次の日の朝です
あの後、泣き疲れたキャラビーはハウステントに運び込んでマナとヒツギに見てもらうことにした。というか起きたらそうなっていた。俺は痛みで気絶してたからな。
起きた時にはすでに1時半。そこから寝るような気分にもなれずにどうしようかと思い、星を見たり、『鷹の目』を使って町や森の様子を見たりしながら屋根の上でボーっとしていると、その視界の中に怪しげに動く人影が4つ見えた。やっぱ来たかという感じだ。オークションが終わった後から何となく何か起こる気はしてたけど早くないか? まさかその日のうちに来るとはな。あ、一応次の日か。
そいつらが動くのを『鷹の目』を使って見ながら待っていた。
1人が様子見なのか、それとも動き出したのかわからないが、こちらに向かってきていた。なんかたまたま見つかったけど気配察知とかの索敵系統のスキルほしいな。
そして2時になり、そいつらが動き出した。
結局そいつらはあっさりと撃退できた。分かれて行動してきた相手を対処するために召喚したゼルセとコルクがまさかの動きをしたからな。
俺の目論見では、ゼルセがアルファとベータの2人をその場で倒し、コルクがその握力でガンマを逃がさないようにしつつ、俺が残った一人を倒して、コルクが捕まえている奴に3人をもっていってもらうつもりだった。しかし、ゼルセもコルクも、倒した奴を俺が倒すはずだったやつにかなりの速度で投げつけて撃退してしまった。予定が狂ったな……。
とりあえず、4人が使っていた『テレパスのイヤリング』は回収しておいた。これで離れててもマナたちと連絡がとれるようになるな。その前にマナに変な魔力の仕掛けがついてないか見てもらわないといけないな。『上級鑑定』では問題なさそうだが、位置が送信されているとか、会話の内容が筒抜けとか、3人同時にしか話しかけられないとかだと面倒だし。魔道具ならマナがなんとかわかる……と思う。魔力の扱いはマナのほうが上だし。
ゼルセとコルクにはたくさんあるハニーベアの肉をあげておいた。肉と蜂蜜がいい感じにマッチしているのだ。2体とも生で喰っていたが焼いて食べたほうがおいしい。なんでこれがギルドで売れないのかが不思議だ。
次の日の朝、目を覚ました俺の顔の目の前にキャラビーがいた。正確には、部屋のベッドで寝ていた俺の顔をキャラビーが覗き込んでおり、ついでに言えば、すでに11時だからどちらかといえば昼だ。
キャラビーは、俺が目を覚ましたのを確認すると慌てて体を起こす。
「おはようございます。ご主人様」
「あーおはよう」
キャラビーは、晴れやかな顔つきになっていた。心なしか顔も上を向いている気がする。それに口調もはっきりしている。
「……ご主人様?」
「そのご主人様ってのはなんなんだ?」
昨日からすでに呼ばれていた気がしなくもないが改めて呼ばれるとなんかむずがゆい。
「ご主人様はご主人様でご主人様だからご主人様です」
「うん。わけがわからない」
「……?」
俺の言葉に逆にわからないとばかりに首を傾けるキャラビー。俺は自然とため息が漏れる。
その時、部屋の扉からマナとヒツギが入ってきた。二人はすでに起きてたんだな。
「あ、ようやく起きたんだねメイ。ぐっすり寝てたからそのままにしたんだけど寝すぎじゃない?」
「メイも疲れてたってことでしょ」
「マナ様、ヒツギ様、おかえりなさいませ」
「うん、ただいま」
「二人はなんだかもう慣れてる感じだな」
「そりゃあ私たちは7時には起きて話してたからね。起きてすぐはすごいワタワタしててね」
「ヒ、ヒツギ様!」
「ごめんごめん。で、メイに改めて自己紹介した?」
「あ……」
「まだみたいね。今からしといたら」
「は、はい」
キャラビーはベッドに座る俺の前に正座して話し出した。
「御存じでしょうが、私は、ご主人様の奴隷の、キャラビー・ファントムです。器用さには自信があります。あと、ダンジョンの罠の解除にも役に立てると思います。よろしくお願いします」
「よろしく。ただ、俺らはお前を奴隷として扱う気はねえんだ。楽にしてくれ」
「そうはいきません! 私はご主人様に救っていただきました。今後の人生全てをかけてご主人様に仕えます!」
「……マナ、説明してないの?」
「いやー私たちも奴隷として扱う気はないって言ったんだけどね。全然聞いてくれなくて」
「私たちにはお手上げ。メイに丸投げしちゃおうって話になったわけ」
「そこはなんとかがんばってくれよ……」
「もしかして、迷惑でしたか?」
しょんぼりしてこちらを見るキャラビー。そんな顔されたら困るって……。
「迷惑じゃないよ。これからよろしく頼むな」
「はい!」
俺はキャラビーの頭を撫でながらそう言った。いや、そう言うしかなかった。まあキャラビーも元気になったしいいか。
「マナもヒツギも全部言ったのか?」
「うん。メイのことは未だだけど」
「なら俺も言っとくわ。マナまた結界頼む」
昨晩同様、部屋に結界を張った。俺の雰囲気にキャラビーにも緊張の色が浮かんだ。
「冒険者のメイ改め、地球から呼び出された3人の一人、刈谷鳴だ。谷底に落ちて死んだことになってる。天上院たちとかかわる気はあんまりない」
嫌でも関わらないわけにはいかないだろうが。という言葉はあえて伏せておいた。
「いなかったことになってる人間だからな。あんまり王都とは関わりたくない。大会に出たりするときはシャドウとして動いてる。メイでも問題ないといえば問題ないんだがな。キャラビー、お前は『力』のことは何か聞いてるか?」
「はい。召喚の儀でこの世界に舞い降りた勇者には例外なく大いなる力が宿るのだと聞いています。マナ様は魔法に特化した力だとも聞いています」
「あれ? 私そこまでは話してないけど……」
「これは……王……より伝えられたことです。もともとはあのメンバーにマナ様も加わっていただく予定だったと聞いてますので、ある程度はマナ様のことを聞いておりました」
「なるほどな。そんときにはすでに異世界から来た勇者は2人になっていたわけか」
「……たしかに私は2人と聞いていました。でも、今の私にとってはマナ様とご主人様のお二人が勇者様です!」
「……俺は勇者って呼べるような人間じゃないよ。俺ができるのは壊すことだけだ。俺じゃ誰かを救うなんてことはできない。俺に誰かを救う資格も、力もない。俺の『力』は『喰らう瞳』だ。すべてを喰らい、すべてを呑み込む魔の瞳。今の俺があるのも多くの命を喰らってきたからに過ぎない。まあ後悔はしてないけど。むしろこのおかげであんなところでも生きていられたんだ。前向きにいこう」
「それでも、私にとっては勇者様です」
「まあそう思うだけなら勝手だよ。ただ、外では俺たちのことを地球人だっていうのは禁止な。あくまでも、俺たちは冒険者のメイとマナとヒツギだ。それ以上でも、それ以下でもない」
「わかりました、ご主人様」
「ついでにそのご主人様呼びもなんとかならないか? 2人を呼ぶときみたいに俺もメイ様で」
「ご主人様はご主人様でご主人様なので変えるつもりはありません!」
「なんでこの時だけハキハキとなるんだか……」
これはあきらめるしかなさそうかな……。
俺は胸の内ではあきらめないと決めながらも表向きあきらめた様子で次の話に移るのだった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
聖???の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40 』
今回書くのに時間かかってしまいました……
ではまた次回