でキャラビーに聞けばいいかな。
「お待たせいたしました。3つの依頼の報酬を合わせて、銀貨1枚と銅貨70枚です」
「ありがとうございます。じゃ、依頼見に行こ」
「それがいいですよご主人様。行きましょう」
俺はマナとキャラビーに引きずられて受付を後にした。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv88/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv21/50
魔術師 Lv37/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
さっき確認してて気づいたんですが、前回ぎりぎり間に合ってなかったんですね……。いやあとがきまで書き上げた時はまだ31日だったんですよ? ほんとですよ?
ということで約3日で更新。
ではまた次回