たくさんいます
「また素手に逆戻りかよ……」
そんなふうに落ち込みながらも、モンスターたちに意識を向けると息つく暇もなく先頭の黒鳥が襲いかかってきた。名前に違わない漆黒の嘴が迫る。それを横に跳んでかわし、少し遅れてきたハイイーグルを殴り付ける。まさか殴られるとは思わなかったのかハイイーグルは翼を大きく羽ばたかせ上に退避しようとする。しかしそこには多くのモンスターがおり数体が巻き込まれて地面に落ちる。すぐに起き上がってきたがハイイーグルは動いてなかった。よくみると穴が開いている。どうやら他のモンスターの嘴か爪が刺さったらしい。まあ減ってくれたことは素直に喜べばいいや。というかこれは使えそうだ。
それでも空を舞う多くのモンスターがいる。攻撃をかわしつつ殴りつけて数体いっぺんに落とす。それを繰り返すうちにそこそこ減ってきた。だが、そこからデビルの動きが変わった。
デビルはこれまでのように接近戦を挑もうとせず、ダークランスという魔法で攻めてきた。デビルの前に作られた黒い球体から黒い槍が飛び出してくる。それはブロンドオウルやクルーイーグルを貫き俺に迫る。もはや敵とか味方とか関係ないらしい。いや、そもそも味方なんかいないか。現状モンスター対俺に見えるが実際は違う。一対一対一対一対一対…………と、個人戦のバトルロイヤルだ。
現に今の攻撃で怒りを覚えたのか残ってるモンスターの中にはデビルを狙い始めたモンスターもいる。エアロの魔法でデビルを攻めるやつや他のモンスターと共闘してデビルを狙うやつまでいる。妖精蜥蜴なんかはブレスの範囲を広げて一体でも多くに攻撃しようとしている。大乱戦になってきた。これは俺にとってはいいことしかない。お互いに殺しあってくれるから疲労も減るし俺に向かってくる魔物は減る。それでも多くは未だに俺を狙ってきていて、ダークランスやエアロが俺の瞳に吸収されていく。
エアロはファイアのように球体の風を撃ち出す初級魔法。しかしダークランスは初級の中では上の方の魔法だ。それなりに威力は高い。しかも同時に数体に攻撃できるとか嬉しすぎる。
「ダークランス」
俺の目の前に黒い球体ができる。ついさきほどデビルが使ったのよりは少し小さめだったがそれでも普通に使えた。勢いよく黒の槍が飛び出す。球体が小さいからか槍自体も小さいものだった。しかし数は変わらずその1本1本が正確にモンスターを射抜く。
「……想像以上に操りにくいな……。でもなんとなくはわかった」
攻撃を受けたモンスターたちは次々と落ちていった。しかし当たらなかったモンスターはデビルを狙っていた者も含めてすべてが俺に狙いを替える。危険だと判断したのだろう。
俺の目の前に再び球体ができる。今度も大きさは変わらない。
「さて……『ダークランス』」
再び槍が飛ぶ。先ほどの倍の数で。
「2つを同じ場所で同時に使えばいっぱい行くんじゃないかと思ったが案外うまくいくものだな」
そう。俺は同じ魔法を2つ使ったのだ。なんとなくでやってみたがうまくいった。思えばオーガキング戦でも適当だったとはいえ同時にファイアをいくつも撃っていたので他の魔法でできないことはないのだ。
ただ、コントロールは無茶苦茶になった。数があるから当たることは当たるが、あたらずに空に消えていくのもいくつもある。次々とモンスターを貫き落としていく。そこから先、敵が近づくことはなかった。同時に発動できることを知った今、躊躇する必要はない。同時でなくても次々に魔法を発動する。コントロールは適当でいい。とにかく今は数だとばかりに発動する。そして詳しい数はわからないけど30を超えたころ空に残るモンスターはいなくなった。そのかわりに草原はあちこちが血で赤く染まり、死屍累々としていた。まだかすかに息があるのかぴくぴくとわずかに動くものもいる。うわぁ……これはきつい……。
そんなことを思いながらも俺は一体一体きちんと喰らう。まず最初に死んでいるハイイーグルのかぎ爪を剥ぎ取る。まあ念のための飛び道具だ。息のあるやつは少し離れて爪を投げてしっかり仕留めてから喰らう。再生があるからダメージ受けても大丈夫だとは思うけど痛いのは嫌だ。
『スキル:鋭い爪Lv3を習得しました
闇耐性Lv2を習得しました
風耐性Lv3を習得しました
ブレスLV2を習得しました
パラメータ:素早さ上昇(小)を習得しました』
ハイイーグルがクルーイーグルの上位種だったためか、デビルだけから得られた闇耐性よりも風耐性のほうがレベルが高かった。つっても俺魔法きかないしな……。そういった属性付のスキルもあると思うし必要か。というか数十本でLvMAXまでいった麻痺耐性に関して思うところがある。ただ上がりやすい耐性だったのか、それともあの麻痺の木の効果が強かったのかどちらにしても今回の風と闇の耐性がLV2.3というのは不服だ。もっと高くてもいいじゃん!
俺は戦利品で手に入れた飛び道具(?)のハイイーグルやクルーイーグルたちの爪をアイテムボックスに入れてあたりを見渡す。残っているモンスターはもういない。ところどころにモンスターの細かい残骸が落ちてるけどさすがにそれもすべて喰おうとは思わない。面倒だし。どちらにしても草原の一部が赤く染まるほどの血の量だ。あんまりここに居続けても碌なことにはならないだろう。
そんなわけで俺は奥に見える岩山へと足を向けた。
「うわーこれは登れんわ。つか登りたくねえわ」
草原を抜けた先には数本の木が等間隔数十mほど並んでいて、その先に岩山があった。遠くから見た時はそこまで高いように思わなかった岩山だが、実際に近くまで行ってみるとそれは一瞬にして覆った。山というよりは壁なのだ。頂上も見えないくらいの。角度的には90度。
「でも洞窟があるってことはこの奥に何かあるってことだよな……」
目の前には高さ2mほどの小さな洞窟。奥は暗く中は見えない。
そこで手近にあった木の枝を折って松明代わりにする。おお、これで中が見える。
俺は洞窟の中へと入っていった。
そして5分後、いきどまりだった。奥まで行ってみてあったものはボタン一つ。え? そのボタンはどうしたかって? 当然押したよ。ゴゴゴって音がしただけで何も起こんなかったけどね。
がっかりしながら洞窟を出た。すると森のほうに光が見えた。すぐに消えてしまったが場所はたぶんだけどさっきの普通じゃない木があるあたり。俺はそこまで戻ることにした。
「なんかいるよ……」
草原まで戻ると、なにやらそこそこ大きなモンスターが俺が喰い残したモンスターを食っていた。鑑定でそいつのことを調べる。
『パラウルフ(ウルフ種)』
パラウルフ、パラってどんな意味だろう? そんなことを思ってる俺に気づいていないのかパラウルフは未だモンスターを食べていた。俺はばれないように遠距離から魔法を使おうとした。まあ近づかなきゃ攻撃はされないだろうしね。
先程も使ったダークランスを放つ。2つ同時に使って数を増やす。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるをモットーにしようかな。百発百中なんて無理だし百発一中を百回やれば百発当たるんだからさ。だからとりあえずたくさん撃てばいい。
しかしパラウルフは俺が魔法を撃つのと同時に俺の方を見る。あれ? もしかして気づいてた?
ダークランスはあっさりとかわされて地面を穿つ。パラウルフは俺の方に走り出す。まじやめてほしい。あっという間に俺のもとまで来たパラウルフは今の今まで食事をしていたためか血がついている牙で俺の首を噛みきろうとして来る。やられるわけにもいかないので後ろに下がってかわす。すぐに追撃をかけてくるがそれを結界で防いだ。牙が結界にあたり一旦距離をとろうと後ろにとんだ。そこを狙って俺は魔法を乱射する。ファイアとエアロを織り交ぜて弾幕をはり、その後ろからダークランスを放つ。パラウルフはなんとそれをすべてかわしきった。さらにかわしてすぐに俺に向かってくる。躊躇とかねえのかよ。
再び首めがけて牙を突き立ててくる。それを半身になってかわす。そのまま顎めがけて足を振り上げる。しかしパラウルフも反撃として爪を振るってきた。バランスを崩していたが鋭い爪が俺の腹を裂く。再生により回復していくが痛さに腹を押さえる。パラウルフは顎を蹴られた影響でふらついている。チャンスとばかりにファイアを放つ。2発3発とかわされるが4発目が後ろ足をとらえた。足を引きずりながらも俺を睨み付けるパラウルフ。もはや先程までの動きはできないだろう。俺は止めを刺すためにダークランスを放つ。槍がパラウルフを貫いた。槍が消えるのと同時にパラウルフは崩れ落ちた。
どうもコクトーです
ブックマークが50超えました!!
ありがとうございます!!!
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX
冒険者 Lv15
格闘家 Lv30
狙撃手 Lv21
盗賊 Lv14
薬剤師 Lv14
????勇者Lv5
剣士 Lv3
武闘家 Lv3
戦士 Lv4
魔法使いLv4
鬼人 Lv1 』
ではまた次回




