商業ギルドです
途中で曲がる場所を間違えて道に迷うというトラブルはあったものの、無事に商業ギルドに到着した。
商業ギルドの建物は冒険者ギルドのものと比べるとかなり小さかった。2階の高さは他の1.5倍くらいあるが、2階建てで、周りの建物よりも少し高いだけだ。敷地面積的には他と変わりなかった。
中に入ってみても、受付が正面に3か所あり、壁際にちょっとした机といすがある程度で、人もそんなにいなかった。まあ商談とかはおそらく2階にあるだろう個室でやっているのだろう。
「いらっしゃいませー。冒険者が商業ギルドにどのような用件ですかー? 今は依頼なんかだしてませんよー」
受付は2か所が休憩中となっていたので頬杖をついてだるそうにしていた女の人のところにいった。やる気なさそうだな。というか明らかに面倒くさそうだ。
「家を借りるなら商業ギルドに行くようにといわれたのですが」
「あーたしかにここで担当してますね。家は高いですよ? 金あるんですか? 見たところいい防具つけているわけでもないし、服もそんなにいいものではなさそう。いくら長期滞在するなら宿よりは安くなるって言っても貧乏人が払えるような値段じゃないですよ? 帰ったほうがいいんじゃないですか?」
今はっきりとわかった。この女の人は俺たちをまともに相手をする気はなさそうだ。家を借りるのが高いから貧乏人が払えないというのはわかる。むこうとしても後から金が足りないと言われてなにか問題が起こるのは嫌なのだ。そう考えれば彼女の言ったことの意味も分かる。
しかし、彼女は完全に俺たちを見下している。というかおそらく冒険者そのものを見下しているのではないだろうか。たしかにかなり稼いでいるような冒険者ならいい防具だったりいい服を持っているだろう。対して俺たちは普通の店で買ったものを着ているし、防具もまともにつけていない。金を持っているようには見えないだろう。それでも完全に蔑むような目で見てくるのはおかしいだろう。ちょっといらっときた。
「相場は?」
「は?」
「この町の宿の値段の相場は? まさかわからないわけないですよね? まあ宿って言っても安い物から高いものまでいろいろあると思うんで中間的なところの値段でお願いします。あと、家を6か月借りた場合、どれくらいの値段になるのか。家の大きさによって値段が変わるってのは聞いてるので、4人で生活するときによく借りられる大きさの家の値段でお願いします。その場合に宿の値段と比べた時にいったいどれくらいの金額の差分があるのかも知りたいですね。ある程度は稼いでますけど余裕があるってほどではないですから、知っておきたいんですよ」
「え? えっと」
「どうかしましたか? おかしなことは聞いてないと思うんですが」
「な、なんて言いました?」
「相場とかそういった情報がほしいんですよ。商業ギルドにはそういった情報は入ってないんですか?」
「ちょ、ちょっと待ってください。なんでそんなものを」
「そんなもの? 俺たちは冒険者ですけど、商人にとっては相場情報はめちゃくちゃ大事なものじゃないんですか? その町で自分が売ろうとしているものの相場がわかっていないのにその商品の値段を決めるようなことはないでしょう? それをそんなもの扱いするなんてどうかしてるんですか?」
つい言葉がきつくなってしまった。いらいらしてると何を言ってしまうかわからない。反省しないとな。
「あなたは! この私をバカにしてるんですか!? この冒険者風情が!」
女性が怒鳴り、あたりが静かになる。
「バカになんてしてないですって。俺はただ相場を聞いてるだけです」
「いいえ、ばかにしてます! たかが冒険者風情が私の手を煩わすんじゃないわよ!」
「……なんでこうなったんだかな……」
小声でつぶやいてみても何も変わらない。マナとヒツギが何か言おうとしたのを手で制して彼女と向き直る。
「なんでただ相場について聞いただけであなたをバカにしたことになるんです? 別にこれくらいのことなら聞いてくる人はいるんじゃないですか? というよりこれを聞いておかないと自分たちの持ってるお金で足りるかどうかわかりませんし」
「ええい、うるさい! 私を誰だと――」
「その辺にしなさい。いやー、すみませんね。彼女の処分は私どものほうでしておきますので」
彼女の後ろから若い男性職員がやってきた。上司なのかな?
「邪魔をしないでくれませんか?」
「君こそいつまで商業ギルドのお荷物でいるのかな? そろそろ辞めた方がいいんじゃないの? いや、それがいいよ。後で辞職届用紙をあげるから今日中に提出するべきだね」
「私がお荷物? なんの冗談で――」
「君の起こしたトラブルはたしか今月で7件目だよね。書類のミスは13件、そういえばこないだ商談も台無しにしてくれたっけ。あれ結局ギルド『青き空』が冒険者ギルドから買い取っていったんだよ。ちなみに金額は金貨27枚と銀貨8枚と銅貨76枚。もともとうちで買い取る予定で、その金額が金貨18枚。最低でも金貨9枚以上の儲けがあった話だったんだよ? その損失はどう補ってくれるのかな? あ、そうそう。損失といえば君が以前壊した魔道具の代金はいつ払ってくれるの? 貴族とすでに取引が成立しててお金も受け取った後だったのにギルドマスターが頭下げて返金したんだよ? あの取引がもたらす利益がいくらだったか覚えてる? あれ以降の取引にも影響が出てるから推定でしかないけどたしか金貨50枚はくだらなかったよね。あ、そうそうそういえば他にも……」
「……」
男性がペラペラと彼女に話しまくっていると、自然と彼女も何も言えなくなり、俺たちのほうをきっとにらんで奥に下がっていった。これたぶん後で面倒になるやつだな。俺の勘がそう言ってる。
「いやー、ほんとにすいませんね。私、先ほどの彼女の上司のボレアです。ドレイク商会に所属してます」
「冒険者のメイです」
「彼女にはこちらも困らされてまして。ほんとさっさとギルド辞めてくれないかな……っと、失礼。忘れてください。それで、宿の相場と家を借りた場合の差額のお話でしたか? どれくらいの期間を考えてますか?」
「聞いてたんならもっと早くとめられなかったんですか?」
「そう言われましてもね、私も自分の仕事を急いで終わらせてきたんですよ? こちらに非があるというのはわかりますが、もめてもお互いのためになりませんしやめません? そんなことするより商談ですよ。昔勇者様が残した言葉ですが、『時は金なり』。いやー初めて耳にしたときは雷に打たれたようでした。すいません、また話がそれましたね。あなたももめる気はないでしょう? わざときつい口調にしてしたくらいですし」
「彼女のことがいらついたんで。そちらとしても冒険者が素材を持ってこなくなると困りません?」
「いやー、実に困りますね。彼女を辞めさせるのであなた、商業ギルド入りませんか?」
「お断りします。話を戻しましょうよ。6か月で考えてるんですが」
「6か月ですか。一般的な宿ですと4人部屋で1泊銅貨80枚、6か月で銀貨144枚。実際にはこの町では連続して泊まれるのは一ヶ月までと決められてるので、毎月銀貨24枚払って更新していく形になります。安いところであればその半額で済みますが、設備は私が言うのもなんですがひどいです。場所によっては食事などは一切つかない場所もあります。この町では食事はあちこちでとれますけどね。町の中心部に近い、高級宿であれば一ヶ月で金貨1枚かかるような場所もあります。その分設備は非常によく、貴族の方も泊まられる宿ですので防犯にも力を入れています。ただ高いです」
「家を借りると?」
「そうですね、4人組というのはそれほどあるわけではないのですが、以前借りられた方ですと、だいたい一ヶ月で銀貨15枚から20枚程度の物ですね。6か月ですとだいたい銀貨24枚から54枚の差があります。広くなると金貨2枚かかってしまうので宿のほうがお得になりますね。どうしますか?」
「見てから決めることってできますか? 大きさとか中の様子とかこの場で決めたりはできませんし」
「大丈夫ですよ。むしろこの場で決められてもどこの家を割り当てるか決めるのが面倒になりますからね。本来彼女の役割なんですが……私がやりますね。それではしばしお待ちを。出る前にこの後の予定を確認してきますので」
そういってボレアさんは奥に戻っていった。
それから少し経って、ボレアさんが戻ってきた。途中で一度怒鳴り声が聞こえたけど気にしないでおこう。
「ではまいりましょうか。今紹介できる4人以上が推奨の物件は5件あります。近いところから行きましょう。距離があるので馬車になりますが」
俺たちはボレアさんの後について家の候補を見に行った。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv88/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv21/50
魔術師 Lv37/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
おかしいな、今回でこの話済むはずだったのに……
というわけで家は次回です
以前第5章をどこで区切るか悩んでいると言ってましたが、『名も無き物語です』までで区切りました。
そして前話から第6章開始です!
ではまた次回