名も無き物語です
昼前にバルの町に着いた俺たちは、定食屋で昼飯を食べて、宿をとった。
バルの町は、そんなに大きな町ではないが、カーミア、フルーレの2つの町と比べるとかなり大きい。冒険者ギルドもあるし、武器屋や防具屋などの店もある。ただ、ここに来る途中に見た武器屋の看板がすべて大剣なのがなぜかわからず、宿の主人に尋ねてみた。
「武器屋の看板が大剣な理由? あんたたちこの町の『名も無き物語』を知らないのかい?」
「名も無き物語?」
「その様子じゃ知らないようだね。この時間ならもうじき像のところで語りが始まるだろうから行ってきたらどうだい? 像はそこの通りをまっすぐ行けばあるからさ」
キャラビーに目をやると、『名も無き物語』自体は知っているそうだがこの町のものは知らないようだ。
俺たちは宿の主人から言われた通りにその『語り』を聞きに行くことにした。
しばらく通りを歩いていると、主人が言っていたものであろう像がある広場に来た。俺たちはその像を見て驚愕と疑問でいっぱいになった。
「あれって……」
「ああ。間違いない。あれは」
広場の中心にある、身の丈の倍はある大剣を構えた狼獣人の像。
「ガルアだ」
それはメイたちが少し前に戦い、ベルゼブブにその身を喰われてこの世を去った男の姿だった。
「なんであいつが? だってあいつは……」
魔族。そう言おうとしたとたん、像の前にたつ、羽根が一枚ついた幅広の帽子をかぶり、背中にギターににた楽器を背負う、目立つ格好をした若者が声をはりあげた。
「私、本日の『語り』をすることになりました、吟遊詩人、ホーローともうします。本日これから行う『語り』は2つ。皆様、どうか最後までお聞きくださいませ」
ホーローがそう名乗ると、ガヤガヤと騒がしかった広場が次第に静かになっていった。そして彼の周りに人が集まり出す。俺たちもその流れで彼の近くに寄った。
「キャラビー、吟遊詩人って知ってるか?」
「はい。あちこちの町を渡り歩いては伝承や物語などを語っていく人たちのことですね。なかには1つの町に留まってその町に伝わる昔話などを語る人もいると聞きます。彼は後者なんだと思います」
小声で答えてくれたキャラビーを、お礼を言う代わりに撫でた。ホーローが話し始めていたのでそれを邪魔したくなかったのだ。キャラビーも気持ち良さそうにしてるしいいだろう。
そして、ホーローが語り始めた物語は『四つ魔の覇者』という話だ。それはあの像のもとになった人物の話であった。
その人物は、数百年前の人物で、その当時はまだこの町の四方にはダンジョンが存在していた。その人物もそのダンジョンに日々挑んでいた冒険者だった。ある日、すべてのダンジョンからモンスターが溢れだした。そのとき、彼はその巨大な剣を体の一部のように振るい、溢れでたモンスターを蹴散らし、ダンジョンを踏破してこの町を救った。しかし、彼はそのときに負った傷が元で、療養中に故郷で亡くなってしまう。人々は彼の冥福を祈ってこの地にこの像を建てたのだ。
それから百年後、再びこの地がモンスターの大群に襲われることがあった。そのときに、彼は像の体を借りて一振りでその軍勢を葬り、この地の守護者になった。そんな話だった。
俺は最後の守護者云々以外は完全に知っていた。間違いなく俺が見た夢の話だ。細部が違っていたり、その後の話は知らなかったりしていたが、やはりこの像はガルアの像で間違いなかった。
しかし、なぜかこの像は『名無しの英雄の像』となっており、この話の中でガルアの名が一切出ないのかと疑問が浮かんだ。
結局、その疑問の答えが出ることのないまま『語り』は次の話に移った。
その話は、今もまだ生きている英雄の話で、剣の女王と呼ばれる女剣士の話だった。もともとは『ヤマト大国』から来た冒険者で、つい先日まで女性にして初の王国騎士団訓練所所長を務めていたらしい。昔に貴族にとられた愛刀を取り戻し、再び冒険者として活動し始めたというところで話は終わっていた。なかなかにおもしろい話だったな。
吟遊詩人による『語り』が終わり、人がばらばらと広場から去っていく。何となくホーローにおひねりを渡したほうがいいと思って少し見ていたが、ホーロー自身が断っていた。ここの町長にでも雇われているんだろうな。俺たちも人々の流れに乗って宿に戻っていった。
「お、戻ってきたね。『語り』はどうだった?」
宿に戻ってくると、宿の主人が受付で何か作業をしているところだった。
「なかなかおもしろい話でした」
「そうだろうそうだろう。あれはこの町の名物みたいなものだからね」
「昔からやっているんですか?」
「そうだね。少なくとも私が生まれたころにはすでにやっていたね。昔は有志の吟遊詩人たちがやってくれていたらしいんだけど、数代前からは町で吟遊詩人を雇い始めて、吟遊詩人が自身の弟子を育てたり弟子の成長を見るのに利用しているんだよ」
宿の主人の説明を聞いて部屋に戻ると、早速キャラビーに『名も無き物語』のことを聞いてみた。
「『名も無き物語』は、別名『消された英雄の御伽話』って言われる実際にあった出来事をもとにした話です」
「消されたって……穏やかじゃないな」
「あくまでそう言われているだけですよご主人様。この話の共通点として、すべての物語において中心となる人物の周りの人の名前は普通に出てくるのですが、肝心のその人物の名前が一切出てこないんです。この理由はわかっていません。現在『名も無き物語』は3つあるのですが、名前どころか、そのうち1つはタイトルしか残されていません」
「タイトルだけってもはや話じゃなくないか?」
「むしろタイトルだけでも残っているのがすごいくらいなんです。『神に近づいた女教皇』もかなり内容がかすれていて話がとびとびになっているくらいですし、『四つ魔の覇者』みたいに全てしっかりと残っている話は貴重なんですよ」
「残りは?」
「『深淵なる死を語る勇者』ってタイトルです。内容は一切不明で、どんなことが行われたものなのかも何一つわかっていません」
キャラビーの説明を聞く限り、『名も無き物語』はもともとは複数あったが、今では3つになっており、その中でも1つはタイトルだけ。1つは内容がスカスカ。最後の1つは内容がはっきりしてるが細かいところが違う。なんだか意図的な何かを感じるな……。『七つの大罪』のスキルが関係しているのだろうか?
「うーん、昔はそんなものなかったけどなぁ……」
「そうなるとこの900年でできた話なのか。さすがに900年も生き続けてるのは……」
「前に話してたヒツギのパーティメンバーのエルフは?」
「たしかにメイムなら生きてるかも……。今はどこにいるのかな……」
「メイムというのはヒツギ様のいた時代の方なのですか?」
「キャラビーには話してなかったね。またあとで話してあげるよ」
そこからヒツギの話が始まり、俺はこっそりと部屋を出て自分の部屋に戻っていった。
次の日の朝、俺たちはカーミアの町に向かって出発した。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv88/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv21/50
魔術師 Lv37/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
5章をここで終わらせるか次の区切りで終わるか少し悩んでいます
後々になるかもしれません
ではまた次回