家めぐりです
馬車に乗って揺られている最中にだいたいの場所と大きさについて話があった。
これから行く場所は5か所で、商業ギルドから西に300mほど行った場所にある2階建ての家、そこから北に向かって1kmほどの、壁のすぐ近くの1階建ての1軒家、そこから100mくらいしか離れていない4階建ての家の3階と4階、これは他の利用者が1階と2階を利用しており、共同になってしまうらしい。そこは行かないでいいと伝えたら、『見るだけ見てみましょうよ』と押し切られてしまった。その時に、小声で『早く帰ることになるじゃないですか……』とつぶやいたのは聞こえていたぞ。また、残りの家はだいぶ離れており、南の門のすぐ近くにある建物と東の門のすぐ近くにある建物。これらがともに2階建てで、最初に行く場所と同じ建物なのだそうだ。
ちなみに、これらの建物は4~6人くらいが推奨の物なので4人だと少し広いと感じるかもしれないとのこと。狭いのなら問題だが、広いのは問題ないだろう。
「そろそろ1か所目につきますね」
ボレアさんがそう言ってすぐに馬車が止まった。
そして全員が馬車を降りると、ボレアさんのセールストークが始まった。
「こちらの建物は、ご覧の通り木造2階建ての建物になっています。周りの、近年建てられた硬レンガの建物とは違い、この建物は少し昔に建てられたものです。もちろん家として使うのには問題はありません。長年使われたことで一部古くなっている箇所はございますが、きちんと修理、調整をして使えるようになってます。部屋の数は1階に大部屋と厨房、小部屋が2つで、2階に小部屋が4つとなっています。トイレは1、2階それぞれについており、1階には水口がありますのでそこで桶などで水を汲むこともできます。値段は、ご紹介する物件の中では一番安く、一月銀貨12枚となっています」
「うーん、お風呂はないですか?」
マナがボレアさんに尋ねた。たしかにお風呂には入りたい。谷底に落ちてからはお風呂の代わりに『クリーン』の魔法か、桶に汲んだお湯に布を浸して体を拭くくらいしかできていない。王都の宿にはたしかあったっけな。
「お風呂ですか? お風呂がついているような家は今回紹介できる中にはありませんね。値段が倍近く跳ね上がります。訳ありでもいいのでしたら同じくらいの値段のものも紹介できますがおすすめはしませんね」
「あるんですか? ならそこが見たいです」
「え、やめませんか? 4人で使うには大きすぎますし、そもそもなんでかわからないですけど門の外にある物件ですし、モンスターに襲われることもありますし、高名な解呪士でも解くのは不可能だとあきらめたほどの呪いがあるとか噂されていますし」
「場所だけ教えてもらえませんか? 俺たちだけで行ってみるので」
「それはだめです。建物こそ違いますが、以前それで問題が起こったので必ず商業ギルドの人員が同行することが義務付けられていますので。本当に行くんですか? 私めちゃくちゃ弱いですよ? キャタピラー1匹に大苦戦するレベルですよ?」
「俺の従魔に常にそばについてもらうので。それでもだめですか?」
「従魔といいますと?」
「プラチナタイガーのみぃちゃんです。護衛としては申し分ないかと」
「呪いはどうするんですか?」
「ボレアさんは入り口で止まってもらって、俺たちだけで中に入ります。もちろんボレアさんの目の届かないところにはいかないという条件で」
「あなた方が呪われたら意味がないじゃないですか」
「俺呪い効かない」
「ご主人様なら大丈夫です!」
「キャラビー、少し静かにしててな」
「ごめんなさい……」
「呪いが効かないとはどういうことですか?」
「そういう体質なんです。俺に呪いは効果を示しません」
「…………わかりました。ただし、中にいるのは最長で15分。中に入るのはメイさんだけで、3人には私と外で待ってもらいます」
「大丈夫です。じゃあ行きましょう」
「はぁ……では向かいます。南の門の外の森の中にあります。1本道なので迷うことはないです。町に入る時は必ず身分証の提示が必要になりますので少し面倒になりますからね」
「わかってます」
俺たちは門を出てその訳あり物件に向かった。
門を出て5分もしないうちに家の前についた。家というよりむしろ館といったほうがいいと思うんだが……。
「こちらがその物件です。推奨人数は一応20人ほど。ギルドホームとしても使えるサイズですね。ちなみに、1月で銀貨15枚。もし使用可能なら購入でも金貨数枚でいいと思います。鍵を開けてから15分ですからね。その間にある程度見たら戻ってきてください。全部の部屋を見ることはできないと思いますが、部屋の大きさとお目当てのお風呂等の設備くらいは見ることができると思います。中の部屋の配置はこのようになっています」
ボレアさんは俺に図面を渡した。部屋の数は、1階が大部屋2つと厨房、お風呂、トイレが2か所、小部屋が6つ。2階が全て小部屋で、少し大きめな部屋が1つと同じサイズの部屋が12か所。屋根裏部屋として倉庫のようなところがあり、すべての部屋に大きさは大小さまざまだが窓がついている。そして、1階の奥に地下に続く階段があり、そこにも倉庫兼地下室として部屋が1つだ。
呪いと聞いて気になるのは、屋根裏部屋の倉庫と地下室、そして2階の大きめの部屋だ。15分あればその3か所とお風呂くらいは見に行けるな。
「中の施設は多少触るのは構いませんが、使ったりはしないでくださいね。魔力を流したら動くものもありますので気をつけてください」
「わかりました」
魔道具があるということか。『鑑定』は基本的に発動しておこう。
「では開けますよ」
ボレアさんが鍵を開けた。その瞬間、館の雰囲気が変わった気がした。これは……『威圧』か?
「うぅ……きついです……」
みぃちゃんにそばにいてもらっているが効果はなさそうだ。なにかが中にいるのかもしれない。ちょっと気をつけてみるか。
「マナ、結界でなんとかこれ防げないか?」
「一応やってみるね。『魔法結界』」
「あ、少しは楽になったかも……」
何とかなったらしい。時間は惜しいし、とりあえず中に入ってみよう。
中に入ってまず最初にお風呂を見に行った。『威圧』の原因の調査? 先にお風呂を見てからでもいいじゃない。だって大事だし。
お風呂はそこそこの広さがあり、10人くらいで入っても余裕がありそうだ。俺は1人で入るけどな。絶対に!
お風呂を見終わった後、地下室に向かった。しかし、地下室には何もなかった。次は2階だ。
2階の気になる部屋の前に着いた途端、圧力が増した。ここが原因か。とりあえず扉と周りを『鑑定』してみたが魔道具的なものはなさそうだ。よし。
「『不動明王』」
念のためにスキルを使ってから扉を開けた。そこには
『ドン・ガルーダ(鳥王種):
状態:隷従、死体』
1体の死体がいた。
その体はやせ細り、翼は折れ、羽根はほとんどがちぎり取られていた。しかし、1歩その死体に近づくごとに威圧感が増していき、手が届く距離になった時にはかつての白虎を彷彿とさせた。麻痺再生のスキルのおかげで効果はほとんどないが、それが強力である証拠に、レベルが3まで上がっていた。
俺の隣に白虎が出てきた。ドン・ガルーダの今の姿を悲しんでいるように感じる。ぺろぺろとドン・ガルーダのくちばしをなめ、俺のほうをじっと見ていた。何を言いたいのかは何となくわかる。
俺はドン・ガルーダの死体を喰らった。
『スキル:迦楼羅Lv1を習得しました』
『眷属:エンシェントキングアント、ドン・ガルーダを使用します。
エンシェントキングアントは吸収されました。
白虎が眷属としてガルーダロードの構築を開始します』
「ちょっと待て。ヒメ、何やってるの?」
「かう?」
「いや、首をかしげたいのはこっちだって。あいつどうなるの? というか理解が追い付かないんだけど」
「かうかうかーう」
ヒメが、近くにあった魔道具と思われる珠を噛み砕いてから軽く吠えると、魔法陣が現れてアンナが現れた。
『主殿、ヒメ様の言葉をお伝えします』
「お、おう」
『ちなみに、本当はご自身で伝えたいところですがまだ無理だそうなので、私を召喚なされました。私は念話が可能なので。しかし、ヒメ様から聞かずとも言いたいことはわかっています。エンシェントキングアント、彼のことですよね?』
「あ、ああ。いきなり吸収されたからな」
『それでしたら彼の意思です。あのドン・ガルーダのお力を感じた時にすでに彼はヒメ様に頼んでいました。自分を使ってくれと。自分の力ではヒメ様と主殿の役に立てないからと』
「わかるものなのか? たしかにお前らは普通の従魔と違って俺の魔力の中にいるってことは知ってるが」
『ええ。全員すぐに気づきました。間違いなくかつてのヒメ様と争ったドン・ガルーダです。あのダンジョンにもたびたび現れていまして、いつからか現れなくなったのですがこのようなことになっていたとは……』
いろいろと起こりすぎてわからなくなってきた。
『主様、これで失礼します』
アンナが消えた。ヒメも疲れているように戻っていった。おそらくだが結構体力を使うのだろう。とりあえずくすぐり地獄は後にして今はみんなのところに戻ろう。屋根裏部屋を確認しに行く時間はないが、もう『威圧』は感じないから問題ないだろう。
俺はこの家を買うと心の中で決めながらみんなのもとに戻っていった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv88/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv21/50
魔術師 Lv37/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
少し長くなりました
ではまた次回